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神姫狩りシリーズ 05
悪の秘密結社、その名はねこねこ団
にゃー。
にゃー。
にゃーにゃーにゃー。
にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー。
「……」
明日香は辟易していた。
煩い。五月蝿い。喧しい。
猫の鳴き声の大合唱である。
「ふはははははははは! どうだこの猫の泣き声の大合唱! これではもはや貴様の神姫に支持を出すことなどできまい! 我輩の頭脳プレイであーる!! あらかじめ大量にマタタビやカツオブシを用意しておいて町中の野良猫をおびき寄せたこの我輩の手腕に! 恐れをなして平伏すがよい!! ぎゃはははははははは!!!」
「さすがはご主人様! これはもう勝ったも同然なのだ!!」
血走った三白眼で大笑いをしているオーナーと、マオチャオ型の神姫がわめく。
ちなみに、そのオーナーは、マオチャオ型の頭部パーツを模したヘッドギアを装着していた。
「さあ! いざ、神妙にこの我々と貴様らの戦力差および頭脳の出来の差に絶望してなきながら許しをこうがいい!! そうすれば…」
明日香は黙って、相手を指差し、そしておもむろに親指を立て、下に向けておろす。いわゆるサムズアップの下向き、「地獄に落ちろ」のジェスチャーである。
それと同時に、マルコは一斉に実弾のミサイルを全弾撃ちまくった。
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!??」
「にょわぁああああああああああああああああああ!!!??」
全弾命中。全弾爆発。
その爆風で猫たちは逃げ、場所には静寂が戻る。
「……」
「……」
明日香とマルコは、どうしたものかととりあえず途方にくれる。
猫の鳴き声がうるさくて、何を言っているのか全く聞こえなかったのでとりあえず撃っておいたが。
ていうか、そもそもコレは何者なのだろうか。
いきなり、「貴様が最近調子に乗っている神姫狩りか、だがこの我輩に勝てると思うなよけちょんけちょんにしてやるバーカバーカ!」と宣戦布告してきて、センターの筐体を使わないストリートの闇バトルを申し込んできた。
そしてなにやら大量の猫を用意して、その喧騒でなにも聞こえない中で何か叫んだり笑ったり。
――全く持って、
「訳がわからないな……明日香、これはいったい何なんだ」
「私に聞かないでください、マルコ。まあ、沢山神姫オーナーがいたら変態だっているでしょうし」
「だな……で、どうするんだ?」
「……なにか賭けたわけでもないし、そもそもこんなのから何か奪ったところで変態菌が感染する気がします」
「同感だな、ボクも明日香にアホ菌がうつって欲しくはない」
「帰りましょうか」
「そうしよう」
言って。
明日香とマルコは釈然としないものを胸に、立ち去った。
「……ふふ、ふふふふふふふ」
黒コゲになった男が、笑う。
「敵にとどめも刺さずに逃げ帰るとは! どうやらこの勝負、我輩の勝ちであーーーる!! げっひゃひゃひゃ!!」
「さすがなのだマスター、ごふっ、試合に負けて菖蒲湯に漬かるってヤツなのだにゃ!」
「その通り、完璧に合っているぞマイサン!」
息子じゃないと思うが。
「ふん、噂に聞いた神姫狩りの明日香とやらも我輩に恐れをなして煙幕を張った隙に逃げる臆病者。我々世界征服を企む悪の秘密結社、ねこねこ団の障害にあらず!! いかんなぁ、これを上層部に報告すれば我輩の地位はますます磐石にして不動のものになってしまうなあ、たまらんなあ、どひゃひゃひゃひやひやひやひゃ!!!!」
「さすがなのだマスター! いずれはねこねこ団そのものがマスターのものになるのも時間の問題児なのだー!」
「はっはっは、予想されうる事実とはいえそんなこと口にしちゃあいかんぞー? げひゃひゃ」
大笑いする二人。
だが、
にゃー。
にゃー。
にゃーにゃーにゃー。
にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー。
「……はい?」
逃げ去ったはずの猫たちが、いつのまにか戻っていた。
男の胸元にある、またたびやかつおぶしの入った袋に、その数十の視線は集まっていた。
「何か、やばい予感が」
「するのだー」
にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー。
一斉に。
その猫たちは、雪崩れのように襲い掛かった。
「ぎぃやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!????」
どどどどどどど、という音。
そして、
ぷち。
というコミカルな音。
名前すら表記されないまま、悪の秘密結社ねこねこ団の構成員は、猫に潰された。
合唱。もとい、合掌。
「……まあ、災難でしたのね」
篠房邸の自室で留美那は紅茶を差し出しながら言う。
「そうなのよ。ヘンなのに当たつちゃったっていうか、弾丸代だけ出て行っちゃった、ってかんじです」
明日香は出された紅茶をすすりながら、肩をすくめる。
「でも、あまり無茶はよしてくださいね。明日香ちゃんに何かあったら、私」
「あー、大丈夫大丈夫。あんなヘンなのにどーにかされるような明日香さまじゃないし」
ひらひらと手を振る。
「まあ、お二人なら大丈夫とは思いますけど。でも本当に気をつけてくださいね」
「うん、わかってますよ。じゃ、そろそろ私たち帰りますね。明日、また学校で」
「ええ」
明日香が帰るのを見送り、留美那は表情を変える。
――悪の秘密結社、ねこねこ団首領の顔へと。
「――どなたか知りませんけど、身の程知らずですわね、明日香ちゃんに手を出すなんて」
その言葉に、いつの間にか控えていた団員が答える。
「探し出して粛清いたしますか」
「いえ、それには及びません。けちょんけちょんにされたみたいだし、自業自得ということでそれでよしとしましょう」
「は。仰せのままに、首領」
留美那は、机の上の花瓶を押す。
部屋がかるく振動し、そして床が沈んでいく。部屋そのものが地下へと移動し始める。
「団員の皆さんもがんばっているようですし、あまりひどいことをするのもなんですしね。武装神姫による世界征服、そのための第一歩としての公式リーグおよび裏リーグの制覇。ご町内の神姫勢力の完全制圧。やるべきことは沢山ありますから」
「は。必ずやご期待に添えて見せます」
「ええ、期待しています」
降下が止まる。
壁がスライドして、地下の広大な空間が広がる。
歓声。
そこには、マオチャオの頭部パーツを模したヘッドギア、あるいはそのままのネコミミを装備した多くの神姫オーナーたちが終結していた。神姫たちも、みなネコミミパーツを装備している。
「ね・こ・こ!」
「ね・こ・こ!」
「ね・こ・ね・こ!」
「ね・こ・ね・こ!」
大合唱。
留美那はその大群衆を見下ろし、手を上げる。
「我が悪の秘密結社ねこねこ団の皆さん!」
オオオオオオオオオ!!
歓声が上がる。
その歓声をものともしない凛とした声で、留美那は、いや首領は宣言する。
「神姫による世界征服、その計画はついに動き出します! よりすみよい世界を作るため、みなさんにはその命をとして働いていただくことになります。つらいこともあるでしょう、くじけるときもあるでしょう。理不尽な暴力に屈することもあるかもしれません。
ですが!
我々ねこねこ団に敗北の二文字はありません! 心さえ折れなければ、野望さえ諦めなければ、神姫を愛する心を忘れなければ、最終的な勝利は揺るがないのです!
戦いましょう、我々に、悪の秘密結社ねこねこ団に、栄光あれ!!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
大合唱が、大歓声が、大怒号が、地下のアジトに響いた。
――悪の秘密結社ねこねこ団、
始動。
続く
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