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「戦う神姫は好きですか 三話」(2007/01/05 (金) 12:44:18) の最新版変更点
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畜生…。
畜生!
畜生!!
「畜生ッ!!!」
あの青瓢箪ッ!
アタシの無敗記録に泥塗りやがって!!
絶対に、絶対に許さない……!
彼女はバーチャル・バトルマシーンの中から主人へと、思わず声をかけた。
「ご主人様……」
ハウリン型MMS、主から授かった名前は”トロンベ”。
ドイツ語で竜巻という意味だ。
「……何よ、まだ終わっていないじゃない。
早く全部壊しなさいよ!」
「…了解しました、ご主人様」
とても少女のものとは思えない刺々しく、荒々しい言葉に視線を落として短く応えた。
0と1の信号の上に築かれた仮想現実の世界。
低く唸る用途不明の機械や、緑色の液体が充満するカプセルが密集する施設内部。
フィールド名”秘密工場”。
薄暗い工場に灯る明かりは赤と黄色のランプと天窓から差し込むか細い光。
そして、マズルフラッシュと爆炎のみ。
ハウリン型の基本武装は十手、棘輪そして吠莱・壱式とプチマスィーンズの四種。
近接型のストラーフ型やマオチャオ型、射撃型のアーンヴァルとは違ってそれなりに万能である。
アーマーも防御力を上げつつも機動性を殺しておらず、MMSの中でも汎用性が高いといえる。
その為、初心者であってもそれなりに勝ち進めるのがハウリン型の利点である。
一方で一点飛び抜けたものが無いのも事実。
よって、ハウリン型のオーナーはある程度実戦をこなすと一点に特化した装備に変更する傾向にある。
もちろん、水野アリカとこのトロンベも例外ではない。
アリカは”大出力・大火力を基に短期決着”のスタイルを選んだ。
その為に今のトロンベはデフォルトと程遠いものと成り果てている。
アーマー類はデフォルトと同一。
しかし、両腕にはGEモデルLC3レーザーライフルを三つ三つで計六門
腰から脚にかけてハイパーエレクトロマグネティックランチャーを四つずつで計八門
背中には吠莱・壱式を四門備え、全身のありとあらゆる部位に大中小のミサイルを無数に装備。
その見た目は、歩く砲台といった感じである。
ハウリン型の機動性を完全に殺し、射撃性能に特化した装備。
全てはあのストラーフに打ち勝つ為に。
ただ、それだけの為に。
トロンベは非情にゆったりとした歩みで薄暗い工場内を徘徊している。
現在のトレーニング・メニューは百人斬り。
即ち、100体のCPUMMSを撃破するまで終わらないトレーニングである。
現在撃破数は69体。
その間にトロンベが負った傷は極僅か。
致命傷は一つも無く、全て掠り傷程度である。
薄暗い工場に閃光が瞬く。
トロンベの、ちょうど真上から奇襲を仕掛けてきたマオチャオ。
しかしトロンベは慌てる事無く背中の蓬莱・壱式上に向けて、放った。
マオチャオがハウリンに到達するよりも速く、弾丸はマオチャオを貫いた。
四発の銃撃を胴体に受けたマオチャオはデータの塵へと化す。
完全に消え去るのを見届け、ゆっくりと歩み始めた。
「26分54秒……」
アリカはコツコツとディスプレイを指先で叩きながら呟いた。
「遅い」
「申し訳ありません…」
トロンベは主人の刺々しい視線を受け、深く頭を下げた。
「謝ったからってどうなるモンでも無いでしょう!
何でもっと上手く戦えないの!?
あのストラーフだったらもっと速く終わってたわ!
アンタはアレに勝たなきゃいけないのよ!?」
ヒステリックに叫ぶ主人に、トロンベはただ黙って頭を下げることしか出来なかった。
「いらっしゃいませー……って倉内君か。
珍しいね、ウチに来るなんて」
「客に向かって珍しいとはなんですか」
「ははは、だって君はパーツとか自分で作っちゃうし、修理も大学で出来ちゃうでしょう?
だから珍しいなぁ~、てね」
「まあ、用があるのは俺じゃなくて相棒の方なんですけどね」
「ああ、成る程ね」
ここは”ホビーショップ・エルゴ”
俺が今軽い雑談を交わしたのが店長の日暮 夏彦さん。
何年か前に親父さんの遺した模型店を神姫向けのホビーショップに転向して頑張っているらしい。
このホビーショップ・エルゴはそれなりに名の通ったショップでもある。
その理由の一つは品揃えの良さ。
個人経営の利点を活かした高品質・低価格でありながら武装・衣装を問わない品揃えの良さは大手ショップと同等だ。
その他にも店長の人柄の良さや大型バトルスペールなど。
それらの事からかなりレベルの高いショップだと言える。
「お久しぶりです、うさ大明神様」
「はい、お久しぶりです。ナルさん」
そして、忘れちゃいけないこのショップの目玉。
それが”うさ大明神様”と呼ばれるヴォッフェバニー型MMSだ。
彼女は何と言うか、とても個性的な出で立ちをしている。
頭は普通のMMSと変わらないのだが、身体が無いのだ。
というか、胸像?
本来EXウエポンセットに付属するヘッドパーツの彼女には、ディスプレイ用の胸像パーツが付属している。
彼女はその胸像のままなのだ。
しかも、店内に備え付けられた1/12スケールの教室、その教壇に備え付けられたハコ馬の上に。
その様子は正にシュール。
そして、このシュールなうさ大明神様が催す”神姫の学校”こそが、このショップの目玉である。
元を辿れば店長の学生時代に遡ると言うが、詳しい事は知らない。
俺が知っている事は、小学生などの学校に神姫を伴えないオーナーに代わっての神姫預かり、人間社会の勉強サービス。
そしてその神姫の学校が大人気で、俺の相棒もそのファンであるということだけだ。
もっともナルは別に授業を受けに来た訳でなく、戦闘のアドバイスを聞きに来たのだ。
うさ大明神様は教育だけでなく、戦闘についての知識も豊富だ。
その為、上位ランカーの神姫がアドバイスを請うことも多々在るという。
俺の相棒はさっさと胸ポケットから飛び降りてうさ大明神様の講義をかなり真剣に受けている。
はてさて店長の言うとおり、俺はパーツやらなにやらの事はは全部自分で出来る。
だからショップに用はないのだが、冷かしというのも居心地が悪い。
仕方が無いので内部パーツ系の棚に向かう事にした。
シリンダーアクチュエータとサーボモータのスペアが減ってきていたので丁度良い、と自己完結する。
が、しかしだ。
このショップの品揃えにはやはり目を見張る物がある。
メーカー純正パーツは当然の用に揃えられており、その他メーカーのパーツ類等も一通り網羅されている。
ここは聖地”秋葉原電気街”の専門店と同等かそれ以上の品揃えを誇っている。
だからついつい俺も本気でパーツ選びをしてしまう。
あれやこれやと手に取って、性能と値段を見比べて自分の懐と睨めっこ。
男というのは何時までたってもこういうものが好きなのだと言う事を改めて実感する。
三十分くらいだろうか。
俺がパーツと睨めっこを続けていた時間は。
ようやく買うものを決めた俺はカゴを片手にレジへと向かう。
その途中、うさ大明神様と相棒の様子を見るがまだまだ談義は終わらない様子。
何時の時代も女というのはお喋りが好きだな、とか談義が終わるまでどうやって暇潰ししようか、とかその他諸々の思惑を頭の中で巡らせている間にレジについた。
レジには先客がいたのでそれを待つ。
なんとなく先客の買っている物に目が行って少し驚く。
ありとあらゆる銃火器パーツがカゴの中に山を作っていた。
どんなバカかボンボンかと思って、その先客に興味が沸いた。
興味が沸くのと同時に何か嫌な予感が頭をよぎった。
嫌な予感がよぎったが俺はそれを無視して先客の様子を探る。
身長は160cm前後といったところだろうか。
後姿しか解らないので何ともいえないが、多分女だ。
しかし、そんなに銃火器ばかり買ってどうするんだと俺は心の中で苦笑した。
「まいどありがとうございました~」
店長の声がした。
清算は終わったのだろう。
俺も清算を済まそうと歩を進めた。
先客は振り向いて出口に向かおうとした。
そこで、俺と先客は鉢合わせる形になった。
心底、後悔した。
「…っ! 倉内 恵太郎、アタシと勝負しなさいっ!!」
「ワタクシハクラウチケイタロウデハアーリマセーン」
「くだらないマネしてんじゃないわよっ!」
最悪だ。
俺の前にいた先客、それは水野 アリカだった。
彼女はこの前のサバイバル・バトルからというもの、俺を見かけるたびに勝負を挑んでくるのだ。
運悪く彼女と俺は同じ町に住んでいるらしく、遭遇率は割りと高い。
俺としては同じ相手と何度も戦いたくもないので会う度に何とか巻いているのだが……。
最近会うことがめっきり減って油断していたところで、また見つかってしまった。
というか、今回は俺の不覚だろう。
彼女は曲がりなりにも神姫オーナーだ。
そしてここはそれなりに名の知れたホビーショップだ。
…欝だ、死のう。
「さあ、今日こそは逃がさないわよ!」
「だーかーら、俺は同じ相手とは二度と戦わないって言ってるでしょうに」
これだけで引き上げてくれれば苦労はしないのだが……。
「なら大丈夫よ」
「は?」
「アタシのトロンベは生まれ変わったのよ!
超攻撃型MMSとしてね!!」
もう何を言っても無駄だろう。
そろそろ腹を括るトキかしらー。
「……はいはいわかりましたよお嬢さん。
そこまで言うならお相手致しましょう?」
「…相変わらず糞ムカツクわね」
凄まじく冷たい視線を感じるが、そんなもんはスルーだ。
「店長、バトルスペース借りますね」
個人経営にしては上等な四面体のバトルスペース。
俺は四面体の一辺、簡易クレイドルがある一辺でナルのセッティングを施している。
不幸にもバーチャルバトル用のデータを持っていたので今回はそれを使う。
……データも装備も持ってない。って言えば巻けたんじゃないの?
何か聞こえてくる気がするが、そんなもんはスルーだ。
一方、バトルスペースを挟んで対面する形の彼女もセッティングを施していた。
あきらかに銃火器満載と言った感じで、思わず溜息が漏れる。
「ナル~、こっちの準備はOKですよ~。
そっちの準備はOKですか~?」
「はい、準備はOKです、マスター」
「はい~、では健闘を祈ります~」
備え付けられたコンソールを操作してナルを仮想現実の世界へと転送した。
同じく備え付けのディスプレイにナルの姿が顕れる。
それから間もなく、彼女の準備が出来たのだろう。
彼女の神姫、トロンベがディスプレイに顕れた。
顕れて絶句した。
まるでハリネズミのように備え付けられた銃火器の数々。
もはや犬型とは言い難い風貌に俺は軽く鬱になる。
「覚悟しなさい、倉内 恵太郎!」
「……は~いはい」
彼女の咆哮とほぼ同時にバトルの準備が整った事を告げるアラームが鳴った。
それと同時にバトルフィールドが決定される。
バトルフィールドは”荒地”
見渡す限り不毛な大地。
空にはどんよりと薄暗い雲が居座っている。
まさに俺の心模様そのものだ。
そこにナルとトロンベが転送される。
「地の利はアタシに味方しているようね?」
勝ち誇るような彼女の台詞に俺はもっと鬱になる。
が、その台詞にも一理ある。
荒野のフィールドには遮蔽物の類は存在しない。
その為、有利なのは砲戦型か高機動型となる。
「……ナル、徹底的に叩きのめしといてちょ」
「イエス、マスター」
俺はもう疲れたので、一言指令を伝えてバトルスペースを後にした。
「ちょ、アンタ何処行くのよ!」
「喉渇いたから自販~」
トロンベの脚部に備え付けられた八門のハイパーエレクトロマグネティックランチャー。
それはレールガンと呼ばれる類の火器である。
レールガンは電力を供給すればするほどに弾丸の速度は上がり、理論的には光速すらも突破出来る。
が、一介の武装神姫たるトロンベにはそれほどの電力は持ち合わせていないので精々音速くらいが関の山である。
それでも武装神姫相手には充分過ぎる速度なのだが。
そのハイパーエレクトロマグネティックランチャーから放たれた弾丸が音速を超えて飛翔した。
大地を抉り、大気を裂いて、眼前に立ちはだかる物全てを打ち壊さんと飛翔する。
目標はトロンベの前方10sm位置するナル。
音速を超えた弾丸がナルを貫いて試合終了。
トロンベはそうなることを願っていた。
が、現実はそう甘くなかった。
八つの弾丸は確かにナルに直撃した。
が、それはナルの身体を後方に押し出す程度だった。
ナルは左手に握る刃鋼、それを地面に突き刺し、剣の腹で音速を超える弾丸を防ぎきった。
もっとも、無傷という訳ではなく刃鋼の表面には八つの弾痕が薄く残っていた。
先手はトロンベ。
後手はナルの番だ。
ナルは地面から刃鋼を振り抜き、大地を蹴って駆けた。
腰のブースターを全開にしての疾駆。
10smを縮めてトロンベを両断しようと駆けて行く。
だが、トロンベとて伊達に鍛錬を積んだ訳ではない。
距離を詰めてくるナル目掛けて全身のミサイルを掃射。
幾重にも重なる爆音と共に、無数の大小ミサイルが白い尾を引きながら飛来する。
文字通り雨の様な爆撃。
ナルとミサイル群とは直ぐに衝突した。
否。
ミサイルはナルと衝突することは無かった。
ナルは真っ先に飛んできた大型ミサイルの弾頭を刺激する事無く、踏み台にして跳躍。
踏み台にされたミサイルは地面と激突、多数のミサイルを巻き込む大爆発を巻き起こした。
ナルはその爆風を背に受けて更に加速し、トロンベへ一直線に突っ込む。
その後ろでは、目標を見失った中小ミサイルがあさっての方向へ飛び去り、地面と衝突している。
―――一閃。
刃鋼の重量とナルの速度を乗せた一撃は、トロンベの左側を斬った。
が、トロンベ本体は左腕を多少掠った程度で主な被害はハリネズミの如く付けられた武装だった。
トロンベ本体のダメージこそ少ないものの、余波である衝撃はトロンベを震わせた。
「っく!」
多少よろめきつつも体勢を崩す事無く、次の攻撃―――背中に残った二門の蓬莱・壱式を背部に向ける。
銃口の先では、ナルがスライディングの要領で勢いを殺している。
その距離、およそ15sm。
ナルが再接近するにしてもそれまでに充分迎撃可能と見たトロンベは蓬莱・壱式に弾丸を装填し、発射しようとした。
が、それとほぼ同時。
ナルの右腕に装着された銃鋼から無数のビームが放たれた。
背後からの攻撃に一瞬反応が遅れるトロンベ。
だが、すぐさま回避しようとしたが重装備が祟り回避できず、ほぼ全弾を背中で受け止めてしまう。
その衝撃に耐え切れず、トロンベは前のめりに倒れてしまった。
「何してるのよっ! 速く立ちなさいよ!!」
アリカの叱咤がトロンベの通信ユニットに響く。
直ぐに体勢を立て直そうとして、そこである事に気付いた。
ハリネズミの如く備え付けられた火器の類。
その重量が邪魔して上手く立ち上がることが出来ないのだ。
「…っく……う……ぁ……」
何とか立ち上がろうと両腕に力を入れていた、その時。
「やはり負け犬は負け犬ですね」
ナルの刃鋼がトロンベを文字通り両断した。
「……そんな」
ディスプレイに踊る『YOU LOSE』の文字。
アタシはそれを前に言葉を失った。
荒野というフィールドに完全砲撃仕様のトロンベ。
それに加えて相手のマスター不在。
地の利、時の利はアタシに味方していた。
それなのに。
「あれ、負けちゃったの」
青瓢箪が缶コーヒー片手に戻ってきた。
「なんで…なんで……」
アタシの頭は混乱していた。
何か言いたい筈なのに、何も言葉に出来ない。
出てくるのは『なんで』という疑問のみ。
「なんで負けたのか理解できない。そんな顔だね」
「……当たり前よ。アタシのチューンアップは完璧だったわ!
トレーニングでも完璧だったのに……!」
そう、何十何百何千回とトレーニングを積んだのだ。
それなのに。
「……そうだわ、神姫よ。
神姫の性能が劣っているのよ!
それ以外に負ける要素なんてありえないわ!」
アタシは一つの結論に達した。
トロンベとあのストラーフの元々の性能が違うからアタシは負けたんだ。
これ以外にアタシが負ける要素は見当たらない。
「…お嬢さん。そんな事を言っているようでは何百年経っても俺には勝てないよ」
「そんな事無いわ! 神姫の性能が悪いからアタシは負けたの!
だからもっと良い神姫を買えば…!」
「機体の性能差が戦力の決定的差でない。
という言葉がある。
今回、お嬢さんの神姫の性能だけでみるならば、俺のナルと同等だったと思う。
しかし、お嬢さんは負けた。
しかもマスターのいない俺のナルに、だ。
これが何を表すか解るかい?」
「…神姫の性能が同じ?
だったら一体何が悪いのよ!」
本当にコイツは訳の解らない事を抜かす。
「二対一でも戦力で負けていたと言う事さ。
そしてそれは経験に大きく起因する。
もし仮にお嬢さんが新しい神姫を買ったとしても、それは赤子と同じ。
まさに赤子の手を捻るが如し、てね」
まあ、確かにそれも一理ある。
「だったら、トロンベにもっと場数を踏ませれば…!」
「それでようやく相打ちといったところかな。
お嬢さんが俺達に勝つためには、足らない物がもう一つある」
「なによ、勿体つけてなんでさっさと言いなさいよ!」
青瓢箪は一口缶コーヒーを口にした。
「それはお嬢さん自身で見つけないと意味が無いのさ」
「……はぁ?」
コイツ、本当は何も考えてないんじゃないの?
「しょうがない。最大唯一のヒントだ。
神姫は唯の玩具じゃない。笑いもすれば、泣きもする。
……もっとも、受け売りだけどね」
「…訳わかんないわよ」
「それが解ったらもう一度戦おう。リアルでね」
リアルバトル。
その言葉に何故か身体が強張った。
上位ランカー戦の主であるリアルバトル。
仮想現実ではなく、現実でのバトル。
使用される武器は全てリアル。
即ち受ける傷もリアル。
最悪の場合、神姫本体すら壊れる可能性を孕んでいる。
だが、これはチャンスでもある。
あのストラーフを破壊できるかもしれないのだ。
「…良いわ。その勝負受けて立つわ」
「日時はそちらの好きに決めてもらって構わないよ。
それじゃあ、失礼するよお嬢さん。」
そう言うと青瓢箪はさっさと出て行ってしまった。
後に残されたアタシはただ帰る準備をするだけだった。
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畜生…。
畜生!
畜生!!
「畜生ッ!!!」
あの青瓢箪ッ!
アタシの無敗記録に泥塗りやがって!!
絶対に、絶対に許さない……!
彼女はバーチャル・バトルマシーンの中から主人へと、思わず声をかけた。
「ご主人様……」
ハウリン型MMS、主から授かった名前は”トロンベ”。
ドイツ語で竜巻という意味だ。
「……何よ、まだ終わっていないじゃない。早く全部壊しなさいよ!」
「…了解しました、ご主人様」
とても少女のものとは思えない刺々しく、荒々しい言葉に視線を落として短く応えた。
0と1の信号の上に築かれた仮想現実の世界。
低く唸る用途不明の機械や、緑色の液体が充満するカプセルが密集する施設内部。
フィールド名”秘密工場”。
薄暗い工場に灯る明かりは赤と黄色のランプと天窓から差し込むか細い光。
そして、マズルフラッシュと爆炎のみ。
ハウリン型の基本武装は十手、棘輪そして吠莱・壱式とプチマスィーンズの四種。
近接型のストラーフ型やマオチャオ型、射撃型のアーンヴァルとは違ってそれなりに万能である。
アーマーも防御力を上げつつも機動性を殺しておらず、MMSの中でも汎用性が高いといえる。
その為、初心者であってもそれなりに勝ち進めるのがハウリン型の利点である。
一方で一点飛び抜けたものが無いのも事実。
よって、ハウリン型のオーナーはある程度実戦をこなすと一点に特化した装備に変更する傾向にある。
もちろん、水野アリカとこのトロンベも例外ではない。
アリカは”大出力・大火力を基に短期決着”のスタイルを選んだ。
その為に今のトロンベはデフォルトと程遠いものと成り果てている。
アーマー類はデフォルトと同一。
しかし、両腕にはGEモデルLC3レーザーライフルを三つ三つで計六門
腰から脚にかけてハイパーエレクトロマグネティックランチャーを四つずつで計八門
背中には吠莱・壱式を四門備え、全身のありとあらゆる部位に大中小のミサイルを無数に装備。
その見た目は、歩く砲台といった感じである。
ハウリン型の機動性を完全に殺し、射撃性能に特化した装備。
全てはあのストラーフに打ち勝つ為に。
ただ、それだけの為に。
トロンベは非情にゆったりとした歩みで薄暗い工場内を徘徊している。
現在のトレーニング・メニューは百人斬り。
即ち、100体のCPUMMSを撃破するまで終わらないトレーニングである。
現在撃破数は69体。
その間にトロンベが負った傷は極僅か。
致命傷は一つも無く、全て掠り傷程度である。
薄暗い工場に閃光が瞬く。
トロンベの、ちょうど真上から奇襲を仕掛けてきたマオチャオ。
しかしトロンベは慌てる事無く背中の蓬莱・壱式上に向けて、放った。
マオチャオがハウリンに到達するよりも速く、弾丸はマオチャオを貫いた。
四発の銃撃を胴体に受けたマオチャオはデータの塵へと化す。
完全に消え去るのを見届け、ゆっくりと歩み始めた。
「26分54秒……」
アリカはコツコツとディスプレイを指先で叩きながら呟いた。
「遅い」
「申し訳ありません…」
トロンベは主人の刺々しい視線を受け、深く頭を下げた。
「謝ったからってどうなるモンでも無いでしょう! 何でもっと上手く戦えないの!? あのストラーフだったらもっと速く終わってたわ! アンタはアレに勝たなきゃいけないのよ!?」
ヒステリックに叫ぶ主人に、トロンベはただ黙って頭を下げることしか出来なかった。
「いらっしゃいませー……って倉内君か。珍しいね、ウチに来るなんて」
「客に向かって珍しいとはなんですか」
「ははは、だって君はパーツとか自分で作っちゃうし、修理も大学で出来ちゃうでしょう?だから珍しいなぁ~、てね」
「まあ、用があるのは俺じゃなくて相棒の方なんですけどね」
「ああ、成る程ね」
ここは”ホビーショップ・エルゴ”
俺が今軽い雑談を交わしたのが店長の日暮 夏彦さん。
何年か前に親父さんの遺した模型店を神姫向けのホビーショップに転向して頑張っているらしい。
このホビーショップ・エルゴはそれなりに名の通ったショップでもある。
その理由の一つは品揃えの良さ。
個人経営の利点を活かした高品質・低価格でありながら武装・衣装を問わない品揃えの良さは大手ショップと同等だ。
その他にも店長の人柄の良さや大型バトルスペールなど。
それらの事からかなりレベルの高いショップだと言える。
「お久しぶりです、うさ大明神様」
「はい、お久しぶりです。ナルさん」
そして、忘れちゃいけないこのショップの目玉。
それが”うさ大明神様”と呼ばれるヴォッフェバニー型MMSだ。
彼女は何と言うか、とても個性的な出で立ちをしている。
頭は普通のMMSと変わらないのだが、身体が無いのだ。
というか、胸像?
本来EXウエポンセットに付属するヘッドパーツの彼女には、ディスプレイ用の胸像パーツが付属している。
彼女はその胸像のままなのだ。
しかも、店内に備え付けられた1/12スケールの教室、その教壇に備え付けられたハコ馬の上に。
その様子は正にシュール。
そして、このシュールなうさ大明神様が催す”神姫の学校”こそが、このショップの目玉である。
元を辿れば店長の学生時代に遡ると言うが、詳しい事は知らない。
俺が知っている事は、小学生などの学校に神姫を伴えないオーナーに代わっての神姫預かり、人間社会の勉強サービス。
そしてその神姫の学校が大人気で、俺の相棒もそのファンであるということだけだ。
もっともナルは別に授業を受けに来た訳でなく、戦闘のアドバイスを聞きに来たのだ。
うさ大明神様は教育だけでなく、戦闘についての知識も豊富だ。
その為、上位ランカーの神姫がアドバイスを請うことも多々在るという。
俺の相棒はさっさと胸ポケットから飛び降りてうさ大明神様の講義をかなり真剣に受けている。
はてさて店長の言うとおり、俺はパーツやらなにやらの事はは全部自分で出来る。
だからショップに用はないのだが、冷かしというのも居心地が悪い。
仕方が無いので内部パーツ系の棚に向かう事にした。
シリンダーアクチュエータとサーボモータのスペアが減ってきていたので丁度良い、と自己完結する。
が、しかしだ。
このショップの品揃えにはやはり目を見張る物がある。
メーカー純正パーツは当然の用に揃えられており、その他メーカーのパーツ類等も一通り網羅されている。
ここは聖地”秋葉原電気街”の専門店と同等かそれ以上の品揃えを誇っている。
だからついつい俺も本気でパーツ選びをしてしまう。
あれやこれやと手に取って、性能と値段を見比べて自分の懐と睨めっこ。
男というのは何時までたってもこういうものが好きなのだと言う事を改めて実感する。
三十分くらいだろうか。
俺がパーツと睨めっこを続けていた時間は。
ようやく買うものを決めた俺はカゴを片手にレジへと向かう。
その途中、うさ大明神様と相棒の様子を見るがまだまだ談義は終わらない様子。
何時の時代も女というのはお喋りが好きだな、とか談義が終わるまでどうやって暇潰ししようか、とかその他諸々の思惑を頭の中で巡らせている間にレジについた。
レジには先客がいたのでそれを待つ。
なんとなく先客の買っている物に目が行って少し驚く。
ありとあらゆる銃火器パーツがカゴの中に山を作っていた。
どんなバカかボンボンかと思って、その先客に興味が沸いた。
興味が沸くのと同時に何か嫌な予感が頭をよぎった。
嫌な予感がよぎったが俺はそれを無視して先客の様子を探る。
身長は160cm前後といったところだろうか。
後姿しか解らないので何ともいえないが、多分女だ。
しかし、そんなに銃火器ばかり買ってどうするんだと俺は心の中で苦笑した。
「まいどありがとうございました~」
店長の声がした。
清算は終わったのだろう。
俺も清算を済まそうと歩を進めた。
先客は振り向いて出口に向かおうとした。
そこで、俺と先客は鉢合わせる形になった。
心底、後悔した。
「…っ! 倉内 恵太郎、アタシと勝負しなさいっ!!」
「ワタクシハクラウチケイタロウデハアーリマセーン」
「くだらないマネしてんじゃないわよっ!」
最悪だ。
俺の前にいた先客、それは水野 アリカだった。
彼女はこの前のサバイバル・バトルからというもの、俺を見かけるたびに勝負を挑んでくるのだ。
運悪く彼女と俺は同じ町に住んでいるらしく、遭遇率は割りと高い。
俺としては同じ相手と何度も戦いたくもないので会う度に何とか巻いているのだが……。
最近会うことがめっきり減って油断していたところで、また見つかってしまった。
というか、今回は俺の不覚だろう。
彼女は曲がりなりにも神姫オーナーだ。
そしてここはそれなりに名の知れたホビーショップだ。
……欝だ、死のう。
「さあ、今日こそは逃がさないわよ!」
「だーかーら、俺は同じ相手とは二度と戦わないって言ってるでしょうに」
これだけで引き上げてくれれば苦労はしないのだが……。
「なら大丈夫よ」
「は?」
「アタシのトロンベは生まれ変わったのよ! 超攻撃型MMSとしてね!!」
もう何を言っても無駄だろう。
そろそろ腹を括るトキかしらー。
「……はいはいわかりましたよお嬢さん。そこまで言うならお相手致しましょう?」
「…相変わらず糞ムカツクわね」
凄まじく冷たい視線を感じるが、そんなもんはスルーだ。
「店長、バトルスペース借りますね」
個人経営にしては上等な四面体のバトルスペース。
俺は四面体の一辺、簡易クレイドルがある一辺でナルのセッティングを施している。
不幸にもバーチャルバトル用のデータを持っていたので今回はそれを使う。
……データも装備も持ってない。って言えば巻けたんじゃないの?
何か聞こえてくる気がするが、そんなもんはスルーだ。
一方、バトルスペースを挟んで対面する形の彼女もセッティングを施していた。
あきらかに銃火器満載と言った感じで、思わず溜息が漏れる。
「ナル~、こっちの準備はOKですよ~。そっちの準備はOKですか~?」
「はい、準備はOKです、マスター」
「はい~、では健闘を祈ります~」
備え付けられたコンソールを操作してナルを仮想現実の世界へと転送した。
同じく備え付けのディスプレイにナルの姿が顕れる。
それから間もなく、彼女の準備が出来たのだろう。
彼女の神姫、トロンベがディスプレイに顕れた。
顕れて絶句した。
まるでハリネズミのように備え付けられた銃火器の数々。
もはや犬型とは言い難い風貌に俺は軽く鬱になる。
「覚悟しなさい、倉内 恵太郎!」
「……は~いはい」
彼女の咆哮とほぼ同時にバトルの準備が整った事を告げるアラームが鳴った。
それと同時にバトルフィールドが決定される。
バトルフィールドは”荒地”
見渡す限り不毛な大地。
空にはどんよりと薄暗い雲が居座っている。
まさに俺の心模様そのものだ。
そこにナルとトロンベが転送される。
「地の利はアタシに味方しているようね?」
勝ち誇るような彼女の台詞に俺はもっと鬱になる。
が、その台詞にも一理ある。
荒野のフィールドには遮蔽物の類は存在しない。
その為、有利なのは砲戦型か高機動型となる。
「……ナル、徹底的に叩きのめしといてちょ」
「イエス、マスター」
俺はもう疲れたので、一言指令を伝えてバトルスペースを後にした。
「ちょ、アンタ何処行くのよ!」
「喉渇いたから自販~」
トロンベの脚部に備え付けられた八門のハイパーエレクトロマグネティックランチャー。
それはレールガンと呼ばれる類の火器である。
レールガンは電力を供給すればするほどに弾丸の速度は上がり、理論的には光速すらも突破出来る。
が、一介の武装神姫たるトロンベにはそれほどの電力は持ち合わせていないので精々音速くらいが関の山である。
それでも武装神姫相手には充分過ぎる速度なのだが。
そのハイパーエレクトロマグネティックランチャーから放たれた弾丸が音速を超えて飛翔した。
大地を抉り、大気を裂いて、眼前に立ちはだかる物全てを打ち壊さんと飛翔する。
目標はトロンベの前方10sm位置するナル。
音速を超えた弾丸がナルを貫いて試合終了。
トロンベはそうなることを願っていた。
が、現実はそう甘くなかった。
八つの弾丸は確かにナルに直撃した。
が、それはナルの身体を後方に押し出す程度だった。
ナルは左手に握る刃鋼、それを地面に突き刺し、剣の腹で音速を超える弾丸を防ぎきった。
もっとも、無傷という訳ではなく刃鋼の表面には八つの弾痕が薄く残っていた。
先手はトロンベ。
後手は、ナルだ。
ナルは地面から刃鋼を振り抜き、大地を蹴って駆けた。
腰のブースターを全開にしての疾駆。
10smを縮めてトロンベを両断しようと駆けて行く。
だが、トロンベとて伊達に鍛錬を積んだ訳ではない。
距離を詰めてくるナル目掛けて全身のミサイルを掃射。
幾重にも重なる爆音と共に、無数の大小ミサイルが白い尾を引きながら飛来する。
文字通り雨の様な爆撃。
ナルとミサイル群とは直ぐに衝突した。
否。
ミサイルはナルと衝突することは無かった。
ナルは真っ先に飛んできた大型ミサイルの弾頭を刺激する事無く、踏み台にして跳躍。
踏み台にされたミサイルは地面と激突、多数のミサイルを巻き込む大爆発を巻き起こした。
ナルはその爆風を背に受けて更に加速し、トロンベへ一直線に突っ込む。
その後ろでは、目標を見失った中小ミサイルがあさっての方向へ飛び去り、地面と衝突している。
―――一閃。
刃鋼の重量とナルの速度を乗せた一撃は、トロンベの左側を斬った。
が、トロンベ本体は左腕を多少掠った程度で主な被害はハリネズミの如く付けられた武装だった。
トロンベ本体のダメージこそ少ないものの、余波である衝撃はトロンベを震わせた。
「っく!」
多少よろめきつつも体勢を崩す事無く、次の攻撃―――背中に残った二門の蓬莱・壱式を背部に向ける。
銃口の先では、ナルがスライディングの要領で勢いを殺している。
その距離、およそ15sm。
ナルが再接近するにしてもそれまでに充分迎撃可能と見たトロンベは蓬莱・壱式に弾丸を装填し、発射しようとした。
が、それとほぼ同時。
ナルの右腕に装着された銃鋼から無数のビームが放たれた。
背後からの攻撃に一瞬反応が遅れるトロンベ。
だが、すぐさま回避しようとしたが重装備が祟り回避できず、ほぼ全弾を背中で受け止めてしまう。
その衝撃に耐え切れず、トロンベは前のめりに倒れてしまった。
「何してるのよっ! 速く立ちなさいよ!!」
アリカの叱咤がトロンベの通信ユニットに響く。
直ぐに体勢を立て直そうとして、そこである事に気付いた。
ハリネズミの如く備え付けられた火器の類。
その重量が邪魔して上手く立ち上がることが出来ないのだ。
「…っく……う……ぁ……」
何とか立ち上がろうと両腕に力を入れていた、その時。
「やはり負け犬は負け犬ですね」
ナルの刃鋼がトロンベを文字通り両断した。
「……そんな」
ディスプレイに踊る『YOU LOSE』の文字。
アタシはそれを前に言葉を失った。
荒野というフィールドに完全砲撃仕様のトロンベ。
それに加えて相手のマスター不在。
地の利、時の利はアタシに味方していた。
それなのに。
「あれ、負けちゃったの」
青瓢箪が缶コーヒー片手に戻ってきた。
「なんで…なんで……」
アタシの頭は混乱していた。
何か言いたい筈なのに、何も言葉に出来ない。
出てくるのは『なんで』という疑問のみ。
「なんで負けたのか理解できない。そんな顔だね」
「……当たり前よ。アタシのチューンアップは完璧だったわ! トレーニングでも完璧だったのに……!」
そう、何十何百何千回とトレーニングを積んだのだ。
それなのに。
「……そうだわ、神姫よ。神姫の性能が劣っているのよ! それ以外に負ける要素なんてありえないわ!」
アタシは一つの結論に達した。
トロンベとあのストラーフの元々の性能が違うからアタシは負けたんだ。
これ以外にアタシが負ける要素は見当たらない。
「…お嬢さん。そんな事を言っているようでは何百年経っても俺には勝てないよ」
「そんな事無いわ! 神姫の性能が悪いからアタシは負けたの! だからもっと良い神姫を買えば…!」
「機体の性能差が戦力の決定的差でない。という言葉がある。今回、お嬢さんの神姫の性能だけでみるならば、俺のナルと同等だったと思う。しかし、お嬢さんは負けた。しかもマスターのいない俺のナルに、だ。これが何を表すか解るかい?」
「…神姫の性能が同じ? だったら一体何が悪いのよ!」
本当にコイツは訳の解らない事を抜かす。
「二対一でも戦力で負けていたと言う事さ。そしてそれは経験に大きく起因する。もし仮にお嬢さんが新しい神姫を買ったとしても、それは赤子と同じ。まさに赤子の手を捻るが如し、てね」
まあ、確かにそれも一理ある。
「だったら、トロンベにもっと場数を踏ませれば…!」
「それでようやく相打ちといったところかな。お嬢さんが俺達に勝つためには、足らない物がもう一つある」
「なによ、勿体つけてなんでさっさと言いなさいよ!」
青瓢箪は一口缶コーヒーを口にした。
「それはお嬢さん自身で見つけないと意味が無いのさ」
「……はぁ?」
コイツ、本当は何も考えてないんじゃないの?
「しょうがない。最大唯一のヒントだ。神姫は唯の玩具じゃない。笑いもすれば、泣きもする……もっとも、受け売りだけどね」
「…訳わかんないわよ」
「それが解ったらもう一度戦おう。リアルでね」
リアルバトル。
その言葉に何故か身体が強張った。
上位ランカー戦の主であるリアルバトル。
仮想現実ではなく、現実でのバトル。
使用される武器は全てリアル。
即ち受ける傷もリアル。
最悪の場合、神姫本体すら壊れる可能性を孕んでいる。
だが、これはチャンスでもある。
あのストラーフを破壊できるかもしれないのだ。
「…良いわ。その勝負受けて立つわ」
「日時はそちらの好きに決めてもらって構わないよ。それじゃあ、失礼するよお嬢さん。」
そう言うと青瓢箪はさっさと出て行ってしまった。
後に残されたアタシはただ帰る準備をするだけだった。
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