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「Show No Mercy - なさけ むよう - 後編」(2006/11/23 (木) 18:09:26) の最新版変更点
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(…えーと、つまり、アレだ、)
俺たちは、俺とアルトは、あの天使子ちゃんを人質に脅迫されてんのか?
さっき俺たちが組み技やってると思ってたのは、人質にとられてた天使子ちゃんで、
俺たちがココに来たときにやられてた神姫は、人質を前になすすべもなくやられてしまったのか?
天使子ちゃんを抱えてるのとアルトに凄んでる2人のストラーフは、この手でこのバトルロイヤルを戦ってきたのか?!
(…ありえねぇ…)
だが困ったことに、ソレは目の前で現実に(と言ってもバーチャル空間だが)起こっているワケで。
「マスター…」
アルトがまた、困惑したような様子で俺に話しかける。
「あっ、ちぃねぇちゃん! そいつ確かファーストランカーのやつだよ!」
「あらー? じゃもしかしてあたしたち大金星? やーんすっごいラッキー!」
2人のストラーフは…姉妹か?…なんかのーてんきに盛り上がってやがるし…金星とか何様のつもりだこん畜生。
「ほらほら! 天下のファーストランカー様がか弱い人質を見捨てるわけ? さっさと武器を捨てなさいよ!」
「マスター」
アルトの決断を促す声。こんな手にちっとでも乗ってやるのは正直シャクだがしかたねぇ。
「アルト、武装解除だ」
「了解」
俺の言葉に従ってアルトはビームライフルを捨て、両腕にマウントされたシールドをパージする。
「それだけじゃないでしょ! その物騒な背中のモノ! そんなんですっ飛んでこられちゃたまんないからね!」
「くっ…」
[警告:戦力差拡大中:現状での武装解除は脅威度の著しい増大を招きます:警告:戦力差…]
「壱松、特殊な状況だ。アルトに従え」
[Yes,Master:バックユニット物理接続解除:独立行動モードに移行します]
アルトの背中の拡張ジョイントからブーストポッドが接続されたバックユニットが外れ、地面にぶつかる寸前で軽く噴射、軟着陸する。
足の拡張ジョイントにつなげたサブバッテリー…ビームサーベルがマウントしてある…もパージして、
素体に一回り大きいレッグユニットとマニュピレータだけになって両手をあげているアルトは、なんだかえらくバランスが悪くなって見えた。
「ふふん、いいカッコじゃない。そのカッコに免じて、一撃でやっつけてあげるわ!」
威勢のいいセリフのワリに、ストラーフは慎重に間合いをはかりながら近づいてくる。
(さすがに警戒してるか…)
特徴的なサブアームを外して、素体の腕に直接別ユニット…キサラギのSHURAをベースにした格闘装備だな、ありゃ…を装備している。
スピード重視の格闘特化型か。
そんな彼女が警戒しているのは、間違いなくアルトのレッグユニットだ。
機動兵器モチーフのレッグユニットにはたいてい強力なスラスターが内蔵されており、アルトもその例外ではない。
それを一気に吹かして蹴りをブチ込めば、当たり所によっちゃあ一撃でケリがつく。
おまけに、つま先にはスパイクまで装備されているとくればもう言うことはないだろう。
もちろん、アルトもそれを狙っていて…
動いた!
一気に間合いをつめて来たストラーフに対し、アルトはふくらはぎのスラスターを使って予備動作なしの蹴りを入れる!
衝撃音! そして…さすがにそう簡単にはいかねぇか。
してやったりと言う表情のストラーフが、アルトの蹴り足を左の腕装備で受け止めている。
「残念賞! じゃ、これで終わ…!!」
ビームブレードを振り上げたストラーフのセリフは、終わりまで続かなかった。
アルトの蹴り足、そのつま先のスパイクから展開したビームブレードが、彼女の腹部を貫いていたからだ。
「ぅえ、あ…なに? どう、し、て…」
アルトがビームブレードを解除すると、ストラーフがどさりと地に落ちる。
デッド判定を受けて消えつつある彼女を見ながらアルトが言った。
「装備の出典がマイナーなのも、ある意味アドバンテージよね」
(あの、アルトさん、一応そこそこエポックな作品からのネタなんですが…でも活躍しなかったからなぁ、カオスガ○ダム…)
けっこうな状況から勝ちを奪えたのに、俺はなんだかしゅんとしてしまうのであった…。
* * *
「う、うわああぁぁああ! ちぃねえちゃん! ちぃねぇちゃあん!」
私が貫いたストラーフを見て、もう一体のストラーフが悲鳴を上げる。
見れば、アーンヴァルに突き付けていた銃をこちらに向け、涙目になって私を睨んでいる。
「よ、よくもやったな、よくもちぃねぇちゃんをやったなぁあああッッッ!!!」
感情剥き出しの叫び声。だがその声とは裏腹に、私を狙う銃口は少しも震えていなかった。
(ハートは熱く、頭脳はクールに、か…)
この手の手合いは正直厄介だ。特にこういう状況では、下手に付き合うと逆に呑み込まれかねない。
それでも、私はため息をついて、こう言ってしまった。
「バトルだからね」
「!」
驚愕の表情。…多分、こういう状況に遭遇した事が殆ど無いのだろう。
(この子には、優しいお姉さんなんだろうな)
だからきっと、そのお姉さんは教えてくれていなかったのだろう。
今のような彼女の状態は、隙だらけだと言う事を。
バシュウッ!
「う゛あ゛っ! …あ?」
背中からのビームが彼女を貫く。驚愕の表情のまま射線を振り返った彼女の視線の先にあったのは…
私のバックユニットから分離したブーストポッドのひとつだった。
基本兵装のぷちマスィーンズを強化し、私の背中では変幻自在の機動を生み出す4基のブースターとして
また一度分離すれば四方八方から相手に攻撃を加える4機のオプション兵器として
それがこの機動兵装ポッド・通称ガンマスィーンズ。
先程パージしたバックユニットから、密かに分離・展開させておいたのだ。
…もっとも、今まさにポリゴンの塵となって消えつつある彼女には
こんな解説はあまり意味の無い事なのかもしれないが。
「ふう…さて」
とりあえずビームライフルを拾い上げ、私は残されたアーンヴァルの方に向かう。
「アルト」
マスターの声。
注意を怠っているつもりは無い。だが、その一言のおかげで更に気を引き締められる。
「大丈夫です。解っています」
言いながら、私はガンマスィーンズを改めて配置に着かせる。
そのまま、まだ少し怯えた様な表情のアーンヴァルに近づいて行き
「あ、あの…ありがとうございます…」
話しかける彼女に銃口を向けた。
* * *
「え?! な、なにを…」
天使子ちゃんはさすがに驚いてるようだ。だが
「何を、じゃないわ。もう幕引きの時間よ。ただそれだけ」
アルトの返事はあっさりしたモンだ。まぁ、押してるのも事実だしな。
するといつの間にか、天使子ちゃんが顔を上げてアルトを睨みつけている。
「…いつから、気づいたの?」
「…貴女に銃を突き付けてた子。あの子を責めないであげて頂戴」
アルトの言葉に、天使子ちゃんがハッとした顔をする。
「あの子、私が最初に倒した子を“ちぃねぇちゃん”と呼んでいたわ。でも、マスターに検索してもらった彼女の名前は“ちぃねぇちゃん”と略せるものじゃなかった。
だからもう一人…“おぉねぇちゃん”がいる、そう思ったのよ」
天使子ちゃんが顔に手をあてる。俺には聞こえなかったが、たぶん「あちゃー」とか言ってるんじゃなかろうか。
「確信したのはあの子を倒してからね。貴女が突き付けられてた銃…なんでまだそこにあるのかしら?」
またもハッとした顔をする天使子ちゃん。驚いて見たその視線の先、彼女の手からそう遠くないところには…確かに件の銃がある。
「人質である以上貴女は丸腰で無ければいけない。でも、仲間の2人が倒されたら貴女1人でその後を乗り切らねばならない。
だから、油断して近づいて来た相手を仕留める為の武器は倒された仲間と一緒に退場されては困る…
そういう事でしょう?」
がっくりと肩を落としてうつむく天使子ちゃん…なんだかため息が聞こえたような気がした。
「…いいアイディアだと思ったんだけどなぁ」
ふたたび顔を上げてアルトを見上げる天使子ちゃんの表情は、なんだかイタズラが見つかった子供みたいだった。
「確かに、アイディアとしては面白いかもね」
でもなぁ…マスターか神姫か、誰が考えたのかは知らないが、実際にやってみようってのはちょっとどうよ?
「でも、試すのならチーム戦にするべきだったわね」
天使子ちゃんが怪訝な顔をする。他人事ながらよくまぁ表情の変わる子だねぇ。
「…最後の一人になるまで戦おうって言うバトルロイヤルで、最終的に貴女を倒さずにいる理由は無いでしょう?」
「「…あ!」」
…今、確かに、天使子ちゃんのマスターの声が聞こえたな。
やれやれといった風情で大きなため息をひとつついたアルトが、ビームライフルの引き金を引いた。
* * *
Battle Overの表示とともに、戦いの舞台が電子の地平に消えてゆく。
結局、今回のバトルロイヤルは俺のアルトの1人勝ちに終わった。
まぁ、アレだ、俺も一応ファーストランカーだしな。他の連中にはいい経験になったと思っとくしかねぇだろうなぁ…。
そんなことを思っていると、接続用のポッドが開いてアルトが起き上がってきた。
「おつかれさん。どうだった?」
「そうですね、色々と面白かったですよ。将来有望そうな子も何人かいましたし」
アルトはあまり表情を表に出さない。よく言えばクール、悪く言えば無愛想、ってな感じだ。
だが、今回は確かに面白かったようだ。声の調子やしぐさに満足したというような様子が現れている。
「下位リーグの子達と戦うのは面白いですね。時折、思いもよらない手段を織り交ぜてくる…刺激的です」
ラスト近くであたった3人組のことを思い出したのか、少しはにかんだような苦笑いを浮かべる。
…アルトは普段が仏頂面だから、ときおり見せるこんな表情がたまらなくいとおしい。
有り体に言えば…萌える(w。
「? どうしました、マスター?」
「あ。おぅ、いや、なんでもない。なんでもないぜ?」
なんで狼狽してるんだ俺は。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、アルトはポッドから出て俺のほうに向き直る。
「それで、この後はどうしますか?」
「そうだなぁ…とりあえず挨拶して今日はもう帰るか。けっこう長丁場だったし」
「そうですね」
「うし、じゃ帰りにウマいもんでも買ってくか。なんか食べたいものあるか?」
「えっと…それじゃ、ショートケーキ…」
「よーし、イチゴたっぷりのやつな。そうと決まればちゃっちゃと動くか!」
「はい!」
そうして俺たちは、バトル開始前と同じぐらいの気合でコントロールブースから飛び出したのだった。
[[前編へ>Show No Mercy - なさけ むよう - 前編]]/[[もどる>Battle Anima]]
#center(){Show No Mercy - なさけ むよう - 後編}
(…えーと、つまり、アレだ、)
俺たちは、俺とアルトは、あの天使子ちゃんを人質に脅迫されてんのか?
さっき俺たちが組み技やってると思ってたのは、人質にとられてた天使子ちゃんで、
俺たちがココに来たときにやられてた神姫は、人質を前になすすべもなくやられてしまったのか?
天使子ちゃんを抱えてるのとアルトに凄んでる2人のストラーフは、この手でこのバトルロイヤルを戦ってきたのか?!
(…ありえねぇ…)
だが困ったことに、ソレは目の前で現実に(と言ってもバーチャル空間だが)起こっているワケで。
「マスター…」
アルトがまた、困惑したような様子で俺に話しかける。
「あっ、ちぃねぇちゃん! そいつ確かファーストランカーのやつだよ!」
「あらー? じゃもしかしてあたしたち大金星? やーんすっごいラッキー!」
2人のストラーフは…姉妹か?…なんかのーてんきに盛り上がってやがるし…金星とか何様のつもりだこん畜生。
「ほらほら! 天下のファーストランカー様がか弱い人質を見捨てるわけ? さっさと武器を捨てなさいよ!」
「マスター」
アルトの決断を促す声。こんな手にちっとでも乗ってやるのは正直シャクだがしかたねぇ。
「アルト、武装解除だ」
「了解」
俺の言葉に従ってアルトはビームライフルを捨て、両腕にマウントされたシールドをパージする。
「それだけじゃないでしょ! その物騒な背中のモノ! そんなんですっ飛んでこられちゃたまんないからね!」
「くっ…」
[警告:戦力差拡大中:現状での武装解除は脅威度の著しい増大を招きます:警告:戦力差…]
「壱松、特殊な状況だ。アルトに従え」
[Yes,Master:バックユニット物理接続解除:独立行動モードに移行します]
アルトの背中の拡張ジョイントからブーストポッドが接続されたバックユニットが外れ、地面にぶつかる寸前で軽く噴射、軟着陸する。
足の拡張ジョイントにつなげたサブバッテリー…ビームサーベルがマウントしてある…もパージして、
素体に一回り大きいレッグユニットとマニュピレータだけになって両手をあげているアルトは、なんだかえらくバランスが悪くなって見えた。
「ふふん、いいカッコじゃない。そのカッコに免じて、一撃でやっつけてあげるわ!」
威勢のいいセリフのワリに、ストラーフは慎重に間合いをはかりながら近づいてくる。
(さすがに警戒してるか…)
特徴的なサブアームを外して、素体の腕に直接別ユニット…キサラギのSHURAをベースにした格闘装備だな、ありゃ…を装備している。
スピード重視の格闘特化型か。
そんな彼女が警戒しているのは、間違いなくアルトのレッグユニットだ。
機動兵器モチーフのレッグユニットにはたいてい強力なスラスターが内蔵されており、アルトもその例外ではない。
それを一気に吹かして蹴りをブチ込めば、当たり所によっちゃあ一撃でケリがつく。
おまけに、つま先にはスパイクまで装備されているとくればもう言うことはないだろう。
もちろん、アルトもそれを狙っていて…
動いた!
一気に間合いをつめて来たストラーフに対し、アルトはふくらはぎのスラスターを使って予備動作なしの蹴りを入れる!
衝撃音! そして…さすがにそう簡単にはいかねぇか。
してやったりと言う表情のストラーフが、アルトの蹴り足を左の腕装備で受け止めている。
「残念賞! じゃ、これで終わ…!!」
ビームブレードを振り上げたストラーフのセリフは、終わりまで続かなかった。
アルトの蹴り足、そのつま先のスパイクから展開したビームブレードが、彼女の腹部を貫いていたからだ。
「ぅえ、あ…なに? どう、し、て…」
アルトがビームブレードを解除すると、ストラーフがどさりと地に落ちる。
デッド判定を受けて消えつつある彼女を見ながらアルトが言った。
「装備の出典がマイナーなのも、ある意味アドバンテージよね」
(あの、アルトさん、一応そこそこエポックな作品からのネタなんですが…でも活躍しなかったからなぁ、カオスガ○ダム…)
けっこうな状況から勝ちを奪えたのに、俺はなんだかしゅんとしてしまうのであった…。
* * *
「う、うわああぁぁああ! ちぃねえちゃん! ちぃねぇちゃあん!」
私が貫いたストラーフを見て、もう一体のストラーフが悲鳴を上げる。
見れば、アーンヴァルに突き付けていた銃をこちらに向け、涙目になって私を睨んでいる。
「よ、よくもやったな、よくもちぃねぇちゃんをやったなぁあああッッッ!!!」
感情剥き出しの叫び声。だがその声とは裏腹に、私を狙う銃口は少しも震えていなかった。
(ハートは熱く、頭脳はクールに、か…)
この手の手合いは正直厄介だ。特にこういう状況では、下手に付き合うと逆に呑み込まれかねない。
それでも、私はため息をついて、こう言ってしまった。
「バトルだからね」
「!」
驚愕の表情。…多分、こういう状況に遭遇した事が殆ど無いのだろう。
(この子には、優しいお姉さんなんだろうな)
だからきっと、そのお姉さんは教えてくれていなかったのだろう。
今のような彼女の状態は、隙だらけだと言う事を。
バシュウッ!
「う゛あ゛っ! …あ?」
背中からのビームが彼女を貫く。驚愕の表情のまま射線を振り返った彼女の視線の先にあったのは…
私のバックユニットから分離したブーストポッドのひとつだった。
基本兵装のぷちマスィーンズを強化し、私の背中では変幻自在の機動を生み出す4基のブースターとして
また一度分離すれば四方八方から相手に攻撃を加える4機のオプション兵器として
それがこの機動兵装ポッド・通称ガンマスィーンズ。
先程パージしたバックユニットから、密かに分離・展開させておいたのだ。
…もっとも、今まさにポリゴンの塵となって消えつつある彼女には
こんな解説はあまり意味の無い事なのかもしれないが。
「ふう…さて」
とりあえずビームライフルを拾い上げ、私は残されたアーンヴァルの方に向かう。
「アルト」
マスターの声。
注意を怠っているつもりは無い。だが、その一言のおかげで更に気を引き締められる。
「大丈夫です。解っています」
言いながら、私はガンマスィーンズを改めて配置に着かせる。
そのまま、まだ少し怯えた様な表情のアーンヴァルに近づいて行き
「あ、あの…ありがとうございます…」
話しかける彼女に銃口を向けた。
* * *
「え?! な、なにを…」
天使子ちゃんはさすがに驚いてるようだ。だが
「何を、じゃないわ。もう幕引きの時間よ。ただそれだけ」
アルトの返事はあっさりしたモンだ。まぁ、押してるのも事実だしな。
するといつの間にか、天使子ちゃんが顔を上げてアルトを睨みつけている。
「…いつから、気づいたの?」
「…貴女に銃を突き付けてた子。あの子を責めないであげて頂戴」
アルトの言葉に、天使子ちゃんがハッとした顔をする。
「あの子、私が最初に倒した子を“ちぃねぇちゃん”と呼んでいたわ。でも、マスターに検索してもらった彼女の名前は“ちぃねぇちゃん”と略せるものじゃなかった。
だからもう一人…“おぉねぇちゃん”がいる、そう思ったのよ」
天使子ちゃんが顔に手をあてる。俺には聞こえなかったが、たぶん「あちゃー」とか言ってるんじゃなかろうか。
「確信したのはあの子を倒してからね。貴女が突き付けられてた銃…なんでまだそこにあるのかしら?」
またもハッとした顔をする天使子ちゃん。驚いて見たその視線の先、彼女の手からそう遠くないところには…確かに件の銃がある。
「人質である以上貴女は丸腰で無ければいけない。でも、仲間の2人が倒されたら貴女1人でその後を乗り切らねばならない。
だから、油断して近づいて来た相手を仕留める為の武器は倒された仲間と一緒に退場されては困る…
そういう事でしょう?」
がっくりと肩を落としてうつむく天使子ちゃん…なんだかため息が聞こえたような気がした。
「…いいアイディアだと思ったんだけどなぁ」
ふたたび顔を上げてアルトを見上げる天使子ちゃんの表情は、なんだかイタズラが見つかった子供みたいだった。
「確かに、アイディアとしては面白いかもね」
でもなぁ…マスターか神姫か、誰が考えたのかは知らないが、実際にやってみようってのはちょっとどうよ?
「でも、試すのならチーム戦にするべきだったわね」
天使子ちゃんが怪訝な顔をする。他人事ながらよくまぁ表情の変わる子だねぇ。
「…最後の一人になるまで戦おうって言うバトルロイヤルで、最終的に貴女を倒さずにいる理由は無いでしょう?」
「「…あ!」」
…今、確かに、天使子ちゃんのマスターの声が聞こえたな。
やれやれといった風情で大きなため息をひとつついたアルトが、ビームライフルの引き金を引いた。
* * *
Battle is Overの表示とともに、戦いの舞台が電子の地平に消えてゆく。
結局、今回のバトルロイヤルは俺のアルトの1人勝ちに終わった。
まぁ、アレだ、俺も一応ファーストランカーだしな。他の連中にはいい経験になったと思っとくしかねぇだろうなぁ…。
そんなことを思っていると、接続用のポッドが開いてアルトが起き上がってきた。
「おつかれさん。どうだった?」
「そうですね、色々と面白かったですよ。将来有望そうな子も何人かいましたし」
アルトはあまり表情を表に出さない。よく言えばクール、悪く言えば無愛想、ってな感じだ。
だが、今回は確かに面白かったようだ。声の調子やしぐさに満足したというような様子が現れている。
「下位リーグの子達と戦うのは面白いですね。時折、思いもよらない手段を織り交ぜてくる…刺激的です」
ラスト近くであたった3人組のことを思い出したのか、少しはにかんだような苦笑いを浮かべる。
…アルトは普段が仏頂面だから、ときおり見せるこんな表情がたまらなくいとおしい。
有り体に言えば…萌える(w。
「? どうしました、マスター?」
「あ。おぅ、いや、なんでもない。なんでもないぜ?」
なんで狼狽してるんだ俺は。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、アルトはポッドから出て俺のほうに向き直る。
「それで、この後はどうしますか?」
「そうだなぁ…とりあえず挨拶して今日はもう帰るか。けっこう長丁場だったし」
「そうですね」
「うし、じゃ帰りにウマいもんでも買ってくか。なんか食べたいものあるか?」
「えっと…それじゃ、ショートケーキ…」
「よーし、イチゴたっぷりのやつな。そうと決まればちゃっちゃと動くか!」
「はい!」
そうして俺たちは、バトル開始前と同じぐらいの気合でコントロールブースから飛び出したのだった。
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