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ぶそしき! これから!? 第1話 『ハジメテ』
1-1
「ええと、問題ないってことで、いいんですよね?」
少し不安げに少年――ついさっき起動させた神姫のマスターである佐伯友大――が店長とセラフィルフィスに尋ねる。
「ソフト、ハードともに再チェックしたよ。
記憶と前のオーナーの情報は真っさら。
この子のシリアルナンバーから再確認したけど、廃棄の手続きは済んでいることになっているよ」
「性格設定と一部の戦闘データーが残っていたぐらいだね。それに倫理プログラムは正常に働いている。
素体は前のマスターが改造していてパワーの値が高いがレギュレーション範囲内だ。公式試合にだって出られるよ」
パソコンの画面を眺める店長とセラフィルフィスが調べた結果を語る。
「もし、さらの神姫が良いということならリセットして登録しなおすのも手だが……」
「えっ!?」
『リセット』という単語を聞いて、引きつるようにヒイロの体が震える。
「ええ!? でも、それって今のヒイロが…………嫌だ」
友大の様子を見て、店長は一息ため息をつく。
「だろうね。一応、念のために少しでもおかしいと思ったら連絡して欲しい。万が一ということもあるからね」
「まあ、景気の悪い話はこの位にして、楽しいお話をしようよ。はい! ヴャーチャルバトル&ミッション共用無料5回分に試用チケット5枚分付きポイントカード~」
今までの空気を吹き飛ばそうとするかのごとく、パンパカパーンとした擬音が背後につきそうな位に明るく、セラフィルフィスがポイントカードを渡す。
「ええと、これは」
「他のお店と同じく、買ったらポイントがついて、お金の代わりにポイントを使って品物やサービスを買えるよ」
そんなセラフィルフィスを苦笑しながら、店長は説明する。
「ヴァーチャルバトル&ミッション共用無料5回分は、ここのヴャーチャルバトル用の筐体でバトルかミッションを5回分無料でできるものだよ」
店長は筐体のある場所を指差す。
そこには4つの筐体があった。
コンピューター上に再現された空間で行われるヴァーチャルバトル用の筐体は、リアルバトル用の筐体ほどスペースを必要としない。
「試着は自由にできるけど、試用チケットがあれば試着したまま、ここでバトルできるサービスなんだ」
「そうなんだ」
「マスター! さっそく試着してバトルしてみよーぜ」
バトルと聞いて、ヒイロが目を輝かせる。
「わ、分かったよ。店長ありがとうございました」
ヒイロの勢いに押されるように、友大は武装パーツの棚に行く。
やんちゃな弟に引きずられる兄弟のような光景だ。
店長とその神姫はその光景を微笑ましく見守る。
■ ■ ■
物陰から、隠れるように少し顔を出して2体の神姫が新しいマスターと神姫の姿を眺める。
「……ねえ、ハーティア」
マリーベルが、ポツリと相方に呼びかける。
「なんだよ、マリーベル」
「あの子、幸せになれるよね」
そんなことを呟く。
そこには願うような、懇願するような響きがある。
「……わかんねーよ、そんなこと」
そんな相方から、顔を背けてハーティアはぶっきらぼうに答える。
「幸せになって、欲しいけどな」
「そうだね、幸せになって、欲しいね」
再び目覚めた神姫に対する、2姫の偽らざる想いだった。
■ ■ ■
「どーだ! マスター!」
武装パーツの棚を物色し、気にった武装パーツを装着したヒイロが意気揚々と自身のマスターにその姿を見せる。
黒く輝く装甲のレイディアントアーマーの一式に身を包み、炎の剣レーヴァティンを掲げた出で立ちだ。
「うん、格好いいよ!」
自分の神姫を友大は褒めてあげる。
そうすると、ヒイロはそうだろそうだろと言わんばかりに胸を張る。
「よぅし! なら次はバトルだな!」
喜び勇むヒイロが、筐体の方に向かって駆け出す。
「あ、待ってよ」
ヒイロを追って、友大も筐体に向かう。
■ ■ ■
「――対戦がヴァーチャルバトル、ミッションなら1人でもできるぜ。初めて戦う神姫は、まずはこのミッションの神姫と戦って腕試しするもんだ」
犬型MMSハウリンのハーティアが、初めてバトルを行う友大少年とヒイロのサポートに付く。
店長はレジ対応、セラフィルフィスは接客中だ。
「ヒイロ、だったよな。神姫参戦リフト、その丸いところに乗ってくれ。バトルが始まる際に下がって筐体の中に入るけど、びっくりすんなよ」
「おう!」
ヒイロが元気良く答える。
「マスターはそのヘッドギアを付けてくれ。このキーボードと視線で色々な操作ができる。最初は初心者用の分かり易いのがいいぜ。これで視点変更、このボタンでパラメーター確認、そして――」
「は、はい」
ハーティアは口調こそぶっきらぼう気味な所があるが、説明は丁寧だ。
初心者マスターとその神姫に教え、筐体の使い方をレクチャーしていく。
「――よし。実際やってみな」
「は、はい!」
促され、友大は教えられた通りに筐体を操作していく。
ミッションで神姫との対戦を選択、教えられた軽装備のアーンヴァルを対戦相手に選択する。
確認が出るのでYESを選択する。
「おお!」
ヒイロが立っている床が沈む。
「筐体の中に入って、スキャンされてデータ化されるぜ。
データ化した武装パーツを記録媒体に入れているなら、それを筐体に接続して使えるが、今のお前らには関係ない」
ヒイロが完全に筐体の中に入ると、神姫参戦リフトが降りて穴があいた箇所が隔壁で閉まる。
中では筐体に備えられたスキャナーがヒイロ本体と武装パーツの形状と構造、データーチップに刻まれた情報を読み込む。
「まあ、お前らの初バトルだ。肩ひじ張らず、相手をぶちのめすことだけ考えろ!」
ハーティアなりに、初めてのバトルに挑む初心者マスターとその神姫を応援する。
■ ■ ■
――各データの読み込み終了
レギュレーションチェック……オールクリアー
フィールド:コロシアム
モード:MISSION
MISSION No.01……スタート――
『始まった!?』
ヘッドギアを付けた友大の目に白いタイルで覆われた大地と、誰もいない観客席、白い壁に覆われた壁が映る。
無味乾燥な光景だが、まるで実在しているかのような臨場感を少年に与える。
ここは神姫用のバトルのために、コンピューター上に形成された空間だ。
しばし、その光景に目を奪われる。
一瞬後に、対戦相手である軽装備のアーンヴァルとスキャナーで情報を読み込まれたヒイロのデータがデジタルの体を与えられ、仮想の世界に現れる。
「マスター! どうするのか命令してくれよ!」
開始早々に、ヒイロがマスターに指示を求める。
自分の神姫の求めに少年は我に返る。
『こ、攻撃!』
「よっしゃあ!」
マスターの攻撃に嬉々としてヒイロが駆け出す。
「!」
相手のアーンヴァルが牽制にハンドガンを撃つが、レイディアントアーマーの装甲の前では当たっても大した痛手にならない。
一気に距離を詰めて剣の間合いに入り込む。
相手が慌ててライトセイバーを構えるが遅い。
「ぅ、おりゃあ!」
気合を入れて、ヒイロがレーヴァテインを横殴りにアーンヴァルに叩きつける。
刀身が相手のアーマーごと胸部にめり込む。
勢いに押され、アーンヴァルの体が宙に浮く。
ヒイロはそのままレーヴァテインを振り切ってかっ飛ばす。
「!?」
アーンヴァルが凄まじい勢いで飛ばされる。
2転3転と転げた挙句、コロシアムの壁に叩きつけられる。
『や、やった!?』
「まだだ!」
ヒイロが即座に駆けて、相手のもとまで向かう。
「……!」
アーンヴァルがよろめきながらもヒイロの接近に気づき、何とか構えるとハンドガンを撃ち込む。
「しゃらくさい!」
ヒイロは無数の弾丸を前に躊躇なく飛び込み、踏み込んで袈裟斬りにする。
「――!?」
アーンヴァルは後ろの数歩下がり、壁にもたれ崩れ落ちるように白い床の上に倒れこむ。
普通の神姫なら、戦意喪失して自身かそのマスターがサレンダーするほどのダメージだったが、設定上はLIFEはわずかに残っている。
NPCとして設定された神姫は手に持ったハンドガンを何とかヒイロに向けようとする。
「これでトドメだ!」
アーンヴァルが再びハンドガンを撃つよりも早く、ヒイロはレーヴァテインをさらに叩きつける。
それが決定的な一撃となり、相手は動きを止める。
――WINNER HIIRO
■ ■ ■
「楽勝! どーだ、すごいだろ!」
バトルを終えて意識が体に戻ったヒイロが、筐体から出てくる。
開口一番に胸を張って自慢する。
「……」
「……マスター?」
黙ったままの自身のマスターに、ヒイロは怪訝な様子で呼びかける。
「――あ。すごい! すごいじゃないかヒイロ!」
「! そーだすごいだろ! もっとほめろー」
我に返ったマスターが、初の勝利に興奮する。
自身の神姫を褒めちぎる。
「NPC相手とは言え、始めてのバトルで圧勝か。大したもんだ」
観戦していたハーティアも、初めての勝利に喜ぶ主従を自身なりに祝福する。
(……なんつー正面突破、力押し。全く防御や回避しようって素振りがなかった。
しっかし、実質2発で勝負がほぼ決まっていたようなもんだったな。攻撃力は、本当に大したもんだ。エウクランテに偽装したムルメティアに思えてくるな――)
初心者マスターとその神姫の勝利の喜びに水をささないために、その場では余計なことは言わないが、後で店長に報告しようとハーティアは考える。
――ヒイロの武装データが更新されました。
ウェポン:レーヴァテイン(試用)
ヘッド :なし
ボディ :レイディアント・アーマー 黒(試用)
アーム :レイディアント・リストガード 黒(試用)
スカート:なし
レッグ :レイディアント・フットアーマー 黒(試用)
リア :レイディアント・リアプレート 黒(試用)
シールド:なし
アクセ :なし
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