「デットエンド」(2012/11/10 (土) 11:16:57) の最新版変更点
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PiPi「あなた、今日も綾音を連れて出かけます。帰ってこなくても大丈夫ですからね」
マスターへの伝言を吹き込むと今日もあの女が出て行った。これでマスターへの雑音が一時でも消える、清々する。マスターのお考えはすばらしい。それをあの女は人形遊びとさげすみ、世の人は理想への冒涜だと非難する。マスターは真にMMSの地位向上とそれがもたらす調和を望んでおられる。そのためならこの身が神姫の姿でなくなったところで構うものか。私はマスターの寝室に入ると目覚ましの時間までのわずかの間布団の中に潜り込む・・・
窓の方から雀の声が聞こえる。もう時間だ。
「起床の時間です、マスター。本日のバイタルチェックは終了、問題はありません」
連続神姫ラジオ
浸食機械
13:デットエンド
「ははは、全くお笑いだよ柴田勝君。その機械人形どもとのつながりだって?そんな物はプログラムに過ぎない。そいつらが悲しいと感じるのは我々がきっと悲しいだろうと思っているからだよ」
おかしくてたまらないのか西園寺は腹を抱えて笑っている。
「それに勘違いも甚だしい。君はコウガを人に裏切られたか何かした『神姫』だと思っていてその誤解さえ解いてやれば事件は解決するとでも思っているようだが」
笑いすぎて咳き込むとルートが降りてきて西園寺の背中をさすってやっていた。
「あれはそもそも神姫じゃない。もちろん意識のないただの機械というわけでもないがね」
さっきまで神姫達の仲を取り持ってみんなで笑顔で帰る、そんな願望に少し当てられていた僕は天地がひっくり返ったような気分を感じた。
「海賊版神姫という言葉を聞いたことがあるかね?あれはそのうちの一つでね。疑似CSCドライブの出来が良かったから私が廃品業者から引き取って研究していたのだよ」
西園寺に目で合図されたルートが僕の所に一冊のファイルを持ってくる。そこにはコウガの写真とデータが書き込まれていた。
「海賊版は管理機構からも破壊命令が出ている。業者も普通のマスターも関わりたがったりはしない。だからマスターなんてそもそもいないんだよ。だれにも望まれなかったあれに優しさや、ましてや愛なんてものが理解できるかどうか怪しいものだ」
ファイルに書かれている経歴に目を通すにつれそのひどさに目を覆いたくなる。プルミエの心の中に悲しさや怒り囲みあがってくるのが僕にははっきり感じ取れた。
「まあそれでも挑みたいというなら好きにするといい。居場所くらいは教えてやろうではないか。せいぜいあれの気を引いてルートの脱出チャンスを作ってくれたまえ」
そういういうと西園寺はパソコンのあるデスクの方に歩いていった。呆然とする僕の所にルートがやってきてプルミエの目を見つめる。するとプルミエの情報ベースにコウガの居場所やいくつかの情報が送られてきた。視線を通じての赤外線通信だ。
「おいおい、コウガの奴面白いことを始めたぞ」
西園寺が僕たちの方にパソコンのディスプレイを向けてくる。そこにはコウガが大きく映し出されていた。
「ザザッ・・・ライドオンして私たちに抵抗している神姫とそのマスターに告げます。実はライドシステムのヘッドギアにちょっとした細工をさせてもらいました。皆様のヘッドギアにはもれなく外そうとすると毒入りのニードルが飛び出す仕掛けをつけさせていただきました。機械仕掛けですから電源を落としても無駄ですよ。解除法はただ一つ。皆様の神姫の投降、ないし破壊です。それをされた方から仕掛けにナノセルを注入して仕掛けを無力化して差し上げます。制限時間は三時間。もしそれを過ぎるようなら…」
画像が引き気味になり再び壁に貼り付けになったチャンピォンが映し出される。
「彼女苦しそうですよね、だから静かに眠れるようにしてあげようと思うんです」
コウガの手には大きめの針が握られていた。
「さて、どうする?柴田勝君。理想におぼれて溺死することを選ぶかね?私はこれでも寛容なのだよ」
残り時間2:58:15
次回:[[初恋の人]]に続く・[[戻る>浸食機械]]
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