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私があの場所に出入りしていたのはヘンゼルとバトルできる唯一の場所だったからなのだわ。違法だってことは知ってたけど私のせいでああなってしまったヘンゼルの願いを少しでも叶えてあげたかったのよ。…いえ、本当はあんな風になってしまったヘンゼルの言うことを聞いて苦しんでいるふりをして自分を許してあげたかっただけかもね。でもその結果がこのざま。
…ここを出たらどうしたいかって?そうね、まずは迷惑をかけた人達に謝りに行って、ヘンゼルがもう一度普通の場所でバトルできるように一緒にがんばっていくつもりよ。私は自分で自分を許すばっかりはやめようと思う。本当はヘンゼルに許して欲しいんだから。…人形に許してもらうだなんて変だって言わないなんて、あの人と同じで刑事さんも変わっているのだわ。
-違法カジノ摘発の際の調書より抜粋
連続神姫ラジオ
浸食機械
9:通信塔を越えてゆけ
周辺の敵を制圧し終わった僕たちはグレーテルを穴から引きずり出すために四苦八苦していた。彼女をとらえていたネットは取り除いたが穴から引き上げる手段がない。
「ぐれーでる、だいじょうぶ?いだくない?」
ヘンゼルも心配そうに声をかけることしかできない。神姫だけの力ではここから人一人を運び出すことはできないことは明らかだった。
「にゃはは…いいきみなのにゃ。そうやって友情ごっこを続けてるといいのだ。もう動けないけどずっとここで見ててやるのにゃ」
上から聞こえてくるマオチャオのやけっぱちにも似た声がやたら耳に響く。グレーテルを置いていけばここから逃げ出すことはできる。しかしもしその間に他の神姫がグレーテルに襲いかかったらどうなるかは考えたくなかった。あのマオチャオにとっては自分が捨てられた状況が目の前で人間側に降りかかっているのだ。それはとても興味を引かれることのようだ。
「全く、耳障りなこと」
あきれたようにグレーテルがつぶやく。
「プルミエだったかしら?あなたたちは先に進みなさい。ここにいても時間の無駄だわ」
戸惑う僕たちにグレーテルはここで時間をとられることがどれだけ危険なことかを諭す。
「もしあなたが脱出の手段を見つけたらそれは私たちにも有益なのだわ。それに私にはヘンゼルがそばにいる」
結局僕たちは先に進むことを選んだ。
「謝るな、偽善者」
穴の下を見つめる僕たちにマオチャオが声をかける。人に絶望している彼女は自体を引っかき回さなければ気が済まないようだ。同情の余地があると言っても怒りがこみ上げてくる。
「あら、謝る相手がいるって素敵なことじゃない?」
穴の下から聞こえてきた声に思わず殴りかかろうとしていた手を止める。
「人も神姫も悪いことをしたという思いは心を縛るのだわ。謝るというのはその重しを取り除く最初の一歩。もしかしたらあなたのマスターも今その心の重みに苦しんでいるかもね」
「そんなはず無いのだ、あんなひどいことを言ったマスターがそんなこと思うはずがないのだ!」
マオチャオがヒステリックな声を上げる。
「本当にそんなことが言い切れるの?あなたのマスターは本当に最低の人間だったの?」
「それは…」
マオチャオが口ごもる。
「もしその人がそんな人間じゃないのなら今頃その重みに苦しんでいるでしょうね。それを取り除けるのはあなただけなのだわ」
「でもあたし達は捨てられたのにゃ。もうどうすることも」
<できるよ。一緒に脱出出方法を考えるんだ>
僕はマオチャオに声をかける
「あなたはまだマスターが好きなんです。ここを脱出してもう一度あなたのマスターに会うんですよ。」
「あぎらべちゃだめ。あなだのまずだーはきっどいまこうかいしてる。そでをたずけだれるのはあなだ」
プルミエとヘンゼルが呼びかける。
「…通信塔を越えて行くにゃ。あたし達はその先の管理棟でコウガにあったのにゃ」
マオチャオがつぶやいた
「どんなになっても。マスターを嫌いなままでいるなんてやっぱり嫌にゃ。マスターがあたしのことでちょっとでも悩んだり苦しんだりすることがあるならそれを見るのも嫌にゃ」
神姫はロボットにしては珍しくモニターを洗浄する機能が付いている。マオチャオの目には光る物があった。
「あたしは大馬鹿なのだ。あんなことをされてもやっぱりもう一度マスターに会いたいのだ」
次回:[[意外な人物]]に続く・[[戻る>浸食機械]]
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