「大地咆吼」(2012/02/27 (月) 21:52:50) の最新版変更点
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…もし奥方が今回の事件の犯人だとすればその動機は上記のライドシステム開発中の事故、そして何より我々の夢の結晶であるライドシステムの本質をゆがめてしまった事への復讐だろう。奥方が抜けた後、開発は技術資金両面で難航していた。我々は新しいパトロンを求めていたしMMS管理機構は神姫犯罪を防止するための新たな枷を探していた。両者の利害は一致し、ライドシステムは香澄くんが願ったような純粋に神姫と心を通わせるためのシステムとは違う形で世に広まった。私はこれを今遺書として書いている。これを見た警察の方、どうか俺の友達にこれ以上罪を重ねさせないでください。そして伝えてください。システムは違う形で世に広まったがあれはただ神姫を縛るだけの物には成り下がらなかったことを。期待のニューフェイスの試合を見ればきっとあいつもそれを分かってくれる。
-プロメテウス事件の被害者・新見氏の手記より抜粋
連続神姫ラジオ
浸食機械
4:大地咆吼
扉の先には神姫ライドを行うための大型筐体が多数置かれている。見た感じ壊れている様子はない。
「罠の可能性も考えられます。先行してシステムをチェックしてみますわ」
そういってルートが部屋に踏み込んだ途端
「ひぎゃぁぁ!」
ルートの体を四方の壁から放たれた電流が襲った
「ルート!畜生、今助ける」
浩太さんが部屋に飛び込んで、電流に焼かれているルートを抱きかかえる。大きな的が入ったせいか壁から放たれる電流はその本数を増し、肉の焦げるにおいがあたりに漂う。
「ひどい…」
戻って来るなり倒れた浩太さんの様子を見てプルミエがつぶやく。
「マスタぁー」
「へへっ、お前を助ける時、筐体に手を突っ込んだときの痛みに比べたらたいしたことねぇよ。まあ、指一本も動かせないがな」
目を覚ましたルートが泣きそうな顔で浩太さんのやけどにぬらしたハンカチを当てている。この施設内に治療ができる場所はない。こんな事しかできることはないのだ。
「だが、軽口を叩けるところを見るとそこまで威力の高い物ではなさそうだな」
大地さんが声をかけてくる
「おい、そこの犀型、動けるのだろう?あの電撃の止め方を教えろ」
「ちょっとお待ちなさい。…マスター、すぐ戻ってきますわ」
ルートはしばらく室内の様子を確認したり考え込んだりしていたがこちらを振り向いて言った。
「おそらく天井にあるセンサーで室内の管理をしているのでしょう。あれさえ壊せば電撃は止まるはずですわ」
「そうか。よし、ハーデス、ここで待っていろ。俺がライドオンしたらすぐにCHIKARAであのセンサーをぶち抜け」
そういうと大地さんは迷い無く室内へと踏み込んだ。すぐに四方から電撃が襲い皮膚を焼く。
「そんな、どうしてそんな無茶をするんですか」
僕は思わず叫んでいた。
「ふん。小僧、聞こえないか?俺にはずいぶん前から聞こえているぞ」
僕が戸惑っているとプルミエが声をかけてきた。
「マスター、先ほどからエントランスの方で爆発音がしています。熱反応も確認できます」
「ほう、神姫の方は盆暗ではないと見える。小僧、先ほどの虎型のこと、覚えているか?あの神姫、マスターのライドも無しに全力を発揮しておったわ。おそらくあんな連中が攻めてきてるんだろう」
ハッとした。マスターがライドしていない神姫はとても弱い。彼らに対抗するにはこちらもライドシステムを解放するしかない。
「でもそんなことしてたら大地さんが…」
『いい加減にしろ。これ以上そんな無責任な発言をしないでくれ』
大地さんを見つめたままハーデスが僕を怒鳴りつける。直立不同な彼女だが目は落ち着きがなく全身が強ばっていた。
「そうだ、それでいい。神姫は人に仕える物だ」
放たれる電流は数を増していた。それでも大地さんは止まることなく筐体までたどり着く。ヘッドギアを装着してスイッチを入れた。
「なぜこんな事をするかだと?そんなことは決まっている」
大地さんを焼く電撃はさらに本数を増していた。プルミエが思わず目をそらす。僕にはまぶしくてよく見えないが神姫アイは優秀らしい。
「俺にはハーデスと別れるなんぞという選択肢はない!立ちふさがるというのならハーデスと共にたたきつぶすまでよ!いけ!ハーデス!!!」
そう叫ぶと大地さんは倒れ、ハーデスの体が一瞬びくんと震えた。間髪おかずに彼女は神姫の素体を模したような禍々しい砲を取り出して天井のセンサーに狙いを定める。
『当然だガイア。お前の敵は私がすべてなぎ払ってやる』
見たこともない巨大なエネルギーの塊が生まれそれが解きなはたれる。次の瞬間には電撃は止んでいた。
ハーデスが倒れた大地さんに近づいていく。
『マスター、しばらくここで休んでいてくれ。後は私に任せろ。次に目が覚めたときは帰りの船の上だ。一緒に、帰ろう』
大地さんの焦げた唇にハーデスの唇が添えられる。サイズ違いのキスとも呼べないキスは、大地さんのうめき声があがるまで続いた。
次章:[優柔不断な決断[>優柔不断な決断]]・[[戻る>浸食機械]]
…もし奥方が今回の事件の犯人だとすればその動機は上記のライドシステム開発中の事故、そして何より我々の夢の結晶であるライドシステムの本質をゆがめてしまった事への復讐だろう。奥方が抜けた後、開発は技術資金両面で難航していた。我々は新しいパトロンを求めていたしMMS管理機構は神姫犯罪を防止するための新たな枷を探していた。両者の利害は一致し、ライドシステムは香澄くんが願ったような純粋に神姫と心を通わせるためのシステムとは違う形で世に広まった。私はこれを今遺書として書いている。これを見た警察の方、どうか俺の友達にこれ以上罪を重ねさせないでください。そして伝えてください。システムは違う形で世に広まったがあれはただ神姫を縛るだけの物には成り下がらなかったことを。期待のニューフェイスの試合を見ればきっとあいつもそれを分かってくれる。
-プロメテウス事件の被害者・新見氏の手記より抜粋
連続神姫ラジオ
浸食機械
4:大地咆吼
扉の先には神姫ライドを行うための大型筐体が多数置かれている。見た感じ壊れている様子はない。
「罠の可能性も考えられます。先行してシステムをチェックしてみますわ」
そういってルートが部屋に踏み込んだ途端
「ひぎゃぁぁ!」
ルートの体を四方の壁から放たれた電流が襲った
「ルート!畜生、今助ける」
浩太さんが部屋に飛び込んで、電流に焼かれているルートを抱きかかえる。大きな的が入ったせいか壁から放たれる電流はその本数を増し、肉の焦げるにおいがあたりに漂う。
「ひどい…」
戻って来るなり倒れた浩太さんの様子を見てプルミエがつぶやく。
「マスタぁー」
「へへっ、お前を助ける時、筐体に手を突っ込んだときの痛みに比べたらたいしたことねぇよ。まあ、指一本も動かせないがな」
目を覚ましたルートが泣きそうな顔で浩太さんのやけどにぬらしたハンカチを当てている。この施設内に治療ができる場所はない。こんな事しかできることはないのだ。
「だが、軽口を叩けるところを見るとそこまで威力の高い物ではなさそうだな」
大地さんが声をかけてくる
「おい、そこの犀型、動けるのだろう?あの電撃の止め方を教えろ」
「ちょっとお待ちなさい。…マスター、すぐ戻ってきますわ」
ルートはしばらく室内の様子を確認したり考え込んだりしていたがこちらを振り向いて言った。
「おそらく天井にあるセンサーで室内の管理をしているのでしょう。あれさえ壊せば電撃は止まるはずですわ」
「そうか。よし、ハーデス、ここで待っていろ。俺がライドオンしたらすぐにCHIKARAであのセンサーをぶち抜け」
そういうと大地さんは迷い無く室内へと踏み込んだ。すぐに四方から電撃が襲い皮膚を焼く。
「そんな、どうしてそんな無茶をするんですか」
僕は思わず叫んでいた。
「ふん。小僧、聞こえないか?俺にはずいぶん前から聞こえているぞ」
僕が戸惑っているとプルミエが声をかけてきた。
「マスター、先ほどからエントランスの方で爆発音がしています。熱反応も確認できます」
「ほう、神姫の方は盆暗ではないと見える。小僧、先ほどの虎型のこと、覚えているか?あの神姫、マスターのライドも無しに全力を発揮しておったわ。おそらくあんな連中が攻めてきてるんだろう」
ハッとした。マスターがライドしていない神姫はとても弱い。彼らに対抗するにはこちらもライドシステムを解放するしかない。
「でもそんなことしてたら大地さんが…」
『いい加減にしろ。これ以上そんな無責任な発言をしないでくれ』
大地さんを見つめたままハーデスが僕を怒鳴りつける。直立不同な彼女だが目は落ち着きがなく全身が強ばっていた。
「そうだ、それでいい。神姫は人に仕える物だ」
放たれる電流は数を増していた。それでも大地さんは止まることなく筐体までたどり着く。ヘッドギアを装着してスイッチを入れた。
「なぜこんな事をするかだと?そんなことは決まっている」
大地さんを焼く電撃はさらに本数を増していた。プルミエが思わず目をそらす。僕にはまぶしくてよく見えないが神姫アイは優秀らしい。
「俺にはハーデスと別れるなんぞという選択肢はない!立ちふさがるというのならハーデスと共にたたきつぶすまでよ!いけ!ハーデス!!!」
そう叫ぶと大地さんは倒れ、ハーデスの体が一瞬びくんと震えた。間髪おかずに彼女は神姫の素体を模したような禍々しい砲を取り出して天井のセンサーに狙いを定める。
『当然だガイア。お前の敵は私がすべてなぎ払ってやる』
見たこともない巨大なエネルギーの塊が生まれそれが解きなはたれる。次の瞬間には電撃は止んでいた。
ハーデスが倒れた大地さんに近づいていく。
『マスター、しばらくここで休んでいてくれ。後は私に任せろ。次に目が覚めたときは帰りの船の上だ。一緒に、帰ろう』
大地さんの焦げた唇にハーデスの唇が添えられる。サイズ違いのキスとも呼べないキスは、大地さんのうめき声があがるまで続いた。
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