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***すとれい・しーぷ004
目が覚めると悪夢の続きが、そこにはあった。
全裸でソファに横たわるランの隣で、すでにフードを目深にかぶったオーナーがゆるゆると寝息を立てていた。
昨晩のライアの話によると、ランは週に一度、オーナーとSEXをしに来るらしい。
オーナーの声が、自分のバンドに欲しくて、身体で懐柔する腹積もりのようだ。
しかしオーナーはまったく折れず、ただただ毎週あがり込んでくるランと寝る。
なんだか胸のあたりがもやもやした。
ランとライアが帰ったあと、わたしはオーナーに問い詰めた。
「オーナー・・・なぜ、意味もなく、ランさんと・・・その、閨を供に・・・?」
我ながらかなり頑張ったと思う。
なにせこの言葉を発するだけで有に4時間かかったのだから。
「意味がないわけじゃないんだ、ランは性交に依存してる。寝てあげることで、少しでも気が紛れるなら・・・。それに・・・」
何かを言いかけ、困ったように呟いたオーナーは優しくわたしの頭を撫でた。
そんな事をされても、わたしの悲しみと悔しさは消えなかった。
むしろ、わたしのオーナーが、赤の他人にそこまでしてあげなくても、と怒りを助長させるスパイスにすらなった。
“赤の他人”その認識が間違っていた事に気づくのはもう少し先の話。
日曜日。
オーナーのお仕事が休みのため、先日のお詫びに好きなところへ連れて行ってくれると言うのだ。
わたしは少し申し訳なく思ったが、以前より興味があった“デパート”という場所へ連れて行ってもらう事にした。
「あ、あの、わがまま言って・・・ごめんなさい・・・」
オーナーの肩の上でもじもじと口元を隠すように手を添えると、オーナーはゆるゆると首を振り、手のひらでわたしを優しく包んだ。
「外は危ないから、絶対に離れたらダメだよ?いいね」
いつもよりやや強めの口調で諭されると、わたしはこくこくと首を縦に振った。
デパートにはたくさんの人が溢れかえっていた。
お金持ちのマダム、家族連れ、カップル、老夫婦。
オーナーは何かに怯えるようにフードの裾を引っ張り顔を隠した。
やはり、悪いことをした。
心の中で何度も何度も懺悔する。
ああ、この声がオーナーに届けばいいのに・・・
「あ、あ、あの、オーナー!ちょっと休憩しませんか?」
オーナーの手の中から見る光景にベンチが映る。
罪の意識からか、すかさずわたしは声を上げた。
「ん、ごめん・・・」
短く謝るとオーナーはゆっくりとした動作でベンチに腰をかけた。
ああ、オーナー、謝るのはわたしの方なのです!
人混みが苦手と知りつつ、わがままを言ってしまった。
わたしは最低の神姫です・・・
「オーナー、待っててください、わたし、冷たい飲み物買って来ます!」
気まずさから逃げようとわたしは電子マネーを搭載したオーナーのケータイをつかんで、そのまま逃げるように飛翔した。
後ろからオーナーの制止の声が聞こえたが、わたしはオーナーの隣にいる事に耐え切れずそれを振り切って人混みへと潜り込んだ。
ガコン・・
大きな音と共に機械から吐き出されたアルミ缶を引きずり出す。
このおつかいがうまくいって、ジュースを飲んだオーナーは、きっと元気になる。
根拠のない妄想でにやけるわたしを、後ろから鷲掴みにする肉厚の手。
世界が反転して、大きな目がわたしを捉えた。
「なんだ、この神姫・・・?見たことねえな」
「うは、ナイスバデー!こりゃこいつのマスター、相当いい趣味してるな!」
知らない男の人。
オーナーよりもずっと、ずっと大きくて・・・・・・怖い・・・!
わたしの身体は恐怖により硬直して動かなかった。
「この神姫、娼館に売ったらいい値段つくんじゃね?」
「おお、ナイスアイディア!でもその前に味見、だろ?」
いやらしく笑う男達の言葉の意味が理解できず、わたしはただ目を白黒させて事の成り行きを待つしかなかった。
怖い、怖い、怖い怖い怖い・・・!
恐怖が最大まで達した時、オーナーの言葉が回路を巡り記憶に再ダウンロードされた。
『外は危ないから、絶対に離れたらダメだよ?いいね』
言いつけも守らず、オーナーに迷惑をかけて、もう会えなくなるなんてっ!
わたしの瞳から大粒の涙が溢れたのと同時に、大男の悲鳴と、缶が地面に落ちる乾いた音がデパートに響いた。
「胸糞悪いことしてるんじゃねぇよ、デブが」
タイトなシャツにヴィンテージ物のジーパン、ハイカットブーツ。
ラフな格好ながら、スタイルのよさのせいかモデルのようにも見える。
後ろで結った金の髪を揺らしなから、ズボンのポケットに手をつっこんて悪漢を睨む。
救世主。
わたしは彼のことをそう認識した。
大男達は彼の登場に焦り、わたしを放り投げると、一目散にデパートを後にした。
最低の悪漢を成敗した長身の彼が、デパートの女性客の視線を集めない理由はない。
黄色い声も気にとめず、宙に放り出されたわたしを救世主は見事にキャッチしてくれる。
「悪い、お前のジュースだったんだろう?」
無残に床に巻かれたジュースの缶には不自然なへこみがあった。
「転がってたものでな、蹴ってしまった」
救世主の名前は紅というらしい。
助けてくれて、ジュースまで弁償してもらった。
その上オーナーまで探してくれるというのだ。
なんという男気。わたしは思わず感涙してしまった。
「お前のオーナーは酷いな。こんな人混みに神姫を放すなんて・・・」
半ば呆れ気味に紅はため息をついた。
「ち、違うんです!人混みに放り出してしまったのはわたしの方なんです!オーナーは気分が悪くなって、それで、わたしがジュースを買って来る、って勝手に・・・!」
オーナーを悪く言われることに耐え切れず、わたしは思わず大声を上げていた。
その時わたしは紅の肩に座していたため、彼の耳のそばでは盛大な爆発音と同等の破壊力を持っていただろう。
それが急に申し訳なくなり「ごめんなさい・・・」と小さく謝ると彼は薄い唇に笑みを湛えた。
「俺のほうこそ、悪かった。早くオーナーの元に行こう。具合が悪いんだろう?」
足早に雑踏を掻き分け、オーナーの座っているベンチを目指す。
辿り着いたそこには力なくベンチにもたれ辛そうに顔を伏せるオーナーがいた。
様子がおかしいのは明らかだった。
異常な発汗、体温の上昇、短く何度も繰り返される呼吸。心拍数も過剰に上がっている。
「おい、大丈夫か?」
紅は僅かに、目を見開くと、急いでオーナーの肩を抱くとそのままゆっくりとベンチに横たえた。
過呼吸症候群。
過度の呼吸により飽和した酸素が、必要な炭酸ガスを体外へ押し出す。
おそらくは、人混みに一人取り残された不安感のせいだ。
オーナーは体外に放出された炭酸ガスを取り戻そうと必死に息をする。
それが間違っている、などと錯乱した頭でどう考えろというのか。
わたしはこんなになったオーナーを放置していた自分と、見て見ぬふりを決め込むデパートの客に無性に腹が立った。
「おい、落ち着け、息を止めろ!っく、何か袋は・・・」
わたしがふつふつと怒りを煮やしている間にも、紅はオーナーを助けようと必死に辺りを見回す。
都合よく袋が転がっているはずもなく、紅は軽く舌打ちをすると、オーナーのフードに手をつっこむ。そして後頭部を強く自分の方へ引くと、その唇を己のそれで塞いだ。
ぱさりと落ちるオーナーのフードから覗いたのは、大きく見開かれた瞳。
息苦しさから生理的な涙が頬を伝い膝に落ちる。
それよりも、わたしの目を引いたのは、今までフードに隠れて見た事もなかったオーナーの髪の毛。
質のいい絹糸のようになびくそれは、蛍光灯の光さえ反射して艶めいている。
紅を引き剥がそうと暴れるオーナーの髪から、するりと落ちる髪留め。
開放された髪は踊るかの如く宙に舞った。その長さは腰よりももう少し長い。
だんだんと我を取り戻したオーナーの腕が力なくベンチに落ちると、ようやく紅は唇を開放した。
「こんな所で何をしてるんだ、瑠璃・・・?」
小さな子供をしかるような口調で紅は言った。その瞳にオーナーを映して。
***すとれい・しーぷ004
時は今より3年前に遡る。高校3年生、17歳の夏の事だ。
私はいたって普通の市立高校に通っていた。
身長が極端に低い事と、神姫が好きな事以外は普通の女子高生。
そのはずだった。
小学生からの腐れ縁でずっとクラスの同じだった、甲斐田 紅が話しかける。
「なぁ、お前、予想してたか?俺たちがメジャーデビューなんて」
「オレはしてなかったな・・・まさかこんな事になるなんて」
紅への返答を横取りしたのは、がたいのいい巨人、もとい瀬戸 碧。
身長は190近くあるらしい。紅も183と高い方だが、レベルが違う。
ちなみに私は150あるかないか。二人は私から見れば巨人国の人間だった。
・・・巨人国なんてものが存在するかは置いておいて。
碧とは高校に進学してから仲良くなった。
面倒見のいいことから、すぐ熱くなる私や、クールぶっているが、どこか抜けている紅の世話係り、という立ち位置。
今では気づけば3人、いつも一緒にいる。
「私も、予想してなかった、かな・・・きっと神様がくれたチャンス、なのかも知れない」
「はっ、さすが、我がチームの作詞担当アベル!言う事がくさいなー」
茶化す碧に、紅も合わせて笑った。
「オフの時にその名前で呼ぶなーっ!」
それがささやかだけど、私の幸せな日常だった。
“STRAY SHEEP”この時代の神姫ユーザーは知らない者のいない程有名なバンドグループ。
カイン(甲斐田 紅)、セト(瀬戸 碧)、そして私、アベル(安部 瑠璃)で構成される、スリーピースのアマチュアバンドだった。
ゲーセンや、ホビーショップで遊ぶついでに、ライブと称して曲を披露していたら、いつの間にかそれが、遊ぶ事よりメインになっていて。
去年の冬、わたしたちに目を付けた音楽事務所から、正式のメジャーデビューを、とのお声がかかったのだ。
最初は、嘘だと思っていた。何かのドッキリだ、と。
しかし、レコーディングや、CDの発売に伴い、それはだんだん実感を持ってわたしたちに歩み寄って来た。
「ただいまー!」
ぱたぱたとせわしなく足音を立てながら、家族への挨拶もそこそこに私は自室を目指す。
「こら、オーナー、手は洗ったのか?お母さんに挨拶は?」
部屋で私を迎えたのは、パートナーのユノだった。若干オカン気質なのは、私がずぼらなせいだろう。
「えへへ、まだでしたっ!手洗って、おやつ持ってくるね」
ユノは悪魔型の神姫。15センチながら、私達と同じように感情を持ち、生活する。
加えて、戦ったりも。
おやつのドーナツを抱え、わたしはユノのもとへ一目散に戻った。
話したい事がたくさんあったのだ。
「はい、ユノ!お母さんが、ユノのおやつに、って!」
片手に握ったジェリカンをユノに渡しながら、ソファへ腰かける。
「ありがとう。お母さんにも伝えておいてくれ。・・・今日はえらく上機嫌だな」
ジェリカンをちびちびと飲みつつ、私を見上げるユノもなんだか楽しそうだった。
「ふふん、今月はSTRAY SHEEPがデビューして、半年なんだ!だから、来週、半誕生ライブをゲーセンでやる事になったんだ!」
夢を見るかのように私はうっとりと言った。
それにライブの日は、私とユノが出会ってちょうど2年になるのだ。
でも、そのことはユノにはまだ秘密。ドッキリパーティーを家族で仕掛けるのだ。
きっといつもクールなユノも、目を丸くして驚いた後、涙を流すのだ。
私はそんな光景を想像しながら微笑みをユノに向けた。
「ライブの後、バトルもしようね!新しい武器、試したいんだ!」
小さなメモリースティックに入ったデータをちらつかせながらウインク。
それにユノは呆れながら、しかしどこか嬉しそうにため息をついた。
「ふふ、わたしのオーナーであること、それ以上に、“狂い羊(マッドシープ)”の名に恥じない戦いをしてくれよ」
。。。。。。。。。。
「そして、ライブは成功した。ここまでは、紅も知っている」
瑠璃とは比べ物にならないくらい弱々しい声で、オーナーは呟く。
僅かに肩が震えているのは気のせいでは、ない。
窓の外はオプシディアン。
長い沈黙を破って、オーナーは続きを話はじめた・・・
。。。。。。。。。。
幸せ、なんて簡単に壊れてしまう物。
私はあの日の呪縛から、まだ逃れられていない。
半誕生ライブの帰り、私は公園で蠢く影を見た。
ライブ成功の気の緩みか、はたまた後に控えるユノのパーティへの興奮か。
好奇心に負け、私はその場で足を止めてしまった。
「っ、オーナー、後ろだっ!!」
ユノの声が響いたと同時に私は後頭部への強い衝撃と共に気を失った。
「やめろ、やめ・・・!!やめてくれぇぇぇ!!」
ユノの叫び声が聞こえた。それも、怖いくらいに我を失った狂った叫び。
はは、そんなんじゃ、どっちが狂い羊か、わかんないよ、ユノ。
覚醒しない脳はぼんやりと現実を否定する。
「おい、愛しのオーナーが起きたぞ」
酷くしゃがれた声で、眼鏡の痩身の男が楽しそうにユノに言った。
ユノのすすりなく声。私の脳は一気に覚醒し状況をとらえる。
何時間気絶していたのだろう、あたりは暗闇が侵食してきて、周りが見えない。
しかも私は、数人の男に羽交い絞めにされ、身動きひとつ取れない。
最悪だ。
男達に聞こえるようわざと盛大な舌打ちをかますと、ユノを掴んでいた男が私の前に立った。
「お前の神姫が、言いたいコトあるってよ」
ずい、と目の前に差し出されたユノは粘着質の白濁にまみれ、すすり泣いていた。
さすがに私も、もう高校生だ。その独特のすえた臭いで、ユノが何をされたのか、すぐに理解した。
「下衆が・・・社会不適合者のうえ、ロリコンかよ、マジ最低だな!」
今出せる最大級に低い声で男をののしる。それでも男は楽しそうだった。
「お、オーナー・・・私は、汚されてしまった・・・もう、オーナーとはいられない・・・」
泣き止まないユノはいつものように強気な物言いでなく、今にも消えてしまいそうなくらいに小さな声を絞り出した。
「んだ、そうだ。このストラーフはありがたくオレ様がいただいて行くわ。勿論、愛玩用として、な」
くい、と眼鏡を持ち上げる姿が鼻につく。
「っざけんなよ!ユノを返せ!このロリコン野郎!!」
他の男に羽交い絞めにされたまま、私は男につばを飛ばす。
さすがに、その行動に腹を立てたのか、眼鏡の男は額に青筋を浮かべ、私の前に戻って来た。
すかさず男は私の頬を張る。
パァァンと乾いた音が公園にこだました。
「いいことを思いついた。お前もユノ・・・ったか?この神姫と同じように汚してやるよ」
それを合図にして、私を押さえていた男が、私を地面に叩き伏せた。
「っが・・・」
落下衝撃に加え、男の拳により、私の内臓は悲鳴を上げた。
だが、そんなの関係なかった。
束縛から逃れ、これを好機と見た私は眼鏡の男に殴りかかるため、拳を振り上げる。
しかし、私はすぐに動きを止めることになった。
口内に、冷たい金属が当たる。・・・カッターだった。
「これが何か、わかるだろ?抵抗してみろ、お前の自慢の喉はズタズタになるぜ。ア ベ ル ち ゃ ん 」
知っている、この男は私が歌謳いだと言う事を。
メジャーデビューして有名になったことが裏目に出た。
男は狂気の笑みを湛えカッターの刃をしまったままそれを私の喉の最奥に押し当てる。
このまま刃を出されれば、私は終わるだろう。
そう考えたら、自然と涙が溢れた。
服を裂く音が静かな闇に誇張され、辺りに響いた。
口にカッターを押し込んだまま、男達は視姦するように私の胸を眺める。
唐突に、眼鏡の男がその乳房を鷲掴みにして、揉みしだきはじめる。
最初はやわやわ感触を楽しむかのように。次第にその手つきは乱暴なものに変わっていく。
「・・・ったい・・・」
「ふん、さすがに現役女子高生、というだけはあるな。張りがある。そして何より柔らかい」
男は高級料理を吟味するかのように呟き、乳房の突起に手をかけた。
くりくりと先端を人差し指で撫でるように触れば、望んでもいない快楽に敏感に反応し、血液が集まる。
「っくくく、感じてるのか?こんなに乳首を充血させて・・・これじゃあ襲ってください、っつてるようなもんだな」
笑いをこらえきれなくなった男が、私を辱めようと、わざと淫らな言葉を煽る。
関係ない。私はできるだけ意識をカッターに集中させ、快楽をやり過ごす。
それが面白くなかったのか、男は舌打ちをし、私に乳房に顔を近づけ、先端をべろりと舐めた。
不快感から、声が出そうになるのを抑える。
それでも男の舌は止まらない。
吸い付くように口内で乳首わ嘗め回し、時に歯を立て、音を立てて唾液をすすった。
確実に私を堕としにかかる。
「そろそろ、下もいいか?」
するりとショーツに差し込まれた手が、蛇のように内部で蠢いた。
「ん〝ん〝ん〝ん〝っ・・・!」
初めてもたらされるその感覚に私は声を上げた。
楽しそうに男が笑う。
ショーツ内で蠢く蛇は、さも私の良いところを知っているかのように這い回る。
執拗な愛撫に私の陰部はしとどに濡れ、内股を伝い地面を汚していた。
「じゃあ、そろそろ挿れるか・・・」
男のベルトのバックルが鳴る。次いでジッパーを下げる音。
私の尻に当たるそれは、既に硬くそそり立っていた。
「・・・いぁぁ・・・!!」
恐怖のあまり歯がガチガチとカッターとぶつかりけたたましい音楽を奏でる。
男は笑いながら、私の身体を穿つ。そこに躊躇は感じられなかった。
肉を裂き体内に侵入するそれは酷く脈打ち、熱い。
まるであぶり鏝で身体をかき回されているような感覚に陥る。
「あ〝あ〝あ〝あ〝----!!!!」
はしたなく呻く私に興奮したのかは、わからない。
男の陰茎が激しく脈打ったと思ったら、そこから信じられない程の質量の熱が私の中に放たれた。
それからすぐに、私は解放された。
虚ろな瞳に映ったのは、私と同じように虚ろな瞳をしたユノを抱えた男だった。
もう座る力すら残っていない。
「ここまで耐えたご褒美に、これは返してやるよ」
地面に投げ出されたのはユノのレッグパーツ。
カン、と乾いた音とともに地に落ちたそれを目で追うと、男は私のすぐそばにしゃがんで、口に差してあったカッターに手をかける。
ようやくこの恐怖から開放される。
そう思ったのもつかの間、カチカチカチカチ、と小気味よい音と共に私の喉はいとも簡単に裂かれた。
「あ、間違えちゃった」
男はそう言うと、カッターを抜きとり、ユノを抱えて、何処かへ消えてしまった。
私は無残にも、地面に叩きつけられたユノの残骸を握りしめ、声にならない叫びで泣いた。
喉が裂けても、関係なかった。
私の意識は消えていく体温を追って、闇へと消えた。
ユノ、今日で2年目だよ。
これからも
よ ろ
し
く
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