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「砂漠と廃墟の交戦規定」(2011/04/27 (水) 04:46:15) の最新版変更点
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暑くて、厚くて、熱い。
容赦なく降り注ぐ砂漠の太陽は、容赦なく廃熱を阻害し、揺らめく分厚い蜃気楼のせいで体感500m先はわからない。そのうえデザートイエローのシートで覆われた『彼女』の装甲板は際限なく過熱され今や、手袋無しで触ることすら億劫になろうかというところである。
「あつぃ~です」
シートの下の装甲版のさらに下、彼女はけだるげに愛機に腰掛けていた。
周囲には遥かの昔に放棄されたのであろう廃ビル群が立ち並び大きな日陰も目立つのだが彼女はあえてその場所を選んだのだ。
周囲に遮蔽物がなく、前方に軽くビルの残骸や、土を盛るだけで塹壕となり、また……背後から急襲される可能性の少ないバトルフィールドの端。
そこはまさに格好のアンブッシュポイント、いや、むしろ絶好の砲兵陣地といえるだろう。
彼女は砲台型フォートフラッグのスチール・ブリゲード、愛称は「キャロル」。武装神姫である。
通称『一人旅団のキャロル』 とはいえ、これは彼女が自分に付けられた名前の意味を理解した際に皮肉を込めて名乗っているだけで、知名度もなにもない。
キャロルという愛称も彼女がゴネて付けさせたもので、英語圏の苗字であるキャロルよりはむしろ米陸軍第18砲兵団の本拠地であるところのノースカロライナの意味だと彼女が理解したのもつい最近。
「いくらフォートブラックだっていっても……ふんっ! いいんですから、ジョーとかアーノルドとかつけられなかっただけでも良しとしてあげ……あぁっ、もうっ!あのミリオタぁっ! 少なくともジェーンとかいろいろあったでしょう!? もうっもうっ! リセットせずに改名できたらぁっ!!」
ガンッと力任せにレストパットの装甲版を殴りつけ、殴りつけた拳の痛みに悶絶。なんだかよけいになさけない気分になったのか、大きくため息をついた。
そのとき、ヘルメットの出力部分から彼女の聞き知った声が流れた。
「はいはーい、こちらブラボーワン、感度は良好ですよ?」
その直後、キャロルはヘルメットの上から片耳を押さえて顔をしかめた。
「了解しました! わかってます! 小さな声で送信音量を限界まで上げて怒るのやめてください!」
いいつつ左手で流れるようにコンソールを弄り、愛機の獲物を「目標」に定める。
「試射時との気象条件の変化なしっと、射角よし、準備よし! デンジャークロースですよ、注意してください!」
細い指がポンっ、と踊るようにコンソールを弾いた次の瞬間、バンッと今までの停滞を打ち払うかのような爆音が響き、砲身が一瞬大きく後退する。
「発射しました、弾着まで2、1、弾着……今。 砲撃評価願います」
遠くの方から遠雷のように爆発音が響き、続けてブゥーンという相棒の発生させている機械音がここからでも聞こえる。
「Rog、マップグリッド、ヤンキー-ワン-シックス-ゼロ ホテル-ツー-セブン-ファイブ エックスレイ」
再びコンソールの上を指が踊り、にやりと笑う。
「ふふっ、デルタロメオエネミー(ディアエネミー)です」
バンッ……バンッ……バンッ
続けて三発、続く遠雷に先ほどのブゥーンという機械音と何かが炸裂する音。
「フィニッシュパターンですねー、敵さんも気の毒です。アリスちゃんトリガーハッピーですから
動けなくなってもひとマガジン撃ちつくすんですよね~ っと、こちらはどうでしょう? これだけ派手にやれば……」
そう呟くとキャロルはヘルメットにマウントされたヘッドマウントディスプレイを下す。
「ビンゴですっ! ふふんっ、バカがかかりましたね?」
相棒がオーバーキル気味の制圧射撃を加えている一方、敵方の相棒が彼女を探している。
もっともさっきから派手に発砲音を響かせているので、よほどのトンマでもない限り彼女の居場所は見つけるだろう。
即席のカモフラージュでは突き出した……その黒光りする砲身はフォートブラックの純正品ではない、海外メーカー製というか、彼女のマスターがアメリカのユナイテッド・ディフェンスとの知り合い(どうせ海外モノのFPS友達に違いない)から譲り受けたという1.55mm榴弾砲。
流石に榴弾砲すべてをカモフラージュシートで覆うわけには行かないので、どうしても砲身が目立つのだ。
そんな、図体だけ大きく、更に自ら周りを埋めてしまっている為身動きさえ取れない一見完全に無防備な砲兵陣地であったが……接近戦で一気に片をつけようとしていたのであろうストラーフ型の神姫が、陣地までたどり着くことはなかった。
「随伴歩兵もいない砲兵陣地付近が無防備なわけないじゃないですか。 州兵だってもう少し警戒してますよ?」
キャロルは右手に握ったスイッチ。 すなわち外周部に設置された神姫用の指向性爆弾の起爆スイッチを投げ捨て、やれやれと肩をすくめて見せる。
≪WIN≫
暑くて、厚くて、熱い。
容赦なく降り注ぐ砂漠の太陽は、容赦なく廃熱を阻害し、揺らめく分厚い蜃気楼のせいで体感500m先はわからない。そのうえデザートイエローのシートで覆われた『彼女』の装甲板は際限なく過熱され今や、手袋無しで触ることすら億劫になろうかというところである。
「あつぃ~です」
シートの下の装甲版のさらに下、彼女はけだるげに愛機に腰掛けていた。
周囲には遥かの昔に放棄されたのであろう廃ビル群が立ち並び大きな日陰も目立つのだが彼女はあえてその場所を選んだのだ。
周囲に遮蔽物がなく、前方に軽くビルの残骸や、土を盛るだけで塹壕となり、また……背後から急襲される可能性の少ないバトルフィールドの端。
そこはまさに格好のアンブッシュポイント、いや、むしろ絶好の砲兵陣地といえるだろう。
彼女は砲台型フォートフラッグのスチール・ブリゲード、愛称は「キャロル」。武装神姫である。
通称『一人旅団のキャロル』 とはいえ、これは彼女が自分に付けられた名前の意味を理解した際に皮肉を込めて名乗っているだけで、知名度もなにもない。
キャロルという愛称も彼女がゴネて付けさせたもので、英語圏の苗字であるキャロルよりはむしろ米陸軍第18砲兵団の本拠地であるところのノースカロライナの意味だと彼女が理解したのもつい最近。
「いくらフォートブラックだっていっても……ふんっ! いいんですから、ジョーとかアーノルドとかつけられなかっただけでも良しとしてあげ……あぁっ、もうっ!あのミリオタぁっ! 少なくともジェーンとかいろいろあったでしょう!? もうっもうっ! リセットせずに改名できたらぁっ!!」
ガンッと力任せにレストパットの装甲版を殴りつけ、殴りつけた拳の痛みに悶絶。なんだかよけいになさけない気分になったのか、大きくため息をついた。
そのとき、ヘルメットの出力部分から彼女の聞き知った声が流れた。
「はいはーい、こちらブラボーワン、感度は良好ですよ?」
その直後、キャロルはヘルメットの上から片耳を押さえて顔をしかめた。
「了解しました! わかってます! 小さな声で送信音量を限界まで上げて怒るのやめてください!」
いいつつ左手で流れるようにコンソールを弄り、愛機の獲物を「目標」に定める。
「試射時との気象条件の変化なしっと、射角よし、準備よし! デンジャークロースですよ、注意してください!」
細い指がポンっ、と踊るようにコンソールを弾いた次の瞬間、バンッと今までの停滞を打ち払うかのような爆音が響き、砲身が一瞬大きく後退する。
「発射しました、弾着まで2、1、弾着……今。 砲撃評価願います」
遠くの方から遠雷のように爆発音が響き、続けてブゥーンという相棒の発生させている機械音がここからでも聞こえる。
「Rog、マップグリッド、ヤンキー-ワン-シックス-ゼロ ホテル-ツー-セブン-ファイブ エックスレイ」
再びコンソールの上を指が踊り、にやりと笑う。
「ふふっ、デルタロメオエネミー(ディアエネミー)です」
バンッ……バンッ……バンッ
続けて三発、続く遠雷に先ほどのブゥーンという機械音と何かが炸裂する音。
「フィニッシュパターンですねー、敵さんも気の毒です。アリスちゃんトリガーハッピーですから
動けなくなってもひとマガジン撃ちつくすんですよね~ っと、こちらはどうでしょう? これだけ派手にやれば……」
そう呟くとキャロルはヘルメットにマウントされたヘッドマウントディスプレイを下す。
「ビンゴですっ! ふふんっ、バカがかかりましたね?」
相棒がオーバーキル気味の制圧射撃を加えている一方、敵方の相棒が彼女を探している。
もっともさっきから派手に発砲音を響かせているので、よほどのトンマでもない限り彼女の居場所は見つけるだろう。
即席のカモフラージュでは突き出した……その黒光りする砲身はフォートブラックの純正品ではない、海外メーカー製というか、彼女のマスターがアメリカのユナイテッド・ディフェンスとの知り合い(どうせ海外モノのFPS友達に違いない)から譲り受けたという1.55mm榴弾砲。
流石に榴弾砲すべてをカモフラージュシートで覆うわけには行かないので、どうしても砲身が目立つのだ。
そんな、図体だけ大きく、更に自ら周りを埋めてしまっている為身動きさえ取れない一見完全に無防備な砲兵陣地であったが……接近戦で一気に片をつけようとしていたのであろうストラーフ型の神姫が、陣地までたどり着くことはなかった。
「随伴歩兵もいない砲兵陣地付近が無防備なわけないじゃないですか。 州兵だってもう少し警戒してますよ?」
キャロルは右手に握ったスイッチ。 すなわち外周部に設置された神姫用の指向性爆弾の起爆スイッチを投げ捨て、やれやれと肩をすくめて見せた。
≪WIN≫
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