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「アスカ・シンカロン14」(2011/01/18 (火) 00:31:02) の最新版変更点
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互いが枷だった。
双子で居る限り、神凪北斗はどちらかと深い仲にはならない。
そう思ってしまった。
だから明日香であり夜宵でもある二人の彼女は、片方を消す事にした。
片方だけならば、と思ってしまった。
悪魔の囁きに背を押され。
そして壊れた。
何の事は無い。
生き残った方が夜宵だと決めたのも北斗だ。
片割れが死んだと聞かされ、冷静だった様に見えた彼女を「夜宵か?」と問いかけ。
知らずの内に彼女を夜宵に固定したのだ。
知る由も無い。
単に。
片方になってしまった彼女が、明日香と夜宵のどちらを演じるべきか判断が付かず無反応であったなどと。
こうして彼女は壊れていった。
悪魔にとってはこの上ない珍味として、彼女は調理されてゆく。
筈だった。
*アスカ・シンカロン14
**~真価~
「悪かったな。ずっと気付かなかった」
「ホントだよ」
少女が言う。
「今までゴメンな」
「別に、大した事じゃないわよ」
神姫が言う。
「俺、鈍いな」
「知ってるわよ」
「知ってたんだよ」
少女が、神姫が、口々に言う。
「もっとゆっくり話がしたい」
「そうだよ」
「全くね」
二人が同時に頷く。
「……じゃあ、そろそろお邪魔蟲には退散してもらおうか?」
「「うん」」
そして、三人は。
白い悪魔へ向き直った。
「さっきも言ったが、テメェを壊すぜ?」
「分っタだけデ、何ガどうナル?」
「さっき言わなかったっけ?」
北斗の腕の中で少女が言った。
「北斗が居てくれるなら、『私』に不可能は無いんだよ!!」
庇うように宙に浮く飛鳥が言った。
「「やっと繋がった」」
二人が言った。
「「……行くよ」」
「……笑わせるナ。只の二重身体者が、私にカナウカ!!」
闇を裂いて白い影が奔る。
飛鳥の動体視力を超えて、背後に回り、その爪で無防備な背中を抉る。
前に。
飛鳥の剣がその肩を縫いとめていた。
「何ィ!?」
驚愕する悪魔。
完全に飛鳥の背後を取った。
こちらは見えていない筈だ。
飛鳥からは。
「……私から見えてるんだよ」
北斗に抱えられた少女の声。
「それで充分なのよ」
神姫の声と共に、剣が捻られ、肩の配線を切断した。
「―――ック!!」
自由の利かなくなった腕を庇って下がろうとする悪魔の動きより早く、飛鳥の回し蹴りがその側頭部を捉え、吹き飛ばす。
「逃さないし、逃げないんだよ……」
ループからの追撃は迅速に。
先が見えていなければ絶対に出来ない軌道で追撃を掛ける飛鳥。
「今更足掻いテ如何ナル、私に願っタノハ『お前』だロウ!? 思いを遂げたいンだロウ!?」
過負荷で放電を起こしながら繰り出される、必殺の抜き手。
だが。
「それも―――」
「「―――見えてる!!」」
だからかわせる。
紙一重の回避で右脇に逸れた抜き手が飛鳥の翼を貫き、懸架されていた爆弾に接触。
そして、二機の神姫の至近距離で爆発を起こす。
「―――しマッ!!」
爆発の衝撃と熱と閃光で麻痺する視界と音。
だが。
飛鳥には体の外にも眼と耳がある。
「「コレでトドメぇ!!」」
極至近距離から朱鷺(スラスター)で加速。
突き出した剣を穂先に自らを一本の槍と化し、一直線に悪魔へと。
パールにはそれを察知するすべが無い。
神姫相手なら確実な決め手となる一撃が、悪魔の肩を貫き、そして……。
「「このまま地面に叩きつけるッ!!」」
結論は奇しくもパール自身が飛鳥に行おうとしたのと同じ。
高々度落下からの叩きつけによるオーバーキル。
串刺しにした悪魔ごと地面に向かい。
そして
『調子ニ乗ルナ、人間如キガァ!!』
悪魔の放った衝撃波に吹き飛ばされた。
『……見エテイタカラ何ダ!? オマエニハ私ハタオセナイシコロセナイ!! オマエモオマエモ、アノオトコモ、マモレルトホンキデオモッタノカ!!』
既に声は耳障りな金属音でしかない。
砕かれた肩が見る間に修復され、腕がその自由を取り戻す。
『……シネ、シネ、シンデシマエ!!』
装甲が膨れ上がり有機的な血管状の筋が表面を走る。
『エサゴトキガチョウシニノッテ、ワタシヲオコラセルカラ―――』
悪魔の両腕に光が灯り、熱量が収束してゆく。
解放されれば恒星にも匹敵する熱量を放つビームになる一撃だ。
「―――だから、お前の負けだろ?」
悪魔のセリフを遮る北斗。
『ナ、ニ?』
「―――ルール違反だよ、バアル。アンタの負けだ」
地に足を着く事すら止め、浮かんでいた白いストラーフの背後に。
神が居た。
「……今は帰れ同胞(はらから)よ。……汝が望む楽土は、まだ彼方だ」
ぎゅっと。彼女の手が虚空で握られ、それでお終い。
触れられても居ないのに同じ速さで圧縮された悪魔は、イレモノ共々この世界から消え去った。
何も残さずに。
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互いが枷だった。
双子で居る限り、神凪北斗はどちらかと深い仲にはならない。
そう思ってしまった。
だから明日香であり夜宵でもある二人の彼女は、片方を消す事にした。
片方だけならば、と思ってしまった。
悪魔の囁きに背を押され。
そして壊れた。
何の事は無い。
生き残った方が夜宵だと決めたのも北斗だ。
片割れが死んだと聞かされ、冷静だった様に見えた彼女を「夜宵か?」と問いかけ。
知らずの内に彼女を夜宵に固定したのだ。
知る由も無い。
単に。
片方になってしまった彼女が、明日香と夜宵のどちらを演じるべきか判断が付かず無反応であったなどと。
こうして彼女は壊れていった。
悪魔にとってはこの上ない珍味として、彼女は調理されてゆく。
筈だった。
*アスカ・シンカロン14
**~真価~
「悪かったな。ずっと気付かなかった」
「ホントだよ」
少女が言う。
「今までゴメンな」
「別に、大した事じゃないわよ」
神姫が言う。
「俺、鈍いな」
「知ってるわよ」
「知ってたんだよ」
少女が、神姫が、口々に言う。
「もっとゆっくり話がしたい」
「そうだよ」
「全くね」
二人が同時に頷く。
「……じゃあ、そろそろお邪魔蟲には退散してもらおうか?」
「「うん」」
そして、三人は。
白い悪魔へ向き直った。
「さっきも言ったが、テメェを壊すぜ?」
「分っタだけデ、何ガどうナル?」
「さっき言わなかったっけ?」
北斗の腕の中で少女が言った。
「北斗が居てくれるなら、『私』に不可能は無いんだよ!!」
庇うように宙に浮く飛鳥が言った。
「「やっと繋がった」」
二人が言った。
「「……行くよ」」
「……笑わせるナ。只の二重身体者が、私にカナウカ!!」
闇を裂いて白い影が奔る。
飛鳥の動体視力を超えて、背後に回り、その爪で無防備な背中を抉る。
前に。
飛鳥の剣がその肩を縫いとめていた。
「何ィ!?」
驚愕する悪魔。
完全に飛鳥の背後を取った。
こちらは見えていない筈だ。
飛鳥からは。
「……私から見えてるんだよ」
北斗に抱えられた少女の声。
「それで充分なのよ」
神姫の声と共に、剣が捻られ、肩の配線を切断した。
「―――ック!!」
自由の利かなくなった腕を庇って下がろうとする悪魔の動きより早く、飛鳥の回し蹴りがその側頭部を捉え、吹き飛ばす。
「逃さないし、逃げないんだよ……」
ループからの追撃は迅速に。
先が見えていなければ絶対に出来ない軌道で追撃を掛ける飛鳥。
「今更足掻いテ如何ナル、私に願っタノハ『お前』だロウ!? 思いを遂げたいンだロウ!?」
過負荷で放電を起こしながら繰り出される、必殺の抜き手。
だが。
「それも―――」
「「―――見えてる!!」」
だからかわせる。
紙一重の回避で右脇に逸れた抜き手が飛鳥の翼を貫き、懸架されていた爆弾に接触。
そして、二機の神姫の至近距離で爆発を起こす。
「―――しマッ!!」
爆発の衝撃と熱と閃光で麻痺する視界と音。
だが。
飛鳥には体の外にも眼と耳がある。
「「コレでトドメぇ!!」」
極至近距離から朱鷺(スラスター)で加速。
突き出した剣を穂先に自らを一本の槍と化し、一直線に悪魔へと。
パールにはそれを察知するすべが無い。
神姫相手なら確実な決め手となる一撃が、悪魔の肩を貫き、そして……。
「「このまま地面に叩きつけるッ!!」」
結論は奇しくもパール自身が飛鳥に行おうとしたのと同じ。
高々度落下からの叩きつけによるオーバーキル。
串刺しにした悪魔ごと地面に向かい。
そして
『調子ニ乗ルナ、人間如キガァ!!』
悪魔の放った衝撃波に吹き飛ばされた。
『……見エテイタカラ何ダ!? オマエニハ私ハタオセナイシコロセナイ!! オマエモオマエモ、アノオトコモ、マモレルトホンキデオモッタノカ!!』
既に声は耳障りな金属音でしかない。
砕かれた肩が見る間に修復され、腕がその自由を取り戻す。
『……シネ、シネ、シンデシマエ!!』
装甲が膨れ上がり有機的な血管状の筋が表面を走る。
『エサゴトキガチョウシニノッテ、ワタシヲオコラセルカラ―――』
悪魔の両腕に光が灯り、熱量が収束してゆく。
解放されれば恒星にも匹敵する熱量を放つビームになる一撃だ。
「―――だから、お前の負けだろ?」
悪魔のセリフを遮る北斗。
『ナ、ニ?』
「―――ルール違反だよ、バアル。アンタの負けだ」
地に足を着く事すら止め、浮かんでいた白いストラーフの背後に。
神が居た。
「……今は帰れ同胞(はらから)よ。……汝が望む楽土は、此処には無い」
ぎゅっと。彼女の手が虚空で握られ、それでお終い。
触れられても居ないのに同じ速さで圧縮された悪魔は、イレモノ共々この世界から消え去った。
何も残さずに。
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