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「アスカ・シンカロン09」(2011/01/11 (火) 00:05:21) の最新版変更点
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さて、そろそろ名探偵に登場願おう。
*アスカ・シンカロン09
**~信迦~
「―――って、言ったらどうする?」
「別にどうもしないよ」
静かに答えたのは、北斗の悪友。
悪知恵がよく働くタイプで、近隣地区でも十指に入る神姫を保有する策士型の神姫オーナーでもある。
北斗と双子に彼を加えて、学校では割とやりたい放題やっていた仲だ。
「…………」
引き合わせて以来、黙ったままの戦闘機型神姫を眺め、軽く息を吐く。
「取りあえず、北斗の話を要約すれば。変な奴から手に入れた神姫が、死んだ弥涼姉と同じ記憶と人格を持っていたと言う事だろう?」
「そうなんだよ、そういうのってあり得るのか?」
「無いよ」
キッパリと、一言で斬って捨てる悪友。
「人格に関してはゼロじゃないと思うが、記憶は絶対に有り得ない」
コイツ等、と言い掛け。彼は自分の肩を指差そうとした所で、そこに神姫が居ない事に気づくと、その指をテーブルの上の明日香に向ける。
「神姫の記憶は起動時にはゼロだ。出荷段階でプリインストールされているデータは記憶じゃなくて知識だからね」
AIとCSCが組み合わさって稼動する事で、初めて記憶するという行為が可能になるのだと彼は言った。
「仮に、弥涼姉の記憶をデジタル抽出できたとして、それを神姫にインストールした所で、その神姫はその記憶を知識として持つだけだ。自分の記憶と思う事なんて無いよ。
人間の記憶じゃなくて、他の神姫の記憶でも同じ。……一端リセットされた神姫は、同一素体、同一CSCの組み合わせでも、以前の記憶を持っていたとしても、それを記録としてしか認識出来なくなる」
「要するに、神姫に人間の人格や記憶が宿る事は無い、と?」
「うん」
頷く少年。
「普通なら、ね」
「普通なら?」
それ以外の可能性を含んでいるような声に、思わず聞き返す北斗。
「話を変えるけど、弥涼妹はどうしてるの?」
「んあ? 夜宵か?」
「そう」
質問の意図が分らない。
「本当はさ。弥涼姉が死んだ時点で、妹も死ぬと思ってたんだよね、僕は」
「?」
「少なくとも、妹(カタホウ)だけ無事に残る可能性は、ゼロだと思ってた」
「???」
「でも、現に姉だけ死んで妹が生きてる。そのバランスを取る為に神姫を受け皿にした……。ってのは、ちょっとファンタジー過ぎるかな?」
「何言ってるんだかわからねぇよ。分るように言ってくれ!!」
「そうだね、北斗に情報を与えすぎても混乱するだけか」
付き合いの長い友人だ。
北斗の性質を熟知している少年は全てを一言に纏めて言った。
「明日香は夜宵で、夜宵は明日香だよ」
「?」
疑問符を浮かべながら思い出す。
そういえばこの悪友、明日香と夜宵を区別する事を放棄している節がある。
弥涼、弥涼とそう呼び、使い分けの時も姉、妹、だった。
不思議と双子の方もその呼び方を気に入っているようで、双子にとっても友人といえる数少ない存在になったのは、彼のそんな部分が所以だったようにも思う。
それはつまり、双子であるが故の近似。
正反対の性格を持ちながら、入れ替われるほどに互いを理解しているという事だろうか?
◆
(つまり、死んだのは夜宵の方、なのか……?)
彼が去ったテーブルで、北斗は一人考える。
(二人の容姿が同じで、DNA鑑定とかも同じなら、肉体的には明日香と夜宵は入れ替われる)
だから、時間的に明日香が学校まで行って自殺する事がが不可能でも構わないのだ。
(明日香がテレビを見ているとき、夜宵は学校まで歩いていって、そこで自殺した……?)
だったら。
「だったら。オマエはどっちなんだ?」
「…………」
飛鳥は答えない。
「…………」
「…………」
うつむいたまま、決して喋ろうとはしなかった。
◆
頭がおかしくなりそうだった。
キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ。
「何あれ、気持ち悪い」
夜宵は家に帰り着くなり玄関で吐いた。
生まれて初めて買ったお揃いでない服。
それが汚れるのも構わずに胃の中身をぶちまける。
「何なの、あの神姫」
理解できない。
頭痛がする。
眩暈がする。
吐き気がする。
「何で。何で……」
北斗か誰かに仕込まれた?
まさか。
そんな事はありえない。
そう言う次元の話ではない。
「あれじゃあまるで」
不快だった。
気づくまでは、ただ不快だった。
明日香を名乗るからか、酷く気に障る。
そう思うだけだった。
「あれじゃ、あれじゃぁ…」
でも気付いてしまった。
そしたらもうダメだった。
名前なんかが理由ではなかった。
あの神姫の所作の全てに、覚えがありすぎる。
忘れもしない。忘れるわけが無い。
今までの人生の全てに刻まれている。
「あれじゃあまるで、本当に“私”みたいじゃない…!!」
酷く。
気持ちが悪かった。
「……ふふフ」
そんな彼女を、白い悪魔だけが見つめている。
傍に居るのは北斗でも血を分けた片割れでもない。
ただ、悪魔だけが傍に居た。
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&s(){トップページの縦長化に打開策を。}
&s(){携帯とかだと如何見えるんですかね、コレ?}
↑浅知恵終了のお知らせ
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さて、そろそろ名探偵に登場願おう。
*アスカ・シンカロン09
**~信迦~
「―――って、言ったらどうする?」
「別にどうもしないよ」
静かに答えたのは、北斗の悪友。
悪知恵がよく働くタイプで、近隣地区でも十指に入る神姫を保有する策士型の神姫オーナーでもある。
北斗と双子に彼を加えて、学校では割とやりたい放題やっていた仲だ。
「…………」
引き合わせて以来、黙ったままの戦闘機型神姫を眺め、軽く息を吐く。
「取りあえず、北斗の話を要約すれば。変な奴から手に入れた神姫が、死んだ弥涼姉と同じ記憶と人格を持っていたと言う事だろう?」
「そうなんだよ、そういうのってあり得るのか?」
「無いよ」
キッパリと、一言で斬って捨てる悪友。
「人格に関してはゼロじゃないと思うが、記憶は絶対に有り得ない」
コイツ等、と言い掛け。彼は自分の肩を指差そうとした所で、そこに神姫が居ない事に気づくと、その指をテーブルの上の明日香に向ける。
「神姫の記憶は起動時にはゼロだ。出荷段階でプリインストールされているデータは記憶じゃなくて知識だからね」
AIとCSCが組み合わさって稼動する事で、初めて記憶するという行為が可能になるのだと彼は言った。
「仮に、弥涼姉の記憶をデジタル抽出できたとして、それを神姫にインストールした所で、その神姫はその記憶を知識として持つだけだ。自分の記憶と思う事なんて無いよ。
人間の記憶じゃなくて、他の神姫の記憶でも同じ。……一端リセットされた神姫は、同一素体、同一CSCの組み合わせでも、以前の記憶を持っていたとしても、それを記録としてしか認識出来なくなる」
「要するに、神姫に人間の人格や記憶が宿る事は無い、と?」
「うん」
頷く少年。
「普通なら、ね」
「普通なら?」
それ以外の可能性を含んでいるような声に、思わず聞き返す北斗。
「話を変えるけど、弥涼妹はどうしてるの?」
「んあ? 夜宵か?」
「そう」
質問の意図が分らない。
「本当はさ。弥涼姉が死んだ時点で、妹も死ぬと思ってたんだよね、僕は」
「?」
「少なくとも、妹(カタホウ)だけ無事に残る可能性は、ゼロだと思ってた」
「???」
「でも、現に姉だけ死んで妹が生きてる。そのバランスを取る為に神姫を受け皿にした……。ってのは、ちょっとファンタジー過ぎるかな?」
「何言ってるんだかわからねぇよ。分るように言ってくれ!!」
「そうだね、北斗に情報を与えすぎても混乱するだけか」
付き合いの長い友人だ。
北斗の性質を熟知している少年は全てを一言に纏めて言った。
「明日香は夜宵で、夜宵は明日香だよ」
「?」
疑問符を浮かべながら思い出す。
そういえばこの悪友、明日香と夜宵を区別する事を放棄している節がある。
弥涼、弥涼とそう呼び、使い分けの時も姉、妹、だった。
不思議と双子の方もその呼び方を気に入っているようで、双子にとっても友人といえる数少ない存在になったのは、彼のそんな部分が所以だったようにも思う。
それはつまり、双子であるが故の近似。
正反対の性格を持ちながら、入れ替われるほどに互いを理解しているという事だろうか?
◆
(つまり、死んだのは夜宵の方、なのか……?)
彼が去ったテーブルで、北斗は一人考える。
(二人の容姿が同じで、DNA鑑定とかも同じなら、肉体的には明日香と夜宵は入れ替われる)
だから、時間的に明日香が学校まで行って自殺する事がが不可能でも構わないのだ。
(明日香がテレビを見ているとき、夜宵は学校まで歩いていって、そこで自殺した……?)
だったら。
「だったら。オマエはどっちなんだ?」
「…………」
飛鳥は答えない。
「…………」
「…………」
うつむいたまま、決して喋ろうとはしなかった。
◆
頭がおかしくなりそうだった。
キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ。
「何あれ、気持ち悪い」
夜宵は家に帰り着くなり玄関で吐いた。
生まれて初めて買ったお揃いでない服。
それが汚れるのも構わずに胃の中身をぶちまける。
「何なの、あの神姫」
理解できない。
頭痛がする。
眩暈がする。
吐き気がする。
「何で。何で……」
北斗か誰かに仕込まれた?
まさか。
そんな事はありえない。
そう言う次元の話ではない。
「あれじゃあまるで」
不快だった。
気づくまでは、ただ不快だった。
明日香を名乗るからか、酷く気に障る。
そう思うだけだった。
「あれじゃ、あれじゃぁ…」
でも気付いてしまった。
そしたらもうダメだった。
名前なんかが理由ではなかった。
あの神姫の所作の全てに、覚えがありすぎる。
忘れもしない。忘れるわけが無い。
今までの人生の全てに刻まれている。
「あれじゃあまるで、本当に“私”みたいじゃない…!!」
酷く。
気持ちが悪かった。
「……ふふフ」
そんな彼女を、白い悪魔だけが見つめている。
傍に居るのは北斗でも血を分けた片割れでもない。
ただ、悪魔だけが傍に居た。
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