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「アスカ・シンカロン01」(2011/01/01 (土) 02:26:39) の最新版変更点
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弥涼明日香(いすずあすか)が死んだ。
死因は転落死。
学校の屋上から、墜ちて、死んだ。
自殺だと、警察は結論付けた。
*アスカ・シンカロン
**~侵苛~
子供の頃から3人一緒だった。
物心付いた時には既に、明日香が傍に居るのが当然で…。
それが失われるという事は、自分の3分の1が失われる事と何も変わらない。
身体を3割えぐられて、生きている人間が居るだろうか?
恵まれた体格を鍛え上げ、身長190にも届く肉体も、心も。
それに耐えられるとは思えなかった。
ならばきっと。
この俺、神凪北斗(かんなぎほくと)も一緒に死んだのかもしれない……。
(少なくとも、明日香が生きていた時と同じ『オレ』では、ないよな……)
溜息を吐いて部屋を見渡す。
北斗以外誰も居ない部屋。
3人揃って遊んで、笑って、下らない話に興じ、ケンカして……。
そんな日常が染み付いた北斗の部屋。
もう戻らない日常が残滓として残る部屋だった。
「―――北斗」
部屋の戸を開けた少女が彼の名を呼ぶ。
「……ッ」
その顔を見て、北斗はすぐに目を逸らす。
「何だよ、夜宵(やよい)」
「…………」
夜宵は、無言のまま北斗の寝そべるベッドへ歩み寄る。
「まだ、姉さんの事…?」
「……」
顔を覗き込む夜宵から目を逸らし、北斗は溜息で彼女に応える。
「お前は、もう平気なのかよ?」
「うん」
夜宵は、強い。
「私が悲しんで居ても、姉さんは喜ばないと思うから」
「…オレは」
まだ、夜宵の顔は見れない。
そこにまだ、明日香の影が見えるから。
「あのさ、北斗も気分転換とかしなきゃダメだよ、ね?」
「そんな気分じゃないんだ」
まるで不貞腐れたガキだ。
そんな風に自嘲しながら、北斗は寝返りを打って夜宵に背を向ける。
「全くもう。そんな気分じゃないから気分転換するの!!」
姉の死。
それも自殺と言う死に方を、妹である夜宵がどう受け止めたのか?
彼女の声には強さがあった。
「ねえ、パール。貴女もそう思うでしょ?」
「はイ、夜宵」
え?
不意に聞こえた少女の声に、北斗は思わず振り向いた。
「じゃーん」
満面の笑顔で差し伸べられた夜宵の掌に、小さな少女が座っていた。
「…あ」
「んふふ~、武装神姫のパールちゃんです。ほら、挨拶挨拶」
「悪魔型MMS/wh。『パール』と申しまス。よろしくお願いいたしまス北斗サマ」
パールと名乗った白い悪魔型神姫は、そう言って深々と頭を下げる。
「あはは、サマ付けなんか要らないよ。こんな筋肉馬鹿、呼び捨てで充分」
「…お前な」
顔の前で手をパタパタやりながら笑う夜宵を睨みつける。
「…あ」
「…ん」
目が合い、逸らす。
(…)
悟られたと思う。
まだ、夜宵の中に明日香を見ていた事を。
「…では、北斗とお呼びしまス」
「そ、そうね。変に畏まるより、気楽な方が北斗も良いでしょ?」
「…そう、だな」
確かに、サマ付けなど柄ではない。
「ねえ、北斗も武装神姫、やろうよ?」
「オレ、が?」
どんな物かはある程度知っている。
全高15cmの少女型ロボットに武装を施し、戦わせる一種のゲームだ。
「北斗もさ、傍に誰か居た方が気が紛れるんじゃない?」
だから、夜宵は神姫を買ったのか……。
そう理解しつつも、それで明日香の居た場所を埋めてしまって良いのだろうか?
そんな思いが北斗に即答させる事を躊躇わせた。
「ノーマルの悪魔型でも買ってさ、あたしのパールとお揃いにするのもいいよ、ね?」
「…その内、気が向いたら、な」
「……」
夜宵が消沈するのが分かる。
生まれた時から傍にいる幼馴染だ。
顔を見なくても、それ位は分かる。
お互いに。
「ごめん。あたしが居ない方が忘れられるよね?」
夜宵が立ち上がる気配。
「…悪い。…本当に、気が向いたら神姫やってみるかも知れない」
「うん」
「その時は、相手頼むわ」
「うん」
夜宵の返事は、一度目よりも遠ざかっていた。
「じゃあ、また来るから…」
「ああ」
扉の閉まる音。
それが、途中で止まった。
「もう、姉さんは居ないんだから、ね?」
夜宵がどんなつもりでそう言ったのかは分からない。
ただ…。
少しだけ気になって、窓から外を見る。
夜宵と、もう居ない明日香の家は斜向い。
神凪家の門を出た夜宵が弥涼家の門をくぐるのが見えた。
その後姿は、紛れも無く明日香と同じもの。
「…別人、だ。…夜宵は、明日香じゃない」
口に出して確認しなければ、忘れてしまいそうだった。
明日香と夜宵は、一卵性双生児。
双子。だった。
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全15~6話話予定です。
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弥涼明日香(いすずあすか)が死んだ。
死因は転落死。
学校の屋上から、墜ちて、死んだ。
自殺だと、警察は結論付けた。
*アスカ・シンカロン01
**~侵苛~
子供の頃から3人一緒だった。
物心付いた時には既に、明日香が傍に居るのが当然で…。
それが失われるという事は、自分の3分の1が失われる事と何も変わらない。
身体を3割えぐられて、生きている人間が居るだろうか?
恵まれた体格を鍛え上げ、身長190にも届く肉体も、心も。
それに耐えられるとは思えなかった。
ならばきっと。
この俺、神凪北斗(かんなぎほくと)も一緒に死んだのかもしれない……。
(少なくとも、明日香が生きていた時と同じ『オレ』では、ないよな……)
溜息を吐いて部屋を見渡す。
北斗以外誰も居ない部屋。
3人揃って遊んで、笑って、下らない話に興じ、ケンカして……。
そんな日常が染み付いた北斗の部屋。
もう戻らない日常が残滓として残る部屋だった。
「―――北斗」
部屋の戸を開けた少女が彼の名を呼ぶ。
「……ッ」
その顔を見て、北斗はすぐに目を逸らす。
「何だよ、夜宵(やよい)」
「…………」
夜宵は、無言のまま北斗の寝そべるベッドへ歩み寄る。
「まだ、姉さんの事…?」
「……」
顔を覗き込む夜宵から目を逸らし、北斗は溜息で彼女に応える。
「お前は、もう平気なのかよ?」
「うん」
夜宵は、強い。
「私が悲しんで居ても、姉さんは喜ばないと思うから」
「…オレは」
まだ、夜宵の顔は見れない。
そこにまだ、明日香の影が見えるから。
「あのさ、北斗も気分転換とかしなきゃダメだよ、ね?」
「そんな気分じゃないんだ」
まるで不貞腐れたガキだ。
そんな風に自嘲しながら、北斗は寝返りを打って夜宵に背を向ける。
「全くもう。そんな気分じゃないから気分転換するの!!」
姉の死。
それも自殺と言う死に方を、妹である夜宵がどう受け止めたのか?
彼女の声には強さがあった。
「ねえ、パール。貴女もそう思うでしょ?」
「はイ、夜宵」
え?
不意に聞こえた少女の声に、北斗は思わず振り向いた。
「じゃーん」
満面の笑顔で差し伸べられた夜宵の掌に、小さな少女が座っていた。
「…あ」
「んふふ~、武装神姫のパールちゃんです。ほら、挨拶挨拶」
「悪魔型MMS/wh。『パール』と申しまス。よろしくお願いいたしまス北斗サマ」
パールと名乗った白い悪魔型神姫は、そう言って深々と頭を下げる。
「あはは、サマ付けなんか要らないよ。こんな筋肉馬鹿、呼び捨てで充分」
「…お前な」
顔の前で手をパタパタやりながら笑う夜宵を睨みつける。
「…あ」
「…ん」
目が合い、逸らす。
(…)
悟られたと思う。
まだ、夜宵の中に明日香を見ていた事を。
「…では、北斗とお呼びしまス」
「そ、そうね。変に畏まるより、気楽な方が北斗も良いでしょ?」
「…そう、だな」
確かに、サマ付けなど柄ではない。
「ねえ、北斗も武装神姫、やろうよ?」
「オレ、が?」
どんな物かはある程度知っている。
全高15cmの少女型ロボットに武装を施し、戦わせる一種のゲームだ。
「北斗もさ、傍に誰か居た方が気が紛れるんじゃない?」
だから、夜宵は神姫を買ったのか……。
そう理解しつつも、それで明日香の居た場所を埋めてしまって良いのだろうか?
そんな思いが北斗に即答させる事を躊躇わせた。
「ノーマルの悪魔型でも買ってさ、あたしのパールとお揃いにするのもいいよ、ね?」
「…その内、気が向いたら、な」
「……」
夜宵が消沈するのが分かる。
生まれた時から傍にいる幼馴染だ。
顔を見なくても、それ位は分かる。
お互いに。
「ごめん。あたしが居ない方が忘れられるよね?」
夜宵が立ち上がる気配。
「…悪い。…本当に、気が向いたら神姫やってみるかも知れない」
「うん」
「その時は、相手頼むわ」
「うん」
夜宵の返事は、一度目よりも遠ざかっていた。
「じゃあ、また来るから…」
「ああ」
扉の閉まる音。
それが、途中で止まった。
「もう、姉さんは居ないんだから、ね?」
夜宵がどんなつもりでそう言ったのかは分からない。
ただ…。
少しだけ気になって、窓から外を見る。
夜宵と、もう居ない明日香の家は斜向い。
神凪家の門を出た夜宵が弥涼家の門をくぐるのが見えた。
その後姿は、紛れも無く明日香と同じもの。
「…別人、だ。…夜宵は、明日香じゃない」
口に出して確認しなければ、忘れてしまいそうだった。
明日香と夜宵は、一卵性双生児。
双子。だった。
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全15~6話話予定です。
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