「ACT 1-36」(2009/11/03 (火) 23:13:52) の最新版変更点
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ウサギのナミダ
ACT 1-36
◆
ゲームセンターに歓声が轟いた。
ハイスピードバニーの勝利。
その勝利にギャラリーの誰もが沸いている。
人間も神姫も、ティアの勝利を賞賛する。
美緒と仲間たちも、抱き合って喜んだ。
三強さえも、その勝利にガッツポーズを取っている。
筐体からフィールドの表示が消え、次のプレイを待機する頃になっても、歓声がやむことはなかった。
■
暗闇に、真横に一筋の光が射す。
それは太さを増し、やがて闇は光に取って代わる。
眩しい。
瞳が光量の調節を終えると、今いる場所を認識する。
ゲームセンターの筐体の上。
アクセスポッドが開いたところ。
まわりにたくさんの人がいる、みたい。
大きな歓声が聞こえてくるから、そう思った。
周囲の風景はぼやけていて、よくわからなかった。
「……泣いて……いるのか? ティア……」
「……はい」
わたしはまた泣いてしまっていた。
涙がぽろぽろとこぼれるけれど。
わたしはしずくが溢れるままにしていた。
「……泣くな……」
「いいんです……もう、これで……自分のために泣くのは……最後だから……」
わたしの胸に、様々な想いが去来する。
わたしのことを、許してくれた仲間たちとのこと。
電脳空間を飛び越して、聞こえてきたマスターの声。
わたしの名を呼んでくれた仲間たち。
今ここにいることの、幸せを噛みしめる。
たくさんの嬉しさと、いくばくかの寂寥が、わたしの心を包んでいる。
流れ出る涙は止めようもない。
でも、いやな涙じゃない。
いまのわたしの幸せと希望と、かつての友への別れに流す涙だったから。
「だめだ……泣くな……」
でもなぜか、マスターはわたしが泣くことを許してくれない。
不可解な気持ちがして、わたしは訊いた。
「なぜ、ですか? 泣いちゃ、だめなんですか?」
「お前が……泣いてたら……」
マスターの声が大きく震えた。
「俺が、泣けないだろ……っ」
わたしは思わず振り向いた。
びっくりした。
マスターが……あのマスターが、大粒の涙を流して、口を手で押さえながら、泣いてる。
筐体の上に置かれた左手は、強く握られていて、指の隙間から血がにじんでいる。
わたしの涙なんて、どこかに行ってしまった。
とても心配になった。
わたしは、マスターの手にそっと触れる。
「ど、どうしたんですか。どこか苦しいですか。大丈夫ですか」
わたしは何をしゃべっているんだろう。
こんな時に、どうしたらいいかなんて、さっぱりわからない。
気が動転している。
マスターは、指の隙間から押し出すように声を出して、言った。
「……心配した……もう、帰って、来ないかと……思った……
不安でっ……押しつぶされるかと……
お前……帰ってきて……驚いてっ……俺の神姫だって……嬉しくて……
気持ちが……もうっ……ぐちゃぐちゃで……わけわかんね……」
マスターも自分の気持ちがわからないのなら、わたしにも分かるわけなかった。
でも、わたしのこと、心配してくれたのは、わかった。
だからわたしは、マスターの握り拳にもたれかかって。
「わたしは、ここにいます。ここにいますよ?」
「……うん」
「ずっと、一緒ですから。もうどこかに行ったりしませんから。」
「……うん」
「だから、もう泣かないで下さい」
マスターはそれでも泣きやむ様子はなくて。
だけど、わたしのために泣いてくれることを少し嬉しく思ったりした。
◆
人には、その時どきにおいて、役割があると思う。
その時の菜々子は痛切にそう感じていた。
隣で、感極まって泣き出してしまった遠野を、どんなにか慰めたかっただろう。
でも、彼女はその役目をティアに任せた。
それが適任だとも思ったが、理由はもう一つある。
筐体の向こうにいる最低男を見張らなくてはならなかったのだ。
勝負に負けたからといって、井山がティアを諦めるとは思えなかった。
懸命に戦った二人のために、菜々子が出来ることをする。
あの夜の誓いは今も続いていた。
はたして、井山は肉付きのいい巨体を揺らして、立ち上がった。
「こ、こんなの、インチキだっ!」
歓声に消されそうになりながらも、井山の声はなんとかギャラリーに届いた。
菜々子は、絶対零度の視線で、井山を射る。
「なにがインチキだっていうの」
菜々子の口をつく言葉は、ブリザードのように厳しい。
聞いた者が凍死しそうに冷ややかな声に、歓声も徐々になりを潜める。
井山はそれでも口答えした。
「だ、だってそうだろ!
傷が治るのに、いつまでだって戦えるのに、クロコダイルが負けるなんてありえないんだ!
ジャッジがおかしいか、インチキしたに決まってるじゃないかっ!」
「いいえ。何もおかしくないし、ジャッジも正確よ。
バトルロンドの勝敗は、残りのヒットポイントで決まる訳じゃない。
その神姫が行動不能とジャッジAIが判断すれば、そこで勝敗は決定する」
つまりはノックアウトである。
どんなに装備が健在でも、神姫の弱点であるCSCが破壊されたと判断されれば、勝敗はそこで決する。
井山の言い方で、クロコダイルは不死身のように思っていたが、「ダメージが回復する」以上の効果を持っているわけではない。
だから、ティアの『ライトニング・アクセル』が直撃した時点で、ジャッジAIはクロコダイルを行動不可と判断し、ティアの勝利を宣言したのだ。
観客は、菜々子の言葉に納得したようにざわめいた。
だが、井山はさらに言い募る。
「そ、それだけじゃないぞ!
アケミちゃんの装備はレギュレーション違反じゃないか!
あんなの、イリーガルも同然だ!」
「ウィルス撒いたり、チートプログラムを使ったりしておいて、相手の神姫をイリーガル扱い? 呆れるわね」
観客からブーイングが上がる。
井山は頭に血を上らせ、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「うるさい、うるさいっ!!
だ、だいたい、クロコダイルがいけないんだ!
こいつがっ……弱いから!!」
アクセスポッドに手を突っ込むと、自分の醜悪な神姫を引きずり出す。
いけない。
菜々子は直感的に思い、井山の方へ飛び出した。
井山がクロコダイルを握った手を振り上げ、そのまま彼女を思いきり床に叩きつけた。
そして、井山はクロコダイルを踏みつけようと足を振り上げる。
菜々子はそこに滑り込んだ。
クロコダイルをかばうように、地面に伏せる。
次の瞬間、井山の足が肩口に落ちてきた。
「あぐっ……!」
井山の体重の乗った蹴りが直撃し、思わず声を上げる。
肩が激しく痛む。
こんな風に神姫を踏みつけるつもりだったのか。
菜々子は戦慄する。
自分が割って入らなかったら、クロコダイルはみんなの前で、粉々に踏みつぶされていただろう。
信じられない。
自分の神姫を、躊躇なく踏みつぶそうとするなんて。
「あんた……っ!」
菜々子が顔を上げ、井山を睨みつけた。
その時、大きな影が視界を遮った。
次の瞬間、井山の丸い顔に拳が食い込んで、その巨体は数メートルも吹っ飛んだ。
大城だった。
彼が井山の顔面に渾身のストレートをぶち込んだのだ。
「このクズ野郎……いい加減にしやがれ……!」
その声に、ギャラリーの多くが震え上がった。
それほどにドスの利いた、殺気に満ちた声だった。
さすがの井山も、床に這いつくばったまま、恐怖に目を見開いている。
「テメェは……神姫オーナーの資格すらねぇ!
出て行け……二度と遠野とティアの前に……俺たちの前に姿を現すな……!」
地獄の底から響いてくるような声だった。
かつて名うてのヤンキーだったという噂は本当らしい。声に百戦錬磨の迫力がある。
それでも井山は身体を起こし、大城を睨んだ。
「え、えらそうに……だ、だいたい、アケミちゃんはボクが風俗の店から助け出したんだ! もともとボクの神姫なんだ!
それを盗んだ奴の仲間のくせに……低脳なヤンキーが、キミにも痛い目見せてやるぞ!」
「ほう、どんな目を見せてくれるのかね?」
「え?」
その声は大城とはまったく違う方向から聞こえてきた。
菜々子は声の方を向く。
大城も声の方、井山の背後を見た。
そこには三人の男が立っている。
一人はスーツを着た男性。
あとの二人は……警察の制服を着ていた。
スーツ姿の男は、内ポケットから革の手帳を出し、開いた。
「警察庁MMS公安だ。続きは署で聞かせてもらおうか」
「け、けいさつ……」
井山はその太った体躯に似合わず、俊敏な動きで立ち上がり、駆け出そうとした。
しかし、二人の警官が、それより早く井山を捕らえ、羽交い締めにする。
「井山淳一、MMS保護法違反、窃盗、不正アクセス防止法違反、サイバーテロ容疑、ついでにストーカー防止法違反の容疑で逮捕する」
「くそっ! はなせ、はなせっ! ボ、ボクは何も悪くないっ!」
「大人しくしろ。お前の容疑にはすべて証拠があがってる。雑誌社の連中も、神姫風俗通いの仲間も、みんな自供したぞ。
それから、まだ余罪があるようだからな。きっちり絞ってやる」
警官の一人が、ついに井山に手錠をかけた。
それでも井山は暴れていたが、訓練された警察官にかなうはずもない。
井山は早々にゲームセンターから引っ立てられていった。
あっという間の出来事に、その場にいた誰もが言葉を失った。
残った私服の刑事は、ゆっくりと警察手帳をしまう。
そして、カウンターの方を向くと敬礼した。
「ご協力、ありがとうございました」
「いえいえ、ご苦労様でした」
そう返答したのは、あの童顔の店長だった。
刑事に敬礼を返しにこやかに笑う。
刑事はあっけに取られている観客たちを一瞥すると、菜々子の方に近づいてくる。
そして、菜々子の前でしゃがみ込むと、そこに落ちていた神姫……クロコダイルを拾い上げた。
「これは押収させてもらうよ。大事な証拠なんでね」
菜々子は何も言わず、カクカクと頷いていた。
刑事は、そのままきびすを返すと、ゲームセンターの自動ドアをくぐって去った。
菜々子、大城を含むギャラリー全員が、店長を見る。
店長は、その童顔ににっか、と笑顔を浮かべ、親指を立てた。
店長、グッジョブ。
その場にいた全員が、親指を立てるサインを返して頷いた。
□
俺がその顛末を聞いたのは、ずっと後になってからだった。
その時は自分のことでいっぱいいっぱいで、気が付いたときには井山の姿が消えていた。
感情が溢れて押さえきれなかった俺の心も、ようやく感情の流出が収まってきていた。
相当みっともない顔をしていたと思う。
顔を拭おうと、ズボンのポケットからハンカチを出した。
握ったハンカチが血塗れになっていた。
「な、んだ、これ……?」
両手の拳を強く握りすぎたせいか、爪が食い込んで、そこから血が出ていたのだ。
さっき気が付いたが放置していた。
よく見れば、腕組みしていたシャツの袖も血に染まっているし、筐体の上にも点々と血痕が残っている。
とりあえず、手のひらの傷口を保護しないと。
俺はとりあえず涙だけハンカチで拭くと、それをどうやって両手に巻き付けようかと思案した。
絶対に無理だということに気が付く前に、俺の右肩に細い手が置かれた。
久住さんだ。
「ほら、遠野くん。手を出して」
優しい彼女の声に従う。
すると彼女は、きれいに畳まれたハンカチを取り出して、それを俺の右手に躊躇なく巻き付けた。
俺は一瞬動揺する。
白いハンカチに紅が滲む。
「ごめん……ハンカチ……」
「いいの、気にしないで」
久住さんはいつも優しい。
俺のハンカチを手に取ると、左手に巻いてくれた。
「俺……いつも君に、みっともないところばっかり、見せてる気がする」
「いいじゃない……かっこいいところばっかりじゃ、近寄りがたいもの」
「え?」
最後の方がよく聞き取れなかったのだが。
すると、久住さんはあわてて、
「な、なんでもないっ」
頬を赤くして、手を振った。
……いつだったか、同じような彼女を見た気がする。
彼女の肩にいたミスティが、くすくすと笑っていた。
「遠野……」
真面目な顔をして、大城が呼んだ。
「どうする? 今日はやめておくか?」
それは大城の気遣い。
俺は周りを見わたした。
いまだに、俺の座る筐体をギャラリーが取り巻いている。
他の筐体でバトルするものもいない。
声を出す者もおらず、じっと俺たちを見守っている。
皆待っているのだ。
ティアと虎実の一戦を。
俺は目尻に残った涙を拭う。
手を降ろしたときには、もう心は決まっていた。
「ティア、行けるか?」
「マスターが戦いたいというのなら、いつでも」
ティアの返答に、俺は頷いた。
そして大城を真っ直ぐに見る。
「大城、虎実、待たせたな。……約束を果たそう」
「よっしゃぁ!!」
ギャラリーが沸いた。
大城が筐体の向こう側へと歩いていく。
その肩から、虎実が振り向いた。
真面目な顔をして、こくりと頷いた。
◆
ついにこの時が来た。
虎実は長い間、この対戦が実現するのを望んでいた。
自分の納得のいく戦闘スタイルを身につけて、ティアに挑戦する。
それは、自らに課した枷。
エアバイクを乗り回すスタイルで、ティアと対戦するに足る実力を身につけようと努力した。
その結果、ランキングバトル一位という実績を得たのだ。
それがティアの対戦相手としてふさわしい実力なのかはわからない。
だが、すべてを彼女にぶつけてみたい。自分の技と実力を見てもらいたい。自分という存在を認めてもらいたい。
初めて憧れ、目標とした神姫の全力を、身を持って感じたい。
それができれば、勝敗なんてどうでも良かった。
そして試合の後に言いたいことがある。
長く言う機会を逸していた言葉。
すべてを出し切った試合の後なら、言える気がする。
友達になって欲しい、と。
■
その約束は、マスターから聞かされていた。
嫌われているとばかり思っていた彼女からの、意外な言葉。そして約束。
もう一度、わたしとバトルがしたい、と虎実さんは言ったという。
マスターをバトルロンドに引き留めたのは、その約束だった。
わたしは虎実さんに感謝している。
もしマスターがわたしのために、と思って、バトルロンドをやめていたら、きっと後悔したと思う。バトルがしたいと思うマスターを見て、わたしは心を痛めたかも知れない。そう、アクアさんのように。
そんな虎実さんとの対戦は、全力でぶつかりたいと思う。
ずっと待っていてくれた虎実さんに、今のわたしを見てもらいたいと思う。
本当にマスターの神姫になったわたしを。
そして、試合の後、言わなくちゃ。
ありがとう、と。
そして、友達になれたら、いいと思う。
◆
沸き上がる歓声。
その盛り上がりは、このバトルロンドコーナー開設以来のことかも知れない。
対戦する神姫は、二人ともものすごく有名というわけではない。
だが、このゲームセンターを根城にしている神姫プレイヤーにとっては、どちらも強い印象の残る武装神姫であった。
かたや、かの全国チャンピオンとなったアーンヴァルを相手に好勝負を繰り広げた、オリジナルの兎型。
先ほどは、卑怯卑劣な神姫を正々堂々打ち破った。
その対戦相手は、あの三強を破って、いまやランキング一位に君臨するティグリース・タイプ。彼女のバイク技は特徴的で、本人の知らないところで多くのファンを獲得していた。
そんな二人の対戦である。
ゲーセンの常連にしてみれば、どんな有名神姫のバトルよりも、感慨深いカードだった。
ティアと虎実を呼ぶ声、声。
バトルの準備が終わり、もうすぐ始まろうとしている。
ミスティは菜々子の肩から叫んだ。
「二人とも、がんばれー!」
菜々子は不思議そうに彼女を見る。
「あら? ティアの応援じゃなくていいの?」
「勝敗なんて、関係ないバトルだもの。どっちが勝ったっていいのよ」
「なるほど……そうよね」
菜々子も笑顔になり、頷いた。
ミスティは思っている。
まったく、二人ともめんどくさいわね。友達になりたいなら、さっさとそう言えばいいじゃない。わたしみたいに。
まったく、不器用なんだから。
□
俺はいつものように、アクセスポッドにティアを送り込む。
今日二度目だが、先ほどとは違い、妙にすがすがしい気分だ。
アクセスポッドの縁に手をかけて、ティアが俺を見た。
気遣わしげな表情。心配してるのか。
俺は微笑して、ティアに言った。
「最初から全力で行くぞ」
「はい!」
はきはきとしたティアの声に、もう影は感じられない。
虎実の約束に応えるのに、今ほどふさわしい状態はないだろう。
今のティアなら、間違いなく最高のパフォーマンスを発揮できる。
準備を終え、筐体の向こうに立つ相手を見る。
そこには、友がいた。
大城は不適に笑い、言う。
「……お前とバトルするのは二回目だ。前の対戦、覚えてっか?」
「よく覚えてる」
「あのときの俺たちとは違うぜ?」
「わかってる。……まさか俺たちがあのときと同じと思ってはいないだろう?」
「アホか。今までさんざん側でバトル見てきたんだ。ティアの進化はイヤと言うほど分かってらあ」
「ならば結構」
「今日は勝たせてもらう。手加減はしねーぞ?」
「当然だ。楽しいバトルにしよう」
「……楽しい?」
「そうさ」
これから、ティアと虎実は何度も手合わせできる。何度も勝つだろうし、何度も負けるだろう。
だが、それでいい。
命を賭けた一発勝負のバトルじゃなければ、戦いに意味がないなんて、思わない。
日々の対戦を楽しく、真剣にプレイすることこそ、俺の求めるバトルロンドだ。
そんな日々の積み重ねのその先に、俺の望むものがあるのだと思っている。
大城は、にかっと笑った。
「そうだな、楽しくやろうぜ」
「ああ。今日も、そしてこれからも」
「行くぜ、遠野! 俺たちの実力見せてやる!」
「よし、バトルスタートだ!」
俺たちは同時にスタートボタンを押す。
大型ディスプレイに対戦カードが表示される。
『ティア vs 虎実』
ギャラリーの歓声が、ひときわ高くなる。
ティアと虎実の名前を口々に叫んでいる。
ゲームセンターから追い出されたあの日が嘘のように遠く感じられる。
周りには信じられる仲間がいて。
思いを寄せる人は、俺の側にいて。
友達だと自惚れさせてほしい男は、俺の向かいに立ち。
そして、俺のただ一人の神姫は、いま約束の地を、全速力で駆け抜けている。
(ウサギのナミダ おわり)
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ウサギのナミダ
ACT 1-36
◆
ゲームセンターに歓声が轟いた。
ハイスピードバニーの勝利。
その勝利にギャラリーの誰もが沸いている。
人間も神姫も、ティアの勝利を賞賛する。
美緒と仲間たちも、抱き合って喜んだ。
三強さえも、その勝利にガッツポーズを取っている。
筐体からフィールドの表示が消え、次のプレイを待機する頃になっても、歓声がやむことはなかった。
■
暗闇に、真横に一筋の光が射す。
それは太さを増し、やがて闇は光に取って代わる。
眩しい。
瞳が光量の調節を終えると、今いる場所を認識する。
ゲームセンターの筐体の上。
アクセスポッドが開いたところ。
まわりにたくさんの人がいる、みたい。
大きな歓声が聞こえてくるから、そう思った。
周囲の風景はぼやけていて、よくわからなかった。
「……泣いて……いるのか? ティア……」
「……はい」
わたしはまた泣いてしまっていた。
涙がぽろぽろとこぼれるけれど。
わたしはしずくが溢れるままにしていた。
「……泣くな……」
「いいんです……もう、これで……自分のために泣くのは……最後だから……」
わたしの胸に、様々な想いが去来する。
わたしのことを、許してくれた仲間たちとのこと。
電脳空間を飛び越して、聞こえてきたマスターの声。
わたしの名を呼んでくれた仲間たち。
今ここにいることの、幸せを噛みしめる。
たくさんの嬉しさと、いくばくかの寂寥が、わたしの心を包んでいる。
流れ出る涙は止めようもない。
でも、いやな涙じゃない。
いまのわたしの幸せと希望と、かつての友への別れに流す涙だったから。
「だめだ……泣くな……」
でもなぜか、マスターはわたしが泣くことを許してくれない。
不可解な気持ちがして、わたしは訊いた。
「なぜ、ですか? 泣いちゃ、だめなんですか?」
「お前が……泣いてたら……」
マスターの声が大きく震えた。
「俺が、泣けないだろ……っ」
わたしは思わず振り向いた。
びっくりした。
マスターが……あのマスターが、大粒の涙を流して、口を手で押さえながら、泣いてる。
筐体の上に置かれた左手は、強く握られていて、指の隙間から血がにじんでいる。
わたしの涙なんて、どこかに行ってしまった。
とても心配になった。
わたしは、マスターの手にそっと触れる。
「ど、どうしたんですか。どこか苦しいですか。大丈夫ですか」
わたしは何をしゃべっているんだろう。
こんな時に、どうしたらいいかなんて、さっぱりわからない。
気が動転している。
マスターは、指の隙間から押し出すように声を出して、言った。
「……心配した……もう、帰って、来ないかと……思った……
不安でっ……押しつぶされるかと……
お前……帰ってきて……驚いてっ……俺の神姫だって……嬉しくて……
気持ちが……もうっ……ぐちゃぐちゃで……わけわかんね……」
マスターも自分の気持ちがわからないのなら、わたしにも分かるわけなかった。
でも、わたしのこと、心配してくれたのは、わかった。
だからわたしは、マスターの握り拳にもたれかかって。
「わたしは、ここにいます。ここにいますよ?」
「……うん」
「ずっと、一緒ですから。もうどこかに行ったりしませんから。」
「……うん」
「だから、もう泣かないで下さい」
マスターはそれでも泣きやむ様子はなくて。
だけど、わたしのために泣いてくれることを少し嬉しく思ったりした。
◆
人には、その時どきにおいて、役割があると思う。
その時の菜々子は痛切にそう感じていた。
隣で、感極まって泣き出してしまった遠野を、どんなにか慰めたかっただろう。
でも、彼女はその役目をティアに任せた。
それが適任だとも思ったが、理由はもう一つある。
筐体の向こうにいる最低男を見張らなくてはならなかったのだ。
勝負に負けたからといって、井山がティアを諦めるとは思えなかった。
懸命に戦った二人のために、菜々子が出来ることをする。
あの夜の誓いは今も続いていた。
はたして、井山は肉付きのいい巨体を揺らして、立ち上がった。
「こ、こんなの、インチキだっ!」
歓声に消されそうになりながらも、井山の声はなんとかギャラリーに届いた。
菜々子は、絶対零度の視線で、井山を射る。
「なにがインチキだっていうの」
菜々子の口をつく言葉は、ブリザードのように厳しい。
聞いた者が凍死しそうに冷ややかな声に、歓声も徐々になりを潜める。
井山はそれでも口答えした。
「だ、だってそうだろ!
傷が治るのに、いつまでだって戦えるのに、クロコダイルが負けるなんてありえないんだ!
ジャッジがおかしいか、インチキしたに決まってるじゃないかっ!」
「いいえ。何もおかしくないし、ジャッジも正確よ。
バトルロンドの勝敗は、残りのヒットポイントで決まる訳じゃない。
その神姫が行動不能とジャッジAIが判断すれば、そこで勝敗は決定する」
つまりはノックアウトである。
どんなに装備が健在でも、神姫の弱点であるCSCが破壊されたと判断されれば、勝敗はそこで決する。
井山の言い方で、クロコダイルは不死身のように思っていたが、「ダメージが回復する」以上の効果を持っているわけではない。
だから、ティアの『ライトニング・アクセル』が直撃した時点で、ジャッジAIはクロコダイルを行動不可と判断し、ティアの勝利を宣言したのだ。
観客は、菜々子の言葉に納得したようにざわめいた。
だが、井山はさらに言い募る。
「そ、それだけじゃないぞ!
アケミちゃんの装備はレギュレーション違反じゃないか!
あんなの、イリーガルも同然だ!」
「ウィルス撒いたり、チートプログラムを使ったりしておいて、相手の神姫をイリーガル扱い? 呆れるわね」
観客からブーイングが上がる。
井山は頭に血を上らせ、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「うるさい、うるさいっ!!
だ、だいたい、クロコダイルがいけないんだ!
こいつがっ……弱いから!!」
アクセスポッドに手を突っ込むと、自分の醜悪な神姫を引きずり出す。
いけない。
菜々子は直感的に思い、井山の方へ飛び出した。
井山がクロコダイルを握った手を振り上げ、そのまま彼女を思いきり床に叩きつけた。
そして、井山はクロコダイルを踏みつけようと足を振り上げる。
菜々子はそこに滑り込んだ。
クロコダイルをかばうように、地面に伏せる。
次の瞬間、井山の足が肩口に落ちてきた。
「あぐっ……!」
井山の体重の乗った蹴りが直撃し、思わず声を上げる。
肩が激しく痛む。
こんな風に神姫を踏みつけるつもりだったのか。
菜々子は戦慄する。
自分が割って入らなかったら、クロコダイルはみんなの前で、粉々に踏みつぶされていただろう。
信じられない。
自分の神姫を、躊躇なく踏みつぶそうとするなんて。
「あんた……っ!」
菜々子が顔を上げ、井山を睨みつけた。
その時、大きな影が視界を遮った。
次の瞬間、井山の丸い顔に拳が食い込んで、その巨体は数メートルも吹っ飛んだ。
大城だった。
彼が井山の顔面に渾身のストレートをぶち込んだのだ。
「このクズ野郎……いい加減にしやがれ……!」
その声に、ギャラリーの多くが震え上がった。
それほどにドスの利いた、殺気に満ちた声だった。
さすがの井山も、床に這いつくばったまま、恐怖に目を見開いている。
「テメェは……神姫オーナーの資格すらねぇ!
出て行け……二度と遠野とティアの前に……俺たちの前に姿を現すな……!」
地獄の底から響いてくるような声だった。
かつて名うてのヤンキーだったという噂は本当らしい。声に百戦錬磨の迫力がある。
それでも井山は身体を起こし、大城を睨んだ。
「え、えらそうに……だ、だいたい、アケミちゃんはボクが風俗の店から助け出したんだ! もともとボクの神姫なんだ!
それを盗んだ奴の仲間のくせに……低脳なヤンキーが、キミにも痛い目見せてやるぞ!」
「ほう、どんな目を見せてくれるのかね?」
「え?」
その声は大城とはまったく違う方向から聞こえてきた。
菜々子は声の方を向く。
大城も声の方、井山の背後を見た。
そこには三人の男が立っている。
一人はスーツを着た男性。
あとの二人は……警察の制服を着ていた。
スーツ姿の男は、内ポケットから革の手帳を出し、開いた。
「警察庁MMS公安だ。続きは署で聞かせてもらおうか」
「け、けいさつ……」
井山はその太った体躯に似合わず、俊敏な動きで立ち上がり、駆け出そうとした。
しかし、二人の警官が、それより早く井山を捕らえ、羽交い締めにする。
「井山淳一、MMS保護法違反、窃盗、不正アクセス防止法違反、サイバーテロ容疑、ついでにストーカー防止法違反の容疑で逮捕する」
「くそっ! はなせ、はなせっ! ボ、ボクは何も悪くないっ!」
「大人しくしろ。お前の容疑にはすべて証拠があがってる。雑誌社の連中も、神姫風俗通いの仲間も、みんな自供したぞ。
それから、まだ余罪があるようだからな。きっちり絞ってやる」
警官の一人が、ついに井山に手錠をかけた。
それでも井山は暴れていたが、訓練された警察官にかなうはずもない。
井山は早々にゲームセンターから引っ立てられていった。
あっという間の出来事に、その場にいた誰もが言葉を失った。
残った私服の刑事は、ゆっくりと警察手帳をしまう。
そして、カウンターの方を向くと敬礼した。
「ご協力、ありがとうございました」
「いえいえ、ご苦労様でした」
そう返答したのは、あの童顔の店長だった。
刑事に敬礼を返しにこやかに笑う。
刑事はあっけに取られている観客たちを一瞥すると、菜々子の方に近づいてくる。
そして、菜々子の前でしゃがみ込むと、そこに落ちていた神姫……クロコダイルを拾い上げた。
「これは押収させてもらうよ。大事な証拠なんでね」
菜々子は何も言わず、カクカクと頷いていた。
刑事は、そのままきびすを返すと、ゲームセンターの自動ドアをくぐって去った。
菜々子、大城を含むギャラリー全員が、店長を見る。
店長は、右手に電話の受話器を持ち、左手で親指を立てた。
その童顔ににっか、と笑顔を浮かべる。
店長、グッジョブ。
その場にいた全員が、親指を立てるサインを返して頷いた。
□
俺がその顛末を聞いたのは、ずっと後になってからだった。
その時は自分のことでいっぱいいっぱいで、気が付いたときには井山の姿が消えていた。
感情が溢れて押さえきれなかった俺の心も、ようやく感情の流出が収まってきていた。
相当みっともない顔をしていたと思う。
顔を拭おうと、ズボンのポケットからハンカチを出した。
握ったハンカチが血塗れになっていた。
「な、んだ、これ……?」
両手の拳を強く握りすぎたせいか、爪が食い込んで、そこから血が出ていたのだ。
さっき気が付いたが放置していた。
よく見れば、腕組みしていたシャツの袖も血に染まっているし、筐体の上にも点々と血痕が残っている。
とりあえず、手のひらの傷口を保護しないと。
俺はとりあえず涙だけハンカチで拭くと、それをどうやって両手に巻き付けようかと思案した。
絶対に無理だということに気が付く前に、俺の右肩に細い手が置かれた。
久住さんだ。
「ほら、遠野くん。手を出して」
優しい彼女の声に従う。
すると彼女は、きれいに畳まれたハンカチを取り出して、それを俺の右手に躊躇なく巻き付けた。
俺は一瞬動揺する。
白いハンカチに紅が滲む。
「ごめん……ハンカチ……」
「いいの、気にしないで」
久住さんはいつも優しい。
俺のハンカチを手に取ると、左手に巻いてくれた。
「俺……いつも君に、みっともないところばっかり、見せてる気がする」
「いいじゃない……かっこいいところばっかりじゃ、近寄りがたいもの」
「え?」
最後の方がよく聞き取れなかったのだが。
すると、久住さんはあわてて、
「な、なんでもないっ」
頬を赤くして、手を振った。
……いつだったか、同じような彼女を見た気がする。
彼女の肩にいたミスティが、くすくすと笑っていた。
「遠野……」
真面目な顔をして、大城が呼んだ。
「どうする? 今日はやめておくか?」
それは大城の気遣い。
俺は周りを見わたした。
いまだに、俺の座る筐体をギャラリーが取り巻いている。
他の筐体でバトルするものもいない。
声を出す者もおらず、じっと俺たちを見守っている。
皆待っているのだ。
ティアと虎実の一戦を。
俺は目尻に残った涙を拭う。
手を降ろしたときには、もう心は決まっていた。
「ティア、行けるか?」
「マスターが戦いたいというのなら、いつでも」
ティアの返答に、俺は頷いた。
そして大城を真っ直ぐに見る。
「大城、虎実、待たせたな。……約束を果たそう」
「よっしゃぁ!!」
ギャラリーが沸いた。
大城が筐体の向こう側へと歩いていく。
その肩から、虎実が振り向いた。
真面目な顔をして、こくりと頷いた。
◆
ついにこの時が来た。
虎実は長い間、この対戦が実現するのを望んでいた。
自分の納得のいく戦闘スタイルを身につけて、ティアに挑戦する。
それは、自らに課した枷。
エアバイクを乗り回すスタイルで、ティアと対戦するに足る実力を身につけようと努力した。
その結果、ランキングバトル一位という実績を得たのだ。
それがティアの対戦相手としてふさわしい実力なのかはわからない。
だが、すべてを彼女にぶつけてみたい。自分の技と実力を見てもらいたい。自分という存在を認めてもらいたい。
初めて憧れ、目標とした神姫の全力を、身を持って感じたい。
それができれば、勝敗なんてどうでも良かった。
そして試合の後に言いたいことがある。
長く言う機会を逸していた言葉。
すべてを出し切った試合の後なら、言える気がする。
友達になって欲しい、と。
■
その約束は、マスターから聞かされていた。
嫌われているとばかり思っていた彼女からの、意外な言葉。そして約束。
もう一度、わたしとバトルがしたい、と虎実さんは言ったという。
マスターをバトルロンドに引き留めたのは、その約束だった。
わたしは虎実さんに感謝している。
もしマスターがわたしのために、と思って、バトルロンドをやめていたら、きっと後悔したと思う。バトルがしたいと思うマスターを見て、わたしは心を痛めたかも知れない。そう、アクアさんのように。
そんな虎実さんとの対戦は、全力でぶつかりたいと思う。
ずっと待っていてくれた虎実さんに、今のわたしを見てもらいたいと思う。
本当にマスターの神姫になったわたしを。
そして、試合の後、言わなくちゃ。
ありがとう、と。
そして、友達になれたら、いいと思う。
◆
沸き上がる歓声。
その盛り上がりは、このバトルロンドコーナー開設以来のことかも知れない。
対戦する神姫は、二人ともものすごく有名というわけではない。
だが、このゲームセンターを根城にしている神姫プレイヤーにとっては、どちらも強い印象の残る武装神姫であった。
かたや、かの全国チャンピオンとなったアーンヴァルを相手に好勝負を繰り広げた、オリジナルの兎型。
先ほどは、卑怯卑劣な神姫を正々堂々打ち破った。
その対戦相手は、あの三強を破って、いまやランキング一位に君臨するティグリース・タイプ。彼女のバイク技は特徴的で、本人の知らないところで多くのファンを獲得していた。
そんな二人の対戦である。
ゲーセンの常連にしてみれば、どんな有名神姫のバトルよりも、感慨深いカードだった。
ティアと虎実を呼ぶ声、声。
バトルの準備が終わり、もうすぐ始まろうとしている。
ミスティは菜々子の肩から叫んだ。
「二人とも、がんばれー!」
菜々子は不思議そうに彼女を見る。
「あら? ティアの応援じゃなくていいの?」
「勝敗なんて、関係ないバトルだもの。どっちが勝ったっていいのよ」
「なるほど……そうよね」
菜々子も笑顔になり、頷いた。
ミスティは思っている。
まったく、二人ともめんどくさいわね。友達になりたいなら、さっさとそう言えばいいじゃない。わたしみたいに。
まったく、不器用なんだから。
□
俺はいつものように、アクセスポッドにティアを送り込む。
今日二度目だが、先ほどとは違い、妙にすがすがしい気分だ。
アクセスポッドの縁に手をかけて、ティアが俺を見た。
気遣わしげな表情。心配してるのか。
俺は微笑して、ティアに言った。
「最初から全力で行くぞ」
「はい!」
はきはきとしたティアの声に、もう影は感じられない。
虎実の約束に応えるのに、今ほどふさわしい状態はないだろう。
今のティアなら、間違いなく最高のパフォーマンスを発揮できる。
準備を終え、筐体の向こうに立つ相手を見る。
そこには、友がいた。
大城は不適に笑い、言う。
「……お前とバトルするのは二回目だ。前の対戦、覚えてっか?」
「よく覚えてる」
「あのときの俺たちとは違うぜ?」
「わかってる。……まさか俺たちがあのときと同じと思ってはいないだろう?」
「アホか。今までさんざん側でバトル見てきたんだ。ティアの進化はイヤと言うほど分かってらあ」
「ならば結構」
「今日は勝たせてもらう。手加減はしねーぞ?」
「当然だ。楽しいバトルにしよう」
「……楽しい?」
「そうさ」
これから、ティアと虎実は何度も手合わせできる。何度も勝つだろうし、何度も負けるだろう。
だが、それでいい。
命を賭けた一発勝負のバトルじゃなければ、戦いに意味がないなんて、思わない。
日々の対戦を楽しく、真剣にプレイすることこそ、俺の求めるバトルロンドだ。
そんな日々の積み重ねのその先に、俺の望むものがあるのだと思っている。
大城は、にかっと笑った。
「そうだな、楽しくやろうぜ」
「ああ。今日も、そしてこれからも」
「行くぜ、遠野! 俺たちの実力見せてやる!」
「よし、バトルスタートだ!」
俺たちは同時にスタートボタンを押す。
大型ディスプレイに対戦カードが表示される。
『ティア vs 虎実』
ギャラリーの歓声が、ひときわ高くなる。
ティアと虎実の名前を口々に叫んでいる。
ゲームセンターから追い出されたあの日が嘘のように遠く感じられる。
周りには信じられる仲間がいて。
思いを寄せる人は、俺の側にいて。
友達だと自惚れさせてほしい男は、俺の向かいに立ち。
そして、俺のただ一人の神姫は、いま約束の地を、全速力で駆け抜けている。
(ウサギのナミダ おわり)
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