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「第二話 バトルロンドですわ」(2009/09/04 (金) 22:17:47) の最新版変更点
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ステージは廃墟となった市街地、ゴーストタウン
試合形式はリアルバトル。時間は30分。勝利条件は相手を倒すそれだけ。
微笑を浮かべその時を待つエリアーデ、四本のサブアームに四枚の翼、獣のような大きな足、ストラーフの武装を多く使用している重武装ながら細く華奢なそれは悪魔と呼ぶにふさわしい姿だった。
腕を組み冷静に始まりの時を待つムルメルティア、鉄の塊のようなサブアームとレッグパーツは力強さを彷彿とさせる。
お互いの姿は見えない。
『この試合に勝ったら芽衣さんに付き纏うのをやめていただきますよ』
『お、お前こそ、ぼぼ僕の芽衣たんにちちち近づくんじゃないぞ!』
「楽しみだわ、どうやって倒して上げようかしら」
エリアーデが微笑を浮かべる
「この勝利をわがマスターに捧げます」
ムルメルティアが睨みつける
『Get lady Fight』
女性のような機械音声が戦いの始まりを告げる。
『エリアーデ、相手の気配は感じるかい?』
エリアーデが索敵をするがそれに引っかかるモノは何もなかった。
「いいえ、何もありませんわ」
警戒しながら歩き始める。
『そうかい、おそらく相手は中距離の装備をしているはずだ』
「どうしてそう言い切れますの?」
相手の姿はまだ一度も見ていない、分かるのは相手がムルメルティア型であるということだけ
『戦う前に少し喋っただろう、あの手の相手は派手な勝ち方を演出したがる傾向があるんだよ。それに交際がかかっているから女性に印象づける必要もある『自分はこんなに強いんだ』ってね』
「男というのは愚かですわね」
『見栄を張りたがるのが男なのさ、それといつも言っている通り君にはあまり時間はない』
「分かっていますわ、勝負は5分以内に終わらせますわよ」
エリアーデの装備は特殊な性質上、普通の神姫の数倍の電力を喰う。そのせいでいつも短期決戦を求められるが、それを嫌がるどころか気に入っている。長い試合はエリアーデの短気な性格に合わないのだ。
すると前方上空から高速で何かが空を切り迫りくる音が聞こえた。
「あれは・・・ミサイルですわね」
計6発のミサイルがエリアーデを標的に飛んできた。
「あら、まさかあんなもの使うお馬鹿がまだいたんですのね」
流行というものがある。それはバトルロンドにも存在する。流行を作るのはその年の全国大会で優勝したトップランカーであったり優秀な武器であったりするが、ミサイルが流行になったことは過去一度もない。それは威力は高いが一度使ってしまえば終わりというのもあるそして一発の費用が最低でも300円以上する。などいくつか理由はあるが一番の理由は撃ち落とされやすいということだ。
『エリアーデ、落とせるかい?』
「愚問ですわね。射撃は駄目でも投げることは得意ですのよ」
足元にある少々大きめの石ころを拾い、それをサブアームで力任せに投げつける。そのコントロールは絶妙で次々とミサイルが空中で轟音とともに爆発していく
「あまり綺麗な花火ではありませんわね」
『おそらくミサイルの方向から街の外れに相手はいると思う』
「了解ですわ」
しかし予想は大きく外れていた。相手はすぐそこまで迫っていたのだ。
「ハァァァァァァァァァ!!!」
上から聞こえた声に顔を上げると、ムルメルティアが流星のようにサブアームを突き出しビルの上から落ちてきた。エリアーデが後方へと飛び回避する。エリアーデがいた場所に粉塵が巻き上がる。ミサイルは囮だったのだ。
『おしいぞな~ムルル~』
気の抜けるようなストーカーの声
「ふふ、良いですわ。クロエここから先は私の判断で行きますわよ」
クロエは沈黙を持ってそれに答えた。エリアーデが微笑む。
「ハァァァァァッァァァァ!!」
粉塵の中からムルメルティアいやムルルが飛び出してきた。
「やっぱり戦いはこうでなくては!」
空を切る剛腕はエリアーデの髪を数本散らし、スレスレを飛び交う
『いいぞな~ムルル~もっとガンガンいくんだな~』
マスターの褒める言葉とは逆に当たらないことに焦るムルル
「クッ!おのれぇっぇぇぇぇ!!」
ムルルの気迫の籠った攻撃は勢いを増していくがどれ一つとして当たらない。全てをギリギリでかわしているのだ。
「うふふ、良い攻撃ですわね。でも貴方この距離の戦い方慣れていませんわね」
この距離、領域はエリアーデがもっとも輝く領域、この領域こそがもっとも力を発揮するエリアーデの為のテリトリー
「コォンノォォォォォォォ」
更に気迫が籠る攻撃しかし気迫とは裏腹に大振りになっていく、それを見逃さずエリアーデが主腕のカウンターを放つ
「ガハッ」
カウンターはムルルの腹部に決まった。威力はさほどなくとも後退させ、隙を作るには十分だった。
「行きますわよ」
エリアーデが三本のサブアームでムルルの頭部とサブアームを掴む。
「そんな細腕で抑えきれると思うな!」
ムルルが振り払うために力を込める。
「どうしましたの?」
まるで意に介さないように涼しい顔をしているエリアーデ、その反対に必死な形相を浮かべるムルル、鉄の塊のようなサブアームが唸りを上げるが抑えられたまま動かない
「クッなぜ動かない!」
「あぁ、私の装備はクロエの特別品ですのよ。外見に騙されましたわね」
クロエのカスタムにより莫大な電力消費を犠牲に通常の約1.5倍のパワーを振るうことができるサブアームにより動きを完全に封じる。
エリアーデが両脚に力が入り、爪が地面に食い込む。鎌のような翼が後方に×字に展開、そして6個の短距離用の小型ブースターに火が入り、前方へ一気に加速する。
「でぇいやあぁぁぁぁぁぁぁ」
重武装とは思えない加速にわずかな距離でトップスピードに達し、その勢いを殺すことなくビルの壁に衝突する。1枚目、2枚目と1件のビルを突き破り隣のビルである3枚目の壁に激突しようやく止まった。巻き上がる粉塵の中ピクリとも動かないムルル、その内部では衝撃により一時的なシステムダウンが起きた。つまり気絶したのだ。
「あら?おねんねにはまだ早いですわよ?特別に私が直々に起こして差し上げますわ」
ゴン!
「カハッ!」
ムルルの腹部に深く剛腕が突き刺さり、鈍い音がサブアーム越しにエリアーデへと伝わる。
「お目覚めかしら?次で息の根を止めて差し上げますわ」
弓のように引かれる右サブアーム、拳は固く握られるのではなく開かれ槍の切っ先のように鋭い平手、それは貫手と呼ばれる相手を叩き伏せるのではなく、貫く為の形
『やめるんだ!エリー!』
叫ぶクロエ
『や、やめるんだな~!』
叫ぶストーカー
「おやすみなさい」
ムルルに止めの一撃が容赦なく飛んでいく。
それに誰もが息を飲んだ。
不吉な音が舞闘場に響いた。それは破壊音、公式戦では禁止されている神姫破壊行為、それを行ったものは重大な罰を科せられる。
力なく崩れ落ちエリアーデに覆いかぶさるようにその身を任せるムルル、それは誰もが最悪を予感した。
静まり返る観客、みな言葉を失っている。その静寂を打ち破ったのは
「冗談ですわ」
静寂を生んだ本人であるエリアーデだった。
貫手による渾身の一撃は横っ腹を通り壁に大きな穴を空けていた。
冗談の一言に一気にクロエの体中から力が抜ける。
『ふぅ~、心臓に悪い冗談はやめてくれ』
「ちょっと驚かせただけですわ、まったく、それよりもクロエ」
『なんだい?エリアーデ』
「さっき私のことをエリーと呼びましたわね」
どうやらとっさにエリーと愛称の方で呼んでいたらしい
『そうかい?』
「そうですわ!私をエリーと呼んでいいのは・・・二人きりの時と言ったはずですわ」
エリアーデが少し恥ずかしげに目を伏せた。
それに反応したのは試合を見ていた観客だった。
「な、なんですの!?」
湧き上がる歓声、その歓声の中にはツンデレサイコー、やら、罵ってくれ~、だのエリアーデには理解不能な言葉が飛び交う。
『そうだった、観客にはこちらの会話が聞こえるんだったね』
「な!・・・」
顔を真っ赤にするエリアーデ、全ての手がわなわなと震える。キッと目に涙を浮かべクロエを恨めしそうに睨みつける。
「終了のコールはまだですの!」
エリアーデの腕の中で今まで蚊帳の外にいたムルルが目を覚まし始めた。
『YOU WIN』
エリアーデへの勝利と試合の終了を告げる声が上がった。
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