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*鋼の心 ~Eisen Herz~
**第15話:リ・インフォース
「……で、見せたい物って何、祐一?」
「ああ、これなんだけどね……」
島田家に招かれたリーナと(特に理由も無く着いて来た)美空の前に、小さな箱が出された。
「……京子さんとの再戦まであと一週間ちょっと。だからそれまでに、アイゼンの新しい武器を作ろうと思うんだけどさ……」
そう言って祐一は箱を開ける。
「リーナの力を借りたい、手伝って欲しいんだ……」
そう言って祐一はそれを取り出した。
8月7日。
土方京子の予告した15日まであと……、8日。
それは同時に、天海神姫センターで行われる大会の日でもあった。
「ふ~ん、結構よく出来ているわね……」
そう言ってリーナが眺めるのは、神姫サイズのエアバイクだった。
フロート式で車輪の無いそれは、移動速度で劣るアイゼンの為に祐一が設計したもの。
だがしかし。ジェネレータの出力不足で満足な性能を出せず、結局お蔵入りとなった物だった。
「……つまり、これのエンジンを私に作れ、と言いたいのね?」
「ああ。リーナなら、俺には出来ない事でも出来ると思うから……」
単純な技術力の限界。
只の高校生に過ぎない祐一が突破できない壁。
それの打破は、目の前に居る小さな少女にならば可能な事の筈だった。
「でも、これだけじゃどうしようも無いでしょ? あいつらの能力は祐一も見た筈よ?」
「うん。強いよ、あの子たち……」
あの夜に出遭った、土方京子の神姫たち。
花の四姉妹。
「……まあ、武装神姫の初期開発者だって話だし、凄い武器とか作れるんだろうから、強いのは当然でしょ?」
「違うよ、美空」
祐一の否定は断言。
それは、彼女達の強さが性能に由来する物ではないと言う確信から来るものだった。
「あの子達の強さは、どちらかと言えば設計思想に基づく強さだよ」
「そうね……、技術力に差が無いとは言わないけれど。これ程の戦力差が出ているのは、土方京子の設計思想による所が大きいと思うわ……」
「どーゆう事?」
祐一とリーナの双方に否定され、美空が眉をしかめる。
「例えば、カトレア。強力なバリアとレーザーソードを持っている……。だから強い」
「うん」
「でもそれは、武装が強力だからじゃない。“格闘戦に特化した性能を持つ神姫”が、確実に“格闘戦に持ち込める武装”だから強いんだ」
その事実に比すれば、武装単体の性能などオマケのようなもの。
もとより性能に劣るアイゼンにとって、“自分より強い神姫”など珍しくも無い。
強力な武装を持った神姫などいくらでも相手にしてきたし、勝ってきた。
故に、祐一には分かる。
カトレアのように、戦術段階で明確な戦法を駆使する相手こそ、最も戦い難く、最も手強い相手なのだと。
「……ま、それはともかく。現実問題としてこれ(移動力)だけじゃ如何にもならないわ。何か、他に勝つ手を考えないと……」
エアバイクを祐一に返し、リーナが肩をすくめた。
「……元より、これだけで如何にかなるとは思ってないよ。……だから、こういう事を考えてみた」
そう言って、祐一は手にしたソレを分解し始める。
「これなら出力にも余裕が出来るし、拡張性も広がる。……性能次第では戦術の幅はとても広くなると思うよ?」
「……ふ~ん、なるほど……。こういう着眼点はさすがね、祐一……。ふむ……」
腕組みしてしばし。
リーナは机の上のメモ帳にサラサラと幾つかの数式を書き出して行く。
「リーナ?」
「……ん~、ちょっと待ってて」
投げ遣りな返事を返しながらも、メモの上を走るペンの動きは止まらない。
「………………………、出来た」
「?」
首を傾げる祐一に、書き終えたメモを渡すリーナ。
「一週間……。一週間よ。一週間でそこに書いてある以上の性能のジェネレータを造るわ。祐一はそれに見合う性能を出せるようにそれを改造なさい」
「……これって……。必要性能の3倍くらいあるんだけど?」
「それだけ余力があれば、ひとかどの物が作れるでしょう? どうせなら、究極の神姫を作りなさい!!」
リーナの書いたメモが真実ならば、それは確かにその土台となり得るものだった。
「……ああ、分かった。リーナが驚くようなものを作ってやるよ」
「ええ、楽しみにしてるわ……。それじゃ、少し席を外すわね、電話掛けてくる」
そう言ってリーナは席を立つ。
(さて、クリアしなきゃいけない問題が一つあるわね……)
そう、今のリーナにとって立ち塞がる壁は、国際電話の料金だった。
(…………ん~? あ、そうか!! 祐一の家の電話を使えばいいんだわ!! そうすれば、(私の払う)電話料金はタダになるじゃない!!)
所詮リーナも紙一重の人だった。
◆
「あのさ、祐一?」
「どうしたの、美空?」
モニターに映るアイゼンのデータと睨めっこしながら、祐一が返事を返す。
「……この先の戦い、やっぱり苦戦を強いられると思うのよ」
「……だろうね……」
その見解は祐一にも異論を挟む所はない。
「で、よ?」
「うん?」
「フェータにも、何か新しい装備が欲しいな~って思う訳よ」
「…………そう言えば……、確かアイゼンの装備として昔作ったものがあったような……」
立ち上がり、アイゼン用の装備の中でも失敗作に分類されるジャンクボックスを漁り始める祐一。
もちろん、失敗作(ジャンク)とは言っても“アイゼンにとっては”、である。
基本性能に劣る部分の多いアイゼンには使いこなせずとも、機能自体は市販の品に劣るものではない筈だった。
「……フェータに合いそうなのって言うと、これかな?」
「……羽根? アーンヴァルの物に似てるけど、少し大きいわね?」
「ベースはアーンヴァル。大型化して出力を高めると同時に、可変翼で機動性を向上させたもの。……慣性の打ち消しをバーニアに頼るんで、アイゼンじゃタイミングが取れなかったけど、フェータなら出来ると思うんだ……」
「う~ん、そういうのも良いけど、何かこう防御に使えるものも欲しいな~、と……」
「防御?」
それは、今までのフェータの戦法からすると、些か的外れとも取れる要求だった。
「……なんて言うのかな? この間のエウクランテ。あいつの突撃を見てて思ってのよ」
「……京子さんの……、ストレリチア?」
「そう、それ。すとれちあ?」
「ストレリチア」
「すとれいちあ?」
「ストレリチアだって」
「…す、すとれりちあ?」
「そう、そんな感じで」
「……ん?」
何かが記憶の隅に引っかかった様な気がしたが、美空はすぐに思い出す努力を放棄した。
「……で、ストレリチアがどうしたの?」
「そうそう。アイツを見てて思ったの。……やっぱり突撃最強!! って」
「………………うん、まぁ美空らしくてイインジャナイ?」
「何故カタコトになるの?」
「……で、それと防御力にどんな関係が?」
「う~ん、ほら。フェータって防御力低いから、敵の銃撃とか来たら回避を優先するじゃない?」
「当然と言えば当然だけどね……」
「でもよ、そこで銃撃を無視して突っ込めたらもっと簡単に敵を倒せるじゃない」
「……ああ、なるほど」
美空と知り合ったのはここ数ヶ月の事だ。時間で言えばその付き合いはかなり短い。
だがしかし、美空は己の性格を隠さない、偽らない。
集団の中で生きて行くには不利な性格かも知れないが、個人と付き合う上ではこの上なく理解されやすい性格でもあった。
(こういう所、俺とは真逆だな……)
そしてそれが、彼女の魅力なのだとも祐一は思う。
既に祐一は、彼女の思考をそれなりには理解できるようになっていた。
「……つまりだ、攻撃機会を増やす為の装備が欲しい訳だ?」
「そう、そんな感じで!!」
「……おっけ、分かった。何か考えてみる……」
「ホント? やたっ!!」
無邪気に微笑む美空を見て、祐一は苦笑する。
なんと言うのか、その……。
(喜ばせたくなるんだよな……)
そういう相手だったりするのだ。
◆
「やはり、出ましたか……」
モニターの光が村上の顔を照らし出す。
「……既に幽霊は開放され、審判は再開された。……か。難儀な事ね、全く……」
相対する雅の顔は、室内の闇に融け村上からは窺い知れない。
「……で、村上君の方は如何なの? デルタの調整はもう済んだ?」
「調整と言うか……。当日は大会用の装備で挑みますので、余り戦力的に当てにされても困りますが……。そうですね、支援ぐらいならば請け負いましょう……」
「……大会当日を指定して来たのにも、やっぱり意味が有るのかしら……?」
「神姫の数、がボーダーの一つである可能性は高いです。土方真紀の目的が復讐ならば、その示威を示す為により多くのユーザーをターゲットにすることは想像に難くありません」
雅の吐息が闇に熔ける。
「……セタの仕上がりはまあまあ。祐一と浅葱、それからリーナも心配は要らないでしょう……」
「問題は、美空さんですか?」
「……まぁ、祐一が面倒を見るとは思うんだけど……、ね」
普段面倒を見てくれる弟が、別の女の世話を焼く。
姉としてはかなり複雑な心境だった。
人としてはかなりダメだと思うが……。
◆
「……で、結局どうなさったんですか?」
「うん。祐一がフェータの為に、何か新しい装備を作ってくれるってさ♪」
「ゆ、祐一さんの……、装備……」
ほへ~、と融ろけた表情を浮かべるフェータ。
帰り道、笑みを浮かべて乳繰り合う美空とフェータを、リーナは複雑な顔で眺めていた。
(アレの調整だけでも大変な筈なのに……祐一、死んでなきゃ良いんだけど……)
国際電話で本社に連絡を取って、“製品”の実験用模型の手配は済ませた。
リーナ自身が設計した、画期的な機構のエンジンを10分の1にスケールダウンしたテストモデル。
無論、そのまま神姫の装備にはならないだろうが、剛性の高いエンジンフフレームを流用できるだけでも随分高い性能を得られる筈だった。
(……ふふふ。楽しみね……)
島田祐一にある種の才覚があるのは、リーナにもよく理解できた。
リーナや村上。それに土方京子とは違い、彼には別段凄い技術力がある訳でもない。
だが、彼の設計にはリーナたちには無い独特のセンスがあるのだ。
技術力の低さを補って尚余りある設計バランスと、コンセプトを明確に想定した装備の選択。
それだけで、既存品の組み合わせと性能の低いストラーフを最強クラスの一角に押し上げている手腕。
(そこに、“私”の技術力を投入したらどうなるのかしら……?)
技術者である以上、究極を求める以上。
リーナにも“最果て”に到達したいという欲求がある。
そしてそれが。その一端を。
島田祐一が見せてくれるような気がするのだ。
(さて、どうなる事やら……)
その時を思い描き、リーナは心を躍らせる。
歳相応の子供のように、期待に胸を高鳴らせる自分をリーナは驚愕と共に受け入れていた。
◆
決戦、そして大会の日まであと、……8日。
[[第16話:史上最大の戦い]]につづく
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アーマードコア4fAが面白すぎるので更新が遅れました。
全ミッションオールS。
ハードミッションもオールS。
カラードマッチも、ORCAマッチも全部クリア。
隠しパーツも取ったし、ナインボールエンブレムも取った。
…ので、もう一度最初からやってたんですわ、これが。
前回は「今回の主人公は、霞スミカの後継者らしいから初期機体はTELUSで、……企業はインテリオルだね~」と言いながら始めたので、今回は独立傭兵で始めたのですよ。
初期機体がアーリヤなので装甲は並以下。機動性と火力も両立できなませんが、ランク20、ヴェロノークの突破に苦戦したものの、何とかカラードマッチの制覇を達成。
これからようやくミッションですわ……。
って、神姫と余り関係ない話を続けるのもアレなので、少し関連性のある話でも。
fA最萌えキャラである(?)カラードランク2。リリウム・ウォルコット嬢。
彼女の声に聞き覚えがあると思ったら、バトロン種子の声の人だった事に気づいた今日この頃。
ALCは今日も汚染された地上でコジマ粒子をばら撒くのです。
単体のゲームにココまで嵌まったのは、エースコンバット5以来ですね……。
以上ALCでした。
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