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*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション09:エピローグ
「お姉ちゃん!!」
真紀の声に京子は振り返った。
「真紀!?」
浸水はそこかしこから始まっており、沈没は時間の問題だった。
「……あの子が!!」
ゆれる足場によろめく真紀の指差した先には、昼間出逢った少年が居た。
「……何をしているの!! 早く逃げて!!」
京子の声にも気付く様子は無く、少年はただ、その先を見つめて佇んでいる。
「……っ!!」
逡巡がめぐり、京子は退路を見る。
軋む船体は崩壊と崩落を始めており、脱出に使える時間は残り少ない。
見捨てる。
そういう選択肢が頭をよぎる。
「お姉ちゃん!! 助けてあげて!!」
「―――っ!!」
真紀の声をトリガーにして、京子は弾かれたように少年に駆け寄った。
「―――何を……」
少年の傍に辿り着いた時、京子は初めて彼が何を見ていたのかを知った。
歪み、開かなくなった扉。
そこにある、爪痕の憑(つ)いた丸い窓。
その先にある水没した個室。
その中にイル、事切れた男女。
死して尚、閉ざされる事のないその瞳が。
少年を見詰め続けていた。
「……、……」
少年の呟きが、彼らの素性を明らかにする。
「……まさか、ずっと見ていたのか?」
始まりから、終わりまで。
最も親しい肉親が。
死に到る。
その瞬間を。
「……っ!!」
京子は彼を抱きしめた。
「……往くぞ。……ここで死ぬ事など、……諦める事など。 私が許さない」
守りたいと思った。
だから、返事は聞かない。
期待もしては居なかった。
だが、京子は彼の手を引いて走り出す。
「真紀、行くぞ!!」
「うん!!」
出口まであと僅か。
外に出れば、救命ボートもある。
きっと、助かる!!
◆
CSCの治療において理想とされるのは。
“なったその瞬間”に、癒される事だろう。
例えば、壊れかかった心を救われた、この少年のように。
◆
出口まであと数歩。
崩落してきた天井が、少年を突き飛ばした京子を押し潰したのはその直後だった。
◆
―――真紀が泣いている。
(助けに行かなくちゃ……)
右目の奥に痛みと熱を感じる。
(身体が、動かない?)
―――真紀が、泣いている、のに……。
それを遠くに感じながら、京子の意識は遠のいて、行った……。
◆
それは。
もはや誰も知る事の無い、過去。
[[第14話:リ・インフォース]]につづく
[[鋼の心 ~Eisen Herz~]]へ戻る
----
これにて過去編終了。
なお、分かり難いかもしれませんが、時系列は、
プロローグ>エピローグ>インターミッション2~8>(5年間)>本編1話~
の順になっています。
番外編は……。
まあ、適当に……。
次回からは本編の続きで。
更新速度はまた落ちる、かな…?
ALCでした。
&counter()
*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション09:エピローグ
「お姉ちゃん!!」
真紀の声に京子は振り返った。
「真紀!?」
浸水はそこかしこから始まっており、沈没は時間の問題だった。
「……あの子が!!」
ゆれる足場によろめく真紀の指差した先には、昼間出逢った少年が居た。
「……何をしているの!! 早く逃げて!!」
京子の声にも気付く様子は無く、少年はただ、その先を見つめて佇んでいる。
「……っ!!」
逡巡がめぐり、京子は退路を見る。
軋む船体は崩壊と崩落を始めており、脱出に使える時間は残り少ない。
見捨てる。
そういう選択肢が頭をよぎる。
「お姉ちゃん!! 助けてあげて!!」
「―――っ!!」
真紀の声をトリガーにして、京子は弾かれたように少年に駆け寄った。
「―――何を……」
少年の傍に辿り着いた時、京子は初めて彼が何を見ていたのかを知った。
歪み、開かなくなった扉。
そこにある、爪痕の憑(つ)いた丸い窓。
その先にある水没した個室。
その中にイル、事切れた男女。
死して尚、閉ざされる事のないその瞳が。
少年を見詰め続けていた。
「……、……」
少年の呟きが、彼らの素性を明らかにする。
「……まさか、ずっと見ていたのか?」
始まりから、終わりまで。
最も親しい肉親が。
死に到る。
その瞬間を。
「……っ!!」
京子は彼を抱きしめた。
「……往くぞ。……ここで死ぬ事など、……諦める事など。 私が許さない」
守りたいと思った。
だから、返事は聞かない。
期待もしては居なかった。
だが、京子は彼の手を引いて走り出す。
「真紀、行くぞ!!」
「うん!!」
出口まであと僅か。
外に出れば、救命ボートもある。
きっと、助かる!!
◆
CSCの治療において理想とされるのは。
“なったその瞬間”に、癒される事だろう。
例えば、壊れかかった心を救われた、この少年のように。
◆
出口まであと数歩。
崩落してきた天井が、少年を突き飛ばした京子を押し潰したのはその直後だった。
◆
―――真紀が泣いている。
(助けに行かなくちゃ……)
右目の奥に痛みと熱を感じる。
(身体が、動かない?)
―――真紀が、泣いている、のに……。
それを遠くに感じながら、京子の意識は遠のいて、行った……。
◆
それは。
もはや誰も知る事の無い、過去。
[[第14話:ファンタズマ]]につづく
[[鋼の心 ~Eisen Herz~]]へ戻る
----
これにて過去編終了。
なお、分かり難いかもしれませんが、時系列は、
プロローグ>エピローグ>インターミッション2~8>(5年間)>本編1話~
の順になっています。
番外編は……。
まあ、適当に……。
次回からは本編の続きで。
更新速度はまた落ちる、かな…?
ALCでした。
&counter()
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