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*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション06:武装神姫
閃光が奔り、ターゲットは蒸散して果てる。
焦げたようなイオン臭が去ると共に、周囲に光が戻って来た。
否。
暗がりが戻って来た、と言うべきか。
白い闇。閃光が消え失せたのを確認し、京子はゴーグルを外した。
「流石です、京子さま。素晴らしい威力だと思います」
世界初のMMSである“彼女”はそう言って微笑んだ。
「……後はコストパフォーマンスかな? 出来れば、一射当たり10円位で納めたいわね……」
MMSが神姫としてホビーバトルをする事になれば、当然それはユーザーに浸透させなくては話にならない。
KemotechもFrontLineも、遊びや慈善事業でこの企画を立ち上げた訳ではないのだ。
商業である以上、その座は万人に解放されなくてはならなかった。
「……問題は放電管のチャージロスね、コレを押さえられれば実費で7円切ると思うのよ……」
「収束効率を落として、蓄電量を下げるのは如何でしょうか? ……私のように汎用動作で射撃するのではなく、専用のプログラムを用いれば命中精度はもう少し落としても通用する筈です」
「やっぱそれっきゃ無いか……」
本来“彼女”は射撃を考慮したプログラムを有しては居ない。
目視での測量と、計算による非効率な射撃方法では、そろそろテストの方も限界だった。
「……お~う、やっとるね。京子ちゃん」
「……芹沢さん」
「おはよう御座います、芹沢教授」
芹沢に頭を下げる“彼女”の言葉に時計を見れば、時刻は既に朝の10時。
寝る前にちょっと、のつもりで運用試験を始めたのは既に半日前の事だった。
「……眠いわけだ……」
京子は欠伸を噛み殺して伸びをする。
「んで、どうよ? LC1の調子は?」
芹沢の視線の先には試射の的となり、半ば消失しているターゲットボードの群れ。
「……どうやら、実用まで漕ぎ着けられそうじゃねぇ?」
「はい。私もネットで調べてみましたが、最先端の軍用レーザーにも無い画期的な機構が、いくつも盛り込まれているようです」
「……まあ、出力が低いから出来ることも多いんだけどね……」
軍事転用されそうな技術は思いついても使わないようにしていた。
真紀は、きっとそれを望まないから……。
「……所で芹沢さん。FL12の試作品って、もうロールアウトしたんですか?」
「ん? 確か先週試作品が出来て、起動実験をしてた筈だけど? ……まだCSCは載せずに従来型AIの有線接続だけどね」
ふむ、と京子は考え込んで。
「……芹沢さん。FL12の試作機、2,3機貰えませんか?」
「おチビちゃんでは不満かね?」
「……レーザー砲の他にも、幾つか装備のテストをしたいんです。ブースターのテストもしたいから、出来れば4機あるとベストですね……」
「ブースター?」
首を傾げる芹沢。
「……教授。京子さまの力作を目にしたら、きっと驚きますよ」
くすくすと、顔を綻ばせ“彼女”が微笑む。
「…………」
京子がパソコンから図面を呼び出すのを見ながら、芹沢の心境は複雑だった。
(……やれやれ、ワシ形無しじゃね。……つーかもう用済みっぽい?)
自分達が年単位で築きあげて来たものを、この姉妹はいともあっさり超えてゆく。
それは、嬉しくもあり、悔しくもある不思議な心境だった。
「で、京子ちゃんは何を造ったんじゃね?」
「……羽根です」
その二日後。試作型神姫FL12は飛行型MMSとして再調整を受ける事となる。
そして程なく。
MMSの営業方針は、武装神姫としてのホビーバトルに重点が置かれることとなった。
◆
CSCに伴う記憶障害には大きな特徴があった。
それは、記憶領域の拡大と、思考の加速、並列化。
言うなれば、愛用のパソコンからごっそりとデータが消失したようなもので、CSC患者の脳には使用可能な空白が大量に出来るのだ。
脳の処理能力は、当然のように常人を凌ぐようになる。
それは、先天性であれば『天才』と称される現象であった。
そして、その天才性はCSCの深度と比例する。
例えば。
軽度で回復してしまった少年は、常人でも珍しくない程度の天才性を持ち。
重度で固着してしまった少女は、もはや神託とでも称する他無い天才性を発揮した。
そして、自らも気付かぬ内にCSCに罹患し、一月かけて独力で回復したその少女は、世界最先端の技術を扱えるようになっていたのだった。
◆
「……武装神姫」
「はい、真紀さま。今後MMSは武装神姫としてバトルを中心とした展開を行っていくそうです」
真紀は、“彼女”の報告に少しだけ表情を歪めた。
「……」
「? 主よ、如何なさいましたか?」
真紀を主と仰ぐ“彼女”が、首を傾げて真紀の顔を覗き込む。
その時、病室の扉が慌しく開けられた。
「あ、真紀。私、これからちょっと研究室に行って来るね。……試作品のレーザーソードが出来たんで、カトレアに届けてくるわ」
「カトレア様ですか」
フロントラインとケモテックの、共同研究室に配置された4“人”の神姫。
その長女が、ラン科植物の名を冠する、格闘武器試験用の神姫だった。
「……あの、姉さん……」
「ん? 何、真紀? バスの時間あるから手短にね」
「…………あ、…………ん、……な、なんでも、無い……」
「……? それじゃあ行って来るけど食事、ちゃんとするのよ? 食事残すと香苗さん(看護婦さん)が心配するわよ?」
「……ん」
真紀が頷いたのを見て、京子は走り去った。
◆
(私にも、真紀の為に出来る事がある)
京子は走る。
(私も、真紀を喜ばせる事が出来る)
脇目も振らずに走る。
(武装神姫が世界に広まれば、それは真紀の想いが世界に広がることになる)
振り返る事も無く。
(私が強い装備を作る事で、それを手伝える!!)
残されたものに気付く事も無く…。
◆
「主よ、宜しいのですか? この計画は、京子さまの協力が不可欠と存じますが……」
「……いいわ。姉さんは……、そうね……」
真紀は、病室の窓から病院前のバス停を見る。
「……姉さんは」
そこでバスに駆け込む京子の姿を瞳に映したまま。
「……姉さんには、敵になってもらうわ」
そう、呟いた。
[[インターミッション07:おしまいの日]]につづく
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----
最近のプラモは凄いですね。
思わずガンダムスローネ3種買って、誰もが思いつくコンパチスローネ作ったさ。
色も青で塗り直して、ご満悦。
……ま、ALLガンダムマーカー仕上げですが何か?
AC4に嵌まっている身としてはアーリヤが欲しかったのだけど売り切れで入手できず。
明日当たり遠出してでも手に入れようかと考え中。
ALCでした。
*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション06:武装神姫
閃光が奔り、ターゲットは蒸散して果てる。
焦げたようなイオン臭が去ると共に、周囲に光が戻って来た。
否。
暗がりが戻って来た、と言うべきか。
白い闇。閃光が消え失せたのを確認し、京子はゴーグルを外した。
「流石です、京子さま。素晴らしい威力だと思います」
世界初のMMSである“彼女”はそう言って微笑む。
「……後はコストパフォーマンスかな? 出来れば、一射当たり10円位で納めたいわね……」
MMSが神姫としてホビーバトルをする事になれば、当然それはユーザーに浸透させなくては話にならない。
KemotechもFrontLineも、遊びや慈善事業でこの企画を立ち上げた訳ではないのだ。
商業である以上、その座は万人に解放されなくてはならなかった。
「……問題は放電管のチャージロスね、コレを押さえられれば実費で7円切ると思うのよ……」
「収束効率を落として、蓄電量を下げるのは如何でしょうか? ……私のように汎用動作で射撃するのではなく、専用のプログラムを用いれば命中精度はもう少し落としても通用する筈です」
「やっぱそれっきゃ無いか……」
本来“彼女”は射撃を考慮したプログラムを有しては居ない。
目視での測量と、計算による非効率な射撃方法では、そろそろテストの方も限界だった。
「……お~う、やっとるね。京子ちゃん」
「……芹沢さん」
「おはよう御座います、芹沢教授」
芹沢に頭を下げる“彼女”の言葉に時計を見れば、時刻は既に朝の10時。
寝る前にちょっと、のつもりで運用試験を始めたのは既に半日前の事だった。
「……眠いわけだ……」
京子は欠伸を噛み殺して伸びをする。
「んで、どうよ? LC1の調子は?」
芹沢の視線の先には試射の的となり、半ば消失しているターゲットボードの群れ。
「……どうやら、実用まで漕ぎ着けられそうじゃねぇ?」
「はい。私もネットで調べてみましたが、最先端の軍用レーザーにも無い画期的な機構が、いくつも盛り込まれているようです」
「……まあ、出力が低いから出来ることも多いんだけどね……」
軍事転用されそうな技術は思いついても使わないようにしていた。
真紀は、きっとそれを望まないから……。
「……所で芹沢さん。FL12の試作品って、もうロールアウトしたんですか?」
「ん? 確か先週試作品が出来て、起動実験をしてた筈だけど? ……まだCSCは載せずに従来型AIの有線接続だけどね」
ふむ、と京子は考え込んで。
「……芹沢さん。FL12の試作機、2,3機貰えませんか?」
「おチビちゃんでは不満かね?」
「……レーザー砲の他にも、幾つか装備のテストをしたいんです。ブースターのテストもしたいから、出来れば4機あるとベストですね……」
「ブースター?」
首を傾げる芹沢。
「……教授。京子さまの力作を目にしたら、きっと驚きますよ」
くすくすと、顔を綻ばせ“彼女”が微笑む。
「…………」
京子がパソコンから図面を呼び出すのを見ながら、芹沢の心境は複雑だった。
(……やれやれ、ワシ形無しじゃね。……つーかもう用済みっぽい?)
自分達が年単位で築きあげて来たものを、この姉妹はいともあっさり超えてゆく。
それは、嬉しくもあり、悔しくもある不思議な心境だった。
「で、京子ちゃんは何を造ったんじゃね?」
「……羽根です」
その二日後。試作型神姫FL12は飛行型MMSとして再調整を受ける事となる。
そして程なく。
MMSの営業方針は、武装神姫としてのホビーバトルに重点が置かれることとなった。
◆
CSCに伴う記憶障害には大きな特徴があった。
それは、記憶領域の拡大と、思考の加速、並列化。
言うなれば、愛用のパソコンからごっそりとデータが消失したようなもので、CSC患者の脳には使用可能な空白が大量に出来るのだ。
脳の処理能力は、当然のように常人を凌ぐようになる。
それは、先天性であれば『天才』と称される現象であった。
そして、その天才性はCSCの深度と比例する。
例えば。
軽度で回復してしまった少年は、常人でも珍しくない程度の天才性を持ち。
重度で固着してしまった少女は、もはや神託とでも称する他無い天才性を発揮した。
そして、自らも気付かぬ内にCSCに罹患し、一月かけて独力で回復したその少女は、世界最先端の技術を扱えるようになっていたのだった。
◆
「……武装神姫」
「はい、真紀さま。今後MMSは武装神姫としてバトルを中心とした展開を行っていくそうです」
真紀は、“彼女”の報告に少しだけ表情を歪めた。
「……」
「? 主よ、如何なさいましたか?」
真紀を主と仰ぐ“彼女”が、首を傾げて真紀の顔を覗き込む。
その時、病室の扉が慌しく開けられた。
「あ、真紀。私、これからちょっと研究室に行って来るね。……試作品のレーザーソードが出来たんで、カトレアに届けてくるわ」
「カトレア様ですか」
フロントラインとケモテックの、共同研究室に配置された4“人”の神姫。
その長女が、ラン科植物の名を冠する、格闘武器試験用の神姫だった。
「……あの、姉さん……」
「ん? 何、真紀? バスの時間あるから手短にね」
「…………あ、…………ん、……な、なんでも、無い……」
「……? それじゃあ行って来るけど食事、ちゃんとするのよ? 食事残すと香苗さん(看護婦さん)が心配するわよ?」
「……ん」
真紀が頷いたのを見て、京子は走り去った。
◆
(私にも、真紀の為に出来る事がある)
京子は走る。
(私も、真紀を喜ばせる事が出来る)
脇目も振らずに走る。
(武装神姫が世界に広まれば、それは真紀の想いが世界に広がることになる)
振り返る事も無く。
(私が強い装備を作る事で、それを手伝える!!)
残されたものに気付く事も無く…。
◆
「主よ、宜しいのですか? この計画は、京子さまの協力が不可欠と存じますが……」
「……いいわ。姉さんは……、そうね……」
真紀は、病室の窓から病院前のバス停を見る。
「……姉さんは」
そこでバスに駆け込む京子の姿を瞳に映したまま。
「……姉さんには、敵になってもらうわ」
そう、呟いた。
[[インターミッション07:おしまいの日]]につづく
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最近のプラモは凄いですね。
思わずガンダムスローネ3種買って、誰もが思いつくコンパチスローネ作ったさ。
色も青で塗り直して、ご満悦。
……ま、ALLガンダムマーカー仕上げですが何か?
AC4に嵌まっている身としてはアーリヤが欲しかったのだけど売り切れで入手できず。
明日当たり遠出してでも手に入れようかと考え中。
ALCでした。
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