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*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション05:CSC(その2)
「う~す、おっはー」
陽気な挨拶と共に芹沢九十九が現れた。
「……また来た……」
「やほ」
「……やほ」
渋い顔をする京子の横で、真紀が無表情にその手を挙げる。
「随分普通に戻ってきたね、真紀ちゃん」
「おかげさまで……」
変人ではあるが、同時に恩人でもある。
京子も芹沢には強く出られなかった。
「……大学の教授なんでしょう? こんなに足繁く病院に来ている暇があるんですか?」
「いや~、それがね。最近はケモテックで顧問技術者をやっているから、授業なんか全部人任せ」
「……ダメな大人」
京子が溜息を吐く。
「そう言えば、この間真紀ちゃんにお願いされた物、手に入れてきたよ~」
「真紀が?」
「うん、MMSの基礎資料見せたら、『これが欲しい』って」
「……真紀に変なもの見せてるんじゃ無いでしょうね?」
どういう訳か、真紀は芹沢に懐いているようで、芹沢の影響を強く受けているようだった。
何時だったか、猫耳と犬耳について真剣に議論していたことがあるのを思い出し、京子は頭を抱える。
「……で、何を持ってきたの?」
「試作品のMMS素体と、結晶記憶体とか、後よく分からないものが数点じゃのぅ」
「そんなの持ち出して良いの? 企業秘密とかあるんでしょう?」
「いいのいいの。隠してこっそり研究するより、真紀ちゃんの柔軟な発想にインスピレーションを得ることの方が大切なのじゃよん」
「……」
「……後は、前の脳波データ……」
「あいよ、言われたとおりに処理して持ってきた。……でも、こんな重複しまくってるデータで何するの?」
「……適応放散」
「???」
真紀の言葉が理解できなかったのは芹沢も同じのようで、彼はその日そのまま帰った。
その後、芹沢の去った病室で、真紀が一心にMMSと繋いだパソコンを弄っているのが、強く印象に残っていた。
◆
それは、神姫の産声。
―――それが、神姫の産声。
◆
「始めまして、芹沢教授」
「……」
芹沢が息を呑む。
「私は、MMSオートマトン。名前は―――」
流麗な自己紹介をする“彼女”は、人間ではなかった。
「……そんな、事が……」
呆然と、それを見る芹沢。
芹沢の心境は心の欠けた真紀には分からない。
京子がそれを知るには、芹沢と同じだけの時を生きる必要があるだろう。
真紀の膝の上の“彼女”は、身長15cmのロボットだった。
それは、後に武装神姫と呼ばれる事になる最初の一人。
そして、5年後の天海において、『幽霊』の名で語られる最強の“神姫”だった。
◆
誰が悪い訳でもない。
そう言う意味では、彼女の敵は世界そのものだったのかもしれない。
◆
「……凄い結果だよ、身体性能も思考性能もこちらの想定を遥かに上回っている」
KemotechとFrontLineが共同で設立したMMSの開発室、その一室で芹沢が“彼女”のデータの解析結果を纏めていた。
「特に思考関連は凄いね。……チューリングに完全に対応できるAIなんて100年は出来ないと思っていたよ」
「……凄い?」
「凄いとも。いや、凄すぎるよ。コレはもう人間の道具じゃない。人類の新しいパートナーになるかもしれないよ」
「……パートナー?」
「うん、人間の新しい友達だね」
「……友達」
そう呟く真紀の顔は相変わらずの無表情のまま。
だがしかし、心なしか嬉しそうにも見え、京子は視線を外す。
(……芹沢さんが、真紀を……)
妹の心を解き放って行くのが自分ではない事に、京子は少なからず疎外感を覚えていた。
「……あの、芹沢さん。これは?」
彷徨わせていた視界の隅に、一振りの剣を見つけ、京子はそれを芹沢に問う。
なぜならばそれは、人の為の剣ではなく、明らかにMMSの為の剣であったからだ。
「ああ、それか。フロントラインの方からね、MMSに戦闘をさせる企画が来て、その試作品だよ」
「……」
よく見れば剣の他にも、銃などの武器が幾つも置かれている。
「……?」
その一つ、一番大きな塊を手にしてみるが、何なのかよく分からない。
「……それ、レーザー砲なんだってさ」
呆れたように溜息を吐く芹沢。
「……最も、出力もたいした事無い癖に大きすぎて、到底使い物にはならないみたいだけどね……」
「……」
確かに、触媒のルビーレンズもサイズと想定出力の相違を調整されておらず、放電管の造りも粗雑過ぎる。
内部の反射鏡も無駄に大きな構造で、重量と収納の無駄遣いも良い所だ。
これでは大した威力も射程も無いレーザー数発の射撃で、根本から破損する事は誰の目にも明らかだろう。
「…………ん~」
「興味ある? なんならそれ、上げても良いよ」
「……いいの?」
「どうせサンプルとしてもらったものだし、肝心のMMSがこんな性能を出したんだ。今までの想定で作った武器なんてもうゴミだよ」
「……」
頭の中で青地図ができる。
(触媒の構造を多重構造にして、反射鏡の透過率を変更。あとは屈折率の最大効率を計算しなおして……)
京子の頭の中でレーザー砲を称した鉄塊が、大きくその姿を変えてゆく。
より軽く、より強く。
それが、京子にしか出来ないことなのだと、彼女自身が知るのはまだまだ先の事。
◆
そして、それは彼女達の運命を変えてゆく……。
[[インターミッション06:武装神姫]]につづく
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作中で触れているチューリングテストについて少々捕捉。
チューリングテストとはチューリング博士によって提唱されたAIに対するテストです。
チャットなどでAIに対して質問をし、その回答を人間(テスト官)が吟味し、AIか人間かを判断するというもの。
テスト官は自由に質問を行ってよく、AIは可能な限り人間に近い返答をすると言うもの。
この際、AIはわざと時間をかける、間違える、などをして人間を装うことも許される。
幾つか反論も出たが、作中の(そして皆様の想像する)神姫はこの反論すら許さぬほどに完璧なAIを備えている。
ここまで来るともう、相手がAIか人かを判断する意味は無いと思う。
◆
AC4fA、今もプレイ中。
アセンしているだけで数時間潰れる。
でも幸せ。
相変わらずビジュアル重視の重AC。
ARGYROS/H
EKHAZAR-CORE
SOLDNER-G8A
SOLDNER-G8L
FLUORITE
EB-R500
MUSSELSHELL
OGOTO
MUSSELSHELL(肩)
はい、お分かりですね。
性能なんて何処か遠くの空の彼方です。
でもそれで良い。
夢はコイツで全てのハードミッションをSクリア。
……無理か?
ALCでした。
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