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*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション03:原罪
CSC(Claudia Spiritual Condition)
精神性特殊障害の一種。
災害、事故、犯罪などにより精神的に強いダメージを受けた場合に陥る可能性のある精神障害。
直接の原因は不明だが、統計的に患者の多くは10代の少年少女。
主な症状は、自発的行動の極端な低下を始めとする無反応症。
症状が進行することでも知られ、最終的には殆どの患者が植物状態に陥り、程なく死亡する。
中度以下の場合、肉親など親しい人間との会話で症状の進行を遅らせられる例が確認されている。
軽度であれば、比較的初期の段階で上記の対応を取る事で完治する事が確認された。
また、大小の差異はあれ、患者の殆どが記憶障害を併発する。
◆
「ふぅ……」
近藤勇斗は溜息をつく。
時間は深夜。
眠気をコーヒーで押さえ、何度も読み返した資料をめくる。
それは、何度読み直しても絶望的な回答しか出てこない。
「先生、それ……?」
ナースの一人がそんな近藤の傍に来た。
「ああ、例の501の患者ですよ……」
「真紀ちゃんですか。お姉ちゃんが泊り込みで看病している……」
CSCと言う珍しい症状ゆえか、京子と真紀の存在はこの病院では有名だった。
「……難病、なんですよね?」
「そうですね、今までに完治した例は殆どありません」
「……日本では、あの男の子が始めてだったんですよね?」
「ええ」
その少年は、京子が目覚める数日前に、姉を名乗る肉親により心を取り戻した。
「……京子ちゃんも、すぐに目が覚めていれば……。真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……」
「言っても仕方の無い事です……」
「でも、入院した時には真紀ちゃんの方が、あの男の子よりも軽度だったじゃないですか」
CSCは軽度の段階で対処を行う事で完治する可能性がある。
「……症状がこんなに進行してしまう前に京子ちゃんが目覚めていれば……」
そして、症状の進行が進めば、完治の見込みは消えてゆくのだ。
「……芹沢さん」
近藤はそう言ってナースを嗜める。
言っても仕方の無い事だった。
「でも、見てられないです。……真紀ちゃんの段階から治った例なんて、一件も無いんですよ!? それでも京子ちゃんは……」
「まだ、可能性が無くなった訳ではありません」
例が無いならば、作るだけだ。
その為に医者がいる。
近藤は、その為に居る。
「……反応をする事がなくても、まだ完全に感情が失われたとは限りません。……もしも、今の彼女の思考が分かれば、そこから彼女の興味を引く物を探し、反応を求めることが出来るかもしれません……」
「機械とかで、人間の心が読めたら良いんですけどね……」
「嘘発見器のように、ですか?」
近藤は苦笑する。
「……私が知りたいのはもう少し深い内容です。……できれば、人間の脳波から感情や心を数値化できるような……」
「…………………ん~?」
ナース、芹沢香苗は首をかしげた。
「……芹沢さん? どうかしましたか?」
「ああ、いえ。そう言えば、お爺ちゃんがそんな事を言ってたな~、って」
「…はい?」
近藤が、芹沢九十九に連絡を取ったのはその8時間後の事だった。
◆
……息が出来ない。
このまま死んでしまえたら、きっと楽だろう。
京子は、暗い廊下を進む。
真紀の名が聞こえた。
だから立ち止まって―――。
―――それを、聞いてしまった。
(……京子ちゃんも、すぐに目が覚めていれば……)
CSC。
その病名も聞き覚えがあった。
(―――真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……)
それは、ある段階まで症状が進むと、最早完治しない。
(……真紀ちゃんの段階から治った例なんて、一件も無いんですよ!?)
そうなのか。
もう、真紀は……。
(……日本では、あの男の子が始めてだったんですよね?)
もう、決して。
(でも、入院した時には真紀ちゃんの方が、あの男の子よりも軽度だったじゃないですか)
決して、治らない……。
「結局、私の所為なのか……?」
京子が目覚めたのは、事故から一月以上経ってからの事。
(……症状がこんなに進行してしまう前に京子ちゃんが目覚めていれば……)
その一月の間に。
(―――真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……)
最早、何もかもが手遅れになっていた……。
「……真紀……っ!」
◆
誰が悪かったのだろうか?
土方京子か。
土方真紀か。
それとも……。
◆
ダレカ。
タスケテ…。
◆
土方京子、土方真紀。
土方敏夫、利江夫妻の娘。
両親は船舶事故により死亡。
親類、縁者、共に無し。
◆
土方京子は、
誰も、
頼るべき者を持っていなかった。
[[インターミッション04:芹沢九十九]]につづく
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----
人類は衰退しました③
読んでいると幸せになる本。
未読。
うん、発売日に買ったんだけど勿体無くて読めない。
もうしばらくわくわく感を楽しみつつ、外では世界樹Ⅱをやっているダメ社会人です。
(↑挨拶)
以上。
ALCでした。
執筆BGM=妖精帝国。
&counter()
*鋼の心 ~Eisen Herz~
**インターミッション03:原罪
CSC(Claudia Spiritual Condition)
精神性特殊障害の一種。
災害、事故、犯罪などにより精神的に強いダメージを受けた場合に陥る可能性のある精神障害。
直接の原因は不明だが、統計的に患者の多くは10代の少年少女。
主な症状は、自発的行動の極端な低下を始めとする無反応症。
症状が進行することでも知られ、最終的には殆どの患者が植物状態に陥り、程なく死亡する。
中度以下の場合、肉親など親しい人間との会話で症状の進行を遅らせられる例が確認されている。
軽度であれば、比較的初期の段階で上記の対応を取る事で完治する事が確認された。
また、大小の差異はあれ、患者の殆どが記憶障害を併発する。
◆
「ふぅ……」
近藤勇斗は溜息をつく。
時間は深夜。
眠気をコーヒーで押さえ、何度も読み返した資料をめくる。
それは、何度読み直しても絶望的な回答しか出てこない。
「先生、それ……?」
ナースの一人がそんな近藤の傍に来た。
「ああ、例の501の患者ですよ……」
「真紀ちゃんですか。お姉ちゃんが泊り込みで看病している……」
CSCと言う珍しい症状ゆえか、京子と真紀の存在はこの病院では有名だった。
「……難病、なんですよね?」
「そうですね、今までに完治した例は殆どありません」
「……日本では、あの男の子が始めてだったんですよね?」
「ええ」
その少年は、京子が目覚める数日前に、姉を名乗る肉親により心を取り戻した。
「……京子ちゃんも、すぐに目が覚めていれば……。真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……」
「言っても仕方の無い事です……」
「でも、入院した時には真紀ちゃんの方が、あの男の子よりも軽度だったじゃないですか」
CSCは軽度の段階で対処を行う事で完治する可能性がある。
「……症状がこんなに進行してしまう前に京子ちゃんが目覚めていれば……」
そして、症状の進行が進めば、完治の見込みは消えてゆくのだ。
「……芹沢さん」
近藤はそう言ってナースを嗜める。
言っても仕方の無い事だった。
「でも、見てられないです。……真紀ちゃんの段階から治った例なんて、一件も無いんですよ!? それでも京子ちゃんは……」
「まだ、可能性が無くなった訳ではありません」
例が無いならば、作るだけだ。
その為に医者がいる。
近藤は、その為に居る。
「……反応をする事がなくても、まだ完全に感情が失われたとは限りません。……もしも、今の彼女の思考が分かれば、そこから彼女の興味を引く物を探し、反応を求めることが出来るかもしれません……」
「機械とかで、人間の心が読めたら良いんですけどね……」
「嘘発見器のように、ですか?」
近藤は苦笑する。
「……私が知りたいのはもう少し深い内容です。……できれば、人間の脳波から感情や心を数値化できるような……」
「…………………ん~?」
ナース、芹沢香苗は首をかしげた。
「……芹沢さん? どうかしましたか?」
「ああ、いえ。そう言えば、お爺ちゃんがそんな事を言ってたな~、って」
「…はい?」
近藤が、芹沢九十九に連絡を取ったのはその8時間後の事だった。
◆
……息が出来ない。
このまま死んでしまえたら、きっと楽だろう。
京子は、暗い廊下を進む。
真紀の名が聞こえた。
だから立ち止まって―――。
―――それを、聞いてしまった。
(……京子ちゃんも、すぐに目が覚めていれば……)
CSC。
その病名も聞き覚えがあった。
(―――真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……)
それは、ある段階まで症状が進むと、最早完治しない。
(……真紀ちゃんの段階から治った例なんて、一件も無いんですよ!?)
そうなのか。
もう、真紀は……。
(……日本では、あの男の子が始めてだったんですよね?)
もう、決して。
(でも、入院した時には真紀ちゃんの方が、あの男の子よりも軽度だったじゃないですか)
決して、治らない……。
「結局、私の所為なのか……?」
京子が目覚めたのは、事故から一月以上経ってからの事。
(……症状がこんなに進行してしまう前に京子ちゃんが目覚めていれば……)
その一月の間に。
(―――真紀ちゃん、治ったかも知れないのに……)
最早、何もかもが手遅れになっていた……。
「……真紀……っ!」
◆
誰が悪かったのだろうか?
土方京子か。
土方真紀か。
それとも……。
◆
ダレカ。
タスケテ…。
◆
土方京子、土方真紀。
土方敏夫、利江夫妻の娘。
両親は船舶事故により死亡。
親類、縁者、共に無し。
◆
土方京子は、
誰も、
頼るべき者を持っていなかった。
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人類は衰退しました③
読んでいると幸せになる本。
未読。
うん、発売日に買ったんだけど勿体無くて読めない。
もうしばらくわくわく感を楽しみつつ、外では世界樹Ⅱをやっているダメ社会人です。
(↑挨拶)
以上。
ALCでした。
執筆BGM=妖精帝国。
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