「アルファ」(2006/10/28 (土) 01:21:10) の最新版変更点
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**-”A”-
私はアーンヴァルタイプのMMS。
愛称はアルファ。
マスターが最初に購入したMMSだから。
”A”を指すコード。
闘技場へはマスターのセカンドカーで行き来する。
マスターが運転し、他の神姫たちは後部シート。
セカンドシートは私の定位置だ。
帰路。
戦績が悪いときは家までの一時、この位置は地獄に感じる。
戦績が良いときは天国だ。
運転中、マスターが私たちに言葉をかけることは無い。
それでも
機嫌の良いマスターの横顔を眺めていられる。
他の神姫たちの目を気にせずに。
ガレージに車を入れるとマスターはさっさと二階の居住区画へと階段をあがっていく。
他の神姫たちはこのガレージが兵舎となる。
指揮官機である私だけが二階に入ることを許されていた。
「今日はよくやった。
各自装備の手入れがすんだらゆっくり休め。
後はまかせたぞ、ブラボー。」
今日の戦闘データのやりとりを終えると私は二階へと向かう。
人間用の階段も飛行ユニットを装備したアーンヴァルタイプの私には苦にならない。
「失礼します!」
ドアにあけられたMMS用の出入り口
(元はネコ用だと聞いた)の前で声をあげてから5秒後に入室する。
マスターが入室を拒むときは何か返事があるからだ。
返事がないということは入室を許可されたと判断するのが常だった。
マスターはさっそくネットワーク端末に向かい、今日のニュースに目を通されている。
机の角へと飛び上がって、直立不動の姿勢をとる。
「戦闘結果のご報告にあがりました」
「ん。データ送っといてくれ」
ちらりと私を一瞥して視線をモニターへ戻す。
「マスター…」
私の言葉をさえぎるように小さくため息をつくマスター。
「ワイヤレスは情報漏れの危険性が高い。か?
ったく・・・」
ネットワーク端末につないだ接続用ケーブル、
その先を指でつまむマスター。
私はこれ以上ないくらい素早い動きで
自分の端子口をあける。
「接続準備完了!」
──!!
ズブリと一気に差し込まれる端子。
その衝撃が全身をかける。
カチリと私の奥に端子がおさまる。
声が出そうになる。
マスターはモニターへ視線を戻してネットワーク端末を操作しはじめる。
端子をくわえこんだ私の部分が熱くなる。
んぅぅ・・・
有線接続にどうしようもない昂りを感じる。
マスターの横顔。
マスターがネットワーク端末を操作する動作。
それを見て机の端で身悶えする自分。
…最低だ。
頭の中であらん限りの罵倒を自分に浴びせる。
でも
コアが熱くなるのがとまらない。
マスター!マスター!マスター!
………
……
…
「…だなぁ。まぁ、こんなもんか…」
ブッ!
モニターを眺めながら片手で乱暴に端子を引き抜くマスター。
「ひぁ」
思わず小さな声が漏れた。
本棚の隅。
何かの部品を梱包していた気泡緩衝シート
(プチプチのアレ)が私のベッドだ。
ここからだと部屋が見渡せる。
警備には最良のポジション。
そして、マスターの寝顔も。
武装神姫のAIは成長する。
それが武装神姫の魅力であり強さであると言う。
そしてAIの成長に失敗したものは捨てられる。
…
AM6:45
そっと、マスターの枕元へ降り立つ。
寝息でマスターが熟睡していることを確認する。
「…マスター…」
大きなその頬へそっと自分の頬を寄せる。
温かい。
不自然なその格好のままでも
苦痛を感じないこの身体に感謝する。
AM6:59
そっと身を離して目覚まし時計の鳴るのを待つ。
”piririri!!!!!”
「起床時間です!おはようございます!マスター!」
挨拶が返ってくるかどうかは…
残念ながら確率が悪い。
「ガラクタども!お前らはマスターを愛しているかっ?!」
配下の神姫を前にして今日も私は闘技場の格納庫で叫ぶ。
「相手のガラクタどもを残らずファックしてやれ!総員出撃!!」
私は戦い続ける。
オイルと硝煙にまみれて。
失敗したと言われぬように。
捨てられぬように。
愛しているから。
-end-
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