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「第四章第壱節:{離別と愛}」(2008/04/07 (月) 23:42:17) の最新版変更点
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{離別と愛}
あの事件から一ヶ月が過ぎた。
俺は無事に退院し、すぐにVIS社に駆け込んだったのだが。
予想していた通りに門前ばらいだった。
でも諦めずに無理矢理侵入しようとしたら、警備が厳重ですぐに捕まってしまう事が解り、現状では門の前で指を咥えてただ建物を見ている状態。
そこで俺の頭脳を24時間フル回転で働かせ色々と考えたのだが…どれもこれも無駄と解ってしまった。
所詮、一介の大学生が考える程度じゃ無理という事だ。
『畜生』『悔しい』『会いたい』『助けたい』そんな気持ちで俺の心はいっぱい。
最初はそんな気持ちだった。
しかし時間が過ぎる度にその気持ちはダンダンと薄れてっていく。
会いたくても会えない。
苦しい、とても苦しい。
この手で抱きしめたい、この足で追いかけたい、この唇でキスしたい、身体全体で感じたい。
そう思う度に胸が苦しい、頭が痛い。
こんなに苦しいと思った事は初めてかもしれない。
だから俺は逃げた。
こんなに思い苦しい、でも会えないのなら忘れようと思ったのだ。
もし、あのまま彼女達の事を思っていたのなら、俺は壊れてしまっていたかもしれない。
それ程、俺は彼女達のが事が好きなのだ。
クリナーレの事が好きだ。
ルーナの事が好きだ。
パルカの事が好きだ。
アンジェラスは…愛している。
でも会えない、会いに行く事も出来ない。
だから苦しい。
もう嫌だ。
苦しいのはコリゴリだ。
そして今の俺はすっかり彼女達のいない世界で…再び前の生活に逆戻りしながら生きていた。
…。
……。
………。
「だからさぁ、そいつがドジふんで面白いのなんのって!」
「………」
今、俺の部屋で俺と久しぶりに会った婪がベットに座りながら談笑していた。
そして珍しく婪は暗い顔して居た。
何かあったのだろうか?
俺は婪の顔を覗き込んで見ると。
「!?婪、お前なんで泣いてるだよ!?!?」
そう、婪は泣いていたのだ。
理由は解らない。
いったいどうしたのだろうか?
「先輩…先輩は辛くないのですか?」
「ハッ?なんだよ行き成りやぶから棒に」
「アンジェラス達が居なくなってからの先輩はおかしいです。まるで嘘の塊の世界に溺れているような感じです」
「ッ!?」
婪は顔を上げ、目は涙で真っ赤にしていても瞳の奥深くにある信念で、俺の心の奥底に封印をこじ開けようとした。
なんでこいつは、こういう時に核心を突いてくるかなぁ。
「おいおい、俺はバイトをクビになったんだぜ。あいつ等と別れるのは当たり前じゃないか」
「そうですね。かなり無理矢理な内容だったみたいだけど」
ガサガサと持ってきた鞄から紙を取り出してきた婪。
そして俺のその紙を見せる。
こ、この手紙は姉貴からの!?
病院で見た時にブチ切れてクシャクシャにして投げつけた紙だったのだ。
でも婪が何故その手紙を持ってるんだよ!?
「先輩が全身麻酔で寝ている頃に部屋入ったら、こんな手紙が落ちていたの」
「…はぁ~……」
そーいうことかい。
なら婪があの事件の内容を知っているかもしれないということか。
あの時ちゃんと捨てておくべきだった。
「先輩、これからどうするの?正直に言うけど、今の先輩はただの腑抜けです」
「!? お前に俺の何が解るてんだ!俺はな!!」
「『俺はな』何!?その後の続きは何?何が言いたいの??言い訳なら言わない方がいいよ、自分には嘘つけないんだから!」
「ッ!?」
…婪が本気で怒った。
いつもオチャラケている婪が…俺を真剣な眼差しで見て。
俺はそんな婪に度肝を抜かれて口を噤んだ。
そして何も言えなくなった。
情けないぜ…情けなさすぎる。
図星を突かれたという理由もあるけど、なによりも今の自分の状態を再認識して後悔していた。
俺は彼女達の事が好きだ。
でも会えない。
会おうと努力したけど全て無駄だった。
いや『無駄だった』と決めつけたのだ。
苦しくて、痛くて…心が壊れそうだったから『諦めた』という事にしてしまったのだ。
だから俺は彼女達の事を必死に忘れようとした、記憶にあれば心が締め付けられ壊れそうだったから。
思い出せば苦しいから。
自分を騙し騙ししながら生きる事にした俺は時間が過ぎて幾たびに苦しみから解放されていった。
でも何処かで、『自分』は記憶の片隅では忘れないようにしていたのも事実。
だからこうして『後悔』している。
婪が言ってる事は正しい。
…でも。
「でもどうすればいいだ!方法は色々と考えたさ!!でも全て無駄だった…だから俺は…」
「だから自分に嘘ついてきたんですか?」
「あぁそうさ!もうウンザリになったんだよ!!もう嫌になったんだよ!!!もう忘れたかったんだよ!!!!」
婪に向かって怒鳴り散らす俺。
…ホント、駄目な野郎だな俺は。
これじゃあ行き場の無い怒りを婪に八つ当たりしているだけじゃないか。
頭で解っていても精神がかなり参ってる俺はこうするしかなかった。
パンッ!
「ツァッ!?」
「………」
婪が右手で俺の左頬をビンタした。
一瞬は何が起こったのか解らなかった、でも左頬が痛みだしてきたら気づいた。
俺は叩かれた左頬を左手で触りながら婪を見た。
「どうしてっ!?どうしてそんなこと言うの!?!?」
「婪…」
泣きながら俺に問いかけてくる婪。
俺はというと婪のビンタによって落ち着きを取り戻してきたいた。
「俺は…正直に言ったままだよ。それにこれで納得して決めた事だ」
「嘘、なんでそんな嘘つくの」
「嘘じゃない!」
「嘘よ!」
「なんで俺が嘘つかないといけないんだよ!」
「じゃあ何で先輩は泣いてるの!」
「エッ!?…ッ!?!?」
婪にそう言われた瞬間、俺の両頬に液体みたいなものが流れ出した感触がした。
右手で触れてみるとそれは俺の目から流れたものだと解った。
…俺が…泣いてる?
なんで?
どうして?
「これは…何かの…間違いだ」
「まだ自分に嘘つくんですか?」
「俺は…」
「先輩は既に自分でも分かっているはずです。だって分かっていなかったら、泣くはずがないもん」
「何を解って…?」
「それをあたしの口から言っちゃったら先輩のためになりません」
涙を流しながらニッコリと笑う婪。
俺は…。
俺は…自分に嘘ついていた。
『嘘』という言葉で自分で塗り固め忘れようとした。
何を忘れようとした?
その時だ。
俺の脳に四人の声が聞こえた。
『ご主人様』『アニキ』『ダーリン』『お兄ちゃん』と脳に響く。
彼女達?
そうだ、俺は彼女達を忘れようとした。
記憶を上書きするように『彼女達』と過ごしてきた記憶を無くそうしていたのだ。
でも、もう全て思い出した!
俺の記憶から彼女達と過ごしてきた思い出が全部蘇ってくる!
俺は…『嘘』から解放されたのだ。
「婪…」
「なに、先輩?」
「俺、思い出したよ。そして嘘はもうつかない。俺はアンジェラス達の事が好きだ!」
「先輩!うん、うん。やっぱり、あたしの先輩はそうでなくちゃ!!」
「ごめんな、婪。見苦しい俺を見せちまって…」
「ううん。あたしは先輩のことが好きだから。だから先輩の為を思って言ったまでだよ」
「迷惑をかけた。大きな借りが出来ちまったぜ」
「あはははっ。でも先輩はこれで大丈夫そうですね。ならあたしここまで。後は先輩が考えて決めることですね。それじゃあね」
「アッ…」
婪はベットから腰を上げ俺の部屋を出て行こうとしていた。
そんな時だ、俺の心に何か引っかかってる感じがした。
このまま婪を帰らしていいものなのか?
まるでこのまま帰らしたら婪との関係がこれ以上進まないような気がする。
なんかそれでは駄目なような気がする。
えぇい、まどろっこしい!
今この場で決めるぞ!
俺は!
[[婪を引き止める!]]
[[…このまま行かせる。]]
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