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**無頼13「零下の戦場」
&bold(){ガキィン…!}
拳と拳、剣と剣がぶつかり合う。
ここはバトルロンド筺体、神姫達の戦場である。
「しばらく見ないうちに、随分と腕を上げたな…マオ!」
ビームセイバーを持ち、澄ました顔で答える犬型ハウリン。
氷男聖憐所有の神姫"零牙"だ。
「にゃ~だって、いつまでもアホじゃないのニャ!」
両手にドリルを装備し、鋭い回転音で相手をけん制する猫型マオチャオ。
真光一所有の神姫"マオ"である。
"蒼穹の猟犬"と"まるかじり猫子"。
アオゾラ町神姫センターの二つ名持ち同士の対決であった。
「行くぞ! &bold(){零牙流剣技"零距離無限衝撃刃"!!}」
「&bold(){ツインふぁいなるドリドリあたーっく!!}」
お互いの武器が交差する直前、それは起こった。
目の前に、突如として光の濁流が起こり、二人を呑み込んだ。
「!!」「にゃっ!?」
かしゃん
あまりにも軽い音が響いた。
光が消えた時、そこには倒れた二人の姿があった。
『マオ! 一体何があった!?』『零牙! 聞こえてますか…!?』
しかし、その眼は虚ろで、何も映していない。
ただ、死んだように動かないだけであった。
&bold(){<<緊急事態発生、バトルを中断します。>>}
----
「なんて事だ…」
苦虫を噛潰した表情で、長瀬が呟く。
神姫のAIデータ、すなわち"魂"を盗む行為は、裏バトルではよくある事だ。
この前も、"G"の暗躍によって犯罪グループの一つが検挙されている。
しかし、今回のは初めてのケースであった。
ごく普通のバトルロンド筺体で、同時に複数の神姫が"魂"を抜き去られている。
しかも狙い澄ましたかのごとく、多数のトップランカーが対戦中に、である。
「長瀬さん、一体何が起きたんですか?」
「いや、なんでもない。…今日は臨時閉店だからもう帰ってくれ」
偶然、センターに居なかった形人が聞くも長瀬は無回答であった。
(くそっ…!!)
『お客様に申し上げます。只今バトルロンド筺体に致命的なトラブルが発生しましたので、誠に申し訳ありませんが対戦コーナーを臨時閉鎖させていただきます。お客様には大変なご迷惑を…』
----
街中のとあるマンション。
「さて…どうするか」
長瀬は考えていた。
彼も裏社会で活動する者である。"G"には劣るが各種技術はプロ級の腕前を持っている。
しかし、彼には警察へのツテが思い当たらない。
犯人逮捕なくては事件解決にはならない。
しかし、どうする?
「センターから持ってきたログから、ハッキングすべき場所は特定してある…が。救出しても元をそのままにしておけば…」
「また、同じ事をする…ですね大尉」
ベルクトの模範的解答に、思わずため息をつく。
「あの、なにかいけない事でも…?」「いや、違う」
「"G"に依頼すれはいいんじゃないの?」
「ジュラ、エルゴはこの時期忙しいのですよ。これ以上手間を増やしたら、店長が倒れてしまいますよ」
この前だって、裏ルートでラースタチュカの修理を依頼した。その時、彼の目の下にはクマが出来ていた。
たぶん、また事件を解決したのだろう。彼には少しでも休養が必要だ。
「…そうだ! そう言えば先輩がMMS犯罪担当だったな…。何で思い出さなかったのだろう」
「先輩…ですか?」
「ああ、あいつなら俺のやっている事も知っている。…たしか電話帳に…」
「先輩をあいつ呼ばわりですか…」
~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~
「データリンク。…準備完了だ」
三人の体には直接コードが装着されていた。"魂"の、電子世界への突入のためである。
コードは小型端末からUSBを通して接続されている。
端末には、メモリースティックが四つ。電子世界用の武装データと、
万が一、還ってこなかった場合のバックアップ。
「…絶対に帰って来い。俺は身内に死なれるのが嫌いなんだ」
「解ってるよ、祁音」「電子の世界か…、勝手が違います」
普段とはまったく勝手が違う世界への初陣に、不安の色を隠せないベルクト。
「むしろ気象影響無効プログラムを仕組んである分、こっちの方が有利だ。
…飛び続けろ、それが命令だ」
「…了解しました、大尉」
「…キャプテン。いえ…マスター」
「なんだ?」
少し、恥かしい表情を見せるラスター。
「もし…、私が消えても…私はマスターの側に居ます」
「どうした? いきなり」
「マスターが"バックアップ"に私たちをコピーしてないのは、始めから…マスターと出会ってこの仕事を始めた時から気付いてました」
「本当は"相手にだって死んでほしくない"、それはマスターが昔よく口にしていたではないですか…」
「だから…本当は私だって…あの子たちを屠るのは嫌なんです…。でも…」
「"でも"?」
「でも、それが人間に危害を与える…罪のない神姫(こ)たちを毒牙に掛けるなら…私は堕天使になります」
「もういい、お前の気持ちはよく「私は…自らの生まれを呪っています」…!?」
長瀬が見た時。彼女は、目から無数のしずくを零していた。
「ラスター…」
「私が…、人間に生まれていたら……」
「あなたをこの手で抱く事が出来たのに……っ!」
人差し指をそっとラスターの頭にのせ、撫でる。
「…ラスター、そんな事で悩むな」「えっ…」
「人間と神姫、サイズは違えど心は一緒だ。悩み事があったら俺に言え」
「…」
「なるべく、叶えてやるから」
そう言う長瀬の顔には、笑顔。
「…はい!」
「ねぇ? だったら今度、新型の長距離ミサイル買ってくんない?」「わたしはレールガンが…」
「お前らシリアスも緊張感もないな…」
"やっぱりこうなるか"と、長瀬はため息をついた。
----
「各員、準備はいいか?」
『チェルミナートル1 電子世界への転送、完了しました』
『チェルミナートル2 準備は終わってるわよ』
『こちらチェルミナートル3 準備よし』
「全機、ゲートに飛び込め!」
『『『ヤーッ!』』』
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たとえ体が違えど、心は同じ。
武装神姫と人間。遮る壁は、体のサイズのみ…。
[[後編へ行く>無頼14「零下の館」]]
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[[流れ流れて神姫無頼]]に戻る
[[トップページ]]
拳と拳、剣と剣がぶつかり合う。
ここはバトルロンド筺体、神姫達の戦場である。
「しばらく見ないうちに、随分と腕を上げたな …マオ。」
ビームセイバーを持ち、澄ました顔で答える犬型ハウリン。
氷男聖憐所有の神姫"零牙"だ。
「ニャーだって、いつまでもアホじゃないのだ!」
両手にドリルを装備し、鋭い回転音で相手をけん制する猫型マオチャオ。
真光一所有の神姫"マオ"である。
"蒼穹の猟犬"と"まるかじり猫子"。
アオゾラ町神姫センターの二つ名持ち同士の対決であった。
「行くぞ!!」
「ツインふぁいなるドリドリあたーっく!!」
お互いの武器が交差する直前、それは起こった。
目の前に、突如として光の濁流が起こり、二人を呑み込んだ。
「!!」「にゃっ!?」
かしゃん
光が消えた時、そこには倒れた二人の姿があった。
『マオ! 一体何があった!?』『零牙、聞こえてますか…!?』
しかし、その眼は虚ろで、何も映していない。
ただ、死んだように動かないだけであった。
&italic(){<<緊急事態発生、バトルを中断します。>>}
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(なんて事だ…ッ!!)
苦虫を噛潰した表情で、長瀬が呟く。
神姫のAIデータ、すなわち"魂"を盗む行為は、裏バトルではよくある事だ。
この前も、"G"の暗躍によって犯罪グループの一つが検挙されている。
しかし、今回のは初めてのケースであった。
ごく普通のバトルロンド筺体で、同時に複数の神姫が"魂"を抜き去られている。
「長瀬さん、一体何が起きたんですか?」
「いや、なんでもない。…今日は臨時閉店だからもう帰ってくれ」
偶然、センターに居なかった形人が聞くも長瀬は無回答であった。
(くそっ…)
『お客様に申し上げます。只今バトルロンド筺体に致命的なトラブルが発生しましたので、誠に申し訳ありませんが対戦コーナーを臨時閉鎖させていただきます。お客様には大変なご迷惑を…』
----
街中のとあるマンション。
「さて…どうするか」
長瀬は考えていた。
彼も裏社会で活動する者である。"G"には劣るが各種技術はプロ級の腕前を持っている。
しかし、彼には警察へのツテが思い当たらない。
犯人逮捕なくては事件解決にはならない。
しかし、どうする?
「センターから持ってきたログから、ハッキングすべき場所は特定してある…が。救出しても元をそのままにしておけば…」
「また、同じ事をする…ですね大尉」
ベルクトの模範的解答に、思わずため息をつく。
「あの、なにかいけない事でも…?」「いや、違う」
「"G"に依頼すれはいいんじゃないの?」
「ジュラ、エルゴはこの時期忙しいのですよ。これ以上手間を増やしたら、店長が倒れてしまいますよ」
この前だって、裏ルートでラースタチュカの修理を依頼した。その時、彼の目の下にはクマが出来ていた。
たぶん、また事件を解決したのだろう。彼には少しでも休養が必要だ。
「…そうだ! そう言えば先輩がMMS犯罪担当だったな…。何で思い出さなかったのだろう」
「先輩…ですか?」
「ああ、あいつなら俺のやっている事も知っている。…たしか電話帳に…」
「先輩をあいつ呼ばわりですか…」
&bold(){~・~・~・~・~・~・~}
「データリンク。…準備完了だ」
ラスター、ジュラの体には直接コードが装着されていた。"魂"の、電子世界への突入のためである。
コードは小型端末からUSBを通して接続されている。
端末には、メモリースティックが四つ。電子世界用の武装データと、
万が一、還ってこなかった場合のバックアップ。
「…絶対に帰って来い。俺は身内に死なれるのが嫌いなんだ」
「解ってるよ、祁音」
「ご無事を祈ってます、先輩」
"副業"とは無関係であるベルクトが、ジュラを心配そうに見る。
「…キャプテン。いえ…マスター」
「なんだ?」
少し、恥かしい表情を見せるラスター。
「もし…、私が消えても…私はマスターの側に居ます」
「どうした? いきなり」
「マスターが"バックアップ"に私たちをコピーしてないのは、始めから…マスターと出会ってこの仕事を始めた時から知っていました。
本当は"相手にだって死んでほしくない"、それはマスターが昔よく口にしていたではないですか…」
「甘い考えね…」
ジュラは口をはさむ。が、直ぐに黙った。
「だから…本当は私だって…あの子たちを屠るのは嫌なんです…。でも…」
「"でも"?」
「でも、それが人間に危害を与える…罪のない神姫(こ)たちを毒牙に掛けるなら…私は堕天使になります」
「もういい、お前の気持ちはよく「私は…自らの生まれを呪っています」…!?」
長瀬が見た時。彼女は、目から無数のしずくを零していた。
「ラスター…」
「私が…、人間に生まれていたら……」
「あなたをこの手で抱く事が出来たのに……っ!」
人差し指をそっとラスターの頭にのせ、撫でる。
「…ラスター、そんな事で悩むな」「えっ…」
「人間と神姫、サイズは違えど心は一緒だ。悩み事があったら俺に言え」
「…」
「なるべく、叶えてやるから」
そう言う長瀬の顔には、笑顔。
「……そうやってすぐはぐらかす、…マスターの悪い癖です」
そう言い抱えた両膝で顔を隠す、だがその顔は林檎のように真っ赤であった。
「ねぇ? だったら今度、新型の長距離ミサイル買ってくんない?」「わたしはレールガンが…」
「お前らシリアスも緊張感もないな…」
"やっぱりこうなるか"と、長瀬はため息をついた。
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二人は電子の世界へと飛び込んだ。
優先事項は、攫われた魂たちの救出。
次点は各種証拠の獲得である。
現時点で、成功する確率はよく解らなかった、
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