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「幻・其の十八 ~鼓動、重ねて~」(2008/02/13 (水) 21:27:22) の最新版変更点
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「……ちょっと、待って。それは……」
「言わないと、わかんない?」
そういうわけじゃない。僕だって、普通の高校生の知識は持ってるつもりだ。だから、梓を「抱く」ことの意味くらい、わかる。
「……どうして」
けど、行為の意味がわかることと、どうしてそんなことを言い出すのかをわかることは、別問題で。
「そんなこと……」
「……悲しい顔、見たくないもん」
「そうじゃ、なくて……!」
そんな理由で彼女を抱くなんてのは、いくらなんでもできない。
「どうしてそうまで、僕に構うの!? 僕なんか放っておいたって、いいじゃないか!」
今まで、僕が頑なに他人との接触を避けてきた理由。ひとつは、父のしたことを知られたくなかったこと。そしてもうひとつ、ネロと出会って、過ごして、そしてさっき気付いた。
いなくなるのが嫌だから。仲良くなって、親しくなって、そして別れるのがつらいから。
それで、無意識に人との関わりを避けていた。
なのに。
「……どうしてかな。私だってわかんないよ」
梓は、そんなことを言いながら、さらに強く、抱き締めてくる。
「わかんないけど……、半端な気持ちで、言ってるんじゃないから」
強く、強く。
「それに……、私にとっては、慎一君は『なんか』じゃない」
ふと、鼓動が速くなっているのに気付いた。
「……それとも、私じゃ興奮しない?」
「い、いや、それは……」
「そーだよね、私胸も小さいし、ねぇ。こんだけ押し付けてても、なーんにも言ってくれないんだもんね」
「いっ……!」
……今更ながら、梓の胸が当たってるのに気付く。余計に鼓動が速くなった……ような気がした。
「お? 少しはドキドキしてきてる、かな?」
「……やめろよっ!」
振りほどいて、振り向いた。そして、
「……やっと、顔見せてくれた」
「……」
そこにあった梓の表情に、思わず見惚れた。
「何か……暑いね、ここ」
「……うん」
「冷房、入れる?」
「……いや、いい」
心臓が、さっきから物凄い強さで打ち続けている。
目に涙を溜めて、泣きながら、それでも笑おうとしている、梓の顔が近づいてくる。
「……ん」
唇が、重なった。
少し、触れただけの、幼いキスだったけど。
「……いい、の?」
「……いいよ」
リビングで、というわけにもいかないから、梓の部屋に入れてもらった。
「……えっと」
とは言ったものの、どうすればいいかはよくわからない。
「……ごめん、ちょっと、むこう、向いてて」
「あ、う、うん」
言われたとおり、頭ごと反対側に向ける。後ろから、衣擦れの音が聞こえて。
「……いいよ」
視線を元に戻すと、白い下着姿の梓がいた。
「……は、恥ずかしいね、やっぱり」
正直、どう答えればいいのか。
迷ってたら、先に梓の方から、ベッドに横たわった。
「……」
無言で、その上に覆い被さる。
「やっぱり、初めて?」
「……うん」
「……私も初めて」
首に腕を回され、引き寄せられた。そのまま、もう一度キス。
「……ふふ」
「え?」
「私、なんかすごくドキドキしてるよ?」
そう言って、梓は僕の手を取って、自分の胸に置いた。
「ほら」
「……ん」
そこから先は、よく覚えてない。ただ、お互いの心臓の音を聞きながら、鼓動を重ねて、僕達は繋がった。
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「……!」
落ちかけていた意識が、何とか覚醒し直した。
「大丈夫か?」
「……ええ、多分」
ネロを何とか救うため、彼女のデータをすべて洗い出し始めてすでに4時間。日付が変わる頃になって、私の眠気はピークに達した。
というのも、修也君がここに来て少しした頃、ほんのわずか、ネロに反応があったから。
もしかしたら、助けられるかもしれない。
そう思って作業を進めて、この時間に。舞や秋も、今はクレイドルの上。
「……かすみ」
「うん、大丈夫」
はやては、何とか起きていてくれている。修也君も。
さっき感じた、「何も出来ない」という挫折感を、今度は払拭したかったし、それ以上に、救いたかった。
たとえ彼女が、幻だとしても。確かに、ここにいたのだから。
そして、時計の針がさらに一回りして。
「……これだ!」
その手掛かりは、思ったより遥かに、近くにあった。
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「戻りたい?」
目の前の、私じゃない私、イヴの言葉に、私はうなずいた。
「……はい。私は、慎一のいるトコロに、戻りたいです」
「そう……。じゃあ」
ふと、イヴが右腕を振り上げた。
「……!」
その手に、いつの間にか剣が一振り、握られている。
それを、私に渡して。
「……それで、私を突き刺しなさい」
……え?
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