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「第六話『再開・天薙』」(2008/01/16 (水) 21:37:32) の最新版変更点
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*ハウリングソウル
*
第六話
*『再開・天薙』
医務室を出た私はまずノワールをウェストポーチから引っ張り出した。
普段なら抵抗するノワールも今はされるがままになっている。よっぽどあの空間がいやだったのだろう。
そのまま手のひらを胸ポケットに近づけるといそいそと中に入っていった。今は上半身だけ出してこれからどこに行くのか、とこちらを見上げている。
「とりあえず必要なものを買おう。お前達の弾丸とシャンプーと・・・・・」
「マイスター」
と、私の言葉をノワールが遮った。
彼女にしては珍しい。
「ノワール・・・・戦いたい。ブレード・・・・使いたい」
そう呟いた。
本来悪魔型MMSは格闘戦を主体に設計されている。大きな背面ユニットも脚部のパーツも、本来なら格闘に生かされるはずの代物である。事実、ハウが来る前のノワールはブレードとナイフを主体とした戦闘スタイルだった。
相手が自分のスピードを上回ると判断すると、彼女は躊躇なく脚部パーツを背面ユニットを切り離しアングルブレードだけで戦いを挑んでいた。
だがしかし彼女は基本武装としてガトリングを選んだ。
それは・・・・・ハウに対する気遣いでもあった。
『刃物恐怖症』
ハウは刃物が怖くて仕方が無いのだ。家に来た時は特にその症状が顕著に現れた。
――――私が料理をしていると常にノワールの後ろに隠れていた。私がダンボールの箱を開けるときも。
一番最初に気づいたのはノワールで。それ以来彼女は刃物の使用を自らに禁じた。
「・・・・いいよ。それじゃぁ筐体のある方へいこう」
私は胸ポケットに入れたノワールに肯くと、筐体の集まっているバトルルームに歩き出した。
自動ドアをくぐるといきなり歓声が耳に付いた。
何事かと前方を見るとバトルの真っ最中だった。
どうも天使型と侍型の闘いらしい。
「・・・・・ふぅん・・・・あの紅緒、凄いじゃないか」
「マイスター・・・・“アカオ”じゃなくて“ベニオ”・・・・」
ノワールの呟きを無視して、筐体上部に設置された巨大なモニターを眺める。
そこには“自然”をイメージした戦闘空間、『オープンフィールド』が展開されている。そのフィールドを、一つの紅い影が疾走していた。軽装状態の紅緒である。
そしてそのはるか上空には、普通の天使型よりも大きな翼を持つアーンヴァルが紅緒を見下ろしていた。
その様はまるで下界を見下ろす天使の様でもある。
「薫さん、そのまま避け続けて。敵の弾切れを狙って!」
「承知!」
彼女のマスターであろう。まだ幼さの残る少年が薫と呼ばれた紅緒に指示を出す。
上空からアルヴォ・PDWを撃ち続けている天使型の弾丸を薫はことごとく避けていた。みると本当に数ミリの所で避けている。あの運動性はもしかしたらハウに匹敵するかもしれないな。
「・・・・アンジー。先方は君に無駄玉を撃たせるつもりのようだぞ。君ならどうする?」
「戦法を・・・・・変更します。このまま撃ち続けても当たらないなら、いっそ接近戦に持ち込んだほうが・・・」
「正解だアンジー。なら見せてやれ、俺とお前の戦いを!」
対する天使型のマスターは、その、何と言うかやり手のサラリーマンと言うか生徒会長というか、とにかくそんな感じの男だった。
・・・・・・ご丁寧にメガネまでかけている辺り、彼は自分のキャラクター性をよく理解している。
「マイスター・・・・バトル、したい」
胸ポケットから不満そうにノワールが言う。
「そうはいってもだね、今会場は天使対侍という異種格闘戦に夢中で相手なんていないぞ」
私がそういうとノワールは不満そうに、もそもそと胸ポケットに引っ込んでしまった。
いじけてしまった様だ。
・・・・・・・・・本当にこいつは悪魔型のストラーフなのだろうか?
とりあえず私はバトルルームに設置された観戦用の椅子に座る。
ここは・・・・・禁煙じゃないな。
ノワールは胸ポケットでいじけてるし。煙草を吸うなら今のうちか。
箱を取り出し一本取り出す。口に咥え火を点けてから煙を吸い込む。
・・・・・・・うん、良い感じ。
と、私の隣に誰かが座った。
横目で見たが男性のようだ。彼も煙草を吸いに来たのだろう。どうも挙動不審だと思ったらライターを探しているようだ。
「・・・・・・ほれ」
「あ?」
見かねた私が火の付いたオイルライターを差し出すと彼は軽く会釈して火を点けた。
そのまま満足そうに煙を吸い込む。
「あんがとよ。助かったぜ・・・・・・・・あ? ・・・・・あんた、確か今朝の本屋の・・・?」
「え? ・・・・あ、今朝の客だ」
隣に座って煙草を咥えている男は今朝、本屋に来た客だった。今日最初で最後の客である。
「奇遇ですね。バトルでもしに来たんですか?」
「今日は野暮用さ。・・・・別に敬語を使わなくてもいいよ。あんまり好きじゃないんだ」
「それじゃお言葉に甘えてっと・・・・俺もどうも敬語は苦手でなぁ」
私が言うと彼は随分と砕けた口調になった。こっちが彼の本来の口調なのだろう。
男は天薙龍悪(てんち たつお)と名乗った。変な名前だ。
「神姫はどうしたんだ? 今朝は四体もつれてたじゃないか」
「家で留守番。散歩してくるって行って抜け出してきた。家じゃ吸えなくてなぁ・・・・アンジェラスがうるさいんだ」
そういって彼は苦笑した。
アンジェラス・・・・確かノーマルの天使型か。
「君もか。私もノワールがうるさくてな」
「ノワールって言うとあの悪魔型か。チーグルでレジ打ちやってた」
私は無言で肯いた。
まぁノワールは今も胸ポケットに入っているが多分寝ているだろう。あいつはよく不貞寝をするからだ。
「お互い大変だな~。愛煙家は肩身が狭いぜ」
「全くだ」
それだけ言うとお互いに話すことがなくなってしまい。暫くはゆらゆらと紫煙が上っていた。
何となく居心地が悪い。
私はとりあえず神姫関係で何か、話題はないかと最近のニュースを思い出そうとして・・・・一つ、ある話を思い出した。
「なぁ天薙」
「・・・ん? 何だ?」
天薙は呆けたような顔でこちらを振り返った。
もしかしたら苗字で呼ばれるのに慣れてないのかもしれない。
「『切り裂き』と言う、違法神姫について何か知らないか?」
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*ハウリングソウル
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第六話
*『再開・天薙』
医務室を出た私はまずノワールをウェストポーチから引っ張り出した。
普段なら抵抗するノワールも今はされるがままになっている。よっぽどあの空間がいやだったのだろう。
そのまま手のひらを胸ポケットに近づけるといそいそと中に入っていった。今は上半身だけ出してこれからどこに行くのか、とこちらを見上げている。
「とりあえず必要なものを買おう。お前達の弾丸とシャンプーと・・・・・」
「マイスター」
と、私の言葉をノワールが遮った。
彼女にしては珍しい。
「ノワール・・・・戦いたい。ブレード・・・・使いたい」
そう呟いた。
本来悪魔型MMSは格闘戦を主体に設計されている。大きな背面ユニットも脚部のパーツも、本来なら格闘に生かされるはずの代物である。事実、ハウが来る前のノワールはブレードとナイフを主体とした戦闘スタイルだった。
相手が自分のスピードを上回ると判断すると、彼女は躊躇なく脚部パーツを背面ユニットを切り離しアングルブレードだけで戦いを挑んでいた。
だがしかし彼女は基本武装としてガトリングを選んだ。
それは・・・・・ハウに対する気遣いでもあった。
『刃物恐怖症』
ハウは刃物が怖くて仕方が無いのだ。家に来た時は特にその症状が顕著に現れた。
――――私が料理をしていると常にノワールの後ろに隠れていた。私がダンボールの箱を開けるときも。
一番最初に気づいたのはノワールで。それ以来彼女は刃物の使用を自らに禁じた。
「・・・・いいよ。それじゃぁ筐体のある方へいこう」
私は胸ポケットに入れたノワールに肯くと、筐体の集まっているバトルルームに歩き出した。
自動ドアをくぐるといきなり歓声が耳に付いた。
何事かと前方を見るとバトルの真っ最中だった。
どうも天使型と侍型の闘いらしい。
「・・・・・ふぅん・・・・あの紅緒、凄いじゃないか」
「マイスター・・・・“アカオ”じゃなくて“ベニオ”・・・・」
ノワールの呟きを無視して、筐体上部に設置された巨大なモニターを眺める。
そこには“自然”をイメージした戦闘空間、『オープンフィールド』が展開されている。そのフィールドを、一つの紅い影が疾走していた。軽装状態の紅緒である。
そしてそのはるか上空には、普通の天使型よりも大きな翼を持つアーンヴァルが紅緒を見下ろしていた。
その様はまるで下界を見下ろす天使の様でもある。
「薫さん、そのまま避け続けて。敵の弾切れを狙って!」
「承知!」
彼女のマスターであろう。まだ幼さの残る少年が薫と呼ばれた紅緒に指示を出す。
上空からアルヴォ・PDWを撃ち続けている天使型の弾丸を薫はことごとく避けていた。みると本当に数ミリの所で避けている。あの運動性はもしかしたらハウに匹敵するかもしれないな。
「・・・・アンジー。先方は君に無駄玉を撃たせるつもりのようだぞ。君ならどうする?」
「戦法を・・・・・変更します。このまま撃ち続けても当たらないなら、いっそ接近戦に持ち込んだほうが・・・」
「正解だアンジー。なら見せてやれ、俺とお前の戦いを!」
対する天使型のマスターは、その、何と言うかやり手のサラリーマンと言うか生徒会長というか、とにかくそんな感じの男だった。
・・・・・・ご丁寧にメガネまでかけている辺り、彼は自分のキャラクター性をよく理解している。
「マイスター・・・・バトル、したい」
胸ポケットから不満そうにノワールが言う。
「そうはいってもだね、今会場は天使対侍という異種格闘戦に夢中で相手なんていないぞ」
私がそういうとノワールは不満そうに、もそもそと胸ポケットに引っ込んでしまった。
いじけてしまった様だ。
・・・・・・・・・本当にこいつは悪魔型のストラーフなのだろうか?
とりあえず私はバトルルームに設置された観戦用の椅子に座る。
ここは・・・・・禁煙じゃないな。
ノワールは胸ポケットでいじけてるし。煙草を吸うなら今のうちか。
箱を取り出し一本取り出す。口に咥え火を点けてから煙を吸い込む。
・・・・・・・うん、良い感じ。
と、私の隣に誰かが座った。
横目で見たが男性のようだ。彼も煙草を吸いに来たのだろう。どうも挙動不審だと思ったらライターを探しているようだ。
「・・・・・・ほれ」
「あ?」
見かねた私が火の付いたオイルライターを差し出すと彼は軽く会釈して火を点けた。
そのまま満足そうに煙を吸い込む。
「あんがとよ。助かったぜ・・・・・・・・あ? ・・・・・あんた、確か今朝の本屋の・・・?」
「え? ・・・・あ、今朝の客だ」
隣に座って煙草を咥えている男は今朝、本屋に来た客だった。今日最初で最後の客である。
「奇遇ですね。バトルでもしに来たんですか?」
「今日は野暮用さ。・・・・別に敬語を使わなくてもいいよ。あんまり好きじゃないんだ」
「それじゃお言葉に甘えてっと・・・・俺もどうも敬語は苦手でなぁ」
私が言うと彼は随分と砕けた口調になった。こっちが彼の本来の口調なのだろう。
男は天薙龍悪(てんち たつお)と名乗った。変な名前だ。
「神姫はどうしたんだ? 今朝は四体もつれてたじゃないか」
「家で留守番。散歩してくるって行って抜け出してきた。家じゃ吸えなくてなぁ・・・・アンジェラスがうるさいんだ」
そういって彼は苦笑した。
アンジェラス・・・・確かノーマルの天使型か。
「君もか。私もノワールがうるさくてな」
「ノワールって言うとあの悪魔型か。チーグルでレジ打ちやってた」
私は無言で肯いた。
まぁノワールは今も胸ポケットに入っているが多分寝ているだろう。あいつはよく不貞寝をするからだ。
「お互い大変だな~。愛煙家は肩身が狭いぜ」
「全くだ」
それだけ言うとお互いに話すことがなくなってしまい。暫くはゆらゆらと紫煙が上っていた。
何となく居心地が悪い。
私はとりあえず神姫関係で何か、話題はないかと最近のニュースを思い出そうとして・・・・一つ、ある話を思い出した。
「なぁ天薙」
「・・・ん? 何だ?」
天薙は呆けたような顔でこちらを振り返った。
もしかしたら苗字で呼ばれるのに慣れてないのかもしれない。
「『切り裂き』と言う、違法神姫について何か知らないか?」
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