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「光と影のクリスマス 中編」(2007/12/24 (月) 08:39:33) の最新版変更点
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*光と闇のクリスマス 中編
「おーい、大変な事になったぞ!!」
ある日の夕方、授業が終わったいずるのもとに、恒一が駆け込んできた。
「今度の対戦相手、Bクリスマスが出場する事になったぞ」
「ま、まさかそんなこと…」
いずるはそのことが未だに信じられずにいた。なぜなら、あのBクリスマスが出場するのはまだ先だと思っていたからだ。
「今回のバトルは勝ち抜き戦だ。勝つごとにポイントが加算されて、合計の点数で勝ち負けを競うルールになっている。だから、Bクリスマスに当たる可能性が高いというわけだ」
「もし対戦するとしたら、どのような対策を立てたらいいだろう?」
「そうだな、まず今までの戦法じゃ無理だろうな。ホーリーは物事を考えなさそうな性格だからな。とりあえず、小百合さんの研究ルームでヴァーチャルバトルを重ねたほうがいいと思う。それで対策を練った方がいいだろう」
「とにかく、このまま戦ったら負けるのは必至だ。早く小百合さんのところに言って対策を練らないと」
ふたりは帰りがてら小百合のいる研究所に立ち寄った。しかし小百合の答えは意外なものだった。
「これは困ったわね…。今のままじゃ経験値は増やせても、対策案がないと防ぎようがないわ。ある程度時間があれば何とかなるんだけど…」
「そこを何とかしてくれよ、このままじゃホーリーがシュートレイと同じ目にあっちまう!!」
焦る恒一を横目に、いずるは何かを考えていた。
「…小百合さん、追加ユニットと合体してホーリーをパワーアップさせる事はできますか?」
「それは考えていたわ。すでに本体は出来上がってるし。でも、肝心のAIが未完成なのよ」
その言葉を聞いて期待していた恒一はますます落ち込んだ。
「なんだよ、ぬか喜びさせやがって」
「とにかく今日は帰りなさい。今度の休みにでも対策を採りましょう。そのときにホーリーたちを連れてきて」
今の状態では無理だと感じたのか、いずるたちは小百合の研究所を後にした。
家に帰ってきたいずるはホーリーのパワーアップの事を考えていた。
(パワーアップといっても、どうするんだろう?小百合さんは専用のユニットを開発してるって言うけど…)
そこへ、ホーリーが目の前に飛び出してきた。
「どうしたの?深刻な顔して」
「あ、ああ。何でもない。それより、お前の方は大丈夫か?どこか悪いところはないか?」
「ううん、どこも悪いところはないよ。いきなりどうしたの、いずる?何かあったの?」
ホーリーは心配そうな顔をしていずるの顔を覗き込んだ。
「いや、近いうちにバトルがあるから、万全の状態でいてほしいと思ってね」
「なあんだ、そういうことか。今のところ大丈夫。身体も装備も絶好調!!」
何も知らないホーリーを見ていると、いずるはますます心配になってきた。それでも彼は、そんな素振りを見せずに答えた。
「そうか。でも、もうそろそろバッテリーが少なくなってるだろ?もうクレイドルに戻って休んだ方がいいよ」
「あ…そういえば」
ホーリーはバッテリー残量メーターを確認した。確かに残りが少なくなっている。
「今日は結構トレーニングしたからかな…」
「トレーニング?」
「そう、ミルキーに協力してもらってヴァーチャルトレーニングシステムを動かしてもらったんだ。いっぱいバトルの練習してね、それでバッテリーが消費したんだと思うんだ」
そうか、ホーリーも努力してるんだな…。いずるはホーリーのひたすらに練習しているイメージを浮べながら、彼女がいかにがんばっているかを実感していた。
「お前ががんばっているのは分かったよ。でも、こんな所で倒れると困るから、早く寝るんだぞ」
「うん、分かった。早く寝る事にするよ。それじゃいずる、おやすみ」
ホーリーはふらふらと飛びながら自分のクレイドルにもどって行った。
「さて、ミルキーはどうしてるかな…」
いずるは自分のパソコンの側に近寄った。
「ただいま、ミルキー。ご苦労様」
パソコンにアクセスしているミルキーに、いずるは話しかけた。
「お帰りなさい、今日は遅かったですね。どうしました?」
「ちょっと研究所に寄り道してたんだ。今度の試合のことで打ち合わせしてたところさ」
「そうですか…、もしかして、今度の試合のことで何かひっかることでもあったんでしょうか?」
するどいな、と、いずるは思った。さすが自分がセッティングした神姫である、自分の思っていることが分かるのではないだろうか。
「実は…」
いずるはミルキーだけにBクリスマス出場のことを話した。
「それは大変な事じゃないですか。Bクリスマスって、シュートレイさんを追いつめた相手ですよね、手を打たないといけません」
「そう、それで小百合さんに相談したんだ。それで新しい装備を製作中という話が出てきたんだけど…」
「…未完成なんですね」
ここまで鋭いとは思っていなかったな…。いずるは彼女の先読みの鋭さに関心してしまった。
「本体はほとんど完成してるんだけど、肝心の制御系に時間がかかってるらしいんだ。それをどうにかすれば解決するそうだ」
それを聞いたミルキーは、あるアイディアを言い出した。
「それならあの子を使いましょう。あの子のAIならある程度学習してますし、制御系に使うことができますから」
「でもこれは、お前にプレゼントした相棒だぞ。そんなことして良いのか?」
「いいんです。これもホーリーさんのためですから」
ミルキーは少し寂しげにつぶやいた。無理もない、そのAIは彼女の親友であり、家族でもあるのだから。
「それに、まだ名前も付けていないんです。ホーリーさんに名づけてくれた方が良いと思ったから、名づけるのを待ってたんです」
ミルキーの決意は固く、いずるに向けたまなざしも真剣そのものだった。いずるはそんな彼女の心意気に打たれ、決心をした。
「分かった、明日にでも小百合さんにそのことを言う事にする。その時はお前も一緒について来てくれないか?手伝ってもらいたいから」
ミルキーは無言で頷いた。
「そうか、ありがとう」
いずるは彼女に感謝した。
それから数日後のクリスマスイブ、ついにトーナメントの日がやって来た。ホーリーといずるは控え室で最後の調整に入っていた。
「ホーリー、覚悟はいいか。相手はブラッククリスマス、何人もの神姫を倒した強敵だ。もしかしたらお前は倒されてしまうかもしれない。それでも戦う気はあるか?」
いずるの質問に、ホーリーは静かに答えた。
「うん、戦う。あんな試合で何人もの神姫が痛い目に会うのを黙ってみてられないもの」
いつもより真剣にホーリーは答えた。サポートユニットは登録こそしてはいるものの、最終調整に手間取って、試合に間に合わなかった。それでもホーリーといずるは、Bクリスマスに立ち向かうことを決意したのだ。
「…もうこんな時間だ、早く試合会場に行くぞ」
「うん」
控え室を出て、会場に足を運ぶ二人。会場からはホーリーの応援の声がこだましていた。いずるは花道を踏みしめ、戦場に向かうような幹事で会場に向かっていった。
「それでは、ホーリーベルVSブラッククリスマスの試合を始めます。両者とも、ステージへ」
いずるは無言で頷き、ホーリーをステージに運んだ。このバトルは安全を考慮してヴァーチャル方式になっている。しかし、いくらヴァーチャルバトルとはいえ、大きなダメージを負えば神姫の精神に異常をきたす可能性がある。かつてBクリスマスと闘ったシュートレイも、そして今までBクリスマスと一戦を交えた神姫たちも同じ精神異常が起きていた。精神に異常をきたす…、それはすなわち神姫にとっては死と同然であるといえる。つまり再起することは不可能に近く、最悪、リセットをしなければ助かることはないと同じなのだ。ホーリーといずるはそれを承知してこのバトルに出場することを決意したのである。
「いくぞホーリー、あんなやつに絶対に負けるんじゃないぞ」
いずるはキッと相手側を見た。反対側の席には黒いスーツを着、サングラスを着けた男が座っている。あの人物がBクリスマスのオーナーだろう。
(あの男がBクリスマスを操っているということは、男の裏に巨大な組織があるという事だろう。小百合さんが言ってた話だと、私たちの知らないところで何かが動いている、という話だったからな。でも、そんなことはさせない。神姫たちをあんな目にあわせた奴を放っておくわけにはいかないんだ)
いずるは最後のコンディションチェックをし、サポートの準備に入った。そしてヘッドギアを被り、深呼吸をした。
「さあ、いくぞ!!」
その直後、試合開始のコールが鳴り響く。ついに運命の対決が始まったのだ。
*つづく
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