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武装神姫のリン
燐の22「喪失」
「あ~かったるぃ!!!」
現在月曜日を通り越して火曜日の午前3時。
全く仕事が終わらずに会社に泊まり込みすることになったのだがいっこうに終わりが見えず、PCデスクに突っ伏してみるがそれで仕事が片付くはずもなく、視界の隅に見える書類の山で再び現実に引き戻される。
わかってますよ~前から貯まってた書類だってのはわかってるけど…こんなに貯めたか?
どう考えても先週末に見たときの倍はあるぞ…なんかやっかいごとを回された感じがする。
ああ、わかってるよ!! 日曜日に休日出勤の要請があっても家族で出かけることにしてたから無視した罰だろう?
それにしても増加量が半端がない…
ふて寝しようかな…
「ピンポーン」
???
こんな時間に誰だ?警備のおっさんか? にしても夜勤だって言ってあったはずだが…
「はい…?」
「あ、藤堂さんですね…ダメと言ったんですがどうしてもということなので…」
「えっと、俺に用?」
とおっさんの足下に目を移すと…
「すみません、来ちゃいました」
リンがいた。お出かけ用の服を着て。
「へ?」
「えっと、記録には付かないので安心して。ごゆっくり。」
「はい、ご案内ありがとうございます」
「いえいえ。」
警備のおっさんが帰って行ったところで。リンにどういうことか聞かないと…
「とりあえずだ、何で来た?」
「寂しかったからです。」
「寂しい? 茉莉もティアも花憐もいたろう?」
「そうじゃなくて、マスターが居ないからです。」
そう言うとリンは俺の指を抱きしめるように
「マスターが近くに居ないとダメなんです…」
「そんなこと言っても、仕事なんだから仕方ないだろう?」
「わかっていても、胸が苦しくなるんです!! 今夜なんてマスターとの秘め事の夢まで見てしまって…」
「そんなに…なのか?」
「そんなに…です。今夜の場合はマスターが夜勤だからってこともあると思いますが…」
「まあ、俺の顔を見れて落ち着いたか? なら良いんだけど。」
「はい…落ち着いたはずなんですが…からだが…あつぃ」
「うん? ちょっと失礼…」
リンが恥じらいでほほを染めているのは良くあることだが…
それにしても朱に染まっている部分がいつもより大きい感じがして変なのでリンの額に指を当て…その熱さに反射的に指を引いてしまった。
「なんて熱さだ! こんな状態で…」
「すみ、ませ…」
「リン!! リン!!??」
そのままリンの意識は戻らず素体全体もバカみたいに熱を持っていた。
危うく衣服にも火が付くかという所だったらしい。
仕事がどうとかそんなことはどうでも良かった。
とにかく深夜も受け付けている有名な神姫センターの救急課に電話を入れる。
直ぐに来てくれるとのことだったがどう考えてもあそこからじゃあ30分は掛かる。こっちからも向かってちょっとでも早くリンをセンターに送り届けたかった。
しかしリンの素体の持つ熱はかなりのもので素手で扱うにはキツイ。
それでも、愛する者を助けるんだ。
大切な者を失いのに比べたら火傷なんて屁でもない!!
「リン、絶対助けるから」
反応を示さないリンを左手で抱えて…リンはもっと苦しいはずなんだ…耐えろ俺。
そうしてオフィスを飛び出して会社の業務用車両で神姫センターへと向かう。
電話は常時接続でセンターと繋げてGPSでむこうの車両との合流のための指示を仰ぐ。
そうして15分ほどでむこうがなの車両と合流。直ぐにリンは緊急用カプセルへと入れられて神姫センターの車両へ。
センターまで俺は後ろをついて行くことになたが、この間もリンが心配でならなかった。
センター到着と同時に緊急治療モジュールへと入れられて、あとはモジュールの診断結果とそれによるスタッフの応急処置に頼るしかなかった。
そしてセンター到着から20分。処置が終了したらしい。
部屋から出てくるスタッフに食ってかかるようにして聞いた。
「リンは…大丈夫なんですか?」
「……」
スタッフは悔しそうな顔をして口を紡ぐばかり。
「まさか…なにも出来なかったって言うのか…」
「……もうしわけございません、こちらの施設では原因をとくtぐふ…」
気付いた時にはスタッフを殴っていた。一応は武道を習っていた拳で…だ。
許されることではない。試合でもあまり決まることの無いほど腰の入った威力のある拳だった。相手は相当痛かったはずなのだ。
「…すみません。本当にすみません!!」
「いえ、こちらもなにも出来なかったことが悔しくてならないのです…」
謝ることしか出来なかった、ただここの設備で何とかならないとすれば技術屋頼みになるだろう…とのことだった。
「とにかく、現状は素体内の冷却液を専用の冷却器を通して循環させています、なので内部パーツへの深刻なダメージは出来るだけ押さえられていますが原因を特定しないことには手の打ちようがありません…」
「いえ、熱を逃がすことさえも自分ではどうにもならなかったんです。貴方には感謝してます。殴ったりして…本当にすみません。」
「こちらこそ、それだけ神姫を大切に思ってくれていると言うだけで自分はうれしいです。」
「本当にありがとうございました…」
「いえ、私は技術屋の方に連絡してみます。あの子のそばに居てあげてください」
-----
リンが原因不明の発熱を起こして"入院"してから3日が経った日の夜
「お姉様…早く元気になって…」
あのいつも強気なティアが顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。
さっきまでは気丈に振る舞っていたらしく、心配はもちろんだがいつもどおりだと思っていた。
しかし俺と茉莉が飲み物を買いに出て数分の間に我慢がならなくなったようだ。
扉を開けようかと迷ったがもう一往復してくることにした。
茉莉はリンに付いている俺に食事や服を持ってきてくれるが、残ることはしない。
「家に帰らないと花憐ちゃんが寂しがるから、あと私は主婦なんだから家の管理もちゃんとしないと行けないの…リンちゃんの分まで。だからリンちゃんには亮輔が付いていてあげないとだめだよ。」
と言うのだ。
「しっかりして」
「ああ…」
「また明日の昼に来るから。」
「…茉莉がいてくれてホント良かった。 俺だけだったら絶望してるかもしれない。」
つい、そんなことを口走ってしまった
「もう、バカ…私がこんなふうになっても亮輔はちゃんと付いててくれるんでしょ?」
「当たり前だ…!」
唇が触れる。その間数秒。
「二人とも居ないとダメだ。って大口たたいたのは亮輔なんだから。頑張って」
「…分かった。」
「じゃあ…ね」
そうして茉莉にも励まされ、俺は部屋に戻った。
ティアもいつもどおりに振る舞っていた。
誰もがリンの回復を祈っていた。
-----
入院から1週間が経つ日。
「リン、今日も天気が良いぞ。早く元気になってくれよ…」
リンの手に小指をかけるようにして支える。
すこしでも俺のことをリンが感じてくれるように、願った。
ふと部屋のドアがノックされる。
「はい…?」
すると…
「なんと! あのときの威勢がなりを潜めて正に小市民ですわ!」
「こら、なんでおまえがしゃしゃり出てくる…引っ込んでろ!」
やけに騒がしい兄妹…てか片方ピザ?
つまり、鶴畑の次男坊がどこからか情報を聞きつけてやってきた。
あまり歓迎できない付属品を引き連れてと言う状態だったが…
「俺に道を示してくれたあんたの…あなたの神姫が大変って聞いて…」
「で?鶴畑の力を貸してくれるっていうのか?」
「そのつもりで来たんです。」
ちなみに次男坊の芸風(メディアに出ている時の口調や振る舞い)は変わっていないし、ミカエルの強さは健在だ。
ただ、ほんの少し相手に優しくなった…!?と某週刊誌でも取り上げられていた、しかし本来の性格はこんなふうに礼儀正しい奴だったらしい。
「おひさしぶり、藤堂君?」
驚いた。村上 静菜がそこにいた。
以前ある事件でお世話になったSSFの会長さんだ。
「私も力になれないっていうの?」
「いや、そんなことは言ってないですが?」
「じゃあ、力にならせてもらうわ」
そんなこんなで鶴畑(次男の独断なのでそれほど大規模なことは出来ないらしいが)にSSFという強力なバックアップを得てしまった。
これなら…と思う自分が確かにいた。
まだあきらめない。俺は、絶対にリンを救う。
改めて決意した瞬間だった。
[[つづく>武装神姫のリン]]
武装神姫のリン
燐の22「喪失」
「あ~かったるぃ!!!」
現在月曜日を通り越して火曜日の午前3時。
全く仕事が終わらずに会社に泊まり込みすることになったのだがいっこうに終わりが見えず、PCデスクに突っ伏してみるがそれで仕事が片付くはずもなく、視界の隅に見える書類の山で再び現実に引き戻される。
わかってますよ~前から貯まってた書類だってのはわかってるけど…こんなに貯めたか?
どう考えても先週末に見たときの倍はあるぞ…なんかやっかいごとを回された感じがする。
ああ、わかってるよ!! 日曜日に休日出勤の要請があっても家族で出かけることにしてたから無視した罰だろう?
それにしても増加量が半端がない…
ふて寝しようかな…
「ピンポーン」
???
こんな時間に誰だ?警備のおっさんか? にしても夜勤だって言ってあったはずだが…
「はい…?」
「あ、藤堂さんですね…ダメと言ったんですがどうしてもということなので…」
「えっと、俺に用?」
とおっさんの足下に目を移すと…
「すみません、来ちゃいました」
リンがいた。お出かけ用の服を着て。
「へ?」
「えっと、記録には付かないので安心して。ごゆっくり。」
「はい、ご案内ありがとうございます」
「いえいえ。」
警備のおっさんが帰って行ったところで。リンにどういうことか聞かないと…
「とりあえずだ、何で来た?」
「寂しかったからです。」
「寂しい? 茉莉もティアも花憐もいたろう?」
「そうじゃなくて、マスターが居ないからです。」
そう言うとリンは俺の指を抱きしめるように
「マスターが近くに居ないとダメなんです…」
「そんなこと言っても、仕事なんだから仕方ないだろう?」
「わかっていても、胸が苦しくなるんです!! 今夜なんてマスターとの秘め事の夢まで見てしまって…」
「そんなに…なのか?」
「そんなに…です。今夜の場合はマスターが夜勤だからってこともあると思いますが…」
「まあ、俺の顔を見れて落ち着いたか? なら良いんだけど。」
「はい…落ち着いたはずなんですが…からだが…あつぃ」
「うん? ちょっと失礼…」
リンが恥じらいでほほを染めているのは良くあることだが…
それにしても朱に染まっている部分がいつもより大きい感じがして変なのでリンの額に指を当て…その熱さに反射的に指を引いてしまった。
「なんて熱さだ! こんな状態で…」
「すみ、ませ…」
「リン!! リン!!??」
そのままリンの意識は戻らず素体全体もバカみたいに熱を持っていた。
危うく衣服にも火が付くかという所だったらしい。
仕事がどうとかそんなことはどうでも良かった。
とにかく深夜も受け付けている有名な神姫センターの救急課に電話を入れる。
直ぐに来てくれるとのことだったがどう考えてもあそこからじゃあ30分は掛かる。こっちからも向かってちょっとでも早くリンをセンターに送り届けたかった。
しかしリンの素体の持つ熱はかなりのもので素手で扱うにはキツイ。
それでも、愛する者を助けるんだ。
大切な者を失いのに比べたら火傷なんて屁でもない!!
「リン、絶対助けるから」
反応を示さないリンを左手で抱えて…リンはもっと苦しいはずなんだ…耐えろ俺。
そうしてオフィスを飛び出して会社の業務用車両で神姫センターへと向かう。
電話は常時接続でセンターと繋げてGPSでむこうの車両との合流のための指示を仰ぐ。
そうして15分ほどでむこうがなの車両と合流。直ぐにリンは緊急用カプセルへと入れられて神姫センターの車両へ。
センターまで俺は後ろをついて行くことになたが、この間もリンが心配でならなかった。
センター到着と同時に緊急治療モジュールへと入れられて、あとはモジュールの診断結果とそれによるスタッフの応急処置に頼るしかなかった。
そしてセンター到着から20分。処置が終了したらしい。
部屋から出てくるスタッフに食ってかかるようにして聞いた。
「リンは…大丈夫なんですか?」
「……」
スタッフは悔しそうな顔をして口を紡ぐばかり。
「まさか…なにも出来なかったって言うのか…」
「……もうしわけございません、こちらの施設では原因をとくtぐふ…」
気付いた時にはスタッフを殴っていた。一応は武道を習っていた拳で…だ。
許されることではない。試合でもあまり決まることの無いほど腰の入った威力のある拳だった。相手は相当痛かったはずなのだ。
「…すみません。本当にすみません!!」
「いえ、こちらもなにも出来なかったことが悔しくてならないのです…」
謝ることしか出来なかった、ただここの設備で何とかならないとすれば技術屋頼みになるだろう…とのことだった。
「とにかく、現状は素体内の冷却液を専用の冷却器を通して循環させています、なので内部パーツへの深刻なダメージは出来るだけ押さえられていますが原因を特定しないことには手の打ちようがありません…」
「いえ、熱を逃がすことさえも自分ではどうにもならなかったんです。貴方には感謝してます。殴ったりして…本当にすみません。」
「こちらこそ、それだけ神姫を大切に思ってくれていると言うだけで自分はうれしいです。」
「本当にありがとうございました…」
「いえ、私は技術屋の方に連絡してみます。あの子のそばに居てあげてください」
-----
リンが原因不明の発熱を起こして"入院"してから3日が経った日の夜
「お姉様…早く元気になって…」
あのいつも強気なティアが顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。
さっきまでは気丈に振る舞っていたらしく、心配はもちろんだがいつもどおりだと思っていた。
しかし俺と茉莉が飲み物を買いに出て数分の間に我慢がならなくなったようだ。
扉を開けようかと迷ったがもう一往復してくることにした。
茉莉はリンに付いている俺に食事や服を持ってきてくれるが、残ることはしない。
「家に帰らないと花憐ちゃんが寂しがるから、あと私は主婦なんだから家の管理もちゃんとしないと行けないの…リンちゃんの分まで。だからリンちゃんには亮輔が付いていてあげないとだめだよ。」
と言うのだ。
「しっかりして」
「ああ…」
「また明日の昼に来るから。」
「…茉莉がいてくれてホント良かった。 俺だけだったら絶望してるかもしれない。」
つい、そんなことを口走ってしまった
「もう、バカ…私がこんなふうになっても亮輔はちゃんと付いててくれるんでしょ?」
「当たり前だ…!」
唇が触れる。その間数秒。
「二人とも居ないとダメだ。って大口たたいたのは亮輔なんだから。頑張って」
「…分かった。」
「じゃあ…ね」
そうして茉莉にも励まされ、俺は部屋に戻った。
ティアもいつもどおりに振る舞っていた。
誰もがリンの回復を祈っていた。
-----
入院から1週間が経つ日。
「リン、今日も天気が良いぞ。早く元気になってくれよ…」
リンの手に小指をかけるようにして支える。
すこしでも俺のことをリンが感じてくれるように、願った。
ふと部屋のドアがノックされる。
「はい…?」
すると…
「なんと! あのときの威勢がなりを潜めて正に小市民ですわ!」
「こら、なんでおまえがしゃしゃり出てくる…引っ込んでろ!」
やけに騒がしい兄妹…てか片方ピザ?
つまり、鶴畑の次男坊がどこからか情報を聞きつけてやってきた。
あまり歓迎できない付属品を引き連れてと言う状態だったが…
「俺に道を示してくれたあんたの…あなたの神姫が大変って聞いて…」
「で?鶴畑の力を貸してくれるっていうのか?」
「そのつもりで来たんです。」
ちなみに次男坊の芸風(メディアに出ている時の口調や振る舞い)は変わっていないし、ミカエルの強さは健在だ。
ただ、ほんの少し相手に優しくなった…!?と某週刊誌でも取り上げられていた、しかし本来の性格はこんなふうに礼儀正しい奴だったらしい。
「おひさしぶり、藤堂君?」
驚いた。村上 静菜がそこにいた。
以前ある事件でお世話になったSSFの会長さんだ。
「私も力になれないっていうの?」
「いや、そんなことは言ってないですが?」
「じゃあ、力にならせてもらうわ」
そんなこんなで鶴畑(次男の独断なのでそれほど大規模なことは出来ないらしいが)にSSFという強力なバックアップを得てしまった。
これなら…と思う自分が確かにいた。
まだあきらめない。俺は、絶対にリンを救う。
改めて決意した瞬間だった。
[[燐の最終話 「明日へ」]]
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