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**天より降りし、白霜の竜(後編)
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『空を蹴って敵の頭上を取る』という、ロッテの奇策は奏功した。彼女の
纏う“ゴーレム”は、両腕が巨大な銃と言うべきユニットとなっている。
スペースの問題で、弾薬こそ少ない上に細身だが……その分一発の威力や
射程距離・徹甲性能を限界まで高めてある。例え直撃せずとも、その弾は
掠めただけで“バイザー”の装甲越しにダメージを与えるパワーを持つ!
「きゃ、ううっ!?痛……や、やりますね先輩っ!!」
「全てはマイスターの為ですの。その為なら、わたしは頑張れますの!」
「マスターの為……先輩の強さの秘密が、分かった気がします。でも」
『キュィ?』
短時間で撃ち込まれる弾丸を必死に避けたハニエルだったが、軽装甲な
彼女の鎧……“バイザー”は、少なくないダメージを負っていた。一方
ロッテの方も足場となっていた浮島の欠片が無くなり、お互いに距離を
取らざるを得ない状況となっていた。ロッテはウィブリオを飛竜の姿に
戻し、一方のハニエルは別の浮島に着陸し“バイザー”を組み換える。
ほぼ全てのパーツを躯から外して、彼女は一つの“弓”を作り上げた。
「アタシだって、それなら益々負けられません。全力を出します!」
「それでこそ戦い甲斐がありますのっ!ウィブリオ、行きますの!!」
『キュィイイイイッ!!!』
「変形開始、“ティターン・シルエット”っ!!」
その隙を利用し、ロッテも己の“相棒”を真の姿に変形させる。それは
大いなる翼を持つ“天使の鎧”だった。その腰に光るは“イグニス”。
そう……射撃こそ天使型たるロッテの“得意攻撃”。それを活かす為に
創った“イグニス”は、二挺のエクステンド・ビームライフルである。
ウィブリオの“ティターン・シルエット”は、これを撃つ為の物だッ!
「それが、先輩の全力ですね……アタシの全力は、これですっ!」
「巨大なビームボウ……ですの?なら、射撃勝負になりそうですの」
「“エンジェルバイザー”の全出力を回した一撃、耐えられますか?」
「大丈夫、マイスターの想いが有れば……勝つのはわたしですの♪」
「……では、やってみましょう。どっちが勝つか、勝負ですっ!」
その姿を見てむしろ戦意を昂揚させたハニエルは、光の弓を構えて肯く。
本当にこの娘は、ロッテに憧れているのだ……眩しい姿と言えるだろう。
だが、それと勝負は別だ。むしろ、先輩としての意地を見せねばならん!
ロッテは二挺の“イグニス”を構えて、左右を合わせる様に連結させた。
更に上部のハッチを開き、先程の“プラズマ・クロスボウ”を差し込む!
くぐもったコンデンサのチャージ音が響き、シリンダーが回転を始めた。
「はいですの。全力全開、“イグニス・クロスボウ”でお相手しますの」
「ふふ、奇遇ですね。お互い“弓”で雌雄を決する事になるなんて」
「わたしに憧れてくれた娘なら、それも運命って事ですの……ではっ」
武器のチャージを終えた二人が、徐にカウントを始めた……決着の時だ。
互いの銃口に激しい光が満ち、足下の雲が大気の震動で吹き散らされる。
その震動はやがて明確な“音”となり、空の戦場を一気に満たしていく!
光はいよいよ抑えきれない程に満ち溢れ、互いがその開放を……叫んだ!
「最大最強の一撃、行きますのっ!」
「はい、行きましょう!!」
「迸れ……神儀“審判の光災(ジャッジメント・レイストーム)”ッ!」
「その身を穿て、儀典“ブリッツ・フォイア”ッ!!」
ロッテとハニエル。お互いの前方に、相手を呑み込む程巨大な光の柱が
伸びていく。中間地点でぶつかり合った莫大なるエネルギーの奔流は、
押し合い拉げる様にして膨らみ……そして、その均衡は一瞬で破れた!
バトルフィールドの大半を呑み込む程の、巨大な爆風が空を覆い隠す!
「きゃ、ぁあああああああっ!!」
「うあぁっ……!!あ、相打ちですの……でも」
「……こ、構造上の差が出ちゃいましたね……残念です」
産まれた爆風に呑み込まれた二人の神姫は、バランスを崩して墜落した。
背に翼を備えていたロッテはどうにか体勢を立て直す。一方、己の全てを
“弓”に換えてしまったハニエルの方は、ダメージを受けている状態から
己の飛行姿勢を取り戻すまでの時間が、少々足りなかった。神姫の接近に
依ってホログラフ投影された戦闘領域のラインを、若干越えたのだ……。
『対戦相手、リングアウト!勝者、ロッテ!!』
「今度は、別のフィールドで戦ってみたいですの。ハニエルちゃん♪」
「きゃっ!?あ、有り難うございます……今度は負けませんよ先輩ッ!」
勝敗が決まった瞬間にロッテはハニエルを追い掛けて、その手に抱いた。
慕ってくれる相手と刃を交わす理由は、無くなったのだ。当然だろうっ!
後でまた逢う約束をして、二人は別れる……完全に『先輩・後輩』だな。
「ロッテ、見事だ!バトルの内容もだが、立ち居振る舞いも良いぞ!」
「慕ってくれる人を無碍にする事は、わたしには出来ないですの~♪」
「ふぁ……?あ、ロッテちゃんも勝ったんですか?よかったぁ~……」
「おはようアルマお姉ちゃん。さぁ、最後はボク……頑張るんだよっ」
──────皆は神の姫たる騎士だもの、優雅に生きようね。
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