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「妄想神姫:第五十一章(前編)」(2007/11/17 (土) 16:36:06) の最新版変更点
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**猛り狂いし、地を灼く竜(前編)
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その日、私・槇野晶は神姫達が目覚める前から大忙しであった。何しろ、
彼女らが重量級ランクに挑む日なのだ。リサーチしたデータと自己鍛錬の
経験……そして私自身と彼女らの“技術”が、勝敗の全てを握っている。
ノウハウなど存在しないも同義。正直、全員未知の荒野へ旅立つ気分だ。
ならば、出来る準備を可能な限り行うしかない。それが明暗を分けるッ!
「充電完了、システム起動──ふぁ……おはようございますですの~♪」
「む、起きたかロッテ。アルマとクララも、起こしてやってくれんか?」
「はいですの!マイスター、寝ないでずっと準備していましたの……?」
「……仮眠は少々取ったが、結構ギリギリだな。しかし頑張らねばッ!」
そして朝日を迎える内に、前日まで練習尽くしだった“妹”達も次々と
目覚めてくる。それと前後して、“プルマージュ”の最終調整も完了。
本来は“アルファル”も同時使用出来るのだが、今日は敢えて使わぬ。
“プルマージュ”に皆が慣れているか、その力を引き出せるかが肝要。
それを見極めてからでも、決して遅くはないはずだ……という訳でッ!
「よし、皆着替えと洗浄は終わったな?忘れ物も……有無、無しッ!」
「“プルマージュ”達も、コンテナでちゃんと寝てるから大丈夫だよ」
「それじゃ皆、行きましょう?……あたし達の、新しいステージにっ」
「はいですの~♪どんな姉妹達がいるのか、今から楽しみですの~♪」
コンテナの増加で更に巨大化した、キャリアを引っ張りつつ店を出る。
旅行鞄風のコレに、神姫達の武装パーツは無論の事……着替えや相棒の
“アルファル”と“プルマージュ”が、更には各種電装機器や充電用の
小型バッテリーまでも搭載されている訳で……流石にデカくて重いッ!
「ふぃぃ……流石に私の背丈に迫る勢いの荷物、骨が折れるな……」
「どうせなら駆動系付けて、マイスターが乗っちゃえばいいんだよ」
「それも手だが、アキバの雑踏では些か危険だろう……だが、ふむ」
「乗れないにしても、モーターで車輪の動きを支えられませんか?」
「電気自転車みたいな感じですの。あ、付きましたのマイスター!」
そんな他愛もない雑談で辛さを紛らわせつつ、神姫センターへ入店する。
流石にこの時期ともなれば、空調は暖房か……快適だな。私はマフラーを
外し、“妹”達のコートも脱がせる。その下にあるのは、“フィオラ”。
あくまでもエントリーは“可憐・華麗”に。その拘りは貫きたいのでな!
「バトルの申し込みは先程終わらせた。誰が一番に来るかは分からぬ」
「い、一番にあたしが来る可能性もあるんですね?……緊張しますっ」
「確率三分の一だから、そこまで気張らなくてもいいと思うんだよ?」
「そうですの~♪対戦相手が何時見つかるかの方が、心配ですの……」
『槇野晶さん、アルマの対戦相手が見つかりました。オーナー席へ~』
「ひゃいっ!?あぅぅ……やっぱり一番でした。気合、入れないとっ」
なんだかんだでアルマは緊張しているのだろう。私は彼女を抱き上げて、
優しくエントリーゲートに降ろし、アルマの武装ケースをサイドボードに
差し込む。リサーチした寸法通りに、箱はピッタリと収まった。完璧だ!
「大丈夫だ。私達が見守っている……存分に、蹴散らしてこいよっ!!」
「は、はいッ!恥じない戦いを、してきます……じゃ、行ってきます!」
私達三人の笑顔に見送られて、アルマはゲートの奥へと降りていった。
彼女の意識は、ヴァーチャルフィールドへと遷移し……戦いが始まる!
しかし、見守っていた私は……重要な事実を告げなかったのだ。迂闊!
『アルマvsガルラ、本日の重量級リーグ第4戦闘、開始します!』
「で、出番ですね……」
『なお、ゲートより神姫は高速射出されます。衝撃に備えてください』
「──────へ?」
「そう言えば……アルマ、開始と同時にファフナーを呼ぶのだ!」
「は、はいぃぃっ!?」
『3……2……1……GO!!』
「きゃ、ああぁぁぁぁ~っ……!?」
そう、重量級ランクでは目方のバラツキが大きくなりがちである。故に、
神姫達はリニア射出により、ゲートから一定速度で強制排出されるのだ。
開始時の相対距離をある程度一定に保つ事で封殺を防ぐ、等の名目でな。
だが生身でそれを受ければ、障害物や床に激突してしまうのだ……むう。
「ひゃあぁ……ファフナーッ!?」
『グルル……グルォォォオンッ!!』
「きゃっ!?ふぅ、た……助かりました」
しかし気の利く様になった“相棒”が、即座に彼女をピックアップする!
そこへ、近くの岩山から対戦相手となる神姫の声が響いた。今回は誰だ?
「無様ね。貴女、この戦場は初めてなのかしら?」
「ッ!?貴女が対戦相手のガルラさん、ですね?」
「そう、苛烈なる鳥の女帝……それが私、ガルラ!」
少々ナルシストの入ったその神姫は、“神姫パーツ流用組”らしかった。
来年発売の限定バージョン・エウクランテ及びイーアネイラを意識した、
黒と紅に彩られた第五弾のリペイントパーツ。更に、それを覆う様にして
全身に纏ったティグリースとウィルトゥースの装備……頭部は、禍々しい
アレンジのバイザーに覆われており、口と金のポニーしか見えぬ作りだ。
だが改造パーツとは言え、その娘は紛れもなく公式パーツを用いていた!
「ふぅん。通常ランクでは一応セカンドなのね、貴女……?」
「お陰様で……でも、そんな“常識”が通用しない事は弁えてます」
「そう。なら話が早いわ……ここでの流儀、見せてあげましょうッ!」
「手合わせ、願います……行きましょう、ファフナー!」
『“W.I.N.G.S.”……Execution!』
『グルォォォォォォンッ!!!』
“朱天”由来の大剣を振るう鳥の女王を目の前に、アルマは怯まない。
“フィオラ”から追加パーツ付きの“シルフィード”に姿を変えた上、
ファフナーの背中に己の太腿から下を“合体”させた。これが、第一の
戦闘形態。竜騎士の型……“ドラグーン・シルエット”である!付属の
“センチュリオン”と“ティンクルスター”を携えて、彼女が構えた。
「なるほど、騎乗型なのね……しかし、その程度見飽きたわ!」
「あたし達を、普通に見ない方が良いですよ……参りますッ!!」
『グルォォォオンッ!!』
──────竜の騎士として、誇り高くあろうね。
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