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「ドキドキハウリン 番外編1」(2006/10/24 (火) 02:07:20) の最新版変更点
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「ありがとうございます。EDEN-PLASTICSカスタマーサポートセンターです」
マニュアルどおりの応対が、どこかのブースから聞こえてくる。
ここはEDEN-PLASTICSのサポートセンター。武装神姫の素体やコアユニットを
販売管理する、武装神姫の総本山……の対お客様最前線だ。
「マオとハウの不具合って……まだ凶暴なコのロットって残ってたんですか?」
その戦場の最前線であるスタッフブースの外れの外れ。
主任の札が出された大きなデスクの前に、あたしは一人呼び出されていた。
「みたい。対応頼んでいいかな? マオチャオの対処方法見つけたの、あかねちゃん
だったしさ」
何のヘマを怒られるのかと思ってビクビクしていたから……その依頼は、むしろ
拍子抜けするほどだった。
「はぁ。じゃ、私のブースに持ってきといてください」
「ありがとね。後で差し入れ、持っていくからさ」
----
**魔女っ子神姫ドキドキハウリン
**番外編 その1
----
ブースに戻れば、荷物は既に届けられていた。
「あー。こりゃ、気合入ってるねぇ」
中のコのマスターはよっぽどヒドイ目にあったんだろう。箱に幾重にも巻かれた
ガムテープが、その時の惨状を物語っている。
「ますたぁ。ボクの妹がまた悪いコトしたんですかぁ?」
大変だったんだなぁ……とマスターさんの事を考えていると、ブースで留守番をして
くれていたマオチャオが心配そうな顔を向けてきた。
フリルの付いた白いエプロンが可愛らしいそのコは、あたしの自前の神姫。いくら
神姫のサポセンといえど、本当は私物の神姫を持ち込んじゃいけないんだけど……
ありがたいことに、みんな見て見ぬふりをしてくれている。
それに、にゃー子はマオチャオの不具合を解決した最大の功労者だしね。
「んー。別に、にゃー子が悪いことしたわけじゃないから、いいんだけどねぇ」
さて。その不具合を何とかしてでもこのコと一緒にいようっていうご主人様のためだ。
この戸田あかね、ウチのにゃー子と一緒にひと肌脱ごうじゃありませんか。
「にゃー子。そのエプロン、外しといた方が良いよ。静香が作ってくれたヤツでしょ?」
「あ、はーい」
妹(こいつがまた、手先が器用なんだ)お手製のエプロンを引き出しに仕舞い、
にゃー子が代わりに取り出したのは、秘密兵器。
「ますたぁ。おっけーだよ!」
あたしもそのうちの一本を受け取り、カッターで梱包に切れ目を入れた。
既ににゃー子は秘密兵器を構え、梱包の動きを窺っている。
「じゃ、開けるよ」
「あい!」
さっと箱を開けば、中から飛び出してきたのは猫の凶暴性をそのまま映したかのような
マオチャオだ。
「それ、かかれーっ!」
「巧いもんだねぇ……」
あたしの指先にゴロゴロと頬をすり寄せるマオチャオを見て、差し入れのおやつを
持ってきてくれた主任は感心したように呟いた。
仔猫のようにあどけない顔でこちらを見上げるマオチャオは、もちろんウチのにゃー子
じゃない。ほんの五分ほど前まではそこらの野良猫よりも凶暴だった、あのマオチャオだ。
「このくらい、誰でも出来ますよー」
不具合なんていうけど、何のことはない。輸送中にうっかり電源が入ってしまい、
暗闇のストレスでシステムがオーバーフローしてしまっただけのこと。
どちらかといえば大人しい性格の一期モデルは、同じ現象が起こっても怖がったり
怯えたりするだけだった。
余談だけど、箱を開けた瞬間にマスターに抱き付いてきたり、甘えっ子な性格の神姫には
この不具合が出てる可能性が非常に多かったりする。
ただ、
「ウチのストラーフがオレにべったりくっついたまま離れないんです! そのうえ
甘えん坊で、夜も一緒に寝たがって……」
なーんて苦情が来たことは、わがEDEN-PLASTICSのサポートセンターにも一度として
ないわけで。こちらもその症状を、大きな不具合とは思わなかったんだけど……。
動物的な性格パターンを入れて発売した二期モデルは、同じ症状が甘えっ子じゃあ
なくて凶暴化っていう形で現われたワケだ。
もちろん今は電源装置の改善がされていて、どの子もこんな不具合は起きなくなってる
けど……。暗闇の中にずっと閉じこめられてれば、そりゃあ暴れたくもなると、あたしは
思う。
「ほらほらー」
反対の手には相変わらずの秘密兵器。
マオチャオの目の前にひょいと突き出してやれば。指先にしがみついていたマオチャオの
大きな瞳は、ゆらゆらと動くそれに吸い寄せられたまま離れない。
やがて顔が視線に追従し、続いて体が秘密兵器の方へと流れていく。
「はーい」
ひょい、と右手を突き出せば、秘密兵器はその手を受け流し、右手が触れることを
許さない。
その動きが面白かったのか、今度は左手を突き出すマオチャオ。
もちろん、秘密兵器は左手が触れることも許さない。
「にゃーっ!」
右、左、右、左。ゆらゆらと揺らしてやれば、さらにマオチャオはエキサイト。
有効打を与えようと必死にそれに追いすがってくる。
「ほーら、こっちにもあるよーっ!」
今度はにゃー子の秘密兵器を追いかけ始めた。
ふふ、可愛いなぁ。
「それにしても、猫じゃらしとはね……」
要は、たまったストレスを解消してやればいいだけの話。
凶暴化の症状を解消するため、猫じゃらし片手にマオチャオと戦いまくった不具合発覚
直後は……あたしにとってはいい思い出だけど、主任達にとっては悪夢のひとかけららしい。
「もう三十分も遊べば、疲れて寝ちゃうと思いますよ?」
秘密兵器その2。
神姫と同じほどの大きさがあるゴムボールを取り出し、マオチャオの方に転がしてやる。
って、アンタまで遊ぶんじゃないの、にゃー子!
「そっか。じゃ、終わったら修理セクションに回しといて。電源の交換と、太腿の修理
依頼を出してあるから」
「はーい」
そして、主任は去り際に。
「あと、いくら神姫のサポセンっていったって、私物の神姫を仕事場に持って来ちゃ
ダメだよ。後でもう一回、僕んところに来なさいね?」
「えーっ!?」
ちょっと、お褒めの言葉じゃなくてお小言決定!?
「ひどいよ、主任……」
涙目のあたしなんか気にも留めず、二人のマオチャオがゴムボールで一心に遊んでいる
のが……なんだか無性に恨めしかった。
[[トップ>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/118.html]]
「ありがとうございます。EDEN-PLASTICSカスタマーサポートセンターです」
マニュアルどおりの応対が、どこかのブースから聞こえてくる。
ここはEDEN-PLASTICSのサポートセンター。武装神姫の素体やコアユニットを
販売管理する、武装神姫の総本山……の対お客様最前線だ。
「マオとハウの不具合って……まだ凶暴なコのロットって残ってたんですか?」
その戦場の最前線であるスタッフブースの外れの外れ。
主任の札が出された大きなデスクの前に、あたしは一人呼び出されていた。
「みたい。対応頼んでいいかな? マオチャオの対処方法見つけたの、あかねちゃん
だったしさ」
何のヘマを怒られるのかと思ってビクビクしていたから……その依頼は、むしろ
拍子抜けするほどだった。
「はぁ。じゃ、私のブースに持ってきといてください」
「ありがとね。後で差し入れ、持っていくからさ」
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**魔女っ子神姫ドキドキハウリン
**番外編 その1
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ブースに戻れば、荷物は既に届けられていた。
「あー。こりゃ、気合入ってるねぇ」
中のコのマスターはよっぽどヒドイ目にあったんだろう。箱に幾重にも巻かれた
ガムテープが、その時の惨状を物語っている。
「ますたぁ。ボクの妹がまた悪いコトしたんですかぁ?」
大変だったんだなぁ……とマスターさんの事を考えていると、ブースで留守番をして
くれていたマオチャオが心配そうな顔を向けてきた。
フリルの付いた白いエプロンが可愛らしいそのコは、あたしの自前の神姫。いくら
神姫のサポセンといえど、本当は私物の神姫を持ち込んじゃいけないんだけど……
ありがたいことに、みんな見て見ぬふりをしてくれている。
それに、にゃー子はマオチャオの不具合を解決した最大の功労者だしね。
「んー。別に、にゃー子が悪いことしたわけじゃないから、いいんだけどねぇ」
さて。その不具合を何とかしてでもこのコと一緒にいようっていうご主人様のためだ。
この戸田あかね、ウチのにゃー子と一緒にひと肌脱ごうじゃありませんか。
「にゃー子。そのエプロン、外しといた方が良いよ。静香が作ってくれたヤツでしょ?」
「あ、はーい」
妹(こいつがまた、手先が器用なんだ)お手製のエプロンを引き出しに仕舞い、
にゃー子が代わりに取り出したのは、秘密兵器。
「ますたぁ。おっけーだよ!」
あたしもそのうちの一本を受け取り、カッターで梱包に切れ目を入れた。
既ににゃー子は秘密兵器を構え、梱包の動きを窺っている。
「じゃ、開けるよ」
「あい!」
さっと箱を開けば、中から飛び出してきたのは猫の凶暴性をそのまま映したかのような
マオチャオだ。
「それ、かかれーっ!」
「巧いもんだねぇ……」
あたしの指先にゴロゴロと頬をすり寄せるマオチャオを見て、差し入れのおやつを
持ってきてくれた主任は感心したように呟いた。
仔猫のようにあどけない顔でこちらを見上げるマオチャオは、もちろんウチのにゃー子
じゃない。ほんの五分ほど前まではそこらの野良猫よりも凶暴だった、あのマオチャオだ。
「このくらい、誰でも出来ますよー」
不具合なんていうけど、何のことはない。輸送中にうっかり電源が入ってしまい、
暗闇のストレスでシステムがオーバーフローしてしまっただけのこと。
どちらかといえば大人しい性格の一期モデルは、同じ現象が起こっても怖がったり
怯えたりするだけだった。
余談だけど、箱を開けた瞬間にマスターに抱き付いてきたり、甘えっ子な性格の神姫には
この不具合が出てる可能性が非常に多かったりする。
ただ、
「ウチのストラーフがオレにべったりくっついたまま離れないんです! そのうえ
甘えん坊で、夜も一緒に寝たがって……」
なーんて苦情が来たことは、わがEDEN-PLASTICSのサポートセンターにも一度として
ないわけで。こちらもその症状を、大きな不具合とは思わなかったんだけど……。
動物的な性格パターンを入れて発売した二期モデルは、同じ症状が甘えっ子じゃあ
なくて凶暴化っていう形で現われたワケだ。
もちろん今は電源装置の改善がされていて、どの子もこんな不具合は起きなくなってる
けど……。暗闇の中にずっと閉じこめられてれば、そりゃあ暴れたくもなると、あたしは
思う。
「ほらほらー」
反対の手には相変わらずの秘密兵器。
マオチャオの目の前にひょいと突き出してやれば。指先にしがみついていたマオチャオの
大きな瞳は、ゆらゆらと動くそれに吸い寄せられたまま離れない。
やがて顔が視線に追従し、続いて体が秘密兵器の方へと流れていく。
「はーい」
ひょい、と右手を突き出せば、秘密兵器はその手を受け流し、右手が触れることを
許さない。
その動きが面白かったのか、今度は左手を突き出すマオチャオ。
もちろん、秘密兵器は左手が触れることも許さない。
「にゃーっ!」
右、左、右、左。ゆらゆらと揺らしてやれば、さらにマオチャオはエキサイト。
有効打を与えようと必死にそれに追いすがってくる。
「ほーら、こっちにもあるよーっ!」
今度はにゃー子の秘密兵器を追いかけ始めた。
ふふ、可愛いなぁ。
「それにしても、猫じゃらしとはね……」
要は、たまったストレスを解消してやればいいだけの話。
凶暴化の症状を解消するため、猫じゃらし片手にマオチャオと戦いまくった不具合発覚
直後は……あたしにとってはいい思い出だけど、主任達にとっては悪夢のひとかけららしい。
「もう三十分も遊べば、疲れて寝ちゃうと思いますよ?」
秘密兵器その2。
神姫と同じほどの大きさがあるゴムボールを取り出し、マオチャオの方に転がしてやる。
って、アンタまで遊ぶんじゃないの、にゃー子!
「そっか。じゃ、終わったら修理セクションに回しといて。電源の交換と、太腿の修理
依頼を出してあるから」
「はーい」
そして、主任は去り際に。
「あと、いくら神姫のサポセンっていったって、私物の神姫を仕事場に持って来ちゃ
ダメだよ。後でもう一回、僕んところに来なさいね?」
「えーっ!?」
ちょっと、お褒めの言葉じゃなくてお小言決定!?
「ひどいよ、主任……」
涙目のあたしなんか気にも留めず、二人のマオチャオがゴムボールで一心に遊んでいる
のが……なんだか無性に恨めしかった。
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