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「第参話:俺の昔のバイトについて」(2007/08/12 (日) 23:53:39) の最新版変更点
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{俺の昔のバイトについて}
アンジェラスの視点
「そんじゃ行ってくるから、ちゃんと留守番してるんだぞ」
「いってらっしゃい、ご主人様」
ご主人様はバイトに行く。
平日の月曜日、水曜日、金曜日はいつも午後七時過ぎに家に出る。
バイトの内容は知らない。
前に『どんなバイトしてるの?』訊いたど、ご主人様は苦笑いしながら『ワリィ、それは答えられない』と言われ分からずじまい。
私に秘密する程のバイトって何かしら。
私に限らず、クリナーレ、ルーナ、パルカにも秘密にしている。
みんなも知りたくってしかたないらしい。
「あぁ~あ、アニキの奴、またバイトに行っちゃたよ。つまんなーい」
「そいう事、言わないの。さっきまでお兄ちゃんと遊んでてたじゃないですか~」
「もっと遊びたいんだ!パルカも遊び足りないでしょ?」
「そうですけど…しかたないですよ」
クリナーレとパルカはご主人様と遊べなくて不満げ。
そんな二人を見ると私も不満な顔になってしまう。
「お姉様ー、うかない顔なんかしてどうしたんですか?」
ルーナが横からやって来た。
しかもニヤニヤと笑いながら。
「当ててあげましょう。ダーリンのバイトの内容がしりたい…あの二人を見て『私もご主人様と遊びたい』…でしょ?」
「…当たりよルーナ。凄い洞察力ね」
「お姉様程じゃありませよ。所でお姉様、ちょっとこっちに来てくださる」
「なに?」
ルーナについて行くと、ご主人様がよく使うデスクトップ型のパソコンに着いた。
電源が入りっぱなしでデスクトップの背景は可愛いメイド服を着た二次元の女の子の姿が表示されていた。
多分、どっかのエロゲーのキャラクターでしょ。
ご主人様はメイド服が好きなのかなぁ?
ルーナは四つん這いになりキーを叩く。
すると一つファイルが開き、その中にある起動データをカーソルに合わせエンターキーを押した。
起動したソフトはなんとマーカー追跡する特殊なソフトだった。
画面最大で表示して追跡用ソフトは町の全て映しだし赤い丸がピコピコと点滅しながら動いていた。
「あの赤い丸が分かる?」
「まさか、ご主人様?」
「ピンポンー!正解よ、お姉様」
両手を胸あたりで合わせながら笑うルーナ。
「これでダーリンが何処に行っているか一目瞭然。ダーリンが作ってくれた私達用の探索機もここにあるわ。お姉様、ちょっとダーリンをストーカーしましょ」
ストーカーって…せめて尾行て言ってよ。
その言い方だと犯罪チックでイヤだわ。
「何してるの~?」
「は!まさかまたエッチなゲームやってるんですか、ルーナさん!?」
「残念だけどエロゲーはやってませんね」
いやルーナ、そこで残念そうな顔をするのちょっとどうかと思うよ。
ていうか、ご主人様のエロゲーをプレイするのやめなさいよ!
「お姉様…お姉様が決めてください、ダーリンをストーカーするかしないか」
だからストーカー言うな。
けど、ご主人様が何処でバイトしてるかは気になる。
本当はご主人様に来ちゃ駄目、と言われてるけど…大丈夫よね。
うん、大丈夫よ。
ご主人様でいう『バレなきゃOK!』と同じです。
よし、そう思ったらすぐに実行しなければ。
「ルーナ、違法改造で作られたリアウイングAAU7とDTリアユニット plus GA4アームを持って来て。ご主人様を追跡しに行くわよ!」
「はい、お姉さま!」
トコトコ、とパーツが置かれている武装神姫用のガレージに行くルーナ。
「クリナーレとパルカは玄関や窓の戸締りを宜しくお願いね」
「だっる~。まぁしょうがないよね」
「姉さん、ちゃんとやらないと駄目ですよ」
ダルそうに行くクリナーレをパルカが叱りながら行く。
ほんと、妹がしっかりしていて姉のクリナーレがしっかりしないでどうするのよ。
…。
……。
………。
準備が整い、すぐに外に出た。
私達が今いる所は上空500メートルからご主人様の車をストー…いえいえ、尾行中です。
にしても、さすがご主人様が作った違法改造武器…物凄い性能ですね。
普通の性能と全然違います。
「あっ、アンジェラス。アニキが一軒の店屋の駐車場に車を止めたぞ」
ルーナが持ってる探索機を横から見て言うクリナーレ。
「それじゃあ私達も降下して駐車場に行きますよ」
「オッケー!いやっほー!!」
「あ、姉さん!速すぎです!!危ないですよー!!!」
一気に急降下するクリナーレとそのクリナーレを追いかけるパルカ。
流石、DTリアユニット plus GA4アーム。
重量があるから重力に因って、スピードが増加させられ本来のスピードより速い。
私とルーナは物凄いスピードで急降下する二人の後を追う。
地上から100メートル近くまで接近するとご主人様の車が視認できた。
徐々に地上に近づいて来たのでスピードダウンさせ着地体勢に入る。
地面に降り立つとパルカが困った声を上げながら何か引っ張ている光景が目に入った。
「………はぁ~」
「あらあら~」
私はその光景を見て溜息してルーナは苦笑い。
その光景とは、クリナーレの上半身が地面に突っ込み下半身は両足を空に向けていて、その両足をパルカが掴んで引っ張り上げている光景。
なんともまぁ…無様な光景です。
ポン!
あ、抜けた。
クリナーレが抜けた同時にパルカはバランスを崩し尻餅をつく。
「えへへ~、失敗失敗」
「もう姉さん!心配かけないでください!!本当なら壊れてしまうんですよ!!!」
「大丈夫、大丈夫。ボク達はそう簡単に壊れないように作られてるんだから」
「それでもです!以後、気をつけてくださいね」
「は~い」
クリナーレがこの調子だと、パルカはこれからも大変な思いするね。
これじゃあ姉妹が逆です。
「お姉さま、ちょっとこちらに来てください」
店の中が見えるガラス窓の所で空中停止しているルーナが右手で招き猫のように私を手招きする。
いったい何だろう?
私はルーナの所まで飛びガラス窓あたりでストップした。
「何、パルカ?」
「この店の中を見てください。観るに堪えない混沌とした風景ですわ」
「混沌?どれどれ」
私はひょっこりとガラス窓ごしに見ようとした時に丁度、クリナーレとパルカが来た。
二人に構わず私が見た光景は…。
「…うわぁ~………」
「うげ!」
「…ひゃ~」
私、クリナーレ、パルカの順に愕然とした声を上げた。
だって私がガラス窓の向こうの世界はなんと、女装した男性ばっかだったのだから。
客も成人している男性ばかり。
店員は色んなコスチュームしていた。
セーラー服、メイド服、ナース服、忍者服、チャイナ服、裸エプ…駄目これ以上言うと気持ち悪すぎて嘔吐しそう。
あとオプションでネコ耳、犬耳、ウサギ耳、そのオプションに似合う尻尾。
正直、気持ち悪いです。
徐に店の看板をみると『スナック・男天使バー』と書かれていた。
男天使って…堕天使の間違いじゃあないでしょうか…。
ご主人様…こんな所に入ってどうするつもりですか?
は!?
まさかアルバイトとか言っといて、実はこの店の店員の中に好きな人がいるのでしょうか!?
しかも同性!
嫌々、そんなご主人様は嫌です!
これは確めないといけません!
「ルーナ、クリナーレ、パルカ、店に乗り込むよ」
「えぇ~!?嫌だよ、あんな気色悪い所!」
「ん~。あたしも遠慮したいなぁ~」
「お、悪寒がしますぅ…」
クリナーレ達が店の中に入る事を拒絶する。
そりゃそうだ。
私だって入りたくないんだから。
でも、ご主人様を取っちめて二度とこのようなカオスな店に行ってはいけないと説教しないといけません!
「つべこべ言わず行きますよ!」
「「「ひぃっ!?はい!」」」
私が怒鳴ると三人ともビックリしながら顔を縦に振る。
店のドアに近づき私は両手でドアノブを掴み、力いっぱい回す。
すると少しドアが開き神姫が入れるぐらいの隙間が出来た。
「私が最後に入るからクリナーレ、ルーナ、パルカの順に入って」
「嫌だな~、何でボクが…」
「仕方ないですよ。お姉さまがあ~なった以上、もうどうにも出来ないわ」
「あたしも頑張りますから元気だして、姉さん」
地上に降りてから店の中に入るクリナーレ達。
クリナーレ達が完全に入った後、私はドアノブから手を離し、閉まる前に店の中に入る。
入った後すぐに地上に降りる。
飛んでいていたらすぐに人間達に見つかってしまうからだ。
「さぁ、ご主人様を探しますよ」
「うん、早く見つけてこんな所から出たいしね」
「同感ですわ」
「右に同じです」
私を先頭にしてトコトコ、と出来るだけ見つからないように壁側を歩き店内を一周する。
この方法なら見つけるのが遅くなりますけど、確実にご主人様を見つける事が出来ます。
待っててくださいね、ご主人様!
私が必ずご主人様の趣味を治してあげます。
…。
……。
………。
「な、なんで見つからないの~」
もうかれこれ店の中を七周している。
なのにご主人様の姿が見当たらない。
どうして?
愕然とし、半分諦めていた…その時だった。
「あれ~何で先輩の神姫達がいるの~?」
この聞きなれた乙女チック声。
私は声がした方向に顔を向けた。
そこに居たのは、なんとご主人様の後輩であり幼馴染でもある十六夜婪さんである。
可愛い青と白で構成されているメイド服を着ていて、頭には白いカチューシャに右手にはワインのビンを持っていた。
「婪様!?なぜ婪様がこのような場所に?」
「バイトよ。先輩に会いに来たの?」
「はい!」
「それじゃあ少し待ってね。タツ子ちゃーん、ちょっとこっちに来て~」
婪様がなにやら大きな声で奥にいる長いニーソックスを履いててブレザーを着ている人に言った。
すると『は~い』とあからさまに男性が声を変えて言う返事が聞こえた。
て、違いますよ婪様。
私達が会いたいのはオカマじゃなくて、ご主人様なのです。
「ゲッ!?何でお前等がこんな所にいるんだよ!」
あれ?
この声はご主人様の声。
でも声を主は婪様が呼んだ女装した男…。
まさか!?
「まさか、ご主人様ですか!?」
「当たり前だろ。あ、そっかー。化粧もしてカツラも付けてれば解らないかぁ」
ご主人様らしき女子高校生が自分の頭に片手を置いてズルリと纏まって長い髪の毛を取る。
するとご主人様の髪形が表わとなり、私はこの人が私達のご主人様だと認識できた。
「ご主人様ー!」
「アニキ!」
「ダーリン!」
「お兄ちゃん!」
私達四人はいっきにご主人様の胸の形をした詰め物が入った胸に飛び込む。
やっと会えました。
店の中に人達は何事かとご主人様の方に視線を向けるが今は気にしない。
「おいおい、いったい何があったんだ?」
ご主人様は困惑しながらも優しく私達を両手で抱き留めくれる。
暖かくて大きな手。
「妬けるわね~。先輩の神姫達はよっぽど先輩の事が好きなのね」
「………ちと、恥ずかしいなぁ」
少し顔を赤らめながら照れてるご主人様。
「けど何で俺がここでバイトしてるって解ったんだ?」
「これですよ、ダーリン」
ルーナが神姫用の探索機をご主人様に見せる。
『なーるほど』とご主人様が納得したご様子。
そうだ、ご主人様にこのバイトを辞めるように言わなければ。
「ご主人様あのですね、今すぐこのバイトを---」
「あ~はいはい。辞めるから安心しろ」
私が言い切る前に、ご主人様がこのバイトを辞めると宣言した。
面食らった私はボー、としてしまった。
「え、はい。そうです、辞めてください…でも何で分かったんですか?」
ご主人様は私とルーナを右肩に、クリナーレとパルカを左肩に乗せながら言った。
「アンジェラスの考える事はたいてい解るんだよ。まぁこのバイトはお前等が来る前にやってたバイトだから、それなりに続けてた訳。でも姉貴の会社から結構、金が入ったから今月の末で辞めるつもりだったんだ」
「えぇー!?タツ子ちゃん、辞めちゃうのー!?!?」
いきなり婪様が大声をあげた。
あまりにも驚いた事により手に持っていたワインビンを落とし、ガシャーン、と音を出してワインの中身が散乱する。
周りにいるお客さん達も『えぇー!?』と驚いている。
「アニキー、『タツ子』て?」
「この店での俺の名前は『タツ子』で名乗ってるんだよ。因みに婪の奴は『リンク』。このバイトを紹介したのも婪だ。本当は嫌だったんだけど…給料が良かったからさぁ」
『なるほど』とクリナーレがポン、と手を叩く。
ご主人様が『タツ子』で婪様が『リンク』ですか…。
似たり寄ったりの名前ですね。
「タツ子ちゃんが辞めるなら、あたしも辞~める」
さらに婪様がバイト辞める宣言をしたら、またお客様が『えぇ~!?』の驚きの声。
「ちょっと!ナンバー1のリンクちゃんとナンバー2のタツ子ちゃんがいきなり辞めるなんて許せないわよ」
野太い声が聞こえたのでそっちの方を見ると、そこに居たのはいかにもオカマらしいオカマの男性でした…。
ナンバー1、ナンバー2…婪様とご主人様はこの店のトップクラスですか。
婪様はともかく、ご主人様がナンバー2なのがちょっと…。
確かに最初見た時はあまりにも別人過ぎて、誰か分かりませんでしたけど。
「店長。『許さない』って言われても困るぜ」
ご主人様ことタツ子さんがオカマ店長に説得する。
「そうですよ。タツ子ちゃんの言う通りです」
続いて婪様ことリンクさんがタツ子さんの右腕を抱き寄せ絡める。
ちょっとうらやましいかも。
「兎に角。店長やお客様には悪いですが、あたし『タツ子』は今月の末で辞めま~す」
「あたしも『タツ子』と同じく辞めま~す」
長い髪の毛のカツラを付けて女の子ぽく振舞うご主人様と婪様。
婪様は別に構いませんが…ご主人様には無理があるんじゃないでしょうか。
「う~~~~ん。困った事になったわぁ~。でも辞めたいというのならしかたないわ~」
オカマ店長が困った顔をしながらもバイトを辞めても言いと言ってくれた。
これで一安心です。
「それじゃあ今月の末にタツ子ちゃんとリンクちゃんの送別会をやるわよー!この会に出たい人はお金を沢山持って来てね~」
『おぉー!』歓声を上げるお客さん達。
このお客さん達って…筋金入りの同性愛者です。
気持ち悪いです。
この後、店の中はお祭り騒ぎで、帰りはご主人様の車に婪様と私達乗せて帰宅しました。
ご主人様はクタクタになっていたので今日はすぐに寝てしまい、婪様がご主人様が完全に寝た事を確認したらご主人様のベットに潜り込み添い寝をしてしまいました…ちょっと羨ましい。
ともかく、今日の一日はこれで終わり、明日からはまた新しい一日がはじまる事でしょう。
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{俺の昔のバイトについて}
アンジェラスの視点
「そんじゃ行ってくるから、ちゃんと留守番してるんだぞ」
「いってらっしゃい、ご主人様」
ご主人様はバイトに行く。
平日の月曜日、水曜日、金曜日はいつも午後七時過ぎに家に出る。
バイトの内容は知らない。
前に『どんなバイトしてるの?』訊いたど、ご主人様は苦笑いしながら『ワリィ、それは答えられない』と言われ分からずじまい。
私に秘密する程のバイトって何かしら。
私に限らず、クリナーレ、ルーナ、パルカにも秘密にしている。
みんなも知りたくってしかたないらしい。
「あぁ~あ、アニキの奴、またバイトに行っちゃたよ。つまんなーい」
「そいう事、言わないの。さっきまでお兄ちゃんと遊んでてたじゃないですか~」
「もっと遊びたいんだ!パルカも遊び足りないでしょ?」
「そうですけど…しかたないですよ」
クリナーレとパルカはご主人様と遊べなくて不満げ。
そんな二人を見ると私も不満な顔になってしまう。
「お姉様ー、うかない顔なんかしてどうしたんですか?」
ルーナが横からやって来た。
しかもニヤニヤと笑いながら。
「当ててあげましょう。ダーリンのバイトの内容がしりたい…あの二人を見て『私もご主人様と遊びたい』…でしょ?」
「…当たりよルーナ。凄い洞察力ね」
「お姉様程じゃありませよ。所でお姉様、ちょっとこっちに来てくださる」
「なに?」
ルーナについて行くと、ご主人様がよく使うデスクトップ型のパソコンに着いた。
電源が入りっぱなしでデスクトップの背景は可愛いメイド服を着た二次元の女の子の姿が表示されていた。
多分、どっかのエロゲーのキャラクターでしょ。
ご主人様はメイド服が好きなのかなぁ?
ルーナは四つん這いになりキーを叩く。
すると一つファイルが開き、その中にある起動データをカーソルに合わせエンターキーを押した。
起動したソフトはなんとマーカー追跡する特殊なソフトだった。
画面最大で表示して追跡用ソフトは町の全て映しだし赤い丸がピコピコと点滅しながら動いていた。
「あの赤い丸が分かる?」
「まさか、ご主人様?」
「ピンポンー!正解よ、お姉様」
両手を胸あたりで合わせながら笑うルーナ。
「これでダーリンが何処に行っているか一目瞭然。ダーリンが作ってくれた私達用の探索機もここにあるわ。お姉様、ちょっとダーリンをストーカーしましょ」
ストーカーって…せめて尾行て言ってよ。
その言い方だと犯罪チックでイヤだわ。
「何してるの~?」
「は!まさかまたエッチなゲームやってるんですか、ルーナさん!?」
「残念だけどエロゲーはやってませんね」
いやルーナ、そこで残念そうな顔をするのちょっとどうかと思うよ。
ていうか、ご主人様のエロゲーをプレイするのやめなさいよ!
「お姉様…お姉様が決めてください、ダーリンをストーカーするかしないか」
だからストーカー言うな。
けど、ご主人様が何処でバイトしてるかは気になる。
本当はご主人様に来ちゃ駄目、と言われてるけど…大丈夫よね。
うん、大丈夫よ。
ご主人様でいう『バレなきゃOK!』と同じです。
よし、そう思ったらすぐに実行しなければ。
「ルーナ、違法改造で作られたリアウイングAAU7とDTリアユニット plus GA4アームを持って来て。ご主人様を追跡しに行くわよ!」
「はい、お姉さま!」
トコトコ、とパーツが置かれている武装神姫用のガレージに行くルーナ。
「クリナーレとパルカは玄関や窓の戸締りを宜しくお願いね」
「だっる~。まぁしょうがないよね」
「姉さん、ちゃんとやらないと駄目ですよ」
ダルそうに行くクリナーレをパルカが叱りながら行く。
ほんと、妹がしっかりしていて姉のクリナーレがしっかりしないでどうするのよ。
…。
……。
………。
準備が整い、すぐに外に出た。
私達が今いる所は上空500メートルからご主人様の車をストー…いえいえ、尾行中です。
にしても、さすがご主人様が作った違法改造武器…物凄い性能ですね。
普通の性能と全然違います。
「あっ、アンジェラス。アニキが一軒の店屋の駐車場に車を止めたぞ」
ルーナが持ってる探索機を横から見て言うクリナーレ。
「それじゃあ私達も降下して駐車場に行きますよ」
「オッケー!いやっほー!!」
「あ、姉さん!速すぎです!!危ないですよー!!!」
一気に急降下するクリナーレとそのクリナーレを追いかけるパルカ。
流石、DTリアユニット plus GA4アーム。
重量があるから重力に因って、スピードが増加させられ本来のスピードより速い。
私とルーナは物凄いスピードで急降下する二人の後を追う。
地上から100メートル近くまで接近するとご主人様の車が視認できた。
徐々に地上に近づいて来たのでスピードダウンさせ着地体勢に入る。
地面に降り立つとパルカが困った声を上げながら何か引っ張ている光景が目に入った。
「………はぁ~」
「あらあら~」
私はその光景を見て溜息してルーナは苦笑い。
その光景とは、クリナーレの上半身が地面に突っ込み下半身は両足を空に向けていて、その両足をパルカが掴んで引っ張り上げている光景。
なんともまぁ…無様な光景です。
ポン!
あ、抜けた。
クリナーレが抜けた同時にパルカはバランスを崩し尻餅をつく。
「えへへ~、失敗失敗」
「もう姉さん!心配かけないでください!!本当なら壊れてしまうんですよ!!!」
「大丈夫、大丈夫。ボク達はそう簡単に壊れないように作られてるんだから」
「それでもです!以後、気をつけてくださいね」
「は~い」
クリナーレがこの調子だと、パルカはこれからも大変な思いするね。
これじゃあ姉妹が逆です。
「お姉さま、ちょっとこちらに来てください」
店の中が見えるガラス窓の所で空中停止しているルーナが右手で招き猫のように私を手招きする。
いったい何だろう?
私はルーナの所まで飛びガラス窓あたりでストップした。
「何、パルカ?」
「この店の中を見てください。観るに堪えない混沌とした風景ですわ」
「混沌?どれどれ」
私はひょっこりとガラス窓ごしに見ようとした時に丁度、クリナーレとパルカが来た。
二人に構わず私が見た光景は…。
「…うわぁ~………」
「うげ!」
「…ひゃ~」
私、クリナーレ、パルカの順に愕然とした声を上げた。
だって私がガラス窓の向こうの世界はなんと、女装した男性ばっかだったのだから。
客も成人している男性ばかり。
店員は色んなコスチュームしていた。
セーラー服、メイド服、ナース服、忍者服、チャイナ服、裸エプ…駄目これ以上言うと気持ち悪すぎて嘔吐しそう。
あとオプションでネコ耳、犬耳、ウサギ耳、そのオプションに似合う尻尾。
正直、気持ち悪いです。
徐に店の看板をみると『スナック・男天使バー』と書かれていた。
男天使って…堕天使の間違いじゃあないでしょうか…。
ご主人様…こんな所に入ってどうするつもりですか?
は!?
まさかアルバイトとか言っといて、実はこの店の店員の中に好きな人がいるのでしょうか!?
しかも同性!
嫌々、そんなご主人様は嫌です!
これは確めないといけません!
「ルーナ、クリナーレ、パルカ、店に乗り込むよ」
「えぇ~!?嫌だよ、あんな気色悪い所!」
「ん~。あたしも遠慮したいなぁ~」
「お、悪寒がしますぅ…」
クリナーレ達が店の中に入る事を拒絶する。
そりゃそうだ。
私だって入りたくないんだから。
でも、ご主人様を取っちめて二度とこのようなカオスな店に行ってはいけないと説教しないといけません!
「つべこべ言わず行きますよ!」
「「「ひぃっ!?はい!」」」
私が怒鳴ると三人ともビックリしながら顔を縦に振る。
店のドアに近づき私は両手でドアノブを掴み、力いっぱい回す。
すると少しドアが開き神姫が入れるぐらいの隙間が出来た。
「私が最後に入るからクリナーレ、ルーナ、パルカの順に入って」
「嫌だな~、何でボクが…」
「仕方ないですよ。お姉さまがあ~なった以上、もうどうにも出来ないわ」
「あたしも頑張りますから元気だして、姉さん」
地上に降りてから店の中に入るクリナーレ達。
クリナーレ達が完全に入った後、私はドアノブから手を離し、閉まる前に店の中に入る。
入った後すぐに地上に降りる。
飛んでいていたらすぐに人間達に見つかってしまうからだ。
「さぁ、ご主人様を探しますよ」
「うん、早く見つけてこんな所から出たいしね」
「同感ですわ」
「右に同じです」
私を先頭にしてトコトコ、と出来るだけ見つからないように壁側を歩き店内を一周する。
この方法なら見つけるのが遅くなりますけど、確実にご主人様を見つける事が出来ます。
待っててくださいね、ご主人様!
私が必ずご主人様の趣味を治してあげます。
握り拳を作り気合をいれる私。
人間に見つからないようにソロリソロリとつま先立ちしながら歩く。
皆も私の真似しながら歩く…ん、ルーナだけご主人様が私達一人一人に作ってくれたハンカチを鼻の所に結わいて後頭部の所までまわしている。
「ルーナ、その格好は?」
「この格好はダーリンが『これが泥棒のデフォルトの格好だ!…ネタ的に古いけど』と言ってました~」
「…あっそうですか」
ご主人様…いったいルーナに何を教えてるいるのかしら。
兎に角、今はルーナの格好なんて気にしてる場合じゃありません。
バシャ!
「きゃーーーー!?!?」
いきなりパルカの悲鳴に私は驚いた。
いったい何事なの、かと思い振り向くとそこにはビールまみれのパルカだった。
大方、お客さんが酔っていてビールが入ったコップでも落としたのでしょう。
そこに丁度パルカが居て、そのまま直撃コースでビールが落ちてきた、と。
今日のパルカは災難ね~。
あれ?
クリナーレが居ない。
キョロキョロと辺りを見回す。
「アッ!?」
クリナーレを見つける事ができたが、見つけた場所は最悪だった。
DTリアユニット plus GA4アームを使って飛び、テーブルの端から頭だけヒョッコリと表しDTリアユニット plus GA4アームに付いてるチーグルで何かを取ろうとしている。
クリナーレの視線を追うとそこに行き着いたのは布巾だった。
なるほど。
自分の妹がビール塗れになりベトベトになったしまったので、助けようと思い布巾を取ろうとしたのか。
久々にクリナーレが姉らしい行動をとっているじゃない。
あ、チーグルが布巾を掴んだ。
掴んだ瞬間、何故かクリナーレは上昇した。
あぁ~、そんなに上昇したら人間に見つかっちゃうじゃない!
「お姉さま、クリナーレさんが掴んでいる布巾はどうやらお客さんが掴んでそのまま上に持ち上げられたようです」
ルーナがおどけた態度を取りながら言う。
冷静に分析し言ってくれるのは嬉しいだけど、ルーナの日頃の行いを重ねて見てしまうので説得力が無いというか威厳が無いというか…。
「ウリャッ!」
ブチブチーーーー!!!!
クリナーレがアングルブレードを取り出し布巾を半分に切った。
そしてそのまま人間に見つからないように低空飛行をしながらパルカの所にやってくる。
「はい、パルカ。これで拭けよ」
「あ、ありがとう。…姉さん♪」
ぶっきら棒に布巾をパルカに渡すクリナーレ。
うん、ちゃんと妹の事を心配しているんだね。
見直しちゃった。
「お姉さま、もしあたしがパルカみたいな事になったら助けてくれる?」
「勿論、助けるよ。けど、ルーナはあんなヘマしないでしょ。助ける要素があんまりない」
「もう、お姉さまったら~。こーいう時は『勿論よ』だけで良いんですよ。一言余計に言ってしまうのがお姉さまの悪い所です。そんなだと、ダーリンに嫌われちゃいますよ」
「よ、余計なおせわです!」
でも、少し余計だったかもしれない。
自分でもほ~~~~っの少しだけ自覚しているのだ。
次からは気をつけよう。
「パルカ、ビールのベトベトは取れた?」
「はいー姉さんのおかげで充分すっきりできましたから」
「そう…良かったね。さぁご主人様探しの再開ですよ!」
私が元気よくそう言うとクリナーレ達が『おぉーーーー!!!!』と言い、ご主人様探しが再開された。
…。
……。
………。
「な、なんで見つからないの~」
もうかれこれ店の中を七周している。
なのにご主人様の姿が見当たらない。
どうして?
愕然とし、半分諦めていた…その時だった。
「あれ~何で先輩の神姫達がいるの~?」
この聞きなれた乙女チック声。
私は声がした方向に顔を向けた。
そこに居たのは、なんとご主人様の後輩であり幼馴染でもある十六夜婪さんである。
可愛い青と白で構成されているメイド服を着ていて、頭には白いカチューシャに右手にはワインのビンを持っていた。
「婪様!?なぜ婪様がこのような場所に?」
「バイトよ。先輩に会いに来たの?」
「はい!」
「それじゃあ少し待ってね。タツ子ちゃーん、ちょっとこっちに来て~」
婪様がなにやら大きな声で奥にいる長いニーソックスを履いててブレザーを着ている人に言った。
すると『は~い』とあからさまに男性が声を変えて言う返事が聞こえた。
て、違いますよ婪様。
私達が会いたいのはオカマじゃなくて、ご主人様なのです。
「ゲッ!?何でお前等がこんな所にいるんだよ!」
あれ?
この声はご主人様の声。
でも声を主は婪様が呼んだ女装した男…。
まさか!?
「まさか、ご主人様ですか!?」
「当たり前だろ。あ、そっかー。化粧もしてカツラも付けてれば解らないかぁ」
ご主人様らしき女子高校生が自分の頭に片手を置いてズルリと纏まって長い髪の毛を取る。
するとご主人様の髪形が表わとなり、私はこの人が私達のご主人様だと認識できた。
「ご主人様ー!」
「アニキ!」
「ダーリン!」
「お兄ちゃん!」
私達四人はいっきにご主人様の胸の形をした詰め物が入った胸に飛び込む。
やっと会えました。
店の中に人達は何事かとご主人様の方に視線を向けるが今は気にしない。
「おいおい、いったい何があったんだ?」
ご主人様は困惑しながらも優しく私達を両手で抱き留めくれる。
暖かくて大きな手。
「妬けるわね~。先輩の神姫達はよっぽど先輩の事が好きなのね」
「………ちと、恥ずかしいなぁ」
少し顔を赤らめながら照れてるご主人様。
「けど何で俺がここでバイトしてるって解ったんだ?」
「これですよ、ダーリン」
ルーナが神姫用の探索機をご主人様に見せる。
『なーるほど』とご主人様が納得したご様子。
そうだ、ご主人様にこのバイトを辞めるように言わなければ。
「ご主人様あのですね、今すぐこのバイトを---」
「あ~はいはい。辞めるから安心しろ」
私が言い切る前に、ご主人様がこのバイトを辞めると宣言した。
面食らった私はボー、としてしまった。
「え、はい。そうです、辞めてください…でも何で分かったんですか?」
ご主人様は私とルーナを右肩に、クリナーレとパルカを左肩に乗せながら言った。
「アンジェラスの考える事はたいてい解るんだよ。まぁこのバイトはお前等が来る前にやってたバイトだから、それなりに続けてた訳。でも姉貴の会社から結構、金が入ったから今月の末で辞めるつもりだったんだ」
「えぇー!?タツ子ちゃん、辞めちゃうのー!?!?」
いきなり婪様が大声をあげた。
あまりにも驚いた事により手に持っていたワインビンを落とし、ガシャーン、と音を出してワインの中身が散乱する。
周りにいるお客さん達も『えぇー!?』と驚いている。
「アニキー、『タツ子』て?」
「この店での俺の名前は『タツ子』で名乗ってるんだよ。因みに婪の奴は『リンク』。このバイトを紹介したのも婪だ。本当は嫌だったんだけど…給料が良かったからさぁ」
『なるほど』とクリナーレがポン、と手を叩く。
ご主人様が『タツ子』で婪様が『リンク』ですか…。
似たり寄ったりの名前ですね。
「タツ子ちゃんが辞めるなら、あたしも辞~める」
さらに婪様がバイト辞める宣言をしたら、またお客様が『えぇ~!?』の驚きの声。
「ちょっと!ナンバー1のリンクちゃんとナンバー2のタツ子ちゃんがいきなり辞めるなんて許せないわよ」
野太い声が聞こえたのでそっちの方を見ると、そこに居たのはいかにもオカマらしいオカマの男性でした…。
ナンバー1、ナンバー2…婪様とご主人様はこの店のトップクラスですか。
婪様はともかく、ご主人様がナンバー2なのがちょっと…。
確かに最初見た時はあまりにも別人過ぎて、誰か分かりませんでしたけど。
「店長。『許さない』って言われても困るぜ」
ご主人様ことタツ子さんがオカマ店長に説得する。
「そうですよ。タツ子ちゃんの言う通りです」
続いて婪様ことリンクさんがタツ子さんの右腕を抱き寄せ絡める。
ちょっとうらやましいかも。
「兎に角。店長やお客様には悪いですが、あたし『タツ子』は今月の末で辞めま~す」
「あたしも『タツ子』と同じく辞めま~す」
長い髪の毛のカツラを付けて女の子ぽく振舞うご主人様と婪様。
婪様は別に構いませんが…ご主人様には無理があるんじゃないでしょうか。
「う~~~~ん。困った事になったわぁ~。でも辞めたいというのならしかたないわ~」
オカマ店長が困った顔をしながらもバイトを辞めても言いと言ってくれた。
これで一安心です。
「それじゃあ今月の末にタツ子ちゃんとリンクちゃんの送別会をやるわよー!この会に出たい人はお金を沢山持って来てね~」
『おぉー!』歓声を上げるお客さん達。
このお客さん達って…筋金入りの同性愛者です。
気持ち悪いです。
この後、店の中はお祭り騒ぎで、帰りはご主人様の車に婪様と私達乗せて帰宅しました。
ご主人様はクタクタになっていたので今日はすぐに寝てしまい、婪様がご主人様が完全に寝た事を確認したらご主人様のベットに潜り込み添い寝をしてしまいました…ちょっと羨ましい。
ともかく、今日の一日はこれで終わり、明日からはまた新しい一日がはじまる事でしょう。
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