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「妄想神姫:第三十四章」(2007/07/03 (火) 18:11:21) の最新版変更点
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**剣の王妃、戦場を去れば神の姫君
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アルマの戦績記録カードを受け取った後も、私・槇野晶は現実感が今一つ
乏しかった。いくら小さな島とは言え、天空に浮かぶ大陸ごと対戦相手を
斬り捨てて……否、消し飛ばしてしまったのである。そんな中で冷静さを
保てたのは、当事者の神姫二人……そしてクララのみである。ロッテも、
普段の彼女からすれば落ち着いていた方だ。神姫のみのシンパシー故か?
「しかしアルマや。あの巨大な爆炎……魔剣の能力、ではないな?」
「はい。電磁加熱機構をオーバードライブさせただけですよ、ただ」
「……エネルギーを無駄にせず、魔剣に蓄熱させて活用したんだよ」
「そうですの。わたしとアルマお姉ちゃんの剣は、頑丈ですから♪」
「あ、あたしの言葉~……とにかく、あれはマイスターの力ですっ」
確かに“ヨルムンガルド”と“マビノギオン・アサルト”の発生熱量を
全て一点に集約すれば、起爆は可能……だが、それだけでは自分の躯が
ダメージを負ってしまう。恐らくは、刀身自体を耐熱装甲代わりにして
爆風を誘導したのだろうが……それを為しうるエルテリアの力。そして
複雑な挙動を容易に制御するアルマの潜在能力。恐ろしい娘だ、有無。
「にしてもだ。あれらを見て、驚くのが神姫より人間ばかりとはな」
「“肉の躯”だと、多分兵隊さん位しか想像できないと思いますの」
「ですね……あたし達は、戦う定めに身を置く“武装神姫”ですし」
「戦の中にあればこそ、敵の力を冷静に見極める能力を得る……か」
「と言っても全く驚かなかった娘は、流石に居なかったと思うもん」
“人間”として産まれ生きてきた私では、確かに現象を解析こそすれど
あの“一撃”を感覚として“理解”する事は、さぞ骨が折れるだろう。
だが、それでも私はやらねばならん!“アルファル”を完成させる為、
この娘らの為に……同時に私の“追求したい”エゴの為でもあるがな?
「……よし、着いたぞ。今日の祝勝会はここでやる、いいな三人とも」
「お、お茶漬け屋“ばんじゃ~い”?……お茶漬け食べるんですの?」
「ここの鮭茶漬けが、旨いと聞いてな。アルマは塩味を好む質だろう」
「あっ……は、はいっ!でもいいんですか、あたしの好みなんかに?」
『なんかに』などと言うな……と指でアルマの口を塞ぎつつ、入店する。
秋葉原からほど近い場所だが、流石に神姫を連れた客は少々珍しい様だ。
襷を掛けた若い女性店員が、物珍しそうな目をしつつ案内をしてくれた。
……何故かクララが、私の胸で落ち着かん。こっそり理由を聞いてみる。
「店員さんは、塾の……ほら、倭さんなんだよ。フィオラを欲しいって」
「なんと。狭い様で広いがやっぱり狭いな、東京は……うぅむ、意外だ」
この店員は、クララがHVIFの姿で“通っている”塾の友達らしい。
とは言え、彼女は“神姫のクララ”を見た事がない。私も初めて逢う。
不用意にクララの“声”を聞かれねば、悟られる心配は少ないだろう。
それに今日はアルマの祝勝会。倭とやらには、今日の所は黙っておく。
「はい。それじゃ、鮭茶漬け二の梅茶漬け二ですね……食べられる?」
「何も私一人で食べる訳ではない故な。気にせず持ってきてくれぬか」
「は、はぁ~……まさかその神姫達が食べるんじゃないです、よねぇ」
「ふふ、そのまさかだと言ったらどうする?さ、準備を頼むぞ店員よ」
自らも神姫を伴侶としている故に、私の言葉はより一層驚きの的らしい。
それでも、カリカリに灼け脂の弾ける鮭が出てくるのは間もなくだった、
仕事は手を抜かずきっちりこなす性格らしい。気に入ったぞ。身を解せば
ジューシーな汁が湧き出す鮭。柔らかく見るだけで唾液を産む紀州の梅。
「蓮華も三つ、倭とやら気が利くな……さ、皆遠慮せずに食べるが良い」
「はいですの~♪マイスターとアルマお姉ちゃんは、鮭の方をどうぞっ」
「ボクとロッテお姉ちゃんは梅茶漬けだよ。ほら、アルマお姉ちゃんは」
「あ、覚えていてくれたんですね?……あたしが酸っぱいのダメだって」
そうなのだ……情けないが、私達四人は食べ物の好き嫌いを持っている。
中でも私とアルマに共通するのは“梅干しが食べられない”という事実。
私の梅干し嫌いは、碓氷灯にも共通した先祖由来の性質らしい。アルマは
もっと大雑把に“酸っぱい物が嫌い”なのである。マリネも苦手らしい。
「じゃあ、私も戴くとしようか……まだ手伝いは不要か、三人とも?」
「はい。コレ位の“荷物運び”なら、お店でもやりますしね……っと」
「でも、鮭の方は少し大変そうかな?ボクらのは、これだけだもんね」
「なんだか、お昼にやっていた大豆運びのゲームを思い出しますの♪」
ここで“茶漬け”を選んだ己の不明を呪う。そう、ご飯に乗せる具材。
神姫の躯では、これらを解してお椀へと移す作業が非常に手間なのだ。
だが、普段“食事”を行っている彼女らには、それも苦ではない様だ。
「よし。では……戴きます。お前達も準備が終わったら、食べるといい」
「はい、無事完成ですの!じゃあ皆蓮華を持って、戴きますですの~♪」
「戴きますなんだよ……はむ、ん……あちち。でも酸味が美味しいかな」
「戴きますッ。はふはふ……あむ。ん……鮭が美味しいです、とっても」
「気に入ってくれたなら何よりだ。ん?アルマや、何をしている……?」
鮭茶漬けが入った蓮華を抱え上げて、アルマが隣のクララに突き出す。
それを美味しそうに、クララが食べる。そして、次はロッテに……!?
──そう!『あ~んしてください♪』というあのセリフと共に、だッ!
予期せぬシチュエーションを目前にして、思わず私も動揺してしまう。
「じゃあ次は……マイスターですっ。はい、あ~んしてくださいね♪」
「て、照れるじゃないかアルマや……あ、あ~ん……んむ、んむ……」
「如何ですか?って同じ鮭茶漬けだから、有り難み薄いでしょうけど」
「う゛、そんな事無い!そんな事は無いぞッ!!……だってな、その」
──────大切な人にしてもらうと、美味しいからね。
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**剣の王妃、戦場を去れば神の姫君
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アルマの戦績記録カードを受け取った後も、私・槇野晶は現実感が今一つ
乏しかった。いくら小さな島とは言え、天空に浮かぶ大陸ごと対戦相手を
斬り捨てて……否、消し飛ばしてしまったのである。そんな中で冷静さを
保てたのは、当事者の神姫二人……そしてクララのみである。ロッテも、
普段の彼女からすれば落ち着いていた方だ。神姫のみのシンパシー故か?
「しかしアルマや。あの巨大な爆炎……魔剣の能力、ではないな?」
「はい。電磁加熱機構をオーバードライブさせただけですよ、ただ」
「……エネルギーを無駄にせず、魔剣に蓄熱させて活用したんだよ」
「そうですの。わたしとアルマお姉ちゃんの剣は、頑丈ですから♪」
「あ、あたしの言葉~……とにかく、あれはマイスターの力ですっ」
確かに“ヨルムンガルド”と“マビノギオン・アサルト”の発生熱量を
全て一点に集約すれば、起爆は可能……だが、それだけでは自分の躯が
ダメージを負ってしまう。恐らくは、刀身自体を耐熱装甲代わりにして
爆風を誘導したのだろうが……それを為しうるエルテリアの力。そして
複雑な挙動を容易に制御するアルマの潜在能力。恐ろしい娘だ、有無。
「にしてもだ。あれらを見て、驚くのが神姫より人間ばかりとはな」
「“肉の躯”だと、多分兵隊さん位しか想像できないと思いますの」
「ですね……あたし達は、戦う定めに身を置く“武装神姫”ですし」
「戦の中にあればこそ、敵の力を冷静に見極める能力を得る……か」
「と言っても全く驚かなかった娘は、流石に居なかったと思うもん」
“人間”として産まれ生きてきた私では、確かに現象を解析こそすれど
あの“一撃”を感覚として“理解”する事は、さぞ骨が折れるだろう。
だが、それでも私はやらねばならん!“アルファル”を完成させる為、
この娘らの為に……同時に私の“追求したい”エゴの為でもあるがな?
「……よし、着いたぞ。今日の祝勝会はここでやる、いいな三人とも」
「お、お茶漬け屋“ばんじゃ~い”?……お茶漬け食べるんですの?」
「ここの鮭茶漬けが、旨いと聞いてな。アルマは塩味を好む質だろう」
「あっ……は、はいっ!でもいいんですか、あたしの好みなんかに?」
『なんかに』などと言うな……と指でアルマの口を塞ぎつつ、入店する。
秋葉原からほど近い場所だが、流石に神姫を連れた客は少々珍しい様だ。
襷を掛けた若い女性店員が、物珍しそうな目をしつつ案内をしてくれた。
……何故かクララが、私の胸で落ち着かん。こっそり理由を聞いてみる。
「店員さんは、塾の……ほら、倭さんなんだよ。フィオラを欲しいって」
「なんと。狭い様で広いがやっぱり狭いな、東京は……うぅむ、意外だ」
この店員は、クララがHVIFの姿で“通っている”塾の友達らしい。
とは言え、彼女は“神姫のクララ”を見た事がない。私も初めて逢う。
不用意にクララの“声”を聞かれねば、悟られる心配は少ないだろう。
それに今日はアルマの祝勝会。倭とやらには、今日の所は黙っておく。
「はい。それじゃ、鮭茶漬け二の梅茶漬け二ですね……食べられる?」
「何も私一人で食べる訳ではない故な。気にせず持ってきてくれぬか」
「は、はぁ~……まさかその神姫達が食べるんじゃないです、よねぇ」
「ふふ、そのまさかだと言ったらどうする?さ、準備を頼むぞ店員よ」
自らも神姫を伴侶としている故に、私の言葉はより一層驚きの的らしい。
それでも、カリカリに灼け脂の弾ける鮭が出てくるのは間もなくだった、
仕事は手を抜かずきっちりこなす性格らしい。気に入ったぞ。身を解せば
ジューシーな汁が湧き出す鮭。柔らかく見るだけで唾液を産む紀州の梅。
「蓮華も三つ、倭とやら気が利くな……さ、皆遠慮せずに食べるが良い」
「はいですの~♪マイスターとアルマお姉ちゃんは、鮭の方をどうぞっ」
「ボクとロッテお姉ちゃんは梅茶漬けだよ。ほら、アルマお姉ちゃんは」
「あ、覚えていてくれたんですね?……あたしが酸っぱいのダメだって」
そうなのだ……情けないが、私達四人は食べ物の好き嫌いを持っている。
中でも私とアルマに共通するのは“梅干しが食べられない”という事実。
私の梅干し嫌いは、碓氷灯にも共通した先祖由来の性質らしい。アルマは
もっと大雑把に“酸っぱい物が嫌い”なのである。マリネも苦手らしい。
「じゃあ、私も戴くとしようか……まだ手伝いは不要か、三人とも?」
「はい。コレ位の“荷物運び”なら、お店でもやりますしね……っと」
「でも、鮭の方は少し大変そうかな?ボクらのは、これだけだもんね」
「なんだか、お昼にやっていた大豆運びのゲームを思い出しますの♪」
ここで“茶漬け”を選んだ己の不明を呪う。そう、ご飯に乗せる具材。
神姫の躯では、これらを解してお椀へと移す作業が非常に手間なのだ。
だが、普段“食事”を行っている彼女らには、それも苦ではない様だ。
「よし。では……戴きます。お前達も準備が終わったら、食べるといい」
「はい、無事完成ですの!じゃあ皆蓮華を持って、戴きますですの~♪」
「戴きますなんだよ……はむ、ん……あちち。でも酸味が美味しいかな」
「戴きますッ。はふはふ……あむ。ん……鮭が美味しいです、とっても」
「気に入ってくれたなら何よりだ。ん?アルマや、何をしている……?」
鮭茶漬けが入った蓮華を抱え上げて、アルマが隣のクララに突き出す。
それを美味しそうに、クララが食べる。そして、次はロッテに……!?
──そう!『あ~んしてください♪』というあのセリフと共に、だッ!
予期せぬシチュエーションを目前にして、思わず私も動揺してしまう。
「じゃあ次は……マイスターですっ。はい、あ~んしてくださいね♪」
「て、照れるじゃないかアルマや……あ、あ~ん……んむ、んむ……」
「如何ですか?って同じ鮭茶漬けだから、有り難み薄いでしょうけど」
「う゛、そんな事無い!そんな事は無いぞッ!!……だってな、その」
──────大切な人にしてもらうと、美味しいからね。
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