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「妄想神姫:第三十三章(中編)」(2007/06/17 (日) 23:22:03) の最新版変更点
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**約束されし、王妃の宝剣(中編)
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力を“受け流す”という策を用い、見事“隻腕”の一撃を逃れたアルマ。
だが、この一瞬生き延びただけではいかん。見事反撃を加えて、勝たねば
真に彼女を乗り越えたと言えない。現に腰のエルテリアは、まだ動かぬ。
魔剣もまた、アルマの真髄を見極めようとしている所なのだろう。有無。
「なかなか考えたな……だが、それだけで勝てると思うかッ!」
「ッ……!?そこっ、く……そうですね、守勢に回っていては負けます」
「それに、完全にノーダメージという訳でもない様だ……ならば!」
「なっ……ふっ。せあっ!れ、連撃?!……くっ!」
「推して参るのみ。どこまで耐えきれるか!」
ぱっと見では防戦一方のアルマ。前の様な致命傷は一つも喰らわない。
だが、僅かずつながら拳の衝撃がレーラズ等の装甲を抜けて、アルマに
疲労を与え始めている。このままでは、ジャッジシステムに見放されて
判定負け……となってしまうだろう。アルマも分かっているのか、剣を
返して反撃の突きを繰り出す!昨晩の特訓は、これだったのだ。だが!
「ッ!?……なるほど、こうして一突きで仕留めようと言うのか」
「頬を、掠っただけ……くっ!?」
「生憎と、そんな一撃だけではサードとは言え……私を倒せぬぞ!」
「うぁっ!?……ですが最後まで諦めませんよ、あたしは」
「そうか。だが、肝心な弱点に気付いていない様だな……ッ!!」
アルマの突きを避けて距離を取ったティールが、再び突っ込んでくる。
対するアルマは、受け流しの構えを取って備えるが……予想は外れた。
繰り出されたのは豪拳ではなく、抉る様な下からの蹴りだったのだ!!
「きゃうっ!?し、しまった……ヨルムンガルドが!」
「その剣は、軽すぎるのだ」
「そこまで読んでいたか……サードにこれ程の神姫が居るとは!」
ティールの言う通り、強化セラミックと軽量化フレームで作成してある
“ヨルムンガルド”は、金属系マテリアルの同種ブレードよりも軽い。
それは合体による重量増加と取り回し・更には加熱溶断攻撃を見越して
最初から意図していたのだが……単独では、その軽さが仇となったか。
蹴りの威力は拳よりも低かった物の、黒刃は跳ね上げられて宙に舞う。
「くっ!でも、まだあたしには剣がありますよ!?」
「……ああ。だが……手で抜いていて私の速度に追いつけるかっ!?」
「きゃあああっ!!?」
「アルマお姉ちゃんッ!?」
ロッテとクララの悲鳴が、耳の側で響く。次の剣を抜こうとしたアルマが
更なるティールの蹴りに襲われ、三本目を取り落としてしまったのだッ!
その複雑な使用法故に、刀身は鞘からアルマの意志信号で射出されその後
彼女の手の中でジャグリングの様に操作し、合体させる形式を採用した。
だがその機構があってなお、ティールに追いつけぬ時間のロスが生じる!
「四本、五本……六本!さぁ、これで残るは……腰の剣のみか」
「まだ……あります。もう六本!“マビノギオン・アサルト”!」
「ほう。左手に四本も仕込んだか……だが、遅いと言っているッ!!」
「きゃっ!?……しまった、スリーブ・ダガーまで……!」
いい加減苛つきだしたティールのタックルを受け、アルマの躯からは更に
六本の剣が飛び散る。“ヨルムンガルド”の鞘が二本のダガーに変形し、
左腕のアドバンスド・ターミナル“マビノギオン”からは、外装が分離し
変形した二振りのソード・ブレイカーと、加熱溶断機構付きスピア一本。
止めにウィップモード付きのエストックまでも、周囲に弾き飛ばされた!
これで本当に、アルマが持っているのは“魔剣エルテリア”のみとなる。
「……よくもまあ、これだけの“剣”を持ち歩いていた物だ」
「私は剣を統べる、紅星の閃姫(ロードナイト・ヴァルキュリア)ですし」
「統べるだと?頼みの剣は全て弾き飛ばしてやったし、腰のそれは」
「ええ。抜けません……それでも、最後の一瞬まであたしは戦います」
何時ギブアップ信号を押そうかと思ったが、アルマはあくまでも冷静。
否……厳密には、その奥にビリビリする程の闘志を燃やし始めている!
ティールも感じ取ったのか、隻腕を突き込む構えを崩そうとはしない。
ロッテもクララも私も、祈る思いでヴァーチャル・フィールドを見る。
「……いいだろう。今再び胸のCSCを刳り抜き、止めを刺してやる」
「例え剣が無くとも……あたし自身が“刃”となり、貴女を討つ!」
「やれるものならな……ッ!!」
本当に徒手空拳で戦う覚悟を決め、構えを取ったアルマに……敵が迫る!
一瞬でその距離は詰まり、豪拳が繰り出される!響く爆音と輝く閃光!!
スピーカーの震動で筐体ごと揺れる私……だが、決着の声は聞こえない。
慌てて眼鏡のカメラをフィールドに戻して、その顛末をしかと見届ける。
「……こ、れは……!?」
「エルテリア!……貴方、やっと……認めてくれたんですね……」
「アルマ、お姉ちゃん……!!」
迫る鉄槌と、覚悟の戦姫。その間に割って入ったのは、剣の王であった。
ロックボルト代わりの目釘を解き放ち、“舞剣”エルテリアがその勇姿を
遂に表したのだ!……ティールの拳を、完全に受け止めるという形でな!
「お、重い……神姫が持っている訳でもないのに、何故だ!」
「……これは魔剣、不壊の刃。軍神とはいえ、容易には砕けません」
「魔剣、だと?……それを抜く為に、敢えてこんな戦い方を!?」
「そうです。重装甲の影に隠れたあたしの“甘え”を、斬る為に!」
やっと合点がいった。私が作りだした数々の防具、それを纏う事に依る
安心感……否、甘え。その未熟さを、剣は最初から見抜いていたのだ。
故にアルマが“弱さ”を捨て去る覚悟を決めた時に……魔剣は初めて、
自らの力をアルマに託す事を決断したのだ。流石は神浦琥珀の作、か。
剣の柄を握りしめ、自らの一部としたアルマは冷厳にティールを見る!
「これよりあたしの運命は刃と共にあり、力はあたしの意思と共に!」
「……ならばその運命も意思も、この拳で打ち砕いてくれるわ!!」
──────大丈夫。勝利の女神が、舞い降りたよ……!
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