「第3話「元の鞘へ、ブラボーサイド」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「第3話「元の鞘へ、ブラボーサイド」」(2006/10/23 (月) 20:52:29) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**第3話「元の鞘へ、ブラボーサイド」
メーカーに「入院」していた黒子が帰ってくる日がようやくやってきた
今日は有給を取ってあり、朝から俺も白子もオリの中のクマのように落ち着きが無い
ピンポーン♪
「来たぁ!!」「きたー!」
玄関まで全力疾走し扉を開ける、外には見知らぬ女性が立っていて
「神はあなたを愛して…」
「帰れ! 俺は愛してねーよ!」「かえれー! 愛してるのはご主人様で十分!」
一ミリ秒で叩き返した。畜生紛らわしいんだよ
再びオリの中のクマのほうが落ち着きがあるというような状況に戻る俺達
そして再びチャイムが鳴る
「ウオォォォ!!」「うおー!」
再び全力ダッシュ。床にヒビが入ったような音がしたが気にしない
亜光速で配達人から箱を奪うと、挨拶もそこそこに締め出し、箱を開ける
そこには新品同然に修理された黒子が眠るように納められていた
震える手で迅速にメイン電源をONにする
「う、ん…」
黒子がわずかに身じろぎする。白子は感極まってしまったようで
「うわーん! 黒ちゃーん!」
と叫んで抱きついた。
電源が入れられる。ということは修理が終わって休息の時間は過ぎ、再び戦いの日々が始まったということか
「う、ん…」
身じろぎする。新品の身体は関節の具合がプログラムと完全にシンクロできていないようで、少し違和感がある
「黒ちゃーん!」
ガシッと何かが抱きついてくる。驚いて目を開けると、アーンヴァルタイプの神姫が、俺に抱きついてきたようだ
俺がいない間にマスターが買い足していないければ、うちの部隊にいるアーンヴァルはアルファだけのはず。こいつ、こんな性格だったか?
「うぅ、黒子…。寂しかったんだぞ…」
見たことのない男性が目頭を押さえている。周りの風景も全く見覚えが無い。なんだこれは、どういうことだ?
「誰だテメーら? 何でこんなところにいるんだ俺?」
二人の顔こそ見ものだった
「つまり、誤配送ってこと?」
「たぶんな」
ようやくこの男性も理解できたようだ。口がうまく回るほうではない俺にはかなりの苦行だった
「たしかに、ナンバーも俺が覚えているうちの子のものとは違うみたいだな…」
神姫一人一人にはパーソナルナンバーが振り分けられ、二重登録や、違う神姫からのバックアップデータの上書きが出来ないようになっている
むろん、同じ種類の神姫が複数いる場での固体識別にも重宝するが
「しかも、君は闘技場で戦っているんだって? しかもバーチャルでなく、リアルで…」
「あんたの神姫が危ない目にあってなけりゃいいがな」
「いや、でも、君の主人だってナンバーの確認くらい…」
「うちのマスターはそんな悠長なことしないと思う」
ドッギャーーーン! と衝撃を受ける二人
「ごごごごごご主人様! どうしよう!」
「おおおおお落ち着け白子!」
ぐるぐる回りだす。なんだこいつ等?
「なんにしろ、急いだほうがいいぜ、下手したら、いきなり試合に出されてお陀仏なんてなりかねん」
「うおぉー! メーカーに電話だー!」
男性が慌ててメーカーに電話し、なんだかんだと説明して、再び折り返しの電話をかけるとか言われて受話器を置き、
水族館のマグロのほうがまだじっとている(本物なんて見たことないが)と言えそうなぐらいの勢いでうろうろ家中を歩き回り
折り返しの電話を受けて、彼の神姫の無事を確認したことで、ようやく落ち着きを取り戻してへたり込んだ
「ああ、神よ感謝します。さっきは愛してないなんて言っちゃってごめんちゃい」
「あーん、私もごめんなさーい。ご主人様と黒ちゃんの次に愛してまーす」
神なんてどこにもいない。頼れるのは己と仲間だけだ。そんな事をぼんやりと考えてしまう
しかし、この家は変なところだ。戦場のほうがよっぽど落ち着く
「あー、とりあえず、メシでも食うか。ご馳走用意してあるし…」
「さんせーい。黒ちゃんの退院お祝いだけど、せっかくだからブラボーちゃんの退院お見舞いで食べちゃいましょ」
「え?」
「こうして俺の家に来たのもなんかの縁だ。遠慮すること無いぞ」
そんな事を言って俺を抱え上げると、なにやら沢山置かれたテーブルのうえの神姫サイズのテーブルに俺を座らせた
「あ、俺は…」
「遠慮することは無いぞ。日持ちしないものばっかりだし」
「そうだよブラボーちゃん、ご主人様は料理お上手なんだよ」
「いや、そうじゃなくって、俺は今まで食事なんてしたことなくて…」
神姫は食事をする機能もあるが、別に必ず必要なものではない。
そのため、闘技場に出る神姫は殆ど食事なんてした事が無い。戦いと、訓練だけの日々だ
「あー、そうなのか。でもまあ、気にするな。誰にでも初めてはある」
「そうそう、遠慮しないで!」
やっぱりこの家は苦手だ
「えっと、黒ちゃんのベッドを勝手に使わせるわけにはいかないから、私のベッドを使って。私はクッションのうえで寝るから」
「そ、そうかすまない…」
食事を取り、三人でなんだかんだと遊んで、そろそろ寝ようということになった
俺と「黒子」を交換するのは明日、しかもマスター同士が直接会って交換するらしい
今日一晩この家で過ごすことになるなんて、なんとも厄介なことだ…
彼女達の部屋へ案内され、ベッドを宛がわれる
ベッドで寝るのも初めての経験だ。神姫は風邪なんかひかないし、固い床で寝ても全く平気に出来ているから…
恐る恐るもぐりこむ。どうもふわふわして落ち着かない
「おやすみ、ブラボーちゃん…」
白子がこちらににっこりと微笑みかけ、電気を消す
それにしても、鬼とも悪魔とも言えるアルファと同じアーンヴァルタイプに、こんな明るくしとやかな態度で接せられると物凄い違和感だ
「ああ、おやすみ」
しかし、眠りに落る寸前、確かに彼女の「黒ちゃん…」という嗚咽交じりの声を聞いたと思った
そうだ、彼女はようやく帰ってくると思った友達に会えなかったのだ。辛くないはずが無い
それなのに明るく振舞う彼女に俺は居心地の悪さを感じていたなんて…
戦場でどんなに上手く戦えても、自分は全く未熟なのだと痛感させられた…
翌日…
俺はブラボーを向こうに帰し、黒子を引き取った
ひとしきり再会の挨拶を終えたところで、黒子が俺に囁く
「ご主人様、あの人、ボクに無理矢理戦わせて、しかもボクのことブッたんだよ!」
「何、ナンバーの確認もせずに?」
「全然! ナンバーなんて聞かれもしなかった!」
こいつはメチャゆるさんよなあああ!
………バギッ
「白子ーー! 帰ったぞーー!」
「白ちゃーん!!」
玄関を開けたとたん、ブースター全開で飛んでくる白子
俺の胸ポケットから黒子を持ち上げると、飛行したまま黒子を抱きしめぐるぐると回りだす
「黒ちゃん、ほんとに、お帰りなさい。お帰りなさい…」
「し、白ちゃん…。白ちゃーーん!! うわぁぁん」
「黒ちゃん…う、うわーん」
二人とも涙を流して喜んでいる。これを邪魔するのは無粋だなと思い、ゆっくりとその場を離れようとしたが
ミシミシ…
「ん? 床から妙な音が?」
バキバキバキン!
「ぬおぉー!? 床が抜けたー!?」
「きゃー! ご主人様!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
[[続く>第3話「元の鞘へ、ブラボーサイド」]]
**第3話「元の鞘へ、ブラボーサイド」
メーカーに「入院」していた黒子が帰ってくる日がようやくやってきた
今日は有給を取ってあり、朝から俺も白子もオリの中のクマのように落ち着きが無い
ピンポーン♪
「来たぁ!!」「きたー!」
玄関まで全力疾走し扉を開ける、外には見知らぬ女性が立っていて
「神はあなたを愛して…」
「帰れ! 俺は愛してねーよ!」「かえれー! 愛してるのはご主人様で十分!」
一ミリ秒で叩き返した。畜生紛らわしいんだよ
再びオリの中のクマのほうが落ち着きがあるというような状況に戻る俺達
そして再びチャイムが鳴る
「ウオォォォ!!」「うおー!」
再び全力ダッシュ。床にヒビが入ったような音がしたが気にしない
亜光速で配達人から箱を奪うと、挨拶もそこそこに締め出し、箱を開ける
そこには新品同然に修理された黒子が眠るように納められていた
震える手で迅速にメイン電源をONにする
「う、ん…」
黒子がわずかに身じろぎする。白子は感極まってしまったようで
「うわーん! 黒ちゃーん!」
と叫んで抱きついた。
電源が入れられる。ということは修理が終わって休息の時間は過ぎ、再び戦いの日々が始まったということか
「う、ん…」
身じろぎする。新品の身体は関節の具合がプログラムと完全にシンクロできていないようで、少し違和感がある
「黒ちゃーん!」
ガシッと何かが抱きついてくる。驚いて目を開けると、アーンヴァルタイプの神姫が、俺に抱きついてきたようだ
俺がいない間にマスターが買い足していないければ、うちの部隊にいるアーンヴァルはアルファだけのはず。こいつ、こんな性格だったか?
「うぅ、黒子…。寂しかったんだぞ…」
見たことのない男性が目頭を押さえている。周りの風景も全く見覚えが無い。なんだこれは、どういうことだ?
「誰だテメーら? 何でこんなところにいるんだ俺?」
二人の顔こそ見ものだった
「つまり、誤配送ってこと?」
「たぶんな」
ようやくこの男性も理解できたようだ。口がうまく回るほうではない俺にはかなりの苦行だった
「たしかに、ナンバーも俺が覚えているうちの子のものとは違うみたいだな…」
神姫一人一人にはパーソナルナンバーが振り分けられ、二重登録や、違う神姫からのバックアップデータの上書きが出来ないようになっている
むろん、同じ種類の神姫が複数いる場での固体識別にも重宝するが
「しかも、君は闘技場で戦っているんだって? しかもバーチャルでなく、リアルで…」
「あんたの神姫が危ない目にあってなけりゃいいがな」
「いや、でも、君の主人だってナンバーの確認くらい…」
「うちのマスターはそんな悠長なことしないと思う」
ドッギャーーーン! と衝撃を受ける二人
「ごごごごごご主人様! どうしよう!」
「おおおおお落ち着け白子!」
ぐるぐる回りだす。なんだこいつ等?
「なんにしろ、急いだほうがいいぜ、下手したら、いきなり試合に出されてお陀仏なんてなりかねん」
「うおぉー! メーカーに電話だー!」
男性が慌ててメーカーに電話し、なんだかんだと説明して、再び折り返しの電話をかけるとか言われて受話器を置き、
水族館のマグロのほうがまだじっとている(本物なんて見たことないが)と言えそうなぐらいの勢いでうろうろ家中を歩き回り
折り返しの電話を受けて、彼の神姫の無事を確認したことで、ようやく落ち着きを取り戻してへたり込んだ
「ああ、神よ感謝します。さっきは愛してないなんて言っちゃってごめんちゃい」
「あーん、私もごめんなさーい。ご主人様と黒ちゃんの次に愛してまーす」
神なんてどこにもいない。頼れるのは己と仲間だけだ。そんな事をぼんやりと考えてしまう
しかし、この家は変なところだ。戦場のほうがよっぽど落ち着く
「あー、とりあえず、メシでも食うか。ご馳走用意してあるし…」
「さんせーい。黒ちゃんの退院お祝いだけど、せっかくだからブラボーちゃんの退院お見舞いで食べちゃいましょ」
「え?」
「こうして俺の家に来たのもなんかの縁だ。遠慮すること無いぞ」
そんな事を言って俺を抱え上げると、なにやら沢山置かれたテーブルのうえの神姫サイズのテーブルに俺を座らせた
「あ、俺は…」
「遠慮することは無いぞ。日持ちしないものばっかりだし」
「そうだよブラボーちゃん、ご主人様は料理お上手なんだよ」
「いや、そうじゃなくって、俺は今まで食事なんてしたことなくて…」
神姫は食事をする機能もあるが、別に必ず必要なものではない。
そのため、闘技場に出る神姫は殆ど食事なんてした事が無い。戦いと、訓練だけの日々だ
「あー、そうなのか。でもまあ、気にするな。誰にでも初めてはある」
「そうそう、遠慮しないで!」
やっぱりこの家は苦手だ
「えっと、黒ちゃんのベッドを勝手に使わせるわけにはいかないから、私のベッドを使って。私はクッションのうえで寝るから」
「そ、そうかすまない…」
食事を取り、三人でなんだかんだと遊んで、そろそろ寝ようということになった
俺と「黒子」を交換するのは明日、しかもマスター同士が直接会って交換するらしい
今日一晩この家で過ごすことになるなんて、なんとも厄介なことだ…
彼女達の部屋へ案内され、ベッドを宛がわれる
ベッドで寝るのも初めての経験だ。神姫は風邪なんかひかないし、固い床で寝ても全く平気に出来ているから…
恐る恐るもぐりこむ。どうもふわふわして落ち着かない
「おやすみ、ブラボーちゃん…」
白子がこちらににっこりと微笑みかけ、電気を消す
それにしても、鬼とも悪魔とも言えるアルファと同じアーンヴァルタイプに、こんな明るくしとやかな態度で接せられると物凄い違和感だ
「ああ、おやすみ」
しかし、眠りに落る寸前、確かに彼女の「黒ちゃん…」という嗚咽交じりの声を聞いたと思った
そうだ、彼女はようやく帰ってくると思った友達に会えなかったのだ。辛くないはずが無い
それなのに明るく振舞う彼女に俺は居心地の悪さを感じていたなんて…
戦場でどんなに上手く戦えても、自分は全く未熟なのだと痛感させられた…
翌日…
俺はブラボーを向こうに帰し、黒子を引き取った
ひとしきり再会の挨拶を終えたところで、黒子が俺に囁く
「ご主人様、あの人、ボクに無理矢理戦わせて、しかもボクのことブッたんだよ!」
「何、ナンバーの確認もせずに?」
「全然! ナンバーなんて聞かれもしなかった!」
こいつはメチャゆるさんよなあああ!
………バギッ
「白子ーー! 帰ったぞーー!」
「白ちゃーん!!」
玄関を開けたとたん、ブースター全開で飛んでくる白子
俺の胸ポケットから黒子を持ち上げると、飛行したまま黒子を抱きしめぐるぐると回りだす
「黒ちゃん、ほんとに、お帰りなさい。お帰りなさい…」
「し、白ちゃん…。白ちゃーーん!! うわぁぁん」
「黒ちゃん…う、うわーん」
二人とも涙を流して喜んでいる。これを邪魔するのは無粋だなと思い、ゆっくりとその場を離れようとしたが
ミシミシ…
「ん? 床から妙な音が?」
バキバキバキン!
「ぬおぉー!? 床が抜けたー!?」
「きゃー! ご主人様!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
[[続く>第4話「黒子の悪夢と白子の決意」]]
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: