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妄想神姫:第八章(後半) - (2007/02/01 (木) 04:46:46) のソース
**総てを司る、脆き神の姫(後半) ---- 数時間後。そっとCSCを装填し直し、バッテリー確認……満タン。 彼女の起動を開始、20%……50%……起動を完了。モーターの微細な 音の後、私にとって二人目である彼女、“クララ”が目を醒ました。 初めツガルタイプを装備していた名残として頭髪は緑色に変更され、 大きな瞳はロッテと同様に、琥珀色の澄んだ逸品へ取り替えてある。 その上に眼鏡。これは、彼女の特質を象徴する為に選んだ品なのだ。 「ここ……ボクは?マスター登録後に、火器が使えなくて……」 「そうだ。そして解析の結果、お前を私が引き取る事にしたよ」 「……ボクを?ボクの名前は?貴女がボクのマスター、なの?」 「有無。私の名前は槇野晶、お前に与えし名前は“クララ”だ」 「クララ……それがボクの新しい名前なの?了解だよ、マ……」 「“マイスター”と呼ぶといいとおもいますの~、クララっ♪」 状況が今一つ飲み込めていないクララに、私とロッテで説明を行う。 “オーバーロード”の症状と、ロッテとは事実上“姉妹”となる事。 そして、前のユーザーである常連が心底クララを気にしていた事を。 初めは驚いていたが、元より無口なのか……表情には変化がないな。 「そうか……ボクは棄てられたわけじゃ、ないんだね?」 「そうなんですの。クララをずっと案じた結果ですの♪」 「……分かったんだよ、マイスター。ロッテお姉ちゃん」 「お姉ちゃんッ!?……飲み込みが早いな、クララや?」 「何故かロッテを“姉”だと思えるんだよ、マイスター」 ふむ。あまり饒舌ではないが、言いたい事をズバズバ言う性質か? ロッテ以上に己の気持ちを、客観的かつストレートに言ってくる。 その間も、表情は微細な変化に留まっているが、心は激しい様だ。 そこで私は少し意地悪い質問をする事にした……気になるからな。 「ではクララや、お前は今の立場について後悔しておるか?」 利発というか理路整然というか、彼女はこの問いに淀みなく応えてきた。 「……前のオーナーが買わなかったら、ボクは居ないんだよ」 「で、マイスターとロッテお姉ちゃんはボクを救ってくれた」 「だからボクはこうして、“妹”になれた事が誇りなんだよ」 「ボクを導いてきた幾つもの可能性に、感謝してるもん……」 そしてすっと微笑むクララ。私は堪らずに彼女を抱き上げてやる。 今はロッテにやる様な激しい抱擁はせず、まっすぐに見つめよう。 似合うと思い掛けてやった丸眼鏡が、綺麗な目を引き立たせるな。 「ではクララよ。今この時より、果せるその日まで」 「お前も、私の“妹”だ……構わぬな、クララよ?」 肯くクララの額へと、私はそっと口付けをする。いわば誓いの証だ。 これはロッテにも勿論行った。照れくさいが、これが本心だからな。 ロッテも覚えているのか、微笑んだ顔で“儀式”を見ているが……。 「こ、こらロッテ。ニヨニヨ見ているなッ!ほら、終わったぞ?」 「じゃあマイスター、クララをこっちにお願いしますの~……♪」 「む?分かった、ほれクララや。ロッテの側に行ってやってくれ」 私の手から降り立ったクララを、ロッテは優しく抱きしめ……口付け。 ってこら、私の“儀式”を真似たのか知らないが、そこはそのッ……! 「ま、待てロッテ!?そこは額ではない、唇ではないかッ?!」 「ん……えへへ、マイスターの本心が額なら、わたしの本心は」 「ぁ……ロッテお姉ちゃんの本心は唇なんだ……覚えたんだよ」 う、うううむ……微妙に負けた気がするッ! ……まあ、挽回の時は今後に回すとしてだ。 彼女にはこれから、色々な説明をせねばな。 「まずクララ、お前をバトルに出せる方法を私は見つけたぞ?」 「バトル……?マイスター、銃も剣も苦手なのに不安だよ……」 「有無、だがお前には類い希なる頭脳──“ゲヒルン”がある」 「“ゲヒルン”……ドイツ語で脳。それが、ボクの特殊能力?」 「そうだ。知識を最大限活かす能力……それこそ“魔術”ッ!」 「魔術?クララが魔法使いになっちゃいますの、マイスター?」 驚くロッテ。まあ魔術などと言う非科学的な物を普通は信じまい。 だが私にはクララに魔術を使わせる算段が確かにあるのだ、有無。 この際は、“情報魔導学(TechnoWizardly)”とでも名付けようか。 そう。神姫が科学的だからこそ出来る魔術のアテが、私にはある。 「要するにクララの力を用いて、仮想空間を書き換えるのだな」 「あ!そう言えば一部解禁されたって、前発表されましたの!」 「……理論上は可能だけど、生身では処理が追いつかないもん」 「だろうな。故にその為の装備を、これから三人で相談してッ」 「すぐにクララも戦乙女にしちゃいますの~♪ね、クララっ?」 この言葉を経て、ようやくクララの顔にもうっすら笑みがこぼれた。 たまらず私は二人を抱き上げ、頬を貸してやる。トーンは抑えてな。 まだ少しぎこちなさは残るが、これからはクララも大事な“妹”だ! 「……ボクうれしいんだよ、マイスター」 「これからも、もっと嬉しくなるぞッ!」 「3人で凄く楽しくなりそうですの~♪」 ──────これからも宜しくね、“妹達”。 ---- [[次に進む>妄想神姫:第九章(前半)]]/[[メインメニューへ戻る>妄想神姫]]