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その夜の話 - (2012/08/19 (日) 17:59:26) のソース
「ずいぶん思いきったことをしましたね?」 「わかってるわ。でも、誰かが言わなきゃいけなかった。それがあたしだっただけよ」 暗い店内で、話声がする。華凛と仁だ。 「それでも、相当な覚悟をしましたよね? 信頼しあってる親友ですから、なおさら」 「…………」 華凛は答えない。いつもの明るさはどこへやら。ただ、黙っているだけだ。 黙って、堪えているのだ。 「大丈夫。あの子は頭のいい子です」 仁が華凛の頭を撫でる。 「よく頑張りましたね、華凛さん」 「……ぐすっ」 強がっていた。堪えていた何かが決壊し、奥から押し殺していた感情が流れ出す。 泣いた。もう過ぎたことのはずなのに。もしかしたらそうなっていたかもしれない未来を恐れて、泣いた。 「仁さん……あたし……ぐすっ……あの子に嫌われたらどうしようって……ずっと……ずっと……」 華凛は仁にすがるように泣き続けた。そんな彼女を仁は、まるで娘をあやすように頭を撫でた。 「大丈夫ですよ」 「仁さん……」 華凛が、泣きはらした目で仁を見上げる。眼鏡の奥の瞳は、どこまでも穏やかで――。 「あの神姫が直ったら、彼女に神姫バトルを教えてあげるつもりです。その時は、あなたも一緒に」 「……うん。その時は、一緒に」 華凛はそう言ってまた泣いた。 この時のこの涙は別の意味での涙であることは、仁にも、そして誰にも分かりはしなかった。 あとエリーゼは空気を読んで黙っていた。 [[第二話の2へ>引きこもりと神姫:2-2]] [[第三話の1へ>引きこもりと神姫:3-1]] [[トップへ戻る>引きこもりと神姫]]