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ライドオン204X:3-2 - (2012/08/11 (土) 00:23:40) のソース
***猫が狭いところが好きなのには理由がある いきなりの砂嵐にも、橙堂赤子は冷静だった バトル開始と共に展開した『防壁』を油断無く構え、相手の出方を伺う (先生~、ロックオンできませんにゃ~) (この砂嵐で全然目視できないってのにね) 通常なら、高高度を中心に立ち回るアーンヴァル型はどうあっても見つけやすい この砂漠ステージのように背の高い障害物がないならなおさらだ だがこうも視界が悪くては飛ばれても見つけられないだろう それでも相手は――アーンヴァル型であればもうこちらを捕捉しているはず (頭の角は伊達ではないはず。色は白いけどさ) (先生、伊達じゃないのはνの方ですにゃ~) (そうだったわね。さて、どう出てくるか…) この砂嵐の中飛んでくる――ないわね、こちらにビットもある以上、下手に接近してくるわけもなし 高高度から射撃――目視できないにしろレーダーで捉えてるとしたらこっちか そう赤子が思った瞬間だった (――!!) 咄嗟に両腕の防壁を身体の前に持ってくる 砂嵐の中を突っ切ってきたレーザーをギリギリのところで防いだ (っっう!) (先生無事ですかにゃ!?ランチャーの狙撃ですにゃ!) 今の一撃で防壁は吹き飛んだ 次の攻撃はどうあっても避けなければならない (なみこ、特定できた!?) (かなりの遠距離で大体の位置しか掴めませんにゃ。 ついでにチャージタイムからして第二射がきますにゃ~) 咄嗟に右に跳んだ 着弾は一瞬、レーザーは盛大に砂を巻き上げた …どうやら悠長に待っているわけにもいかないようね (なみこ、子猫とドリル) (はいにゃ) なみこの返事と共に回りにプチマスィーンズが展開 同時に旋牙が『両腕』に展開された (毎度ココで戦うたびに思うんにゃけどマオチャオ型は猫型なのにゃ先生~) (うだうだ言わない、プチマスィーンズを索敵強襲AIで相手方向へ) 周りでふよふよ浮いていたプチマスィーンズが、 その可愛い外見からは想像しがたいスピードで砂嵐の中を飛んで行く (さーて、こっちもいきますかー♪) 両腕の旋牙がやかましく鳴り始めた ---- (相手周囲にビットが出現、数5、プチマスィーンズです) (やっぱりそう来たか) 先ほどのランチャーによる狙撃で、こちらの大体の位置はばれただろう となれば、ビットを先行させつつ自身も当該方向へ移動 例えビットが撃ち落されようとも、その間にむこうは接近戦に持ち込めるという参段か (フィーア、降りるぞ) (そうですね、空にいたままでは見つけてくださいと言う様なものですから) 先ほどの狙撃位置から移動し、適当なところで下降、着地 砂嵐は以前として続いている (ビット反応消失、動きますね…) ビットは行動を開始すると共にジャミングをかけてくる そのため起動後、攻撃前のビットは目視で確認するしかないのだがこの砂嵐である ただでさえ小さくて見つけ辛いビット、こちらの視界は限られている 飛んでいる様では、全方位からのビットによる奇襲があり得るのだ その点地上にいれば、すくなくとも下方向からの脅威は減らせる 危険度は単純に考えて半分と言ってもいいだろう (―――マスター、相手の反応が消失しました!) (…?ジャミングか?) おかしい、ジャミングで見失ったではなく『消失』したとはどういうことだ? (いえ、ジャミングはかかっていません。文字通り消失なんです) (そんな馬鹿な…!) 反応消失、それは相手が戦闘不能に陥ってもあり得ない現象だった (どういうことだ、レーダーの範囲外にでも逃げられたのか?) (そうではなく、忽然とその場から姿を消したんです) アーンヴァル型の索敵能力なら、例え壁の向こうの敵であってもレーダーには捉えられる 何をやっているかは分からずとも、そこにいることは確実に分かるのだ それはこの砂嵐の中であっても同様 そもそもジャミングをかけられない限り見失うことすらあり得ない (なんだってんだ…) (分かりませんがビットは確実に動いています、気をつけて下さい) 未だ収まらぬ砂嵐の中、いつ襲撃をかけられてもいいように身構える 右手にはアルヴォPDW11を展開し、左手にはディコ・シールド 油断無く辺りを見回す俺の視界に、小さな異変が映る (早速か!) 一体目のプチマスィーンズを発見 発見と同時にプチマスィーンズの方もこちらを認識 備え付けられたブレードを翻らせ襲ってくる これを難なく回避し、通り過ぎていった機体にアルヴォPDW11を撃ち込む が、砂嵐の中に消えていくプチマスィーンズには当たらない (マスター左です!) フィーアの声に左手に展開していたディコ・シールドを頭の高さまで持ってくる 先ほどとは別の機体による機関銃の連射 ビットの攻撃程度なら余裕で防げる強度を持つシールドだが、足が、止まる (たいして威力のない射撃―ってことは次は!) (後ろっ!) お互いに同じ結論に至り、身体を投げ出すようにして前に転がり込む 頭上を先ほど撃ち損ねたプチマスィーンズが通り過ぎていった どうやらデフォルトのAIだけでなく、ある程度の連携攻撃のできるプログラムも積んでいるようだ 転がる動作からそのまま起き上がり、体勢を立て直す こちらに照準を向け直しているプチマスィーンズに射撃、やはり当たらず 俺の腕ではこの砂嵐の中アルヴォを当てるのは厳しいようだ (フィーア、剣!) 俺が皆まで思うまもなく右手にM8ライトセイバーが出現 アルヴォPDW11は格納せずに左手に持ち直した (これなら…!) さらに突進してくるブレード付きのプチマスィーンズ ぎりぎりまで引きつけて、かわし、一閃 一機、撃破 散発的な射撃を繰り返すもう一機にも肉薄する 砂に足をとられることなく走れるのは、 フィーアが後部バーニアの微妙な出力調節をしてくれるお陰だ これも、この3週間で培った技術 (だぁっ!) シールドを付けた腕の裏拳で叩き落し、剣を突き立てる これで、二機 (―――マスター、視界が…!) 丁度二機目を倒した瞬間、風が止んだ 砂嵐が収まっていき、視界が確保される 首を巡らせば残り三機のプチマスィーンズは、 先ほど俺たちが狙撃したポイント方面からこちらに向かってくるところだった だが俺が臨戦態勢をとると、 プチマスィーンズ達は一定の距離を保ち周囲を旋回しはじめる こちらが一歩踏み出せば、包囲の輪も一歩動き、常に俺たちから目を離さない しかしみたところ射撃武器を装備しているにも関わらず撃ってこないし、 ブレードの付いた近接攻撃型も向かってこない (一体何が狙いだ…?) それに未だにフィーアのレーダーに引っかからない相手神姫のことも気になる (フィーア、対戦相手は?) (…駄目です、未だにレーダーに反応がありません) 砂嵐も晴れた、なのにある程度平坦な砂漠にはプチマスィーンズと俺たち以外に動くものは見当たらない いったいどうなってるんだ…? ---- 一方そのころ、橙堂赤子は、奏一たちのすぐ近くに迫ろうとしていた (まぁ野生の猫だって穴は掘りますけどにゃ?) なみこの呟きが漏れた ---- 俺は相手が仕掛けてこないのをいいことに思考する 一体相手はどこにいったのか 果たして相手の装備に光学迷彩なんて出来る武装があっただろうか 防壁、研爪、旋牙、ぷちマスィーンズ… ―――何かが引っかかった その引っかかった何かが分からず、さらに思考する 足元に違和感 引っかかっていたピースが音を立ててパズルにはまる 気づいた時には身体が右に動いていた、サイドステップ 左手に衝撃、ディコ・シールドがもっていかれた 「あにゃー、シールドだけかにゃ~」 あろうことか相手神姫のマオチャオ型は足元から現れた 両手に純正武装の『旋牙』を構えて あのドリルで地中を進んできたと言うのか、信じられん (すいませんマスター、流石に地中では…) (俺だって気づいたのは今だ、気に病むことじゃない。 それにシールド一個が犠牲になっただけだ。勝負はこれからだろ) とフィーアに言うものの、状況は芳しくない 地中から飛び出したマオチャオ型は、すでにこちらとの距離を詰めることに成功 プチマスィーンズは既にマオチャオ型の周りに集まっている 距離にして100s それは相手の得意レンジに入ってしまったことを示す とりあえずは距離を取りたいが、マオチャオ型の瞬発力を考えると、 この距離でむやみやたらと空へ逃げるのはまずい (仕方ない、接近戦か) そうこちらが腹をくくるのを待っていたかのように、マオチャオ型は走り出した 両腕には旋牙、お供のプチマスィーンズが3機展開する 対するこちらは待ちの体勢 右手のM8ライトセイバーを前に、左手のアルヴォPDW11を後ろに マオチャオ型は真正面からなんの小細工も無く右の旋牙を繰り出してきた ドリルが、モーターの奏でる高音を撒き散らしながら迫る 剣でその軌道を変え、同時に身体をそらすことにより回避 左の旋牙がさらに唸りをあげて襲い来るのを、返す刀で振り払う (マスター、右です!) 俺は振り払う勢いを殺さずに右に半回転、同時にアルヴォを連射 こちらに向かって機銃を放とうとしていたプチマスィーンズが堕ちる これで三機…! だが俺は今の行動で相手に背を向ける形になっている 払われた旋牙を再び繰り出してくる気配 ドリルが無防備な背中に迫る ---- (ようし、貰った!) ビットを気にしすぎるあまりに無防備になった背中 赤子は容赦なくそこに向かって旋牙で突きこんだ (――っ!?) だがドリルは虚しく空をかき混ぜるのみ 目の前で舞い上がる砂、頭上を覆う影 見事なまでのバク転で回避されたのだ 赤子は今まで相手がいた位置に、突きこんだ勢いのまま転がり込む 後方で射撃音 頭上から降ってくる射撃は回避できたようだ 立ち上がりつつ半回転、視界に捉えた相手は、 バク転からさらにバーニアで浮上、残り一機のプチマスィーンズを倒していた どうやらさっきのバク転からの射撃音の時点でプチマスィーンズを一機やられていたようだ (先生~、プチマスィーンズ全滅なのにゃ~) (子猫たちがこうもあっさりとね…) 旋牙を捌いた動きといい、今のバク転といい、到底初バトルとは思えない この地域にライド用筐体が入荷してたった3週間 別の地域で既にかなりの経験を積んでいる自分と、こうもしっかりと渡り合えるとは しかも今までのように神姫が戦いマスターが指示を出す、通称『リア・ライド』ではなく、 マスターが素体を動かして戦う『ノーマル・ライド』でこの動き 神姫のアシストがあるにしてもやはり只者じゃない (おっもしろいじゃないの) (先生嬉しそうですにゃ~) (当然じゃない、好敵手ってやつよ) 地元のゲーセンでは、始めこそライドシステムでの仮想空間の体験は話題になった だが、いざ戦おうとするとどうあっても勝てないのだ、普通に戦う神姫相手に 当然ではある。今まで指揮官だったマスターとその神姫では実践経験の差がありすぎるのだ そんな理由もありほとんどのマスターたちは、 今までのスタイルでありながらより直接的に指揮できる『リア・ライド』を選んだ だがそんな中、赤子はずっと『ノーマル・ライド』一筋でやってきた 彼女にとっては勝敗よりも、経験したことのない世界の方が何よりも魅力的だったのである 負けに次ぐ負け、感じる痛み、苦痛 それらは橙堂赤子という人物にとっては神姫バトルにおいての新たなスパイスでしかなかった そしていつしか負けようとも戦った経験は力となり、 なみことの息のあった動きは『リア・ライド』を選んだマスターに追いつくほどになった 彼女は自分のライドに自信を持っている (先生どうするにゃ?) (子猫はいないし飛ばれちゃったもんねぇ) 通常であれば不利 だがこれは新しくなったバーチャルライドでのバトル 手は、ある (なみこ、アレ、行くわよ) (了解にゃ先生。RA起動しますにゃ~) 見据えるは空中のアーンヴァル (さて、これにはどういう動きを見せてくれるのかな…?) 赤子は不敵に笑った ---- (これで、チェックかな) 彼我の距離はマオチャオ型が仕掛けてくる前の100s だがビットは潰したし、こちらの身体は既に空中 後は地道に弾幕を張って削れば勝ちである マオチャオ型は、両腕に旋牙を展開したままこちらを見上げている 俺はさらにバーニアで距離をとり、アルヴォPDW11で射撃 両腕の旋牙で逸らされるが、数発が防御しきれず本体に命中 右手のM8ライトセイバーを格納、同時にLC5レーザーライフルが展開される ここまできても何故か相手は距離を詰めてこようとしなかった (…あきらめた?いや、それともまだ何か…) 疑念は尽きないが、足が止まってる相手を待つ必要性はない 俺は躊躇いなく右手の人差し指でトリガーを握り込んだ (―――なっ!?) 相手は防御体勢を取らなかった だがライフルがもろに着弾したはずのマオチャオ型は、 大したダメージを受けた様子もなくそこに立っていた 「にゃっ」 さらにマオチャオ型は一瞬で俺の視界から掻き消える 一体何が起きたのか そう思うまもなく俺は半ば本能的にフィーアに声をかけていた (フィーア!) (駄目ですジャミングが――) 俺たちに出来た会話はそこまでだった (―――っ!) 腹部に、衝撃、そして焼けるような痛み 「甘いのにゃ」 その声は後ろから聞こえた (いったい、何時の間に空中へ…?) マオチャオ型の旋牙は、リアパーツを突き破り胸部へと貫通していた (マスター!) フィーアの、声が、遠い 俺の身体は、リアパーツのバーニアの支えを失い地上に向かって落下し始めた [[第三話の3へ>ライドオン204X:3-3]] [[トップへ戻る>ライドオン204X]]