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とある海産物の超怨念目録 - (2011/02/13 (日) 00:59:00) のソース
恨んでやるぅ。 呪ってやるぅ。 憎んでやるぅ。 恨めしや。 恨めしや。 恨めしや。 何故こうなった。 私が何をした。 如何してこんな事になったぁ。 *とある海産物の超怨念目録 **ダゴンちゃん戦記 「ただいまぁ♪」 元気に帰宅を告げ靴を脱ぐ少女、貴宮湊(あてみやみなと)。 友達と一緒に買い食いしてきた帰りだ。 食べた物によってはテンションも上がる。 美味しければ更に上がる。 それが高じると、今日のようにお土産を買って来る事もある。 上機嫌に見えた表情が凍り付いたのは次の瞬間だった。 「ますたー」 「え゛っ!?」 べちゃ。 直撃だった。 彼女の神姫、マリーセレスのダゴンちゃん。 その鈴を転がしたような声に上を向いたら、当の本人((本神姫か?))が落下してきて顔面にへばりついたのである。 「んんんんんんんんっーーーーーーーーーーーーーーー!!?」 何処かの毒々しいお化けクラゲに襲われたエージェントみたいな声を上げ、もがく湊。 「ますたーおかえり、お留守番してたよ。褒めて褒めて」 「んがーっぐっく!!」 毎度毎度だが力づくで引っぺがされ、床に叩きつけられるダゴンちゃん。 もちろん、そのまま床に張り付いてべちょ、とか異音を発してたりもする。 「あんたは、何べん私に奇襲はヤメロって言えば理解するのよ!?」 「奇襲じゃなくて、愛情表現ですかも?」 「同じよ!! 同じ!! せっかくお土産買ってきたのに上げないわよ?」 「ダゴンちゃん、布切れなら要らないですよ?」 布切れ。 神姫用に粋を凝らした衣服の数々も、ダゴンちゃんにとってはそこらの雑巾と大差無いようだ。 「何度も言うけど、私。アンタで着せ換えして遊びたいんだけど?」 「嫌(や)」 「はぁ、衣装だけが溜まってゆく……」 溜息を吐いても始まらない。 「まぁいいわ。おやつにしましょう」 そう言って湊はリビングのドアを開けた。 先ずはレンジでチンするのだ。 流石に少々冷めた。 ◆ 「丸くて、きつね色。青のりとソースですぅ」 初めて見る食べ物に興味津々なダゴンちゃん。 こういう所は本当に可愛い。 ツンツン突いたり、くんくん匂いを嗅いでみたり。 「食べて良いですか?」 「どうぞ。お姉ちゃんの分も残しておくから3個ずつね」 因みに八個入り。 「イタダキマス」 あんぐり口を空けてダゴンちゃんが齧り付く。 「あ、熱いから気をつけて」 「むぐむぐ、あふあふ」 やばい。 熱くてはふはふしてる。 目が×の字になってる。 可愛い。 ああ、ホントこの子可愛いわぁ。 「外はカリッと。中はふんわり。中心はぷりっぷり」 「美味しいでしょ?」 「これはなんですか?」 「たこ焼きよ」 「…あ?」 ダゴンちゃんが凍りつく。 「たこ、焼き?」 「そうよ、たこ焼き」 「タコですか、この中のぷりぷり」 「そうだけど?」 「……………………」 呆然と、感情の無い瞳でこちらを見上げてくるダゴンちゃん。 「な、何? タコ苦手?」 「うぅっ」 じわっと、ダゴンちゃんの目尻に涙が浮かぶ。 「うわあぁぁぁぁん、ますたーがタコ殺しちゃったです!!」 「はいぃ!?」 「タコはね、タコはね、海で必死に生きてるの。尊い命なのにいぃぃぃぃ!!」 「え。でもダゴンちゃん海老とか蟹とか、美味しいって食べてたじゃない?」 「…………」 再び、信じられないものを見る目で見上げてくるダゴンちゃん。 「タコを。海老や蟹如き甲殻類と一緒にするなぁ、ですぅ!!」 「ええぇっ!? どっちかって言うと海老や蟹の方が高級なイメージがあるけど!?」 「値段ですか? お金ですか? ますたーは命をお金で計るですか!?」 「命と言うか食材?」 「よく聞くですよますたー。タコの命の価値は海老蟹とは比較にならんのです。神聖にして侵すべからずなのです」 「登場早々、銀星号の娘にされそうな口上よね」 「誰が装甲悪鬼の話をしてるですか!?」 「でもアレは個人的に斬魔シリーズ越えて吸血殲鬼に並んだ名作だと思うのよ?」 「それはそれとしてこれはこれなのです」 「句読点ぐらい使いなさいよ、読みにくい」 「良いから聞くのです」 ぷりぷり怒るダゴンちゃんも可愛いな。等と思いながら湊は耳を傾ける。 ダゴンちゃんのタコ談話、第一次海産物戦争はそれから数時間続いたと言う。 ◆ 「ますたーにも困った物です」 翌日、ダゴンちゃんの怒りはまだ収まっていなかった。 「でも、もう二度とたこ焼きを買わないと約束させたのです。 同胞諸君、ダゴンちゃんはやったのですよ。 海の平和はこうして守られたのです」 かの者は、一人海産物の丘で勝利に酔う。 「ますたーがタコ一族の偉大さに気づく為の代価だったと思えば、犠牲となったタコも浮かばれると言うものなのです」 窓の外、庭には『身をもってその価値を知らしめた偉大なるタコ、ここに眠ぬ』と刻まれた墓標。 英雄とも言うべきタコを食べるなどもっての外。 きちんと丁寧に埋葬致しましたさ。 「ダゴンちゃん、ただいまー」 「あ、ますたーです。おかえりです」 怒ってた分、寂しさは感じづらかったのだろう。 ダゴンちゃんはいつもは待ち切れなくなって待機している玄関へと、急いで向かうのだった。 ◆ 「ダゴンちゃん、今日はイカ焼き買ってきたわよ」 「はうわぁ!?」 この日、第二次海産物戦争が勃発した。 対戦成績 引き摺りこむ深海聖堂:ダゴンちゃん。 VSたこ焼き屋:はいぼく。タコだけでなくイカまで焼くとは。恐るべしたこ焼き屋。 とある海産物の超怨念目録・完!! ---- このぐらいの短編なら、ネタさえあれば一時間で書ける。 ネタさえあれば。 &counter()