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ネコ日記:第九話 - (2008/01/29 (火) 18:20:09) のソース
*ある日の夜のこと 「なぁ礼奈、もう良いだろ?」 礼奈の正面にまわる。 「ダメ!まだぬれてないのっ!」 礼奈は必死に両腕で隠そうとするが、俺は男の上に年上だ。礼奈が力で俺に敵うはずも無く、簡単に腕をどかしてやる。 「なんだもうぬれてるじゃん・・・うっわ、びしょ濡れだ。テカテカしてるな」 「恥ずかしいよぅ・・・見ないで兄さん・・・」 礼奈は顔を真っ赤にして今にも泣きそうな声だ。 「私が絵下手なの知っててどうしてそんなイジワルするのかな・・・?」 「ゴメンな・・・でも、流石にこれは水つけすぎだろ・・・紙フニャフニャになってるぞ」 今言った通り、礼奈が言う『絵』は水に浸したようにフニャフニャである。 「こんな絵でよく美術学校入ったな・・・いや入れた、と言った方が正しいか?」 礼奈の通っているのは大学の中の美術の専門クラスだ。 この学校はさらに高校クラスと大学クラスに分かれていて、礼奈は高校クラスから美術専門に通っている。 「だって美術専門って言っても、入学試験で絵を描くわけじゃなかったんだもん。」 入学試験は絵に関する知識の筆記テストで、授業は絵の上手い下手に係わらずに基礎知識からの講習と、定期的な実践だ。 絵が好きだが上手いわけではない礼奈にとって、最高の学校だったらしい。 ちなみになぜ今礼奈が絵を描いているかと言うと、別に大学の話がしたかったわけではなく、課題として『身近な静物』を書く事になってるからだ。 「そういやそうだったっけな・・・んで、そんな絵を提出するのか?」 「うぅ~、それは・・・」 「仕方ねぇな・・・ちょっと道具貸せ」 「え?」 礼奈はちょっと驚いてたが、素直に俺に道具を貸してくれた。 まず下書きは簡単に。続いて手前のものから順に塗り、背景を薄く塗る。最後に細かい所を調整して・・・っと。 「ほれ。こんなもんだろ。」 できた絵を礼奈に見せる。礼奈はただ驚いた顔のまま固まっていた。 「・・・す、すごーい・・・」 数分して出てきた言葉がこの一言。実は俺、絵には多少自身がある。ニートになる前は画家目指してたくらいだ。 「これはお前が書こうとしてた絵と同じテーマだぞ」 そう俺が言うと、礼奈は自分の絵と俺の絵を見比べて・・・真っ赤になった。 「なんならこの絵出すか?」 「いや、いいよ。学校行く度その絵見る事になったら、私学校行けなくなる・・・それよりアドバイスかなんかしてよ」 どうやら余計自信を無くしたらしい。 その頃、タマとキルケは二人の様子を見ていた。キルケは武装の手入れをしている。 「ますたーの絵、はじめて見るなぁ」 「そうなんですか?てっきりしょっちゅう見せているかと思ってましたよ」 「私がおうちにきたとき、ますたーがもってた絵のどうぐぜんぶしまっちゃったの。だからますたーがかいた絵をみるのははじめて」 「(タマがこんなに喋ったのも初めてですね・・・)」 キルケはそんな事を思いながら武装の手入れに戻った。 [[第十話につづく>ネコ日記:第十話前編]] [[第八話に戻る>ネコ日記:第八話]] [[ネコのマスターの奮闘日記]]