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第七話『爺の受難、孫娘の思惑』 - (2008/01/20 (日) 22:14:49) のソース
「・・・・・・んぅ」 本屋の二階、自分の私室で都は目を覚ます。 ベッドの上で軽く伸びをし、ベッド脇に置かれたクレイドルの上を見る。 「・・・・ふふ、本当に仲がいいなお前たちは」 そこには犬型のハウと悪魔型のノワールが一緒に寝ていた。 その様子を確認した都は、今度はその上にある写真立てに入った写真を見る。それには都と・・・青年が映っていた。 「お前がいなくなってから随分たつけど・・・・私達は元気でやってるよ・・・」 都はその写真の青年を愛おしそうに指でなぞる。 それはもう届かない彼女の思い。 あの日に亡くしたものと・・・手に入れたもの。 「・・・・さて、いい加減起きるか」 彼女はそういうとベッドからかったるそうに這いずり落ちた。 * ホワイトファング・ハウリングソウル * 第七話 * 『爺の受難、孫娘の思惑』 記四季には二人の孫娘がいる。一人は春奈、砲台型MMSサラのオーナーだ。そうしてもう一人、彼にとっては結構苦手な部類の孫娘がいる・・・・。 「おや、誰かと思えばおじい様ではないですか」 その苦手な孫娘、七瀬都は神姫センターでなぜか白衣を着て立っていた。 「・・・・こすぷれか?」 「残念ながら違うのですよ。これはバイトの制服です。・・・・ここの神姫用医務室で働いているのですよ」 記四季の問いに都ははにかみながらそう答える。それは普段の彼女からしてみれば珍しい位の爽やかな笑顔である。 ・・・妹の春奈曰く、“何か面白いものを見つけた笑顔(擬装用)”であるらしい。 「・・・そうか。それじゃ」 そういって記四季はそそくさとその場を去ろうとする。するのだが。 「逃がしませんよおじい様」 和服の裾を都に掴まれていた。 その様はさながらアイアンクロー。いやむしろハエ取り草とかそこら辺。 「・・・何のようでぇ」 渋々と記四季は振り返る。 因みにこの間中、彩女は見ているだけだった。また刺激が云々と考えているのだろう。 「お小遣いください」 ・・・都はいきなり金の無心をしだした。 「いえ、実は少々生活費に困窮しておりまして。本屋の収入だけではきついと言うか・・・バイトをしても火の車でして」 そういって都は現状を説明しだした。 曰く、友人からとある事情で借金をし、先日その返済をようやく終えたところだったのだが、今度は本業の本屋が全く売れず、しかも遊びに来た別の友人の神姫に暴れられてしまう始末。 そんなこんなで極貧生活を始めたのが一週間前、しかし最後の食料(カップ麺)は今日の朝尽きたらしい。 しかももう友人に頼るのは気が引け、かといって母に事情を説明する訳にも行かず悩んでいたところに記四季が山から降りてきたと言うわけだ。 ・・・初期の頃の彼女はどこに行ったんだろう。 「・・・・そうか、事情はわぁったよ」 記四季は腕組みをして黙って聞いていた。 そして 「うん、まぁがんばんな」 都の肩をぽんと叩くとあっさり横を通り抜けてしまった 「え、あ、いや待ってよおじいちゃん!」 自分のキャラを忘れて都が記四季を引き止める。 意外な声に、記四季は思わず立ち止まってしまったのだが・・・・その時点で彼は負けていた。 「駄目ならお小遣いかけて勝負しましょう。買ったら頂きますが私が負けたら何か奢って差し上げます」 「・・・・・・・・・・・・・・・・おい、どうするよ」 記四季は都の剣幕に押され彩女に相談する。 春奈に見つかったときと同じくらい困っているようだ。 「いえ、私としては相手をさせて頂くのにやぶさかではないのですが」 彩女がそういうと、記四季の『空気読めやこの馬鹿犬』光線が眼から浴びせられる。 とうの彩女はどこ吹く風で笑っていた。 「ん、そうか。君が彩女ちゃんかね。こうして起きてるときに会うのは初めてだな。私はおじい様の孫娘、七瀬都だ。君をおじい様に送りつけた張本人でもある」 そういって都は人差し指を差し出した。握手をしようとしているらしい。 「私は彩女と申します。主の神姫を勤めさせていただいております。・・・都お嬢様が私をお選びになって下さったのですね。いくら感謝してもし足りません」 都の指を両手で掴み、彩女はそういった。 その顔は少し感慨深そうな表情だった。 「・・・・さて、それでは筐体の方に参りましょう。さ、主何をなさっているのですか?」 「・・・・俺の意見は無視なのかよ。しかも二対一の可能性あるのに勝つつもりでいるのか?」「いえ、楽しむつもりです」 「そういえばおじい様。イレギュラーキャンペーンをご存知ですか?」 筐体に互いの神姫をセットし、始まる段階になって都は言い出した。 「あ? なんでぇそいつは」 「このセンターでやっているキャンペーンの一つです。ある時間に強い神姫が現れるので、そいつを倒すとステキ商品が手に入ると」 「・・・要するに賞金首みてぇなもんか」 都の説明に記四季はそう答えた。 「そうです。それで私はそれのエントリー係でして・・・・実はさっき、同僚にメールしておじい様の名前でエントリーしときました。」 「は!?」 「エントリーを取り消して欲しくば、この私と・・・ノワールを倒してみてくださいな」 都の顔は、滅茶苦茶楽しそうな顔だった。 [[前>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1585.html]]・・・[[次>http://www19.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1629.html]]