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<ある日の休日> - (2006/10/23 (月) 01:58:32) のソース
[[凪さん家の十兵衛さん]] 第三話<ある日の休日> 朝、今日は専門は休み。だというのに十兵衛は律儀にもいつもの時間に俺を起こす。 「マスター、起きてくださいっ!」 「うぅむにゃ…あと5分、いや5時間…」 「駄目ですマスター!!起きてくださいぃぃぃ!!」 そういって十兵衛は俺のシャツの袖をむき~!!っとした表情で引っ張る。もちろんそんなことしても俺が動くはずは無いんだが。 しかし、 「いま商店街のスーパーで突発朝市セールしてます!行かないと! マスターの好きな冷凍食品も最大7割引です!10時までに行かないと終わっちゃいます! 冷蔵庫の海老ピラフ無くなったじゃないですか!今見てみたら7割引だったんですから!買いに行かな…ひゃぁ!」 「よし行こう!すぐ行こう!今すぐ行こう!急いで行こう!」 俺はその海老ピラフという魅力的な単語を聞き、決心してぐわっと起き上がった。その反動で十兵衛が後ろにぐるんと転がって目を回す。 「だ、大丈夫か十兵衛!…ごめん」 するとこちらを見て困ったように笑いながら 「大丈夫ですよ、マスター。さ、早く行きましょう!」 と言った。 「おう!!」 俺は速攻で外に出て。自転車にまたがった。十兵衛は俺の胸ポケットにいる。 「よし、れっつらごぉ~!」 「ごぉ~!」 とペダルを踏み込んだ。 「しかし朝市セールなんてどっから情報入手したんだ?」 パソで巨大掲示板サイトの地域板でも見たのだろうか? 「え、言ったじゃないですか。見たって」 と言い、十兵衛の十兵衛たる所以である左目の眼帯…に偽装した超高性能カメラアイを指差した。 「え、うそん…見えたのか!」 「はい、とりあえず拡大モードでセールを確認して、サーモカメラ等のリミッターを解除、そして店内を見てたら発見しました!海老ピラフ!」 「す、すげ…」 「はい、これはお伝えせねばと!」 「おう、有難うございます十兵衛殿」 「いえいえ、礼には及びません」 と可愛らしくにっこりと笑った。 しかし眼帯システムにこんな使い道があるとはな…。いやはや平和利用万歳。 そんなことやら話しているうちに商店街の真ん中に位置するスーパーに到着。 「すごいな…」 人、人、人、人の嵐だまるで人間の大海原や~。 「よ、よし!行くぞ!」 「目指すは冷凍食品コーナー!!」 「レディ~!!」 「ゴォ!!ですマスタァ~!!」 勢い勇んで店内へ!が、しかし!ぐほあ!何だこれは! ごふっ!この商店街ってこんなに人が集まる場所だったか?! ぐぎゃ!店内は想像以上の大戦争…老若男女問わずさまざまな人間でごった返している! エルボーやら体当たりやらが俺を容赦なく襲う!痛い!痛いぃぃ! 「マスター!大丈夫ですか!」 「お、おうよ…!お前こそ気をつけるんだ!」 「はい!大丈夫です!」 一目散に冷凍食品コーナーへ!あ、あったぁぁぁぁぁぁ!海老ピラフ!! 「海老ピラフゲットだぜぇぇぇ!!」 と2、3袋一気にかごの中へ突っ込ませる。 「よし!十兵衛!」 「はい!」 「今すぐ眼帯のリミッターを解除!他に安いものが無いか検索だ!」 「了解!マスター!」 ・ ・ ・ 「買ったなぁ…」 「買いましたねぇ」 「疲れたなぁ…」 「疲れましたねぇ」 と、スーパーからの帰り道、がっつり買い過ぎて漕げなくなってしまった自転車を押しつつ帰路につく。 「あ、マスターあれ…」 「ん」 見ると神姫ステーションがあった。わかった、わかったからそんな上目遣いで俺を見るなって。照れちゃうぜ。 「見てみるか?」 「は、はい!」 俺はめちゃ重い荷物を手にステーションに入る。なかでは定期的…というか毎日のように試合が行われていて、かなり白熱している。あ、そうだ…欲しいパーツがあったなそれを買うか。 「十兵衛、なんだっけか?この前言った武装は…なっがいレーザー砲」 「えっと、GEモデルLC3レーザーライフルですね」 そうそうそれそれ。 「せっかくだから買っていこう」 「あ、有難うございますマスター!」 「まこれから必要になるしな」 昨日のことだ。 ・ ・ ・ 「さて…どう戦うべきか…」 「ですね…」 「動きすぎると眼帯が使えないし、装備が多すぎてもやっぱり眼帯使えないし…ただでさえ熱持ってるのにこれ以上装備追加するのも考え物だ」 「はい…」 「しかしストラーフタイプ自体は動き回って敵をかく乱する戦法が得意らしい」 「はい…私が地下にいたときも…同じでした」 「でもこれからはまったく逆、無駄な動きを軽減して最低限の動作で戦わなきゃいかんのか…」 「難しいですね…」 「ん~…」 近距離…中距離…遠距離…遠くなればなるほどあまり相手に動かされることは無い。 となると… 「スナイパー…」 「え?」 「こちらから動かずに初期位置から相手を落とすにはスナイピングするしかないかなぁ~と」 「スナイピングですか…なるほど」 「せっかくの眼帯もあるし、それを使えばいけるんじゃないか?」 「たしかにそうですね。いい案です!でも…」 「でも?」 「それに見合った装備がありません。その…長距離用武装が無いと」 「そうか…ライフルか…」 「たとえばGEモデルLC3レーザーライフルがそれにあたります」 と十兵衛はパソコンを操作して白い長方形の大型銃を表示した。 「ふむ…」 「他には…吠菜壱式くらいですね」 今度はまるで骨のような形のゴツイ銃を表示する。 「う、うぅむ…」 「マスター?」 「ど」 「ど?」 「どっちがいい?」 「え…」 「いや、俺にはどっちも同じな感じがするんだが…十兵衛なら分かるんじゃないかなって。ほら、一応経験豊富だし」 「なるほどそうですね…スナイピングと考えると… 衝撃力はあるけど弾速に劣る吠菜よりはレーザーで連射は利かないかわりにそれに見合った攻撃力、 何より反動の少なさから言ってもLC3レーザーライフルの方が…向いているかと」 「よし、じゃあストラーフの装備を元として素体に付いてる肩のスパイク装甲は排除だな。 動きが妨げられるし、廃熱に支障が出るのはごめんだ。同様の理由で頭部にも何一つ装備させない。 …遠距離兵装はGEモデルLC3レーザーライフル、 これをジョイントで背中に接続、使用時はサブアームに接続しよう。中~近距離用には…じゃあとり回しやすいカロッテP12とカロッテTMPに…左目とスコープを同期させれば有効に使えるはずだ。 さて近距離は…まずは左手首にM4ライトセイバー。基本的にはこれだけでいいと思うんだが…まぁ一応フルストゥ・フルートゥとフルストゥ・クレインを両レッグパーツ側面に装備させるかっ…とどうだ?」 俺はパソコン上でアッセンブルし、チェックした。 廃熱系統異常なし、バランス良し。問題の特殊性能、リミッター連続解除時間は3分15秒…。 「…合格だな」 「ですね!」 「よし、今度買いに行こう!」 「はい!」 ・ ・ ・ 以上回想終了。 「マスター、他の武装はどうします?」 えっと…あと足りないのは…カロッテ二種とライトセーバーか…。 俺は財布を見た。あ、いける…。 「よし、買ってしまおう」 「やったぁ!」 そうして俺たちは必要な装備を手に入れた。 時間もあるのでちらほらと見て回る。 「あ、見てください!あれ!」 「ん?」 見ると試合の模様がモニターに映し出されている。 「うわ、すごいな…」 主にその神姫の格好が…。いや、戦い方もすごいが。 「かわいい~ですね~」 「あ、あぁ…」 あっけに取られてしまった。そしてその神姫のマスターを見てさらに魂消た…。 「おんなじ格好してるよ…」 「すごいですね…」 会場の熱気でよくは聞こえないがドキドキなんとか~とか言っている。???なんだろうか。 それにしてもすごい戦いぶりだ…あれならファンもついてて納得だ。かわいくて強いのだから」 「すごいなぁ~」 十兵衛はモニターに夢中だ。 「なぁ」 俺はふと思ったことを口にしてみた。 「十兵衛もあんな感じのかわいい格好してみたいのか?」 「へ?」 とこちらを向いて~ぴたっと十兵衛の動きが止まる。そしていきなり顔を赤くさせて俯いてしまった。 「あの、十兵衛さ~ん?」 「は、はいぃぃ」 「どうした?」 「いえ、想像してみましたら…とんでもなく恥ずかしかったもので…つい…その」 「ははは、なるほどな。でも似合うかもな?」 「え、えぇぇぇぇぇ!?そそそそんな似合いませんよ!」 「またまたぁ~」 「…いえ、似合いませんよ。私には…」 いきなりテンションがトーンダウンした。十兵衛は自分の左目を触りながら 「だって、こんな物々しい顔には似合うわけ無いですから…」 と悲しそうに微笑んだ。 「十兵衛…」 そうか。いくら眼帯に偽装して多少見た目を良くしても、やはりその異様な雰囲気だけは拭い去れない。 ステーションに入ってからもその外観から周りの人達にちらちら見られていたのだ。 本人は気付かないふりをしていたが、それでも時折悲しそうな微妙な表情が垣間見えていた。 そういうことだったのか。 「ごめんな、十兵衛…もっと早く気付いてあげればよかったのに」 「そ、そんな、マスター…謝らないで下さい…だって私はこの左目のおかげで私は私のままに生き長らえることが出来ているんですから…」 と一粒の涙。 「十兵衛…」 「こ、こんな私ですが…これからもかまって下さい…」 「な、何言ってるんだ!お前のマスターは俺だけ。俺の神姫はお前だけだよ、十兵衛」 「ま、ますたぁ~うぇ、ひっく…」 「な、泣くな泣くな~」 と人差し指で十兵衛の頭を撫でた。と十兵衛は俺にしがみつき 「うあぁぁぁぁぁぁぁん」 と号泣。面食らった俺は 「え、え~!?泣き止んでくれよぉ~お~よしよし」 とアタフタしながらなだめる事しか出来なかった。 ・ ・ ・ そしてステーション内のベンチに腰をかけてなだめること10分ほどでやっとこさ泣き病んでくれた。 「す、すいませんでした…また泣いちゃって…」 「強いのに泣き虫だなぁ~十兵衛は」 「すいません…」 と顔を赤くする十兵衛。なんだ、その姿が…あぁもぉ愛おしいねぇまったく! 「かわいいぞ」 とついつい言葉に出てしまった。 「へ?!」 十兵衛は顔をがばっと上げて驚きの表情を見せる。 「だから、かわいいぞ」 もう一度言ってやった。 「う、うぇぇぇぇぇ?!かかかかかかわいいぃぃぃぃ?!」 すごい驚きようだ。あまりの驚きように何故か笑いがこみ上げてくる。 「は、はは、はははははは!」 そんな俺を見てか十兵衛も 「はは、あはははは」 笑い出した。 「「ははははははははははは!」」 と二人の笑い声はステーションに広がっていた。このとき、何事かと周りから見られたそうだ。だが当の俺たちはまったく気付かなかったのである。あぁ恥ずかしい。穴があったら是非入りたい。立候補してもいい。 「さて、帰るか?」 「ふふ、そうですね」 「あ…」 「はい?」 「冷凍食品!!持ったまんまじゃん!!とけてるじゃん!早く帰らないと!」 「え、あ、はい!サーモ作動!大丈夫ですマスター!ピラフはもちろん他の冷凍食品もまだ原型を留めています!」 「よっしゃぁぁぁぁ!いくぜぇぇぇ!」 「はい!マスター!!」 俺は気合を入れ、袋をドサッとかごにのせ、自転車をぐいっと押して家まで突っ走った。 今度ステーションに行くのは試合の日かな…。そのときにでも服の一着や二着買ってやろうか。きっと似合うぞ~…。 と思いながら。 [[第四話も読む><十兵衛、参戦>]]