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ねここの飼い方、そのじゅうご - (2007/12/15 (土) 03:43:55) のソース
「さてさて、今日の朝ご飯は何にしましょうか?」 「……」 「あれ、どうしたの。何時もはあれが食べたーいって言うのに」 「ぇ……と。ねここ、ホットケーキが食べたぃ、です・・・の~」 「了解、それじゃちょっと待っててね。直ぐ作っちゃうから」 「(な、何でこんな事してしまったんでしょう私は……!?)」 ねここの飼い方・そのじゅうご 「いっくのー!」 「今日こそ、負けませんっ」 2人のやる気満々の叫びがバトルフィールドいっぱいに響く。 なんというか、最早恒例になりつつある風景だったりする。 あれから何度となくエルゴやPCの神姫ネットワークでの通信対戦を重ねているねこ ことネメシスちゃん。……まぁ対戦成績は、ねここの大幅勝ち越しだったりするのだけど。 彼女もねここに負けず劣らず負けず嫌いなようで、ネット対戦で翌日が休日とかだと皆揃って朝までぶっ続けで対戦したりとか。私はまだ徹夜にはそこそこ慣れているからいいけど、アキラちゃんは大変そうだ。毎回最後の方は反応が無くってくるし。 「ぉ、そろそろかな」 等と思っている間にも、バトルは最終段階に入ったみたいで。 「いっけぇ!、ねここフィンガー!」 「これで決めます!ファン・エタンセル!」 必殺技の雄叫びと共に、モニター画面が真っ白になる。 なんというか、毎回こうだとすっごくに目に悪そう…… さて、今回の勝者はどちらかな……っと。 ………放電現象によるカメラアイの障害、現在復旧中…… トルク異常無し。背部ユニットに漏電、第3ブロックパージ……。各チェック機構グリーン。 「(よし……まだ、いけます)」 ぼんやりと霞がかった世界が、ゆっくりと開けてくる。 「(ねここは……反応がない、か。勝ったのか?)」 それでも油断は出来ない。何せ、『あの』、ねここ。 一瞬の隙を突かれ、一撃で逆転されたことが何回あった事か。 私はクロスコンバット用のファイティングスタイルへと自らの意識を切り替える。 「……?」 ……何か、若干、両腕が、妙に、重いような。 『あーぁ、また負けてしまいました。やっぱりお二人は強いです』 いえアキラ、私はまだこうして立っているんですが…… 『それでも強くなってるよ。勝率五分になっちゃうのもそう遠くないわよ、きっと』 マスター2人は早くも雑談モードになっているようですが、此方は…… そして、やっと視界が完全にクリア化。 一応の警戒を怠らないようにしつつ、自らの両腕を確認する。 「……あれ?」 そこにあったのは慣れ親しんだシャープな腕とシェルブレイクではなく、ドギツイ黄色で塗装された太い腕と巨大な爪。しかも今、声も心無し変だったような。 そして、さらに前を見ると、正面に倒れて気絶してる神姫が1人。 その姿は、真っ黒なボディと薄い色素の金髪のポニーテールをしていて……って 「えええええええええええええええ!?」 『ん、どうしたのねここ?』『んにゅ……ねここちゃん…?』 致命傷な一言(二言か?)が追い討ちをかける中、再度自分の体を凝視する。 巨大で凶悪な爪、無駄に重くてバランスの悪い胸部装甲。頭はやたら重いし、それ にこのインナース-ツの派手なカラー……極めつけはこの馬鹿のように甲高い音紋。 どう考えても私はねここになってしまった。よう……だ。 「な、なんでもないですっ!」 『……そっか、なら今日はお開きにしましょうか。アキラちゃんもいい加減限界でしょ』 『……んぅ。ぁ、はぃ。そうして頂けると助かります……ふぁぅぅ』 毎回つき合わせてしまって申し訳ありませんアキラ。でも勝たなければ貴方にも申し訳ない気がして……ってそういう事じゃありません! なんで真実を告げなかったんですか私は!? ちゃんと言わないとアキラがっ! 『それじゃ、おやすみなさい。回線切るわね~』 ブツリと、神姫ネットから、回線が切れた。 そして、電脳空間から現実空間へと、意識が戻ってくる。 「さて、それじゃいい加減寝ましょうか。もう外は明るくなりはじめちゃってるけど……」 私の目に飛び込んでくるのは見慣れない部屋。そして目の前に居るのはアキラで はなく、風見……美砂。 「……あの」 先程は動転してあんな事を言ってしまったが、今度こそちゃんと真実を言わなければ。 「ん。どうしたの、ねここ?」 「その……あのですね、えぇと」 何と言ったモノだろう。真実を言った所で信じてもらえるのだろうか。 「んー……、一緒に寝よっか」 「はぃ……そうなんで……はひ!?」 何を言い出すんですかこの女はっ!。 「ほら、こっちにおいで。雪乃ちゃんが今居ないから、1人で寝るのが寂しいんでしょ? ねここは寂しがりやさんなんだから」 言うが早いか、PC接続用のクレイドルの上にいた私をひょいと摘み上げ、自らの胸元の谷間へと私を放り込んで……って、何でパジャマの内側ですかっ! 「むぎゅ……ふかふか」 「ねここはソコが大好きよね~。私も暖かいからいいけど」 アキラより数段おっきくて、確かに暖かくて良い気持ちいい……ってそうじゃなくて何と破廉恥な!? 「さ、いい加減寝ましょ。おやすみ~」 と、私を胸元に挟んだままベッドへと潜り込んでしまう。 「あぅ……、ぉ、おやすみなさい」 ねここもこの感覚を味わってるのだろうか。優しくて柔らかな……。まぁ、明日起きてから言えばいいかな。今だけは、この感覚を…… 『簡易スリープモード、移行』 「……ん……ぁ……」 音声確認。簡易スリープモードより復帰開始。 「……んぅ………ぁん」 ……何だろうこの感覚は。甘くて、美味しい……ような。 「ちょっとぉ……今日は特にあまえんぼさんなんだから」 誰に対する発言……って、一気に映像が私のシステムに流れ込んでくる。 桜色の慎ましやかな花の蕾のようなソレを口に含んでいた、らしいが……コレってまさか 「!?!?!?!?!!?!?!?」 「あ、おはよ~。やっとおねぼけさんから戻ったかな?」 嗚呼、やっぱりそうでした……何時もの癖でしょうか。 ……もういっそ破壊してください、誰か…… 「さて、それじゃちょっと遅めの朝ごはんにしましょうか。」 既に時刻は12時をとっくに過ぎており、既に昼食と言うにもおこがましい時間だ。 それにしても、この人は入れ替わっていることに気づいていないんだろうか。 「あれ、どうしたの。何時もはあれが食べたーいって言うのに」 「ぇ……と。ねここ、ホットケーキが食べたぃ、です・・・の~」 演じているから気づかないのか……?それにしても神姫が毎日朝食を取るなんて 無意味な……無意味、か。 「了解、それじゃちょっと待っててね。直ぐ作っちゃうから」 でも、こういう行為がこの2人の当たり前で。……少し、妬けてしまうかも。 「はい、たっぷり食べてね」 コトリと、甘く芳しい匂いと共に私の前に出されたのは、神姫サイズの容器ではなく、人間サイズの小皿。それでも私の身長より直径があるサイズのものだ。 そして皿の上には、皿に合わせたサイズのホットケーキが3段重ねで鎮座している。 ……あの馬鹿ねこはコレを食うのか!? どう考えても私たちの食物プール用スペ ースを遥かに超過した量としか言いようがない、この量。食欲の権化、いや同じ神姫なのかと深刻に疑いたくなってくる。 少し目線を上にずらすと、風見美砂がにこにこと此方を見つめてて……、確かに匂いはいいよ……ね。 「い……頂きます」 「うん、たんと召し上がれ~」 此方は神姫サイズのフォークとナイフでホットケーキを切り分け、ぱくりと一口。 「……美味し」 思わず口から感想がこぼれる。使ってた材料は普通のものだったのに、私の味覚はコレを妙に美味しく感じてしまう。 「うふふ、それはよかった」 尚もニコニコと、自分に嬉しい事があったかのように、此方に微笑を絶やさず送り続ける風見美砂。 その笑顔とホットケーキの間で何度も視線を行き来する間に……気づくと、全部、食べてしまっていた。 私もおかしいらしい。それとも神姫の秘密機能なのか。そう思いたい、思わせてくれ…… 「……あの、ですね」 いい加減!、この独特の雰囲気に流されず、言ってしまわなければ。 「どうだった、1日過ごしてみて。『ネメシスちゃん』」 ……… ちょ、ちょっとぉぉぉ!!! 「き、気づいてたのか!」 「気づかない訳がないでしょ。幾らなんでもそこまでボケてないわよ」 全然暑くないのに、額からダラダラと冷却水が吹き出てくる。 「……何時から」 「昨日の夜。最初から」 ……バ、バレバレですか。って 「じゃ、じゃあどうして言わなかったんですか!」 「ネメシスちゃんも言い出さなかったし、せっかくだからねここの生活を体験して貰おうかな~って思って、ね。 ネメシスちゃんも興味あったんでしょ?」 そう言われると……その通りなんだろうけど。 「でも、どうして……? このような事しても貴方に利益はないはず」 「んー……ネメシスちゃんに、もっとねここと仲良くなって欲しかったから、かな」 「……?」 「ねここの生活や私を見て体験して、それでちょっとでもネメシスちゃんに私たちを好きになって貰えたらいいかなって思ったの。 で、結構満更でもなかったみたいで、何よりよ♪」 「そんな事は!……ぅぅ」 認めるのも癪だが……確かに……事実ではあるし。 「……って。そうです、気づいてるのならアキラに何故いわなかったので!…」 「ん、昨日寝る前に連絡済よ。『ねここが一晩お邪魔するけどよろしくね』って」 何時の間に。まるで気づかなかった…… 「はぁ……」 思わず、ずるりと脱力してしまう。良い様に弄ばされてたわけか私は…… 「さて、それじゃ、そろそろアキラちゃんちに行きましょうか。今この手の入れ替えバグが多いみたいだけど対処プログラムも出てるから、2人も直ぐ元に戻せるわよ」 それは少し安心する。 「じゃ、おでかけ~っと」 またも指先でひょいと摘み上げられ、ほふりと谷間の間におっことされる。 「って、こ、この場所はやめてくださあぁぁぁぁい」 「いいじゃない。ねここだって好きな場所なんだから~」 「アキラごめんなさああぁぁぁぁぁぁぁぃ」 操を立てられなくてごめんなさい。……でも、ちょっとだけ、アキラには無い感覚で、気持ちよかったです。 ――30分後・芽河原邸、アキラ私室―― 「アキラ、只今帰りました。ご心配をおかけして申し訳……」 「にゃー、アキラちゃんくるしいのー」 「キャー、やっぱりねここちゃんは可愛いわぁ♪ ネメシスのクールな顔立ちと思いきや、その100万ドルの笑顔。そのミスマッチが最高……!」 ドアを開けた瞬間私の視界に写りこんだのは、見たことも無いほにゃっと崩れきった顔で嬉々として私(のボディ)に頬づりしながら幸せオーラを出すアキラの姿…で…し…た。 「(や、やっぱりねここは敵だ…………ぁ!!!)」 [[続く>ねここの飼い方・その絆 ~一章~]] [[トップへ戻る>ねここの飼い方]]