「幻・其の四」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
幻・其の四 - (2007/06/08 (金) 00:19:23) のソース
*本文を読む前に、[[幻を紡ぐ少年]](修理屋氏作)をお読みください。 ---- 「ただいまぁ~……」 御影市にあるアパートの一角、上岡修也の家に、気の抜けたような少女の声が響いた。 「あれ、お帰り。ずいぶん早いな」 「お帰りなさい、梓さん」 この家の主たる修也と、彼の神姫であるリュミエが、たった今帰宅した梓を迎える。 昨日、彼女の電話を(あくまで偶然に)聞いたところによると、センターの前に居座る不審な男について調べに行くらしかったのだが。 「もぉ、聞いて下さいよ修也さん!」 さっきまで気が抜けていたかと思えば、今度は修也相手に結構な勢いで愚痴をこぼす。全く、元気な事だった。 「……どうか、したんですか?」 「聞かないでやって欲しいです。にゃぁ……」 神姫達は、そんな会話をしてたとか。 「まったく、慎一君も慎一君ですよ! 一応刑事さんってことだったけど、そんな簡単に付いてくなんて」 「……要するに、星野君を取られたのが気に食わない、と。や~、青春してるねぇ」 梓は一瞬、その意味をはかりかねて、 「……!!? ちょっ、ち、違いますっ!! そういうんじゃなくてっ!!」 顔を真っ赤にして反論した。 「マスター、親父モード入ってます」 リュミエが努めて冷静に、修也に言う。 「はは、冗談冗談」 「もぉ……」 「でも、そういう状況だったら行かざるを得ないだろうな。もしネロのことを隠して、あとでバレたら面倒だし」 親父モードを解除した修也が、梓に言った。 「それは……そうですけど」 「それよりもだ。さっき、研究所が狙われてるって話があったな?」 修也とリュミエは、御影市神姫センターへと向かっていた。 「かすみさんや高明さんが心配ですか?」 「んなわけないだろ。かすみもあのタヌキも、殺したって死にゃしないような奴だからな」 とか言いつつセンターに向かっているのは、やっぱり心配だからなんだろうなとリュミエは思った。 「あいつも伊達に修羅場くぐってきてるわけじゃないし」 「……かすみさんのあの伝説、ですか」 リュミエは、修也から聞いたかすみに関するいくつかの話を思い出した。 特に壮絶なのが、高校時代に銀行強盗に遭遇した時らしい。工業高校(ちなみにその年度で唯一の女子入学生だった)に通っていた彼女は、偶然持っていたいくつかの機材を使って、強盗を取り押さえてしまったという。何をどう使ったかは、リュミエはもちろん修也にも想像がつかない。 最近だと、鳳凰杯の時に「違法神姫狩り」とともに何かやっていたらしい。もちろん本人が何も言わないので、確かめようがないが。 「っと、あれは……」 「慎一さん?」 そんな彼らの目に、最近知った少年が映った。 インターホンの間延びした音が、上岡家に来客を告げた。 「どちらさまですかー?」 宅配便か何かだと思い、梓は玄関に出る。 玄関先のモニターに映っていたのは、 「って、し、慎一君?」 「う、うん」 数時間前に別れた少年だった。 [[幻の物語]]へ