文章系その2@2009.1


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その2



一月のホーム・フロム・ホーム

作:◆LNPZY.1xLA
お題:「白」「牛」「正月」「日の出」

1/2
 県内のとある神社は御神体が牛なんだそうだ。それで、干支にちなんで今年の三ヶ日は近所の牧場から
牛を借り、境内に繋いでいるらしい。しかも突然変異で白いんだとか。
 朝のニュースのその紹介に、ぼくは「あ、近くだ」くらいしか思わなかったけれど、ゆずかは違った。
地名のテロップに喜んで、行きたいとぼくを誘った。せっかく有給をかき集めたのなら、正月くらい
ゆっくり休めばいいのにと思う。年上の恋人はあまりぼくに甘えない。除夜の鐘を聞いてわくわくして
初日の出にわくわくして、そうしたら初詣。楽しそうなゆずかは好きだ。でも、そのせいでぼくは
この間の電話のことを訊けないでいる。慰めることも、何も。
 朝とも昼ともつかない時間帯のせいか、乗り換え時間は四十分もあった。ホームに並べられた椅子は
空いていて、ゆずかとぼくで隣り合って座っている。日向の光を浴びた冬の風がときおり通りすぎる。
ゆずかは静かだった。目的地に着く前だけど、しゃべり疲れたのかも知れない。
「三番線は折り返し運転となります、すぐにはご乗車にならないでお待ち下さい」
「八番線、車内保温のためドアが手動となっております」
 絶え間ないアナウンスに、行き交う電車。賑やかでのんびりしている。ぼんやりしているとどうしたって
思い出すのはあの電話だった。年末年始休めるからバイトいれないでね、声は震えていてゆずかじゃ
ないみたいで、でも確かに愛しい人の声で。ぼくは反射的に、うんわかった、とか、そんなことを
答えただけだった。だから、ゆずかの涙は見たことがない。
「……っ、しょっと」
 不意に耳元で声がした。横目で見れば、ゆずかと反対の隣に若い男が腰かけるところだった。
手に子供用のリュックを握っている。男が来た方向、ホームに下りる階段の方を見たら、小さな男の子が
やって来た。歩いているような走っているような動きはぼくの目にも危なっかしくて、男が
腰を浮かしたのと同時に子供はつまずいて転んでしまう。コンクリートがべちりと鳴った。
男が駆け寄り、しゃがんで顔を覗き込む。
「大丈夫、痛くない? ちょっと見せて、血が出てたら……」
 彼はあたふたと手を差し出したり引っ込めたりしている。その目の前で、子供はひとりでよいしょと
立ち上がり、顔を上げたようだった。男の背中であまり見えない。
「平気か、膝はどうだ? ……あー、痛い痛い。バンソーコー出すから、ちょっと待っててね」
 男がこちらに歩いてきて、ぼくは慌てて目をそらす。それから、気づかれないようそっと視線を戻す。
 子供は、ぎゅうっと眉を寄せて、口をこれでもかとへの字に曲げて、つぶらな瞳を潤ませてどこかを
睨んでいた。小さな体の全てで、涙を押さえ込んでいるように見えた。
「……うし、泣くなあ、バンソーコーはったぞう。ほら、大丈夫だ、ん」
 男は、子供の髪をくしゃくしゃと混ぜる。
「あのね、約束したから、泣かないよ」
幼い声がした。その高さからか、いかにも子供のはばかりのない声量のためか、妙にりんと、言葉は強く響く。
「約束? 誰と」
「パパ」
 男の手が止まった。こちらに背を向けたまま、地面に置いたリュックを拾う。ファスナーをしめる
チリチリという音に紛れて、「そうかあ」と呟きが聞こえた。
 ぼくの隣に、どさりと深く座りこむ。子供も横に座ったようだ。
 彼らと反対の肩に何かがぶつかった。ゆずか。いつのまにか、眠ってしまったらしい。前髪がさらりと
顔にかかって、彼女の顔を隠す。ぼくには柔らかな重みがかかる。
「ねー、牛、いるかな?」
「ん?」
 不意に、屈託のない声が聞こえた。
「牛ね、知ってるよ、おっきいんだよ。鳴くかな、ね、白いのもモォーって鳴くの?」
「んー? どうだろうね。行ったら神主さんに聞こっか」
 男が答える。
「かんぬしィ? かんぬしじゃーわかんないよ。知ってるのは、牧場の人」
「牧場の人?」
「後はねえ、うしやさん」
 その時、あたりの空気を巻き上げ目の前を電車が通った。二両編成は減速し、ずいぶんと奥のほうで止まる。
時計と電光掲示板を確認した。目当ての電車みたいだ。

2/2
「あれ、電車あっちか」
「あれに乗るの?」
「そうだよ」
 ぼくは反対の隣に意識を向ける。肩のぬくもりと重みは心地よかったのだけれど。
「ゆずか。ゆずか、電車来たよ」
「……、んー」
 軽く揺さぶったら、疎ましがるように首を横に振られる。それから、ゆっくりと開かれた瞳がぼくを映す。
「白い牛、見に行くんでしょ。乗り換えの電車来たから乗ろう」
「ん……牛? 電車、えっと……あっそっか、わあ、あたし寝ちゃった」
「徹夜だったからね」
 ぼくは立ち上がり、電車の方へと歩き出す。ゆずかもそれに続く。肩ごしに確認したら彼女と目が合って、
微笑みを向けられた。
「優しいね」
「ん?」
 歩みを早め、ぼくに並ぶ。
「……って、思ってたの。去年も今年も、あたしが我が儘いってばっかりだったのにね。電話のこととか、
 訊いてこないし」
「あぁ」
「甘えてばっかりだなぁ……」
 独り言みたいなそれは、ぼくには意外で。このくらいの我が儘だったら構わないよとか、電話のことは
気になっているんだけどとか、言いたいことがうまく纏まらない。
「もう、自分で言っちゃう。仕事でちょっと……厳しいこと言われちゃって。へこんでたんだ。でももう
 大丈夫」
 彼女の笑顔は綺麗だ、と思った。纏まらなくていいのかもしれない、こんなぼくが、ゆずかに良いのなら
それでいい。今もまた、咄嗟に気の聞いた返事はできなかった。なんとなくの曖昧な相づちを、ゆずかは
当たり前の顔で受けとめる。
 前方で、さっきの子供が背伸びをして自販機でペットボトルを買っていた。追いついて、そこでまた
会話の断片が飛び込む。
「お茶どうする? 俺が持っとこうか」
「お茶……ねえ、かたぐるまして!」
「かたぐるま? もうすぐ電車乗るよ」
「電車までっ。りょーたのかたぐるまがいい」
「俺?」
「もーっ他に誰がいるのよ、あなたでしょ?」
 子供は茶化すみたいにそう言って、そして笑った。ふふふと声をもらして、男の足にしがみつく。
そのまま半分ぶら下がるようにして、男の足を軸に回る。すれ違うぼくとぶつかりそうになって、
男が「すみません」と謝った。
「ごめんなさあい」
 子供が続く。ぼくはいえいえ、みたいなことを言いながら彼らを追い越した。背中の方から、よっ、と
力を込める声がする。笑い声はいっそう大きくなる。
「ねー今さ、牛とさ、どっちが高いかな?」
「うーん、どっちだと思う?」
「牛……あーでも、りょーたもおっきいからなあ、うーん、わっからないぞー?」
 ふざけているように、真面目なように子供はまくし立て、そして笑う。楽しそうな様子は、男がときどき
揺らしたりしているらしい。
「あの親子も、おんなじトコに初詣行くのかな」
「え?」
「牛の話してる」
「あー。さっき、『白い牛』っていってたしね。たぶん、そうだと思うな」
 電車の中はは予想外に賑やかだった。もう座席がほとんど埋まっている。ぼくたちは入った向かい側の
ドアに隣り合って立つ。すっかり目を覚ましたゆずかはしきりにぼくに話しかける。白い牛が楽しみだと
いうこと。初詣でお願いすること。くじびきをしようという約束。まだまだ続く正月休み。
 雑踏にあの二人がいたような気がして、すぐに見失った。
 しばらくしてドアは閉まる。電車は走り出す。ゆずかは早くもデジカメを取り出していて、興奮を
抑えられないといった様子だった。つられてぼくも笑う。
 車内は人々の浮かれたざわめきに溢れていて、単調なアナウンスを掻き消していた。


終わり。


無題2

作:◆4c4pP9RpKE(恐らく)
お題:「牛」「白」「こたつ」

1/4
牧場の朝は早い。
酪農は搾乳作業があるから特に早い。
山田さんはいつものように目覚まし時計がヂリリリとなる五秒前に起きた。
ベッドから飛び起きて、目覚まし時計に食らい付く。
「ヂ……」

──バンっ!

目覚まし時計の鐘が二回打つ前にスイッチを叩き切った。
勝ったのだ。
山田さんは目覚まし時計とのガチンコ勝負に勝ったことを、小さくガッツポーズして祝した。
朝日も登らぬ午前四時、山田さんは藍色のツナギを身に纏う。
熱血酪農家山田さん28歳独身は、朝露を蒸発させるほどの元気を持って牛達の世話を始める。
はずだったのだが。
「……!? あ、あんた何やってんだ!」
宿舎の玄関を出た瞬間に山田さんは度肝を抜かれて叫んだ。
碧い瞳で、つやつやした栗毛の髪が肩までのびた女性が、玄関に蹲っていたのだ。
しかも全裸。
季節は一月。牧場は雪景色である。
唇どころか身体自体がスミレ色に見えるほど冷えきってガタガタ震えていた女性は、
山田さんを見た途端に満面の、しかし顔色があまりに悪いので凄絶に見える笑顔で、勢いよく抱き付いてきた。
しかも全裸。
「山田さん! ふえ~ん、寒かったよう~。死ぬかと思ったぁ~」
首に巻き付けられた腕が細い。そして冷たい。
っていうか。

……誰?

山田さんは日本生まれ日本育ち、ついでに言えば山形県から一度も出た事のない生粋の世間知らずである。
当然、碧眼栗毛のボンキュッボン露出癖外人の知り合いなど居るはずも無い。
しかし山田さんは自分に向けられる親しげな笑顔に、あんた誰、と不躾に聞けるほど不人情ではなかった。
「誰だか知んないけど、とりあえず上がりなよ。あ」
知んないって言っちゃった。
「……」
悲しそうな顔をする女性。
山田さんは不人情ではないが、嘘を吐けるほど器用でもなかった。


宿舎の中に女性を招き入れた山田さんはダルマストーブに火を入れ、裸の女性に服を渡した。
何を着せたら良いか一瞬逡巡したが、
とにかく寒そうなので手近にあったさっきまで山田さんが寝間着に着ていたスウェットを着せた。
裏起毛であったか。
暖かいお茶をはふはふ言いながら飲み、幾分顔色が桜色になってきた元全裸女性。
山田さんは一安心して告げた。
「私は牛の世話しなきゃならないから行くけど、後で事情教えてね。……逃げるなよ?」
「もー、逃げませんよぅ」
栗毛をくるくる揺らし、背筋を正した女性。あらためて顔をよく見ると、まだ10代らしき顔つきだった。
幼げな顔つきとアンバランスな大きさの胸が張りだし、先端が、つんとスウェットを持ち上げる。
目のやり場に窮し、なんだか恥ずかしくなった山田さんはそそくさと牛の世話に向かうのであった。

2/4
搾乳、出荷、厩舎の掃除、餌やりを赤い彗星の速度で終えた山田さん。
宿舎に戻ってみると、女性が勝手に炬燵の上のミカンを食っていた。皮ごと。
「お帰りなさい山田さん(むしゃむしゃ)。この黄色い奴(むしゃむしゃ)すごい美味しいですね(ごくん)」
もう一個食べても良いかな?
女性は上目遣いで山田さんの顔色を窺った。
が、表情がよくわからなかったので、結局もう一個食べた。

一方山田さんは複雑な表情で女性を見ている。
この娘、ちょっと知恵遅れなんだろうか。
しかし山田さんと目が合って恥ずかしげに目線を逸らす女性の碧い瞳には、
純朴そうな色こそ浮かんでいるけれど、白痴の狂気は見取れなかった。
ま、いいか、と納得した山田さんは、スウェットを突き上げる女性の爆乳に目線の可動域を奪われながら質問した。
「えっと、あんたはなんでウチの玄関に蹲ってたの?」
「ひどいっ、山田さん、私のこと忘れちゃったんですかぁ?」
“しな”をつくって、よよよ、とくず折れる女性。
カーペットに付いた両の手に寄せられて、爆乳がさらに弾けそうに張る。
そして弾けた。
女性の、スウェットを突き上げる先端が、にわかに染みを創る。
ぼ、母乳……?
「はわわ、ごめんなさいぃ。汚してしまいましたぁ~」
「わ、ちょ、脱がなくていいから! あ、うわあ!」
ポロリ、というより、ブルン、と言う擬音が聞こえてきそうな勢いで、女性はスウェットを脱いだ。
「くしゅん! ううぅ、人間の身体ってなんでこんなに寒いんでしょうぅ」
山田さんは女性の裸身を見ないように背を向けた。
妙な発言につっこむ余裕はない。
「ねぇねぇ山田さん、私がなんで人間になったか聞かないんですかぁ?」
「や、あの、まずあんたがどなたか聞いてないっていうか服を着ろっていうか」
「なんでですかぁ? いつも裸でも何も言わないじゃないですか。それにぃ……操を許した人に見られたって恥ずかしくないですよぉ。キャッ」
言っちゃった!って感じで顔を手で覆う女性。
さすがに黙って居られなくなった山田さんは背中ごしに抗議した。
「に、人間になったとか、いつも裸だとか、操を許したとか、全部一切意味分かんないし、そんなことした覚えもない!」

3/4
「そんな……山田さん、私のこと──マリアのこと忘れちゃったんですかぁ!?」
「だって本当に知らないよ! マリアなんて名前、うちで飼ってるジャージー乳牛くらいしか」
「覚えてるじゃないですかぁ! もう、山田さんの意地悪ぅ~」
なるほど、あんたはマリアか。だから外人なんだね。
確かに裸でも何も言わなかったし、操も奪ったっていうか、肩口まで腕を突っ込んで人口受精させた。
「ってありえないありえない! どうやったら牛が人間になるの?!」
「神様にお願いしたんでぇす。山田さんと同じ人間になれますように~って。干支だから大サービスで叶えてくれちゃったの。優しい神様。神様、やさしい。えへへ」
山田さんはいよいよ頭を抱えた。
「あ~、山田さん信じてくれてないぃ。そだ、きっと飲めばマリアだってわかるよ!」
飲む?飲むっていったい何を……、と山田さんが思った瞬間には、自称マリアにマウントポジションをがっつり取られていた。
「うわ、何をするんだ! 助けた恩を仇で返すのか!」
「違いますぅ~。胸で返すんです」
頭を両手でグッと押さえ込まれ、大きな胸が上から垂らされる。
先端に浮かんだ白い滴の玉が山田さんの唇に、ポタリ。
ふわりとミルクの香りがする。
「やめろ!」
「嫌ですぅ~。さぁ、飲んでください。私が搾って飲ませましょうかぁ?」
山田さんの頭を押さえていた手の片方が外れ、自称マリアのピンク色を不慣れにしごいた。
まだ人間の身体に慣れてない、という事らしい。
「あっ……ごめん、なさい。勝手が分からなくてぇ……」
ぽたぽたぽた、と母乳が山田さんの顔を濡らした。
「うぅ……痛い」
今度はピューっと、先端から幾筋ものミルクの軌跡が迸った。
顔じゅうにミルクを掛けられた山田さんだが、痛い痛いと言いながら必死に乳を絞る自称マリアに根負けし、ついに自分から唇を付けた。
「おぉ、飲んでくれる気になりましたかぁ?よかったよかった」
自称マリアがマウントポジションで満足げに目を細めるのを上目にみながら、山田さんは極力痛くしないように胸を吸った。
乳腺から乳管へ、滞りなく乳汁を導き出す。
「やっぱり山田さん、上手ですぅ」
正直褒められても嬉しくない山田さんだった。

4/4
マウントポジションから開放された山田さんは、正直な感想をのべた。
「全くわからない」
「えぇ~! マリアの味を忘れるなんてぇっ! 山田さんのバカァ!」
酪農家の山田さん、困ってしまって、頭を掻いた。ぽりぽり。
「ほら、飼ってる牛っていっぱいいるじゃん?一頭ずつの味まで覚えてられないし」
「な、なんですとぉ! 他の娘にまで手を出していたのですかぁ?!」
「酪農家ですんで」
自称マリアはハンカチを食いしばって悔しがる感じに、乳首の部分に染みの付いたスウェットを噛んでひっぱった。
自称マリアがバタバタして髪が翻り、山田さんは彼女の耳に何かが付いていることに気がついた。
「ねぇ、自称マリア。あんたの耳のそれ、何?」
「山田さんが付けたんじゃないですかぁ。これも忘れちゃったんですかぁ?」
自称マリアの耳に付いているのは、紛れもなく牛のマリアにつけた管理タグであった。
「……驚いた。あんた、本当にマリアなんだ」
「だからそう言ったじゃないですかぁ。ようやく信じてくれたみたいですねぇ」
腕組みをするマリア。胸が殊更に強調される。
……服を着ろ。

「で、マリアはなんで人間になったの?」
「それはですねぇ。私、是非山田さんと番いになりたくってぇ」
「無理だよ。私、女だもん」
山田さん28歳独身。♀である。
「え? えええぇ? だ、だってあの時あんなに熱くて太いものが!」
「あれは腕だよ」
「…………」
「まぁ、残念だったね。乳牛やっててくれれば、発情期毎に手でやってあげるから。大人しく牛に戻りなさい」
「無理ですぅ……干支だから大サービスで叶えてくれちゃったのですぅ……だから、次の丑年まで牛には戻れません」
「…………」
二人とも途方に暮れてしまうのだった。

「山田さぁん?」
「何?」
「その……指でいいから、やってくれませんか?」
「……自重しろ」







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