「コーヒーをもらおうか」 |
「すわりなさい」 |
「さて、デンゼル。あまり時間がないからさっそく本題に入ろう」 |
「断っておくけど、我々は以前とはちがうんだ。志願者は誰でも歓迎していた時期は過ぎてしまった。 復興ボランティアになりたいなら地区のリーダーに連絡しなさいWROは今や軍隊だ」 |
「覚悟ね。よし、聞かせてもらおうか。まずはきみの経歴だ」 |
「わかっているよ。でも、十歳なりの経歴があるだろ?」 |
「困った親たちだな」 |
「言っておくが、わたしが知る限りスラムでもさすがにネズミは食べなかったぞ。食用ならともかく当時のスラムのネズミは――」 |
「ほう。何かあったのか?」 |
「ああ」 |
「憎ければ、わたしを好きにしてもいいぞ」 |
「まったく――暑いな。水をくれないかな」 |
「ずいぶんかわいい柄だな。女の子みたいだ」 |
「野菜でも育てるつもりだったのかな。田舎から来たお年寄りは、よくそういうことをするからね」 |
「あの頃はまだ星痕のことは何もわかっていなかったからね。ライフストリームを浴びた者はからだからウミを出して死ぬ。 触るとうつるという者もいた。実際はライフストリームに混じっていたジェノバの思念が――いや、わかっていたとしても状況は変わらなかっただろうね」 |
「うん」 |
「どうしたんだ?」 |
「その子に感謝、だな」 |
「どうしてかな?」 |
「リックスは?」 |
「良かった。仲直りのチャンスはまだある」 |
「最高の出会いがあったわけだ」 |
「まあね」 |
「いや」 |
「実は――WROには子供はいれないことになった」 |
「いや、今決めたんだ。きみの話を聞きながらね。子供には子供にしかできないことがある。きみにはそれをやってほしい」 |
「大人の力を呼び起こせ」 |
「ああ、それから――」 |
「母に良くしてくれて、ありがとう」 |