論文一覧
①1998.3『知的財産権法の現代的課題』P.5
大瀬戸豪志 「特許侵害訴訟における等価理論」1998.3(No.1
②2005.12 『知的財産法の理論と現代的課題』
P.175
高林龍「統合的クレーム解釈論の構築」 2005.12 (No.2
クレーム「アイディアを伝達可能な文章として具体化したもの」
解釈の余地がある
文言侵害:相手方製品がクレームの文言解釈により認められた範囲内
均等侵害:範囲外だが実質的同一の範囲内
解釈二分説
☆疑問 5要件「発明の本質的部分」の見極めと解釈二分説でのクレームの文言解釈における効力の及ぶ範囲の見極めが重複しているのでは??
第2節
クレーム記載=発明の技術的範囲の認定のための基本
∵クレームに記載しなかったものは一般に開放されたと解するべき
しかし&実際は技術的範囲は限定したり、拡張したりしている。
第1節 クレームの意義を明確にするための参酌
文言(用語)の意義の理解解・公知技術の参酌(出願当事の技術水準を知るために)
- 出願過程の参酌(出願人の発明に対する技術的認識を知るため)
アメリカ 特許侵害訴訟の場で特許無効の主張が可能
第2節クレームの文言の通常の意義以上に限定解釈するための参酌
1公知技術
クレームの文言には欠かれていないが、出願時の公知技術から考えて、(既存の技術は技術的範囲に含まれないから)限定して解釈される場合
ң??ルビー事件、特許法104条の3によるならば、クレーム解釈論として扱う必要がなくなった。
2発明の詳細な説明や出願過程
出願人が発明の詳細な説明中、出願過程で通常の文言上の意義であればクレームに包含される技術を除外している旨を表明している場合(技術限定意思)
第4章均等論
ボールスプライン事件最高裁判決 ? 5要件の存在の下での均等侵害の成立
∵特許発明時に存在しなかった技術によるただ乗りを防ぐため
法安定の目的、社会正義、衡平の理念に基づく要請
しかし&上記のようなケースの場合
出願時を判断基準とする第4要件と第5要件は充足しているのが当然
真にに検討すべきは第1ないし第3要件のみ
出願時を基準として判断されるクレームの文言解釈では技術的範囲と認めることの出来ない場合に均等論を検討する。
クレーム解釈の埒外にある=真の均等論
出願時基準説 ? 明細書の記載錯誤を救済するための論
P.196
潮海久雄「特許侵害訴訟における禁反言の法理の再検討」(No.3
P.218
愛知靖之「出願時におけるクレームへの記載可能性と均等論」(No.4
問題:出願時においてすでに存在していた同効材がクレームに記載されていない場合、最判にしたがって均等論の主張を認めるべきか、もしくは「権利者はクレーム記載可能だったのに書かなかった」ことを理由として排除すべきか。
原理論を用いて考える。
二つの原理
「技術的範囲明確化原理」
技術的範囲は明確な形で確定せよ・・・第三者の利益、公益を重視
「権利保護十全化原理」
特許権者の権利は発明の実質的価値に即して十分に保護せよ・・・特許権者の利益
二つの原理の関係を定めることが必要。どの場合にどちらが優先するのか。
①最判は「特許出願後に明らかとなった物質・技術などに置き換えることによって・・・」と述べた。ただし、出願時に存在したものについては不明である。
②出願人は出願後も審査経過において、出願時に存在する同効材をクレームに記載できる。
②より、十全化原理を過度に制約せず、「書かなかった」理由による排除は合理的。ただし、特許庁実務において広いクレームが排除されるなど、「記載可能性」がなかった場合に均等論を排除するのは「権利保護十全化原理」を過度に侵害する。
③中山信弘 工業所有権法 1993(第1版)or1998(第2版)or2000(第2版増補)(上)特許法
P.381
第四款 保護の範囲(No.5
④ 2003年 2月『特許裁判における均等論-日米欧三極の対比- 』
P.73
服部健一「日米均等論侵害比較」(No.6
P.91
ダニエル・スキューマ「ドイツにおける均等論」(No.7
P.201
牧野利秋「均等論適用の要件」(No.8
P.213
牧野利秋「特許発明の本質的部分について」(No.9
P.257
村林隆一「特許発明の技術的範囲と均等」(No.10
P.457
塩月秀平「技術的範囲と均等」(No.11
P.635
中山信弘「均等論」(No.12
均等論の基本的な考え方
特許は、発明者(権利者)の利益と第三者の予見可能性や法的安定性の均衡を図る必要がある。
そもそも、特70条1項によって、特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲(クレーム)に基づいて定められるが、これを徹底すると、第三者に対する公示機能は充足されるが、不合理を招く。第一に、出願時にあらゆる侵害形態を考慮することはできない。第二に、出願時に存在しないもので特許発明の一部を置換することについてクレームで言及するのは不可能である。これらの理由から、クレームの厳格な解釈のみによっては特許権が容易に迂回されるから特許取得のインセンティブが減り、技術は開発されず、または公開されないことになる。それは産業発展に資せず、特許法本来の目的に反する。
均等論の下位概念は以下の通り。
設計上の微差、均等物、材料変換、迂回方法、不完全利用
置換可能性
置換可能性とは特許発明の構成要件の一部をほかの方法やもので置換しても当該発明の目的を達成できること。
特許発明と発明思想、作用効果も同一の場合を指す。
置換可能性は、発明の客観的同一性と言い換えられる。
不完全利用
不完全利用とは、クレームに記載されている構成の一部が欠落している実施のこと。
不完全利用であっても均等論を用いれば侵害といえるのか?
平成6年改正でクレームの定義が変更。「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分してあること」?「請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認められる事項のすべてを記載しなければならない」
容易想到性=置換容易性
容易想到性とは当業者であれば当該置換を容易になし得ること。
進歩性>>>当業者が格別な努力をしない=容易想到
当業者の基準はどうするか
具体的侵害ごとの悪性を考慮するとする(均等論は行為の悪性の高いものだけを排除するという説による)と、低レベルの人のうんと考えた置換<高レベルの人の容易想到な置換のとき、低レベルの人・・・非侵害、高レベルの人・・・侵害となる。
考慮しない場合(=平均的エンジニアを想定)低レベルの人のうんと考えた置換<平均的エンジニアの容易想到な置換のとき、平均的エンジニアが容易想到ならば常に侵害となる。
判断時期
出願時説VS侵害時説
置換の作用効果の容易想到性?(化学物質等においては置換の結果が予測できない?)
二つの理念型
クレーム内容の解釈過程としての均等論
均等論は、権利の周縁を確定する手続きである
特許法の不正競業法的な要素(特許制度の秩序を守るための道具)としての均等論
競業法的考慮を多く持たせる
特許法の性格は、競業法的か物権法的か。
⑤ 1997.6 裁判実務体系27知的財産関係訴訟法
P.425
牧野利秋「特許発明の技術的範囲確定の問題点」(No.13
均等の範囲を「当業者にとって自明と認められる実質的同一の範囲とする」か
「特許発明から当業者が容易に相当できる程度とするか」
特許発明の保護が当該発明の有する出願当時の技術水準に対して有する前進の幅、すなわち、実質的価値に即応して与えられるべきものである以上、公知技術から遠く出ない程度の発明が多数並列して特許されている状況では、特許請求の範囲の解釈の枠を超えて、均等論により保護を与える必要がある場合は少なくなるであろうことは明らかである。
↑単項クレーム制の弊害
⑥ 2001.12.10 新・裁判実務体系4知的財産関係訴訟法
P.158
森義之「特許発明の技術的範囲の確定」(No.14
P.182
「侵害訴訟における均等の法理」(No.15
⑦1985.6 『裁判実務体系9 工業所有権法』
P.91
牧野利秋「特許発明の技術的範囲の確定についての基本的な考え方」(No.16
一.特許発明の技術的範囲の意義
「特許発明の技術的範囲」=特許権の効力の及ぶ客観的範囲
→特許発明として保護される技術 と 一般第三者の自由に残された技術 とを明確に区別するためのもの
二.特許請求の範囲と技術的範囲
特許法70条の立法趣旨→A:特許発明が特許権により保護を受ける範囲は特許請求の範囲に記載された内容に限定されることを法文上において明確にすること
特許権者と一般第三者の利害の調和
B:特許請求の技術的範囲は発明の詳細な説明及び必要な場合に添付される図面の記載によって基礎付けられていなければならない(特許法36条、49条)
特許請求の技術的範囲の確定にはABを十分考慮する必要がある。
そのほかにも公知技術等々
四.特許発明の技術的範囲の確定
方法
特許請求の範囲の内容と特定された侵害態様とを比較
- 特許請求の範囲の記載を構成要件ごとに分説し、これと対応する形で侵害態様の特徴を分説し、この対応する事項ごとに、両者を比較し、後者の特徴が前者の構成要件に該当する理由を説明するという方法がとられている。
- 侵害態様が特許発明の構成要件を一部でも欠く場合、その技術的範囲に属さない。
均等論=特許請求の範囲の記載の解釈から導き出される技術的範囲の確定によっては、発明の実質的価値に適合した保護を与えられないと判断される場合に、この実質的価値に適合した保護を与えることを目的とする理論
本質は、当該特許発明につき権利者と一般第三者のいずれを保護すべきかの利益衡量論
cf.先願主義
P.170
大橋寛明「侵害訴訟における均等論」(No.17
出願時説をとる理由
先願主義、公開主義の特許法は、置換自明性(置換容易性よりもっと容易)の判断時は出願時説をとらざるを得ない。
#認識限度論
を前提としているようだ。だから、出願当時に発明者が認識できなかったことに権利は及ばないという結論になる。(No.23参照)
出願時説をとるから、出願当時置換自明である技術を出願者が記載しななかったわけだから、その責めは出願者が負わなければならないということになり、結局均等論は否定されることになる。
⑧2000.01 『現代裁判法大系26 知的財産権』
69ページ
設楽隆一「均等論について」(No.18
P.85
牧野利秋「特許発明の本質的部分について」(No.19
P.101
田中伸一郎「日本とドイツ、イギリスの均等論についての比較」(No.20
P.122
井上由里子「日本とアメリカの均等論についての比較」(No.21
(1)アメリカにおける均等論の法理の発展の経緯
中心限定主義の特許法
↓←機能追加【権利範囲公示機能】
周辺限定主義の特許法@1870特許法
権利範囲の外延を規定する周辺限定主義により、均等論は「原理的な緊張関係に立」った。
1950年 Graver Tank事件
高岡 亮一 『特許のルールが変わるとき―知財大国アメリカを揺るがせた特許侵害事件「フェスト」』 (NO.22
松本直樹 「先発明主義」の内容
6.1 中心限定主義と周辺限定主義
クレームの解釈について、「周辺限定主義」と「中心限定主義」の対立ということが言われる([松本重敏]125頁)。周辺限定主義では、明細書、特にその中のクレームの記載によって権利範囲は完全に確定するべきものとされる。これに対して中心限定主義においては、完全なクレームの記載を出願人に求めることには無理があることを認め、保護範囲はクレームの範囲を越えて認められるべきものとする。
侵害訴訟の場面だけを見ると、周辺限定主義よりも中心限定主義の場合の方が、クレームに比しての権利範囲が広いことになる。
しかし、特許権の成立からその行使までの手続を通して見た場合の“ある発明に与えられる保護の大きさ”という観点では、中心限定主義の場合の方が保護が大きいとは限らない。特許権の成立までのところで“どれだけ広いクレームが得られるか”によって、どちらの場合の方が“発明に与えられる保護”が強力であるか、は変わってくるからである。
6.2 ヨーロッパにおける組合せ
ドイツでは、中心限定主義がとられていると言われる。
仮にこれが事実であるなら、それは、ドイツの特許付与手続においてはクレームによる権利範囲の限定は不完全なものとなってしまうことが前提とされているためではないか、と思われる。 ドイツは先願主義をとっているが、先願主義では一刻も早く出願しなければならないため、十分なクレームを求めるのには無理がある。そこで、侵害訴訟の場面では、クレームに必ずしも拘泥することなく侵害を認定することになる。 この“非拘泥”をもって中心限定主義と呼んでいるのではないか、というわけである。
この“権利範囲は後から確定させる”法制をより明確に採用していると言えるのは、旧フランス特許法である。旧フランス法の下で1969年1月1日前に出願された特許には、クレームが存在しない([国際争訟]256頁)。クレーム無しだったということは、“特許が認められるまでに権利範囲を確定させる”との考えがおよそ存在していなかったことを示している。
もっとも、この法制は侵害訴訟の被告にとって極めて危険性の高いものであり、これが不当であるために新法が制定されたとも見られるから、この説明には限界がある。しかし、少なくとも“特許の後に権利範囲を確定させる”という考えが存在し得ることを示していることは確かである。
6.3 米国の組合せ
これに対して米国では、発明時基準主義がとられているから、出願を急ぐ必要はない。そこで、十分に時間を費やして十全なクレームを作成することができる。
その十全なクレームを前提とするわけだから、侵害訴訟ではクレームの文言を重視して記載のとおりに権利範囲を画することにしても不当ではない。
アメリカの周辺限定主義は、「発明の定義としての特許請求範囲の記載を完全に記載することが可能であり、それは将来これに基づいて独占権を享受すべき出願人の負うべき当然の責任である、という認識に出る。」([松本重敏]126頁)と言われるが、そうした認識を成立させるための用意(あるいは努力)が「先発明主義」という形でそれなりにあるのではないか、ということである。
発明の開示は、発明者の主観的認識であるが、発明保護の範囲としては、aこの開示によって当業者がどのような技術までを認識するかを問題とする、当業者基準説(この考えでは、均等保護論となる)か、b開示明細書の記載は発明者の認識の表明であり、開示事項の範囲のみが保護されるとする、発明者基準説(この考えでは、認識限度論となる)か、という問題がある。
鈴榮特許綜合法律事務所・鈴江武彦 「アメリカ特許の実務 (改訂版)」2003.12 発明協会 (No.25
知的財産訴訟外国法制研究会【編】 「知的財産訴訟制度の国際比較―制度と運用について」 2003.07.17 商事法務(No.26
最終更新:2006年10月20日 01:07