pink-shion @story

アペリティフ(キールロワイヤル)


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  キール・ロワイヤル 

白ワインベースのカクテル「キール」をスパークリングワインで作ったものです。カシスの香りとグラスの中ではじけるスパークリングの泡が爽やかなカクテルで、アペリティフ(食前酒)として愛飲されています。

 エリコにやられた。密かに狙っていたケイオウのミノルくん。言おう言おうと思ってた矢先に、エリコと付き合い始めちゃったらしい。
 まったく!どうしてかわたしはタイミングが悪い。もしエリコが手を出す前に私が告白していたなら、きっとミノルくんはわたしと大喜びして付き合っていたに違いない。少しもったいぶりすぎたかな?わたしのほうが年上。って言ってもたった4つ。あの子とは2つしか変わらないのに。大事なのはなんていってもビジュアルいや顔なのに。
 確かにエリコは顔はそこそこ悪くない。でも、いつも西友で買った同じジーパンをはいてるし、襟周りがたるんだカットソーもたぶんワゴンセールかなんかで買ったに違いないような安物だ。もう二十歳を過ぎているのに、コンビ二コスメしか使っていない。わたしのSK=Ⅱを貸してあげただけで大喜びするような子だ。きちんと手入れしないと後で必ず後悔するよ。と教えてあげた。それに、とにかく下品によく食べるし、飲むし、男の子は口ではなんて言っていても結局おしとやかな娘を最後に選択するもの。そんなこともわからないのかな?どう見ても、わたしのほうがすべて勝っている。どう考えてもタイミング。そうタイミングが悪かったのね。

 昨晩は、わたしとエリコとミノルくんそして明治の沢野と4人で飲み会をした。わたしたちはアルバイト仲間。わたしはOLのほか家賃稼ぎのため。あとの3人は学生なのでお小遣い稼ぎと、わたしと3人とは状況が少し違っていた。本当ならホテルにラウンジで飲みたいが学生と一緒なので居酒屋ダイニングに行った。
 3人はわたしを姉さんと呼ぶ。いやな呼ばれ方だ。とくにエリコに言われるときは、背筋がぞっとする。2歳や3歳で感覚なんてそう変わらないし、何より4歳下のミノルくんを真剣に好きになっている。エリコはいちいち「姉さん、姉さん」と言って媚びてくる。居酒屋のダイニングバーなんて行きたくもないのに「おしゃれなお店知っていますよね。流石に姉さんだ~」なんて言ってくる。サイアク、ウザイ!
 エリコは下品にも安い日本酒を注文して、がばがば飲んでいる。サイアク。。わたしはといえばもちろんカクテル・・キール・ロワイヤルを注文した。キール・ロワイヤルは男の子を落とすときに注文するカクテル。。アペリティフ。いわゆる食前酒。これからの恋愛の行方を期待しつつお食事の前にいただくお酒。真紅の色が濃厚で細身のフルートグラスがより一層、自分の手の細さを強調してそのグラスを持つ女の子の繊細かつ弱弱しさを表現することができ、男の子がつい守ってあげたくなるそんなカクテル・・・
 運ばれてきた「キール・ロワイヤル」はクレーム・ド・カシスをシャンパンで割っただけあって気泡がはじけていて小さくわたしの手にはねた。はねた気泡が少し冷たかった。居酒屋なのでフルートグラスが三流なのが気になった。乾杯をするときも、グラスが割れるのではないかと不安だった。けど味は悪くなかった。
 そのあと気が付くとかなり飲んでいたようで、明治の沢野はトイレに行ったまま帰ってこないし、ミノルくんはとろんとした目でエリコばかりを見つめている。席順も悪かった。わたしがもしミノルくんの前に座っていたなら、ミノルくんはわたしのものになっていたはず。わたしがトイレに席を立ち、数分後に戻ってきたときにはすでにミノルくんはあの子に君と会えて僕はしあわせだとかなんとか耳元でささやいてくどいていた。そうか、ミノルくんは酔うとくどくタイプの楽なやつだったんだ。若い男の子にはよくあること。忘れていた自分の大失敗だった。途中で割り込んで入ろうかとも思ったが、この状態では負け試合になることは予想がついたので、居場所をなくしたわたしはトイレに行ったまま帰ってこない明治の沢野を心配するふりをして席を立った。
 そのあとは、終電がなくなりひとり暮らしのわたしのアパートに3人で場所をうつした。1DKと狭いので雑魚寝になった。男性を入れるのは初めてだ。ミノルがいるから、いいと思った。即、熟睡した明治の沢野。わたしも寝たふりをした。すると、ミノルくんはエリコに微かな声で何かささやいている。キスなのかHなのかは、わからなかったが、何か哀願している様子だ。エリコもまんざらではない様子で押し殺した声で甘く低く笑っている。話しのくわしい内容なんて聞きたくない。起きて「寝なさいよ~」なんてお姉さんぶるのも疲れるし、何よりそんなことをしても、顔が引きつってしまいそうであと「姉さんこわ~い」なんて言われるのも、退屈なので毛布にくるまってさらに寝たふりを決行した。すると、2人でそっと出て行ってしまった。朝になり、沢野がとぼけた顔で起きてきて仕方なくプレーンオムレツとトーストとコーヒーを作り、2人で無言で食べた。会話をする気にもなれないほど睡眠不足だった。わたしは、みんなからきれいだと言われる。洋服にも気を使い、肌の手入れも怠らない。体重増加にも気を配っている。でも、まだ男性からキスやHの哀願をされたことなど1度もない。結婚するまで守るつもりなどはなく、好きな人とならいつでも一緒になりたいと思っている。友達にはガードが固く見えるのではないか。というありがたいアドバイスもいただいたが、ガードをゆるくしてこの年で援交でもはじめるか・・なんてことも出来ないので、やはりこのままの自分で愛してくれる人を待つしかないようにも思える。

 それから、ミノルくんが大学卒業を待って2人は結婚した。ミノルくんのお父さんは社長で家を継いで収入もかなり安定している。ところが、4年後、離婚したといううわさを耳にした。エリコに別に好きな人ができたかららしい。とばったり会った明治の沢野から聞いた。明治の沢野はシャープに入社してシャープの沢野になっていた。やっぱり、エリコはサイアクの女だ。ケイオウのミノルくんをふるなんて、信じられない。わたしはといえばあれから3人ほどの男性が誘ってくれたりもしたが、それも食事どまりで以前のままの体で28歳になっている。どうしても、ケイオウのミノルくんと比較してしまうのだ。学歴は、顔は!収入は!なんてこと・・だから、どうしても一線を踏み切れなかった。プレーンオムレツを作ってあげたかったのはケイオウのミノルくんだけ。彼にだけ。
 やっぱり、あのときケイオウのミノルくんがわたしを選んでくれていれば、そんなふしだらなことをして離婚するような恥ずかしいことはしない。まず、不倫や離婚なんてまねわたしは絶対にしないのに。と思った。