2006/05/29
『人名の世界史 由来を知れば文化がわかる』 著:辻原康夫
2005 平凡社新書 207P
この名前というものが世界史上でとてつもなく厄介なものです。
気軽に手にとって読めはするものの、その複雑な命名法が数多いところから、
んんんっ、と頭を悩ませてしまうこと必至。
推奨度
★★★★
大見出し
「姓」とはなんだろうか 英語圏の姓 ヨーロッパ人の姓 キリスト教徒の洗礼名 東アジアの姓名 その他の地域の姓名
2006/05/28
『秘密結社の世界史』 著:海野弘
2006 平凡社新書 233P
ここ最近出版されている平凡社新書は面白いのが多いなぁ……と。
下の小見出しに知らない単語が無いようなら一人前。
今やこんな手軽な新書で概観できるようになっていいですね。
しかし、試しに秘密結社のサイトにアクセスしてみたら軽く噴いた。
推奨度
★★★★★
見出し
古代密儀宗教 イスラムの暗殺教団“アサシン” 死海文書とナグ・ハマディ文書 薔薇十字団 フリーメーソン イルミナティ
薔薇十字の復活 アメリカの秘密結社 秘密結社の復活 ナチと秘密結社 イルミナティ・パラノイア スカル・アンド・ボーンズ
カルトの時代 テロリスト・グループ 犯罪的秘密結社マフィア 中国の秘密結社 なぜ今、秘密結社なのか 秘密結社ファンタジー
ネットの中の秘密結社
2006/05/27
『教育方法・技術』 編:平野智美
1993 八千代出版 134P
どちらかというと理論的な内容の方が多くて、実践的な技術という点では乏しいのが残念。
推奨度
★★★★
大見出し
子どもと授業 現代の教授・学習理論 学校教育とカリキュラム 授業の設計 授業の展開 授業と教育メディア コンピューターと教育
新しい学校と教育方法の登場─モンテッソーリ教育、オープン・スクール 教育方法の課題
2006/05/26
『メルロ=ポンティ 哲学者は詩人でありうるか?』 著:熊野純彦
2005 NHK出版 118P
シリーズ哲学のエッセンス。
著者はこの副題が、奇異なモノと思われるかもしれない、というようなことを書いていませんでしたが、
私はそんなこと云われるまで全くサッパリ不思議とも思いませんでした。
それくらい、メルロ=ポンティという人は、ベルクソンと同様、詩的というイメージが強い。
いや実際そうなんでしょう。
フランス語を堪能できないのが悔しいところではありますが、彼らのリズムを味わいたいがために、
フランス語を少しでも勉強したいとは思うところです。
同じ現象学だといっても、フッサールやハイデガーよりも、
私は、レヴィナス、そしてそれにも増して一番好きなのが、メルロ=ポンティです。
本著は、本シリーズらしく、メルロ=ポンティ概説書というよりも、
一箇集中で詩的というテーマが深く探られていて、旨味がタップリジューシーに味わえます、ええ、マヂで。
推奨度
★★★★★
大見出し
哲学者は詩人でなければならないか? 経験に立ちもどること 身体へ立ちかえること 世界を取りもどすこと
哲学者は詩人でありえたか?
2006/05/25
『エリュトゥラー海案内記』 著:無名氏(エジプト在住ギリシア商人) 訳註:村川堅太郎
1993 中公文庫 310P
そのページの半分以上は厖大重厚な訳註からなっており、100頁ほどは村川氏の懇切丁寧な解説からなっています。
つまり、原文にあたいする訳のところはわずか40頁ほど。
短い文章に対して、病的とも思えるほどに実証に執心してこの本が訳され書かれたのは、何と戦中1944年。
ただただ感服敬服する想いで一杯です。
訳文のところは、一級史料であるとともに、マルコ・ポーロなんかと同様に、単純に面白いです。
あらゆる人に対してオススメの一冊。
これが絶版だなんて中公は狂ってると思います!!
復刊を切に望むッ!!
推奨度
★★★★★
2006/05/24
『畑村式「わかる」技術』 著:畑村洋太郎
2005 講談社現代新書 189P
それほど実践的な「技術」という感じではないですが、
分かるための心得というか心構えというか、いわば教育学でいうところのレディネス、
そういったものの必要性重要性がどれほどのものかを説いています。
推奨度
★★★★
大見出し
「わかる」とは何か 自分の活動の中に「わかる」を取り込む 「わかる」の積極的活用
2006/05/23
『<あいだ>の解釈学』 著:寄川条路
2006 世界書院 93P
解釈とは何か、事実が厳然としたものとしてあるのか、全ては解釈なのか、
事実があるとはどういうことか、解釈するとはどういうことか……。
事実と解釈の間の場をなるべく日常用語を用いて素手で探っていく、優れた解釈学入門書。
デリダの云う「コーラ」「と」、この「あいだ」という場の関係性なんかが気になってしまったり。
BC的には必要参考文献に挙げたい一冊。
推奨度
★★★★★
大見出し
解釈と事実─解釈学の問題 読む、書く、考える─解釈学の概念 哲学と宗教の<あいだ>─解釈学の実践
<対話>の解釈学─解釈学の歴史 <中洋>とグローバリズム─異文化解釈学の構築
2006/05/22
『講師・講演を頼まれたら読む本』 著:広野穣
1993 オーエス出版社 226P
ここでの講師とは、会社でちょっとやる講師であって、プロの講師ではありません。
まぁ、プロの講師を頼まれるというのは意味不明ですが……。
そういう意味では、プロの講師をやるにあたって、という本が書かれてもいいと思うのですが、
実践で学べってことなのでしょうか。
しかしそれを言い出したら、この講師講演というのも同じことなのでは、と思ってしまいます。
本の内容は無難に良いです。
推奨度
★★★★
2006/05/21
『好感度◎自己紹介』 監修:吉田照美
1999 大泉書店 206P
色んな状況を設定して色んなニーズに応えられるようになっています。
が、教育実習での自己紹介については書かれていませんでした。
まぁ、抽象していけば、どんなところに際しても普遍的に好感度高くなる自己紹介というのが見つかります。
推奨度
★★★★
2006/05/20
『近代市民社会の成立 社会思想史的考察』 著:成瀬治
1984 東京大学出版会 257P
存命の後期ヘーゲリアンであるマンフレート・リーデルは、ヘーゲリアンでもありますから、
この近代市民社会というのはヘーゲルによって理論的には生まれたのだ、ということを言いますが、
成瀬さんの本はヘーゲルにちょっと入ったところで終わってしまいます。
そういう意味では、本当に、成立というか成立前、夜明け前、という感じです。
社会思想を考える上では必読の文献かと。
「19世紀ヨーロッパの自由主義や社会主義の思想では「国家」と「社会」とが概念的に対置されたのと異なり、
かかるギリシア・ラテンの言語伝統にあっては、「市民社会」と「国家」が同一のものを表示していたのである。
そして、のちに詳論するごとく、このような旧い「市民社会」概念は、社会の身分制的構造が存続するかぎり、
18世紀にいたるまで生き延びた」
推奨度
★★★★
大見出し
身分的自由から市民的自由へ 古代・中世における「市民社会」概念 主権国家と家長権 国家権力と「良心の自由」
危機の克服としての社会工学 市民社会の自律 18世紀イギリスの道徳哲学 絶対主義と市民社会 独立生産者の「商業社会」
市民社会と人倫
2006/05/19
『「市民」とは誰か 戦後民主主義を問いなおす』 著:佐伯啓思
1997 PHP新書 201P
そもそも「市民」って一体何なんだよ、軽々しく使ってるけど空虚ジャン、って指摘はその通りです。
が、これに著者のイデオロギーが深く絡んでくるとなると話は別。
つまり5章まではいいのですが、5章から著者の政治主張が入ってくると、私は一気に受け付けなくなりました。
特に、湾岸戦争に反対しない立場でして、
しかもその論調が「嫌だから戦争はしない、というのは嫌だから」という感じなので……。
感情論批判というのは確かに納得できますが、感情論批判が感情論でどうするんだというのもありますし、
そもそもあんな警察気取りの行いを肯定するのはどうかと。
新書にしてはイイ問題の立て方だっただけに、残念で、評価の分かれるところであります。
推奨度
★★★
大見出し
21世紀は「市民の時代」か 戦後日本の「偏向」と「市民論」 「近代市民革命」とは何だったのか ポリスの市民、都市の市民
「祖国のために死ぬ」ということ 日本人であることのディレンマ
2006/05/18
『近代と反近代との相克 社会思想史入門』 著:的場昭弘
2006 御茶の水書房 57P
神奈川大学入門テキストシリーズ。
ブックレットで薄くて簡易。
よくある王道なギリシア、マキアヴェリ、ホッブズ、ロック、モンテスキュー、ルソー、マルクス……
というような流れとはちょっと違って、スピノザなんかを紹介しているあたりが美味しいです。
推奨度
★★★★
大見出し
近代と現代の意味 中世の思想 マキアヴェリの革命 近代の亀裂─スピノザとデカルト 民主政治の罠 マルクスとニーチェ
現代思想の諸問題
2006/05/17
『ヘーゲルに還る 市民社会から国家へ』 著:福吉勝男
1999 中公新書 208P
部分部分では著者のエピソードが入っていて一般向けですが、基本は専門論文的な内容です。
とにかくヘーゲルが苦手でして、相変わらず分かったような分からないような、です。
ヘーゲルに限らずドイツ観念論は全体的に苦手なのですが。
市民社会論そのものは何とか掴めましたが。
中心としているのは『法哲学』ではなくて、『講義録』を大いに参考にしているので、
ヘーゲルの「本心」というところにまで手が届きます。
推奨度
★★★★
大見出し
ヘーゲルと私 理性・自由・現実 市民社会論の展開 現実は理性的か 現代に生きるヘーゲル 現代における権利・正義論によせて
2006/05/16
『隠れたる神』 著:ニコラス・クザーヌス 訳:大出哲/坂本堯
1972 創文社 193P
論文三つ所収。
一つめの「隠れたる神対話」が10ページそこそこですが本著のエッセンスというか、
クザーヌスのエッセンスほとんど全て凝縮されている激濃な対話編ですので、
クザーヌスに興味ある人はまずこれを。
心の準備せずいきなり踏み込むとコイツは一体何なんだ、って思うこと必至ですが。
「(神は、)これ(言表されうるとともに言表されえないもの)でもありません。
なぜなら、神は矛盾の根radix contradictionisではなく、
むしろ、あらゆる根の前の単純性simplicitasそのものなのですから。
したがって、かれは言表されうるとともに言表されえないものeffabilis et ineffabilisでもある、
というこのことも言われるべきではないのです」
推奨度
★★★★
大見出し
隠れたる神についての対話 神の探求について 神の子であることについて
2006/05/15
『太陽の都』 著:カンパネッラ 訳:近藤恒一
1992 岩波文庫 184P
随分前に読んだきりなので再読。
すっげー面白いこといっぱい言ってますね、この人。
太陽市民は、つまりカンパネッラは日本人が嫌いだそうな。
「黒い色を物のかすのように毛ぎらいし、そのため、黒い色を好む日本人をひどくきらっています。
高慢は大罪とみなされていて、高慢なおこないはどれも、それを犯したのと同じ方法で罰せられます」
「この世界のほかにいくつもの別の世界が存在するかどうかは疑わしいと思っていますが、
いっさい存在しないと断言するのも狂気の沙汰だと考えています。
なぜなら、無なるものは世界の内にも外にも存在せず、無限の存在たる神は、無とは相容れないからです」
推奨度
★★★★
2006/05/14
『国家と市民社会の哲学』 著:吉田傑俊
2000 青木書店 210P
シリーズ現代批判の哲学。
ハイデガーや西田は、ここで国家論として取り上げるに、
は全体から見て難解すぎるというかちょっと不釣り合いな感じもしました。
20世紀以後になると、国家論ばかりで市民社会論としては明確には語られていませんね。
それだけ市民社会という語の概念が、国家以上にあやふやで定まっていないわけですが……
著者はマルクス好きなせいか、全体的にそちらの色が強いです。
まあ不当にマルクス主義が貶められているので何とか回復を、というのは分からなくもないです。
というより、全体的に国家論だとか社会論というのは、何だか古臭いというか色褪せている感じですので、
この現況はマズイですね。
推奨度
★★★★
大見出し
「国家と市民社会」の哲学的問題性 現代における国家と市民社会をめぐる状況 「国家と市民社会」の哲学史
20世紀国家主義哲学と市民社会 「国家」の哲学から「社会」の哲学に向けて
2006/05/13
『アリストテレス入門』 著:山口義久
2001 ちくま新書 222P
とことんややこしくて、
(単純に多岐に渡ってややこしいのみならず、彼の現今テキスト成立経過のせいもありますが)
分かりにくいアリストテレスを、よく一冊の新書で易しく書いてみせたものだと感心します。
アリストテレス入門は、そもそも数が無いですが、入門になっていないことが多く、
アリストテレスはどんどんと嫌いになるばかりですが、この入門書なら初学者に問題なく勧められます。
「彼[アリストテレス]は、先人たちの探求をも論拠にしながら、なぜという問いの答え方には四種類あるという。
これがいわゆる「四原因」の説である。
すなわち、
①質料(あるいは素材)としての原因(質量因)つまり当のものが何からできているかを説明すること、
②形相としての原因(形相因)つまり当のものが何であるかを説明すること、
③動(運動・変化)がそこから始まるという始原(始動因)つまり当のものが成立するための
動きや変化をあたえたものを説明すること、
④目的としての原因(目的因)つまり当のものが何のために成立したかを説明すること、
の四種類である」
推奨度
★★★★
大見出し
アリストテレス再発見 知への欲求 論理学の誕生 知の方法 自然と原因 実体と本質 現実への視点 生命の意味 善の追求
よく生きること アリストテレスと現代
2006/05/12
『「分かりやすい話し方」の技術 言いたいことを相手に確実に伝える15の方法』 著:吉田たかよし
2005 講談社ブルーバックス 177P
何だか回文のような名前の著者だなというのが初印象。
ブルーバックスなだけあって、概念図示がうまくていいです。
要は、その概念図を頭の中に思い浮かべて説明しろということです。
まあ単純には、何が言いたいのか、頭にビシッと言ってしまえばいいのですが。
推奨度
★★★★
大見出し
矢印メモで分かりにくい話し方の原因を探れ! 「要は何を言いたいんだ!」と言われないための、話の展開術
ちょっとした工夫で格段に分かりやすく話せるテクニック
2006/05/11
『アリストテレス─自然学・政治学』 著:山本光雄
1977 岩波新書 226P
著者急病のため未完のままになってしまった、アリストテレス解説の名著。
この勢いで形而上学もやって欲しかったです。
検索をかけてみると、その有名さに比して、
アリストテレスとして一冊にまとまっているものが極めて少ないことに驚きますが、
そうした稀少という点でも、またアリストテレス研究の碩学が著したという点でも、非常に価値の高いものです。
「したがって人間にとって真に善いものどもは窮極においては同じであっても、
それぞれの人間なりポリスなりにとって、目的とされる善いものは、場所、時、状況などの違いに応じて異なり、
その善いものを獲得する手段も手段の用い方も異なる。
だから窮極の善いもの(幸福)と現に目的とされている善いものとの関連を見失わず、
現在の目的を達成するための有効な手段を発見することは重要な仕事となる。
この重要な仕事もまた思慮に属する。
思慮は行為にかかわる徳であり、行為は目的を実現するためのものであるからである」
推奨度
★★★★★
大見出し
生涯と著作 自然学 政治学(倫理学を含む) 弁論術
2006/05/10
『書物雑感』 著:ポール・ヴァレリー 訳:生田耕作
1990 サバト館 43P
高すぎですよサバト館の本。
お手製なので仕方ないですし、生田氏の訳文を読めるので文句言えませんが。
というよりそもそも私は図書館派……。
「専ら純粋精神のみにこだわる態度くらい野蛮状態へ逆行しやすいものはない。
具体的な事柄を軽ろんじ、目に見えないものの中だけに停滞し、身のまわりの楽しみも要らないし、
安住の境地、快適な住居も欲しくないというわけだ。
精神主義者は、物質は邪悪なものであるか、さもなくば醜いものだという説にすぐさま賛成してしまう」
推奨度
★★★★
大見出し
書物 理想の書物 著名作家の蔵書 自筆原稿
2006/05/09
『1時間の講演・スピーチが上手にできる本』 著:八木健
2005 中経出版 190P
読めば少しは違うようになるかもしれません。
こればかりは気の問題なのでしょうか。
自信をつけるという意味では、読んだほうがいいのでしょう。
推奨度
★★★★
2006/05/08
『省察』 著:ルネ・デカルト 訳:山田弘明
2006 ちくま学芸文庫 306P
注解、解説、ラテン語索引、邦語索引が豊富な良訳書。
とにかく今さら私がどうこう言う必要もないくらいに有名な一冊。
今、新たに読むなら、岩波よりこちらの方がオススメでしょうか。
ただ、ちくま学芸なので値は張ります……中古で見つけたら一冊は持っていたいところですが。
以下定義より。
『省察』は、実のところ本文よりまずこの定義がとにかく重要なのではないかと思う次第。
「同じものでも、それが、われわれが認識している通りに観念の対象においてある場合、
観念の対象において形相的formaliterにあるといわれる。
認識している通りにではなくて、かえってこれを補うことができるほど大きなものである場合、
優越的eminenterにあるといわれる」
推奨度
★★★★★
大見出し
ソルボンヌ宛書簡 読者への序言 概要 第一省察 第二省察 第三省察 第四省察 第五省察 第六省察 諸根拠
2006/05/07
『できる人は声が違う! みるみる声をよくする本』 監修:福島英
2006 洋泉社 95P
発声のトレーニングの方法が色々と書かれています。
が、実際やってみてもどうだろうという気がしないでもないです。
やはり個体差が……。
推奨度
★★★★
2006/05/06
『ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊』 著:村上陽一郎
1983 岩波新書 192P
まずここまで手堅くペストを論じた一般書は日本語では無いかと。
そして村上氏一流の文章が冴えています。
面白く読めるペストの本として、最高峰です。
ペスト関連の本は色々読みましたが、コレ以上に一般向けとしてオススメできるものはありません。
副題があっても、何もヨーロッパだけに狭く縮こまっているわけでもありませんし。
推奨度
★★★★★
見出し
ペストの顔 古代世界とペスト ペストの記録 最初のペスト文学 ヨーロッパ世界の形成とペスト ペストのヨーロッパ 変る中世世界
黒死病来る 黒死病前夜 どこから来たのか 恐怖のヨーロッパ ボッカチォの描く世界 大流行の諸相 さまざまな病因論
黒死病以前の病因説 十四世紀の病因論争 なぜ伝染するのか 犠牲者の数 雨の降る日には糖蜜を 死者の推定
黒死病の残したもの 隔離政策の出現 ユダヤ人迫害 鞭打ち運動 黒死病以降 中世の崩壊 沈黙の祈り その後の大流行
2006/05/04
『文明の交差路で考える』 著:服部英二
1995 講談社現代新書 219P
一応、学問分野としては人文地理というものにあたるのでしょうか。
世界各地、シルクロードにはじまり、ヨーロッパ、イスラム、古代インドと、色々なところの文明交差を見ています。
面白いのは、イスラムのヨーロッパ包囲を「半月の陣」としているところ。
「実は、日本に鎖国があったように、西欧にも「鎖国」があったのです。
それはおよそ8世紀から16世紀に及ぶイスラムの「半月の陣」によるものです。
現在のトルコからペルシア湾、紅海両岸、北アフリカ全域を経てイベリア半島に達する半月が、北には冷寒帯、
西には海しかない欧州を包み、数世紀にわたる孤立の時代を作ったのでした」
推奨度
★★★★
大見出し
文明を結ぶ道 文明間の対話 文明をつなぐ見えない糸 自然環境と文明
2006/05/04
『世界史の構想』 編:板垣雄三
1993 朝日新聞社 243P
地域からの世界史シリーズ。
シリーズ最終巻ということで、これまでのシリーズを書いてきた著者達が、
いろいろな立場から「世界史」のヒントとなるものを語っていくという論集。
推奨度
★★★★
見出し
港からの世界史 東洋史学と世界史学 歴史教育と世界史 20世紀とは何だったのか 歴史の記憶と「世界」ビジョン
大阪・今里からの世界史 女性と植民地 地域と少数民族 世界史と遊牧民 クレオール文化の多様性 白豪主義の「予言」と現実
2006/05/03
『英会話・ぜったい・音読』 編:国弘正雄 指導:千田潤一
2000 講談社パワー・イングリッシュ 134P
中学3年の英語の教科書に掲載された面白めの文章を集めたもの。
なるほどこれらを音読筆写しまくれば、必然力が上がるだろうと思います。
英語力の上げ方が分からない、時間と労力にゆとりがある、という人は挑戦してみてはいかがでしょう。
推奨度
★★★★
2006/05/03
『理解社会学のカテゴリー』 著:マックス・ウェーバー 訳:林道義
1968 岩波文庫 124P
重要な概念を色々説明している著作ではあるものの、一般に読書するには厳しく退屈な部類にあたります。
ヴェーバーはドイツ語自体が悪文だらけなので、訳文も読みにくい。
しかし社会学上ではものすごく重要な概念を色々と述べているので、必読文献のうちに入ってしまいます。
「理解社会学の固有の課題は、正確にいえば、
まず次のことを解明的に説明しなければならないということから、始まるのである。
すなわち、1・そうした特殊な遺伝質を与えられた人間が、
彼らの努力の内容──これはまた遺伝質によっても制約されたり、醸成されたりするが──を実現しようとしたときに、
彼らはそれを、客体──外界であれ、自己の内面の世界であれ──
に意味をもって関係させられたところのどのような行為によって実現しようとしたのかということ、
またどの程度まで何故にそれに成功したのか、または何故に成功しなかったのかということ、
2・さらには、この(遺伝財に制約された)努力が、意味をもって関係している他の人々の行為に対して、
いかなる理解しうる結果をもたらしたかということ、である」
推奨度
★★★
見出し
「理解」社会学の意味 「心理学」との関係 法解釈学との関係 「ゲマインシャフト行為」 「ゲゼルシャフト関係」と「ゲゼルシャフト行為」
「諒解関係」 「アンシュタルト」と「団体」
2006/05/02
『十七世紀科学革命』 著:ジョン・ヘンリー 訳:東慎一郎
2005 岩波書店 169P
ヨーロッパ史入門シリーズ。
相変わらず、参考文献・用語集・索引と、万端な優れモノシリーズ。
科学革命とは、科学の中で起こった革命ではなくて、現在の科学が誕生したものだ、という見方は優れて秀逸。
「われわれが考える科学が歴史的に発展してきた様を眺めるにあたり、
この「科学」という概念そのものがどのようにして生まれたかを理解することが、
われわれの目標のひとつであるべきだ。
「科学」があたかも常に存在しているように語ることは、論点先取以外の何ものでもない」
推奨度
★★★★★
見出し
科学革命と科学史の記述 ルネサンスと革命 科学的方法 魔術と近代科学の起源 機械論哲学 宗教と科学 科学と文化
2006/05/01
『アジアの歴史 東西交渉からみた前近代の世界像』 著:松田壽男
1992 岩波書店同時代ライブラリー 212P
原著は1971年刊。
35年も前のことだから事情が色々違うのでしょうけれど、
西洋中心主義から脱却をせんがためにアジアの意義を説くのはいいのですが、
それと同時に西洋をボロクソにこき下ろすというのはいかがなものかと思います。
一の価値を主張するのにもう一を叩くというのは感心できない、いや程度によりますが、それが結構鼻につくレベル。
ただ西洋に対する穿った見方を除けば本書が名著であることには確かです。
まあ、当時においては、これくらい西洋を叩かなければいけない状況だったのかもしれません。
「まことに、現行の世界史は、西欧と中国との、二つの一元世界の歴史の並列であり、寄合い所帯である。
譬えていうならば、旧大陸の東のはてに東洋史が坐り、西のはずれに西洋史が座を占め、
当然夫婦一体となるべき両史が、背中を向けあったままで、融合しようとする気配もなく、
その中間の広大な部分を、風が徒に吹きぬけているにすぎない。
これでは、とうてい「世界史」という一家は生まれないではないか。
最近になって、ようやく教科書などではこの空白の地帯からイスラームをとりあげて、いくらか触れるようになった。
しかしそれは、この夫婦とは全く関係のない子供をつれてきて、ただ坐らせておく程度にすぎない」
推奨度
★★★★
見出し
世界史とアジア 歴史と風土 アジア史の基礎 黄土の文化 中国の北と南 インド文化のひろがり 海洋に生きる人たち
地中海という世界 イラン文化のかがやき アジアの十字路 西域の文化 漢民族の栄光 絹馬の交易 ステップの道
トルコ=イスラーム 世界史の転換