2006/06/30

『憲法はむずかしくない』 著:池上彰

2005 ちくまプリマー新書 189P

これぞ憲法入門!!

と太鼓判を押してオススメできる一冊です。

今まで読んできたのは、憲法一般論だったり、法哲学であったり、改憲のススメだったり「護」憲のススメだったりと、

日本国憲法入門と呼べるようなものは無かったのですが、これはまさしく間違いなくソレ。

とにかくプリマー新書というだけあって、すんなり読めるので、中学三年生あたりからオススメ。

推奨度

★★★★★

大見出し

憲法があって初めて国家がある 日本国憲法はこうして生まれた 日本国憲法を読んでみよう

第九条が常に争点になってきた 憲法は変えるべきなのか?

 

2006/06/29

『可能現実存在』 著:ニコラウス・クザーヌス 訳:大出哲/八巻和彦

1987 国文社 280P

本分自体は100Pちょっと。

注釈に100P以上という浩瀚さに、日本の西洋中世哲学水準が高いと言われる所以を垣間見ました。

相変わらずクザーヌスさんは難しいというか、いやクザーヌスからしたら単純な一本道なのでしょうが、

読む側からすると分かりにくい、ヤスパースの解説でも読んでみようか……。

とりあえず、本著は晩年の著作なので、隠れてる神様を論じたそれまでの著作にあたってから、

こちらにぶつかってみるのがよろしいかと。

クザーヌス枢機卿含めた三人の対話編です。

「あらゆる<現実存在者>existensは、

<現実に存在するところのもの>id quod est actuであることが可能であるのですから、

このことから私たちは、

<絶対的な現実性>actualitas absoluta──<現実に存在しているところのものども>(ea)quae actu suntが、

それによって<現に存在しているとおりのもの>id quod suntとして存在することになるそれ──を認知します。

例えば、私たちが感覚的な目によって白いものを見るとき、

それがなければ白いものが白いものでなくなる白さalbedoを知性的にintellectualiter洞察しているのと同様です。

それゆえ、現実性が現実に存在するときには、その現実性はたしかに、存在可能でもあるのです。

 というのは、<存在不可能なもの>impossibile esseは存在しないはずですから。

また絶対的な可能性自体は可能posse以外のものではありえません、

ちょうど、絶対的な現実性も可能態actus以外のものではありえないようにです」

推奨度

★★★★

 

2006/06/28

『知の扉を開く 教育における知性の質を問う』 著:D.M.スローン 監訳:市村尚久

2002 玉川大学出版部 148P

日本に於ける三回の講演を手直ししたものと、論文一本掲載。

論文はデューイについてなのですが、

一脈通ずるところがあるなあと思いながら読んでいたら、思った通りに出てきましたマイケル・ポランニー。

デューイの「知」論とポランニーの暗黙知は、比較論文なんかありそうですね。

「われわれは、現象のなかにあまりにも性急にわれわれ自身の先験的な概念、

思考モデル、理論や説明といったものを投入してはいけない」

推奨度

★★★★

大見出し

知の扉を開くこと─意味の質と優位性 知の変革と地球の未来 全的存在としての人間教育

デューイの「経験的現象の救出」へのプロジェクト─その教育と倫理への示唆を探る

 

2006/06/27

『留魂録』 著:吉田松陰 全訳注:古川薫

2002 講談社学術文庫 217P

というわけで読みました、松陰の遺書。

大部分が訳者の解題+松陰史伝で、松陰の『留魂録』部分はほんの僅かというつくり。

『留魂録』をよく理解するための素晴らしい文庫に仕上がっているといえます。

留魂録第八章が特にオススメ、せっかく日本語母語の生まれであるのにこれを読まずして死ねるか、という感じ。

しかし引用文は最終章より。

「心なることの種々かき置きぬ思ひ残せることなかりけり

呼びだしの声まつ外に今の世に待つべき事のなかりけるかな

討たれたる吾れをあはれと見ん人は君を崇めて夷払へよ

愚かなる吾れをも友とめづ人はわがとも友とめでよ人々

七たびも生きかへりつつ夷をぞ攘≪はら≫はんこころ吾れ忘れめや」

推奨度

★★★★★

 

2006/06/26

『J.デューイ』 著:山田英世

1967 清水書院 186P

センチュリーブックス人と思想。

超有名にもかかわらず、不思議なことに最近はほとんど単著が刊行されないデューイさん。

そんな彼を手軽に読むなら、やはりこの定番シリーズ。

アメリカという国について、生涯、そして思想と、バランス良くまとまっています。

生涯のうちに、かなりデューイの思想が述べられはしますが、

まぁ思想家の伝記なわけですから、まったくの別物として切り離せるわけはないでしょう。

出版年が多少古かろうと、今でも十分通用します。

逆に言えば、これ以降、デューイについてはそんなに教育学以外で研究が進んでいないということなのですが。

推奨度

★★★★

大見出し

精神的風土 ジョン=デューイの生涯 ジョン=デューイの思想

 

2006/06/25

『美女の歴史』 著:ドミニク・パケ 監修:石井美樹子 訳:木村恵一

1999 創元社 158P

知の再発見双書。

今まで何となく敬遠していたこのシリーズ、図版たっぷりで物凄く良いですね、色々漁ってみようかと思います。

特にこの美女~なんてのは、図版入りでなければ読む気も理解度も半減してしまうことでしょう。

読んでいた中で再確認、やはりヴィジェ・ルブランは良い。

推奨度

★★★★

大見出し

古代世界の美容術 中世の妖精たち バロックの輝き 自然から反自然へ 健康な肉体と現代の美

 

2006/06/24

『憲法とは何か』 著:長谷部恭男

2006 岩波新書 193P

日本国憲法とは何かではなくて、一般的に憲法とは何かを論じている本……とも少しズレています。

どちらかというと、

海外の理論家を紹介しつつ著者なりの立憲主義論、

法思想・法哲学もしくは政治論を述べたものといった方がいいかもしれません。

期待していた内容からだいぶハズれたので素直には読めなかったのですが、

例えばバーリンの価値多元論なんかを引っ張ってきているあたりは好評価。

ただやはり全体としての主題がちょっとぼやけ気味かなというのが残念なところ。

論文集だと思ってしまえば何ら問題無いところですが。

推奨度

★★★

大見出し

立憲主義の成立 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利 立憲主義と民主主義 新しい権力分立?

憲法典の変化と憲法の変化 憲法改正の手続 国境はなぜあるのか

 

2006/06/23

『グリム兄弟 知られざる人と作品』 著:ベルンハルト・ラウアー 訳:清水穣

2006 淡交社 93P

グリム兄弟ってグリム童話の編纂者でしょう?……

と、だけしか知らない人にまずお勧めしたいのがこちら。

図版が半分ほどを占めていて、分かりやすく、さすが博物館館長が書いただけあるという一冊。

これなんかはもう、是非読んで下さいとしか言えません。

推奨度

★★★★★

大見出し

ドイツの童話かヨーロッパの童話か 民間伝承か芸術作品か 言語と文学 学術研究の責任について

ヨーロッパ全域に拡がる文献学 グリム兄弟の遺産

 

2006/06/22

『誤りから救うもの』 著:ガザーリー 訳:中村廣治郎

2003 ちくま学芸文庫 210P

また素晴らしいものを出版してくれるものです、筑摩は。

全てを懐疑していき理性までをも疑うというのは、デカルトを思わせますが、何と彼より500年も前の人。

三次方程式も、デカルトよりそのくらい前のイスラムで考案されたのだから、

よくよくイスラムに対してはカタナシなデカルトです。

が、ガザーリーがコギトのところに行き着くことはなく、全ての土台は神の恩寵だというところに辿り着きます。

そこからは、今度はヨーロッパの神秘主義な匂いがしてきたり。

触覚にとっては色や匂いは存在しないも同然、なんてくだりは、クザーヌスを思わせます。

まあ、アルガゼルとしてラテン語で知られていたので、結構色んな人達に影響を与えているのかなと。

面白いこと言っているところから引用しましょうか。

「人間の本質はその生得的本性においては、空無にして無垢につくられており、

そこには至高なる神の諸世界についての知識は何もない。

世界の数は多く、神以外には誰も幾つあるか知らない──」

「人間の世界についての情報は、知覚を通してのみ与えられるものであり、

知覚はすべて人間が存在の世界を知るためにつくられるのである。

諸世界とは、さまざまな種類からなる存在のことである」

推奨度

★★★★★

大見出し

真理の探究 懐疑と知識の否定 真理探究者の種類 啓示の本質とその必要性 引退後に再び教鞭をとった理由

 

2006/06/21

『いのちの日記 神の前に、神とともに、神なしに生きる』 著:柳澤桂子

2005 小学館 127P

限りなく5に近い推奨度という感じ。

個人的にどうしても受け入れられないところがあるからという、至って主観的なもの。

というより、惹かれる人は惹かれ過ぎてしまうからというのが大きいからかも。

にしても、読んで欲しい本であることには違いありません。

推奨度

★★★★☆

大見出し

出産 研究者としての日々 最初の手術 再入院・解雇 神秘体験 二度目の手術 三度目の手術 信仰への渇望

宗教の独学 「神秘体験」はどうして起こるか 人はいかにして「悟り」に至るか こころにリアリティー(真実)を取り戻そう

神の前に、神とともに、神なしに生きる 神は脳の中にある 「粒子」という考え方 “尊厳死”を決意した日 その後

 

2006/06/20

『四角形の歴史』 著:赤瀬川原平

2006 毎日新聞社 117P

赤瀬川原平のこどもの哲学大人の絵本シリーズ。

素晴らしい哲学の絵本、子どもができたら絶対読んであげたいと思える一冊。

記憶に留めておこう、絶対忘れないようにしよう。

「考えたら、現実世界に余白はない。

必ずどこかに何かがある。

土があり、草が生えて、木があり家があり、何かがある。

空には何もないけど、青い。

ぐるりと見回すと、どこにでも何かが見えている」

推奨度

★★★★★

大見出し

風景を見る 絵の歴史 もっと昔の絵の歴史 四角形の歴史 四角形と犬

 

2006/06/19

『吉田松陰と現代』 著:加藤周一

2005 かもがわ出版 62P

かもがわブックレット。

2004年の講演をもとに加筆訂正したもの。

というわけで、難しい表現も特に無く、読みやすいです。

松陰がどんな人でどんな影響を与えたか、軽く知りたい人にはお勧め。

松陰の思想を知りたい場合は、やっぱ直接読むのが一番かと思います。

講談社の学術文庫から二冊出てました、確か。

佐藤一斎-佐久間象山-吉田松陰は好きなので、私もそのうち読む予定。

推奨度

★★★★

大見出し

松陰とその時代背景 明治維新の現代的意味 質問に答えて 〔付〕吉田松陰と1830年の世代

 

2006/06/18

『暗黙知の次元』 著:マイケル・ポランニー 訳:高橋勇夫

2003 ちくま学芸文庫 194P

非常に読みやすい訳で、血と涙と汗の結晶という感じがヒシヒシとしてきます、労作。

ゲシュタルトとはまた違う、どちらかというとベルクソンのエランヴィタール的な概念で、

暗黙知ということを唱えているのがこのポランニー。

これこれこういうものだと説明するのが難しいので、wikiでも何でも調べてみるのが早いかと思います。

ただ、暗黙知はそれでもまだ分かりましたが、創発になってくるとこれがまたよくワカランです。

三章は、科学者論というか科学論というかで、一番アッサリしていて読みやすい感じ。

「私たちは、暗黙的認識において、遠位にある条件の様相を見て、その中に近位の条件を感知する。

つまり、私たちは、A(=近位項)からB(=遠位項)に向かって注意を移し、Bの様相の中にAを感知するのだ。

これは暗黙的認識の「現象的構造(phenominal structure)」とでも言うべきものだろう」

推奨度

★★★★

大見出し

暗黙知 創発 探求者たちの社会

 

2006/06/17

『仏陀からキリストへ』 著:ルドルフ・シュタイナー 訳:西川隆範

1985 書肆風の薔薇 184P

二年以上ぶりのシュタイナー。

ああ、シュタイナーだなあ、としみじみ。

仏陀が火星に行って霊を改心させ云々とか、トンデモねえ話が大真面目に出てくるところが最高。

とはいえオフザケな本というわけでもなく、シュタイナー思想の哲学的な面白味ももちろんあります。

もちろん、随所にはキラリと輝く文章が鏤められています。

「仏滅後6世紀を経て、洗礼者ヨハネの口を通して仏陀の言葉を私たちは聞きます。

このやうに、宗教は一つなのです。

私たちはそれぞれの宗教を、人類の進化の経過の正しい位置に於いて考察し、

それぞれの宗教の中に、死んだものではなく、生きたものを探求しなければなりません。

全ては発展しつづけます。

このことを理解し、把握しなければなりません」

「真理を「簡単な」ものにしたいと思ふのは、多くの概念を形成したくないといふ怠惰です。

偉大な真理は非常な精神力を以つてのみ考察され得ます。

機械を作るのにさへかなりの労力を要するのですから、

真理が容易に把握できるものであるべきだと望むのは正しいとはいへません。

真理は偉大であり、それ故に、込み入つたものです」

推奨度

★★★★

大見出し

仏教とルカ福音書 仏陀と洗礼者ヨハネ 仏陀と西洋哲学 仏陀とキリスト 十二菩薩 弥勒菩薩 仏陀と死者の世界

弥勒菩薩とエッセネ派教団 仏陀と薔薇十字会 仏陀と意識魂 仏陀と水星 禅定仏、菩薩、仏陀 十二因縁 五蘊 三身

八正道 オーム(アウム)

 

2006/06/16

『哲学的フットボール』 著:マーク・ペリマン 訳:見田豊

1999 日経BP社 205P

まず、何この人選!?

そして次に、何この内容!?

サッカーがもっと分かればもっと笑えたんだろうなあというのが少々悔し。

しかしサッカーだけやっていてこれら登場人物について知らないと、何も面白くはないだろうと思います。

どんな人となりかを知るには、意外に適しているかもしれませんが。

やっぱりというかなんというか、ニーチェが一番オススメ。

グラムシがインサイドレフトなのは噴いた。

推奨度

★★★★★

大見出し

≪ゴールキーパー≫アルベール・カミュ ≪ライト・バック≫シモーヌ・ド・ボーボワール ≪レフト・バック≫ジャン・ボードリヤール

≪プレー・メーカー≫ウィリアム・シェークスピア ≪セントラル・ディフェンダー≫フリードリッヒ・ニーチェ

≪セントラル・ディフェンダー≫ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン ≪アウトサイド・ライト≫オスカー・ワイルド

≪ミッドフィールド・ジェネラル≫孫子 ≪センター・フォワード≫ウンベルト・エーコ ≪インサイド・レフト≫アントニオ・グラムシ

≪アウトサイド・レフト≫ボブ・マーリィ

 

2006/06/15

『映像の修辞学』 著:ロラン・バルト 訳:蓮實重彦/杉元紀子

2005 ちくま学芸文庫 162P

やっぱりバルトは良いなあ、と。

論文、対談、三本収録。

特に、最後の対談が一番オススメ、口語なので表現が直接的でバルトの考えがよく伝わってきます。

「すべては意味を持っています。

無意味でさえも(少なくとも無意味であるという第二の意味を持っています)。

意味は人間にとって宿命ですから、自由であるかぎりにおいて芸術はとりわけ今日、

意味を作り出そうとするのではなく、逆に意味を宙づりにするのに熱心になっているようです。

意味を組み立てようとしている、意味を正確に満たさないようにしているということです」

推奨度

★★★★★

大見出し

イメージの修辞学 写真のメッセージ 映画について

 

2006/06/14

『三訂 憲法入門 補訂版』 著:樋口陽一

2005 頸草書房 198P

憲法の具体的な条文を解説していくだとか、通俗的な入門書だとかではなく、

憲法の成立やその周辺的なところから、憲法のあり方を語っていくという体裁。

なので、憲法を直接的に知るにはこれでは不足するでしょうけれど、まぁ、

一口に入門といっても色々無ければならないでしょうから、

これは一つ手堅く無難な見方の良い入門書だと思います。

推奨度

★★★★

大見出し

憲法から見た「東西」と「南北」 日本の近代にとって「憲法」とは なぜ「国民主権」なのか なぜ「平和のうちに生存する権利」なのか

なぜ「人権」なのか 政治的権力からの人権と社会的権力からの人権 思想・信仰と教育 表現の自由 経済的自由と社会権

選挙権と代表 中央の政治と地方の政治 公正な裁判と裁判の独立 違憲審査の積極主義と消極主義 憲法改正と憲法擁護義務

 

2006/06/13

『まずはここから! やさしいフランス語 カタコト会話帳』

著:藤井秀男 監修:マリー=クリスティーヌ・ジュスラン

2006 すばる舎 159P

そのまま下のドイツ語と同シリーズ。

やっぱり簡単な一言集で気軽にチャレンジできるでしょう。

推奨度

★★★★

 

2006/06/12

『まずはここから! やさしいドイツ語 カタコト会話帳』 著:藤井秀男 監修:エルフリーデ赤池

2005 すばる舎 159P

こういった簡易な一言集は、英語なんかは大量に出版されているのですが、

他言語となると数がめっきり減るので、もっとどんどんと増えていって欲しいところ。

推奨度

★★★★

 

2006/06/11

『ルイ・イカール アール・デコの女性たち』 編・文:島田紀夫

1998 河出書房新社 123P

小さな美術館シリーズ。

現在の「漫画」的な絵に結構近いように思えます。

『いたずらなオウム』なんてかなり萌えな感じだと思うのですがどうでしょう。

推奨度

★★★★

 

2006/06/10

『世界図絵』 著:J.A.コメニウス 訳:井ノ口淳三

1995 平凡社ライブラリー 385P

ラトケに続いて近代教育学の始祖といわれるコメニウス。

この「絵本」教科書が、後世にどれだけの影響を与えたことか。

それと同時に、コメニウスの言語観というか、自然観というか、認識論というのもよく分かります。

モノと名前が一対一の名詞偏重があるところは仕方ないのですが、

しかし、これが多くの国々で翻訳されたことを考えるあたり、

既にそこにはシニフィアン/シニフィエの萌芽が見られなくもない……?というか、気づいた人はいる……?

どうでしょ。

推奨度

★★★★★

最終更新:2007年08月27日 21:56