2006/07/31

『イデオロギーとしての技術と科学』 著:ユルゲン・ハーバーマス 訳:長谷川宏

2000 平凡社ライブラリー 225P

ハーバーマスの初期論文集。

文章が(元々)こなれていませんし、まだまだ成熟してはいませんので、

ハーバーマスを深く知ろう、もしくはハーバーマスのヘーゲル論・ウェーバー論などを知ろうというのでなければ、

特にはオススメしません。

中でも一番楽しめたのは、技術の進歩と~で、それ以後もそこそこ読みやすい。

ただ前二本は読んでて眠くなることしばしばでした。

推奨度

★★★

大見出し

労働と相互行為 <イデオロギー>としての技術と科学 技術の進歩と社会的生活世界 政治の科学化と世論 認識と関心

 

2006/07/30

『百頭女』 著:マックス・エルンスト 訳:巖谷國士

1996 河出文庫 373P

惑乱、私の妹、百頭女。

推奨度

★★★★★

 

2006/07/29

『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』 著:マックス・エルンスト 訳:巖谷國士

1996 河出文庫 242P

夢、終わる。

推奨度

★★★★★

大見出し

カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢 M.E.の青春についての若干のデータ ウィスキー海底への潜行

 

2006/07/28

『メディア社会 現代を読み解く視点』 著:佐藤卓己

2006 岩波新書 221P

もともとは連載ものの50編を収録。

立場は似たようなものでも姿勢が根本的に合わないと感じられました。

あくが強いので本当読む人によりけりの評価になるかと思います。

そこまで現代を読み解くって感じはしなかったですが……。

堀江を虚業と非難しているワイドショーのお前等の方が虚業だろ、っていう指摘には大いに同意。

推奨度

★★★★

大見出し

メディア社会で「自然」に生きるとは 「メディア」とは何か 「情報」とは何か メディアと「記憶」 ジャーナリズムを取り巻く環境

変わる「輿論」と世論調査 メディア政治とドラマ選挙 メディアの文化変容 テレビのゆくえ 脱情報化社会に向けて

 

2006/07/27

『(はじめての)憲法総論・人権 第2版』 著:尾崎哲夫

2004 自由国民社 169P

3日でわかる法律入門シリーズ。

二色刷でレイアウトも整っていて、読みやすく3日といわず1日で軽く読めてしまいます。

総論と人権のみに絞って統治の方は別冊。

こちらだけを学びたい、という人には、こうして分けてある方が親切ですね。

付録にはポツダム宣言と日本国憲法が対訳で載っています。

推奨度

★★★★

大見出し

「憲法」って何だろう? 国民主権 平和主義 基本的人権 包括的基本権 精神的自由権 経済的自由権 人身(身体)の自由

国務請求権・参政権 社会権

 

2006/07/26

『憲法(2)基本的人権I 第3版』 編:阿部照哉/池田政章/初宿正典/戸松秀典

1995 有斐閣双書 248P

憲法を全四巻で体系的にきっちりと詳説しているうちの一冊なだけあって、

中味はものすごく濃いです。

正直濃すぎて入門として読書するには向いていませんが、

まったく退屈なものというわけでもないあたりが好感。

本当にいい仕事していますね!という感じなのですが、堅実すぎてコメントに困るというのも。

10年ほど前のものなだけあって、古い点もちょこちょことあります。

推奨度

★★★★

大見出し

基本的人権の歴史 基本的人権の理論 包括的基本権 精神的活動に関する基本権

 

2006/07/25

『今さら他人には聞けない日本国憲法』 監修:加藤晋介 編著:日本の常識研究会

1997 KKベストセラーズ 254P

下と同じく、法に関してはこういった雑学然としたものは本当にありがたいです。

おそらくモノによるのでしょうが、これもまた中立的な立場で明快に憲法を解説しています。

右ページに条文、左ページに要約と理解を深めるための解説、という体裁になっています。

条文は何度も読んでいる、要は解説を見たいんだよ、という人は、

左ページだけを読み進めていけばいいというわけです(偶にページが続いて見開きになる時もありますが)

推奨度

★★★★★

大見出し

前文 天皇 戦争の放棄 国民の権利及び義務 国会 内閣 司法 財政 地方自治 改正 最高法規 補則

 

2006/07/24

『図解雑学 六法』 著:三木邦裕/豊田啓盟

2003 ナツメ社 228P

ナツメ社の図解雑学シリーズは名著が多くてありがたいです。

いやはや知らないことが多くて色々と興味深く読めました、やはりこの図解つきというのがとにかく高得点です。

読み始める時は苦手意識たっぷりでも、スラスラと読めていけます。

そしてさらに、まったく中立的な立場(私がそういう風に見ることができry)なのが何よりです。

法を専門に勉強するのでなければ、こういった雑学書で学ぶ方が、

中立公正に見ることができていいんじゃないかとまで思います。

しかし恥ずかしながら、商法が民法の特別法だったとは知りませんでした。

こう、並んでるものだから、対等なモンかとばかり……

推奨度

★★★★★

大見出し

6種類の重要かつ基本となる法六法 あらゆる法の基礎となる日本国憲法 身近なトラブルを解決する民法

あらゆる商いに関する法律商法 人々の利害衝突を裁く民事訴訟法 犯罪と刑罰を定めた刑法

犯罪者の処罰までの決まりごと刑事訴訟法

 

2006/07/23

『日本の憲法 第三版』 著:長谷川正安

1994 岩波新書 230P

何だか明らかに入門向けという形をとっていながら、中味は入門向けではなくて、

著者の自己満足で終わっているという感じがものすごいします。

ずっと上からモノを言われ続けている感じがして嫌でした。

後は話題が、その時々の時事問題に限っていることが多くて、そのあたりも古臭く感じられます。

推奨度

★★★

大見出し

憲法を考える 天皇と国民 戦争と平和 権力の集中と分立 国民の権利と義務

 

2006/07/22

『早わかり日本国憲法』 著:小林武

2005 かもがわブックレット 64P

中立的な立場で、深くはつっこまずに、憲法の条文+その解説という構成になっています。

何かに偏ったりしていませんので(私が中正で見られているのであれば)、

入門にはこれが一番のように思えます。

ただ表紙の写真はちょっと見苦しいです(失礼か)

推奨度

★★★★

大見出し

前文 天皇 戦争の放棄 国民の権利及び義務 黒海 内閣 司法 財政 地方自治 改正 最高法規 補則

 

2006/07/21

『憲法への招待』 著:渋谷秀樹

2001 岩波新書 219P

いかにも教科書、という感じではない読み物としての入門書だからか、グッと読みやすいものに仕上がっています。

読んでいて普通に面白いと思えました。

24の、「~か」「~なぜか」「~できるか」という小見出しをつけていて、興味を惹く形になっています。

部分部分のところは少々特定アジア日和見なところがあるのが残念ですが、

「卑猥」についてやその他諸々のところについての批判は、よく言ってくれた、と思えます。

ここぞという絶妙なところでロックやモンテスキュー、そrねいミルの名が出てくるのも好感。

推奨度

★★★★

大見出し

憲法とは何か 人権は誰の権利か 人権にはどういうものがあるか 政府を形づくるルールとは 政府の活動はどのようなものか

 

2006/07/20

『これだけは知っておきたい! 高校生の憲法・刑法』 著:尾崎哲夫

2005 自由国民社 185P

対話体で、さらに各章に設けられているまとめが分かりやすくて便利でよいです。

どちらかというと、教科書のサブとしての参考書のような感じでしょうか。

しかしいたく痛感するのは、やっぱり条文は読みにくいということ。

何ですかこの気持ち悪い阿呆訳体は。

推奨度

★★★★

大見出し

憲法総論 基本的人権 統治機構 刑法総論 刑法各論

 

2006/07/19

『対論 改憲護憲』 著:中曽根康弘/宮澤喜一

1997 朝日新聞社 207P

ここで話していることが本当に本音であれば、この二人、本当に食えない人達ですね。

いわゆるフツーの改憲派・護憲派とは全然違いますね。

これくらいの独自意見を持っていて、それをガンガンぶつけて議論していくのなら、

それはそれで面白いと思うのですが、

こんなシニカルでアイロニカルな議論できる政治家は、下の世代にはいないでしょう。

やれ侮辱だの何だのと、すぐにつまらないことで怒り出す、まったく下らない。

内容はもちろん批判的視点さえ忘れなければ、両者にかなりの賛同部分と否定部分が見られることかと思います。

推奨度

★★★★

大見出し

改憲か護憲か 憲法で火花を散らした頃 安保体制と憲法 九条と集団的自衛権 アジアの目 政界再編と憲法

 

2006/07/18

『映画日本国憲法読本』編:島田惣作/竹井正和

2005 FOIL 266P

吐き気がするほど気持ち悪いようなことを言っているところと、なるほどその通りだと納得できるところとで、

差が激しいです。

日本国憲法っていう映画のシナリオと、そのシナリオに使ったインタヴュー集が載っています。

チョムスキーはおおむねその通りのことしか述べていませんね。

思っていたよりは楽しめた感じです。

読むときは批判的視点を忘れずに。

推奨度

★★★

大見出し

映画採録シナリオ ジョン・ダワー ノーム・チョムスキー ベアテ・シロタ・ゴードン チャルマーズ・ジョンソン

日高六郎 韓洪九

 

2006/07/17

『言葉にのって』著:ジャック・デリダ 訳:林好雄/森本和夫/本間邦雄

2001 ちくま学芸文庫 254P

やっぱりデリダはワカンネ。

インタヴューという形なので、それでも著作よりは分かりやすいかもしれません。

まあ基本的にそんなにオススメはしませんが。

後半三つはそこそこ面白く読めるとは思います。

「私は≪逃げ去る≫という言葉よりも≪壊れやすい≫という言葉の方が好きです。

壊れやすさ、私はそれをみずから要求しましょう。

赦しの壊れやすさは、赦しの経験の大事な要素ですから。

私は、もし赦しがあるならば、それは人知れず、留保された、ありそうもないはずのものであって、

したがって壊れやすいものにちがいない、というところまで考えを押し進めようとしました。

被害者たちの脆弱さ、その脆弱さに結びつけられる傷つきやすさは言うまでもありません。

私は、このような壊れやすさを考えようとしているわけです」

推奨度

★★★

大見出し

肉声で 歓待について 現象学について 政治における虚言について マルクス主義について 正義と赦し

 

2006/07/16

『科学哲学者柏木達彦の春麗ら 心の哲学、言語哲学、そして、生きるということ、の巻』

著:冨田恭彦

2000 ナカニシヤ出版 225P

一応四部作完結編(この後番外編がありますが)。

まず心の哲学ということで、ヴィトゲンシュタインの私的言語問題、それからライルの「唯物論」を紹介、

さらにそこからデカルトに立ち戻って、実はライルはデカルトの二元論を壊しきれていないと批判。

二話は、このシリーズ中最難のお話。

一応とある本に収録する対談ということなので、

リアルさを追求してそこそこ難しめの用語を色々使ってみたりしたとのこと。

内容としては、サールの言語哲学VSデイヴィドソンの言語哲学で、

著者の立場としてはデイヴィドソンによるサール批判というところですね。

とはいえサールを捨てたりしているわけではなく。

最終話で、生きる意味や目的について、学生と色々話すという穏やかな終わり方。

やっぱり結論としては、ローティ的に、っつかまずやってみるしかないじゃんよ、という感じです。

推奨度

★★★★★

大見出し

弥生三月 桜咲く 五月になって

 

2006/07/15

『科学哲学者柏木達彦の秋物語 事実・対象・言葉をめぐる四つの話、の巻』 著:冨田恭彦

1998 ナカニシヤ出版 234P

時系列としては戻って秋。

最初に観察理論負荷について、つまり認識論と「解釈学」ですね。

二話では伝道的指示理論と因果論的指示理論を説明。

三話ではサールの言語哲学入門という感じ。

そして四話では何故かアトランティスについて、ライヘという学者の論を紹介……実は天文世界の話だった!?

というところから、最初に戻ってお話の解釈性でオチつけ。

構成がうまいですね、なるほど単なる哲学入門というだけにとどまらず、というのはよくわかります。

推奨度

★★★★★

大見出し

送別会 明日香の疑問 公開講座 星空のアトランティス

 

2006/07/14

『科学哲学者柏木達彦の冬学期 原子論と認識論と言語論的転回の不思議な関係の巻』

著:冨田恭彦

1997 ナカニシヤ出版 220P

前作に引き続き第二弾、なのですが、実はこちらが三巻でした。

出版時期がずれているのは、まあ、大人の事情というやつでしょう。

今回は、色って何なのかということから、古代ギリシアの原子論、

エレア派から始まってデモクリトスという感じで。

それが実は現代のいわゆる言語論的転回にまで脈々としているのだ、というのが著者独自の見方で面白い。

それでいわゆる言語論的転回をみるばあい、

カントで完成すると言われている(著者が色々見直しを迫っているので、ホントいわゆるばかりなのですが)

認識論的転回と同じ構造だというように見なければならないのだ、と。

その近代の認識論的転回はデカルト、ロックが粒子仮説をとっているので古代の原子論と密接不可分であり、

そして著者はそういった粒子仮説を認めているロックなんかの方が、

カントよりもすぐれてローティ的な論を展開しているのだと、

っていうかカントはロックの劣化だというようなこと(誤解を恐れずにいってしまえば)を述べます。

まあ小説なので、著者の真意かどうかは分かりませんよ!

夏巻もそうでしたが、部分部分は、講談社現代新書で出ているシリーズと同じ感じですね。

併せて読めば理解が深まるでしょう。

推奨度

★★★★★

大見出し

師走 睦月雪積む 如月

 

2006/07/13

『文学と音楽』 著:松本道介

2006 中央大学人文科学研究所 59P

人文研ブックレット。

非売品なので図書館で借りましょう。

人文研にて開催された講演というかお話会のまとめ。

スーツ着て机に向かってビシッと論文を書くというタイプの先生ではなく、

雑談の中から何かネタを見つけ出して、思いついたままに書いていくというタイプです。

そんな人だから喋りも闊達で面白くてすぐに読めます。

私もどちらかというと著者のようなタイプなので頷けるところが多くあり。

ただやはりアクは強いので、いやそこは違うと反論したくなるような偏見も多々。

推奨度

★★★★

 

2006/07/12

『『ヴィーナスの誕生』 視覚文化への招待』 著:岡田温司

2006 みすず書房 164P

理想の教室シリーズ。

大見出しに書いた三つが、もう視覚文化、なんというんでしょう、ヴィジュアルスタディーズとでもいんでしょうか、

ソレへの方法論そのままです。

『ヴィーナスの誕生』というと、パノフスキーやらが頑張って解釈した「フィチーノの影響」ということで、

新プラトン主義的に見られることが多いそうですが、今回著者はそれを排するというか、

新プラトン主義的じゃない、という主張を打ち出していきます。

全く新プラトン主義的じゃないっていうのもどうかとも思うのは、

著者がジェンダーといったことを持ち出してくるところへの抵抗感があるような気がしないでもないです。

ちなみに新プラトン主義というよりはネオプラトン主義っていう方がいいんですけどね。

推奨度

★★★★

大見出し

絵を見る 絵を読む 絵を楽しむ

 

2006/07/11

『科学哲学者柏木達彦の多忙な夏 科学ってホントはすっごくソフトなんだ、の巻』 著:冨田恭彦

1997 ナカニシヤ出版 235P

内容としては講談社現代新書のシリーズと被っているところもありますが、

これはこれでまた十分に楽しめる「小説」です。

断じて「小説スタイルの科学哲学入門」ではなくて、「芥川賞を狙った小説」とのこと。

こういった言い張りなんか、私大好きですよ。

大体多く語られるのが、適当な順番ですが、

クーン、デイヴィドソン、クワイン、ウィーン学派、ローティ、

とこのあたりです。

主題は、「相対主義」「デカルト的不安」といったところでしょうか。

内容は結構難しいはずですが、スラスラ読めます、

逆にスラスラ過ぎて頭に入ってこないという心配が出てくる人もいるんじゃないかといったところ。

今回はロックやバークリーなどは出てきませんね、次巻以降でしょうか。

このシリーズは、この後、冬、秋、春、番外編と続いていきます。

全部読めばそれなりに科学哲学が理解できるようになっているはず……?

と、まだ私も読んでいないので、次は冬をば。

推奨度

★★★★★

大見出し

梅雨明けの頃に 夏休み前最終講義 ウイスキー・スルメ・ピーナッツ 図書館のロビーで 大掃除の翌日

 

2006/07/10

『ギリシア人の教育 教養とはなにか』 著:廣川洋一

1990 岩波新書 195P

プラトン、それからイソクラテスの教育論入門として最適。

ただ、教育と哲学がどれだけ離れているのかというと、そうでもないのですが。

教養とは何か、という問題を考える上では、西洋の古典なので押さえておかなければならないことではありますが、

直接的とはいえないので、古代ギリシアからそのまま現代の教養を引いてくるのは難しいです。

ただどうしても性質上、見方によっては、

つまり近現代の教育論と比べてしまうと、かなり上っ面的なところが強いですので、

やはり上にも書いた通り、直接的なことは期待してはいけません。

推奨度

★★★★

見出し

人間教育としての一般教養 パイデイアーとは何か・成立・内実 教養・教育の力について

プラトンの教養理念 無知の無知に向って 不調和としての無知に向って 調和と理知─魂全体のための配慮

イソクラテスの教養理念 教育者イソクラテス 思慮とよき言論としての徳 普遍的視野と徳性─教養としての弁論・修辞術

 

2006/07/09

『人物による西洋近代教育史』 著:ヘルマン・ノール 訳:島田四郎

1990 玉川大学出版部 222P

ディルタイのお弟子さんなだけあって、生ということを強調します。

西洋近代教育史とありますが、ドイツ近世近代教育史という感じですね。

最終章の題「教養」は、

おそらくBildungなので「形成・育成・養成」もしくは「陶冶」とかなんじゃないかなぁと思うのですが、

どうなんでしょ。

推奨度

★★★★

大見出し

ヨハン・アモス・コメニウス クリスチャン・ゴットヒルフ・ザルツマン ペスタロッチーの精神的世界 ペスタロッチーと現代

フリードリッヒ・フレーベル フレーベルと現代 生けるヘルバルト ヘルマン・リーツ ゲオルク・ケルシェンシュタイナー

ウーンドルのサンダーソン フラナガン神父 ルードヴィヒ・バラート 教育者の教養

 

2006/07/08

『大衆消費社会の登場』 著:常松洋

1997 山川出版社 82P

山川世界史リブレット。

正直、この20世紀前半のアメリカって社会が一番わけ分からない。

へたに現代に入ってしまっているために、我々の常識で測ってしまおうとするのですが、

19世紀のイギリスはヴィクトリア朝の通俗概念が流通していたり、それでいてフロンティアスピリットが残っていたり、

さらに自由だといいながら差別が激しかったり、国家による制限はやめようといいながら禁酒法ができたり、

本当にメルティングなところです。

推奨度

★★★★

大見出し

資本主義の発展と消費社会 大量生産の時代 大量販売・大量消費 消費文化と政治・社会 ヴィクトリアニズムの動揺

男女交際・娯楽・消費文化

 

2006/07/08

『君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか』 著:布施英利

2005 ちくまプリマー新書 174P

ダ・ヴィンチは単なるモナ・リザで有名な画家というだけではない!

ということがよく分かる良著。

最近、ダ・ヴィンチ・コードなどで取り沙汰されるレオナルドさんですが、

彼は画家としては自称「そこまでではない」男でして(それでもまぁ最強なんですが)、

本人からしたら兵器開発や建築や彫像の方が得意だったそうな。

っていうか彼は美形で長身でスマートで運動神経抜群、

垂直跳び一メートルにくわえ素手で金属棒をへし曲げたという(そこまではこの本に載ってないですが)

更に実は重力概念も持っていたんじゃね?というトンデモない御方。

そんなダ・ヴィンチのことを読みたければ是非本著を。

推奨度

★★★★★

大見出し

ダ・ヴィンチは画家か、科学者か? 『モナ・リザ』って、本当に名画なの? ルネサンスって、どんな時代?

レオナルド・ダ・ヴィンチ、誕生! 天才少年は、師匠より絵がうまかった 青春時代、ダ・ヴィンチはおしゃれだった?ダサかった?

結婚をしなかったのは、同性愛のせい? ダ・ヴィンチは、放浪の男だった 大先生ダ・ヴィンチは、こんな仕事もしていた

そしてダ・ヴィンチは死んだ フィレンツェ、ミラノ、パリ、三都物語 若きダ・ヴィンチの一枚、『受胎告知』

ダ・ヴィンチは女性をどんなふうに描いたか 未完成だけどカンペキな絵 演技する手に注目しよう 『最後の晩餐』、遠近法の秘密

わが子を見つめる母の笑顔 『聖アンナと聖母子』 『モナ・リザ』、微笑のひみつ 最初の風景画家はダ・ヴィンチだった

なぜ死体を解剖したのか? 人体を機械のように考えていた? 子宮の中の胎児まで観察したのはなぜ?

ダ・ヴィンチが作った戦争兵器でいちばん恐ろしいのは? 飛行機を作ろうとしたダ・ヴィンチ 植物を愛した画家ダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチにとって大地とは、岩とは? 水の力、嵐、世界の終わり ダ・ヴィンチにとっての地球、宇宙って?

 

2006/07/07

『プラグマティズムの思想』 著:魚津郁夫

2006 ちくま学芸文庫 342P

放送大学のテキストをもとにしている素晴らしいプラグマティズム入門書。

昨今、プラグマティズムの入門は本当に少ないので稀少でありがたいです。

背景としてのアメリカ史、プラグマティズム前としてエマソンやソローやトウェイン、それからパース、ジェイムズときて、

ミード、デューイ、それからモリスやクワイン、果てはローティまでを紹介。

後半はいわゆるプラグマティズムからはずれている人々がいかにプラグマティズムを継承し批判してきたか、

その批判が妥当なものだったか再批判、という流れです。

大体、パースは微妙な立ち位置ですが(多くは記号論ですか)、

ジェイムズは王道的にプラグマティズム哲学、デューイは教育学、

ミードは最近ようやく注目されてきていて、モリスとクワインは論理学、ローティはポストモダンとして、

分かれ分かれで語られる場合が多いので、こうしてひとまとまりにして論じられているのが素晴らしい。

これに加えてホワイトヘッドなんかも論じられれば完璧だったのですが、難しいですか。

推奨度

★★★★★

大見出し

現代アメリカ思想の背景 プラグマティズムの登場 パースの「探求」と真理 パースと記号論 パースの「アブダクション」と可謬主義

ジェイムズと真理 ジェイムズと宗教 ジェイムズの「純粋経験」と多元論 ミードの「社会的行動主義」と言語論 ミードと自我論

デューイの「道具主義」と教育論 デューイと真理と宗教 デューイと善と美 モリスの思想とクワインの思想 ローティのプラグマティズム

 

2006/07/06

『いちばんやさしい憲法入門 第3版』 著:初宿正典/高橋正俊/米沢広一/棟居快行

2005 有斐閣アルマ 249P

有斐閣のこのシリーズは、優れた教科書という感じのつくりで無難に良い出来です。

いちばんやさしいという名前を自称するだけあって、

なるほど教科書体のものとしてはそれに相応しい易しさだと思います。

ただ、どうして日本は自衛権を完全に排除しなかったのかというところについて、

GHQ側のマッカーサーとその部下の遣り取りなどが抜け落ちているというのは、少々いただけないのですが。

それと中には微妙な対話編がありますが、分かり易さを狙ってやったはいいものの、

錯綜してちょっと逆に分かりにくくなっている節がなきにしもあらずです。

とはいえオススメ。

推奨度

★★★★★

大見出し

校則は拘束? 欲しいのはまず選挙権 わたしの秘密 何の自己決定か? 再婚は半年後? むかし親殺しありき 法廷の宗教戦争

ポルノの権利 人殺し教えます 教科書はつらいよ クーラーのない生活 銭湯の楽しみ 罪と罰のはて 人権の条件 皇室外交?

裁判はだれのために だれが憲法の番をするのか 両院は車の車輪 民の声voc Dei? 首相の選び方 住民投票で決着を!

憲法の変身

 

2006/07/05

『生命保険の知識<新版>』 編:ニッセイ基礎研究所

2001 日経文庫 214P

日経文庫は何故日経新書でないんだろう、という疑問はさておき。

生命保険の基礎知識、基礎理論を知りたいならコレという手堅い一冊。

実際の保険会社を比較してどうのこうのというわけではありませんので、そもそも保険はどういう仕組みで、

保険会社はどのようにして成り立っているか(ソコのところはそんなに突っ込んでないかもしれませんが)、

というところを述べています。

なので、需要からしたら、表面的に過ぎるという面がなきにしもあらずですが、

ソレはまたソレで別の本を探して読めばいいというだけのことです。

推奨度

★★★★★

大見出し

生命保険の仕組み 生命保険にはどんな種類があるか 個人向け生命保険を選ぶ 申し込みから成立まで 暮らしと保険

21世紀の生命保険

 

2006/07/04

『フーコー 他のように考え、そして生きるために』 著:神崎繁

2006 NHK出版 126P

シリーズ・哲学のエッセンス。

毎度のことで、このシリーズは入門書ではないです。

フーコーそのものを語るというよりは、他思想家達を援用してそれとの関わりから語っていくという形ですので、

フーコー以外の、例えば、

プラトン、デカルト、カント、ニーチェ、フッサール、ハイデガー、カッシーラー、パノフスキー、メルロ=ポンティ、デリダ、

あたりに詳しいと分かりやすくなることでしょう。

そもそも、「フーコーそのもの」なんて無いだろうというような姿勢なのですが。

章分けしている三つの論点は、それぞれ(の)フーコーの核心を衝いていて上手いですね。

ただこれだと、フーコーの独創性などは分かりにくいかもしれません(まぁ、

「独創性」なんて無いヨ、っていうことなのかもしれません、だとするとよりいっそう巧い)

推奨度

★★★★

大見出し

タブローとしての世界─「主体」と「対象(客体)」の逆転 脱自(エクスタシー)の振動─狂気と正気、夢と覚醒、拘束と自由

真理のゲーム─「生の技法」と「パレーシアー」

 

2006/07/03

『生贄』 著:ジョルジュ・バタイユ 訳:生田耕作

1999 サバト館 47P

基本的に何を言っているのだかよく分からないのですが、何となく分かるような気がしますし、

そもそも文章自体が面白く錯綜している変態的な楽しさがあるのが、バタイユ。

生田氏でなくてはこんな訳ができないだろうな、というか、よくこんなうまいこと訳せるモンだ、

と感心させられてしまいます。

ページ数少ない割にやはり高いですし入手困難ですが、図書館などでありましたら、是非手に取ってみては。

「<私>の、そして(私の構造であるだけでなく、

私の色情的恍惚の対象でもある)時間の幻覚的存在を主張する意味は、

深奥な存在をそなえた事物が下だす判定にその幻覚を服従させるべきであるということではなく、

それを閉じ込めた幻覚のなかに深奥な存在を投げ込まねばならないということである」

推奨度

★★★★

 

2006/07/02

『西洋哲学史 古代から中世へ』 著:熊野純彦

2006 岩波新書 257P

引用文を多くもってきて、原典(和訳ですがラテン語併記もアリ)そのままを伝えようという努力がある他、

途中多くの近現代思想家が出てきて、まったくの初学者は混乱するかもしれませんが、

別段その部分を読み飛ばせば何ということもなく、逆にちょっと詳しい人にはなるほどと思わせたり、

ニヤリとさせたりできるという、美味しい作りの本になっています。

人選もなかなかマニアックな手の届きにくいところなども紹介していまして、

例えば新プラトン主義はプロティノスで有名ですが、その他にプロクロスのこともページを割いて論じています。

名前を列記してみましょうか。

タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス、ピタゴラス学派、ヘラクレイトス、クセノファネス、パルメニデス、

エレアのゼノン、メリッソス、エンペドクレス、アナクサゴラス、デモクリトス、ソフィスト達、ソクラテス、ディオゲネス、

プラトン、アリストテレス、ストア派、メガラ派、アカデメイア派、ピュロン主義、フィロン、プロティノス、プロクロス、

アウグスティヌス、ボエティウス、偽ディオニシオス、エリウゲナ、アンセルムス、トマス・アクィナス、スコトゥス、

オッカム、デカルト。

ふむ、エピクロスがいませんね。

ところで岩波新書、カヴァーも変わりましたが、中の紙質も変わりましたね。

何かいやにツルツルしていて変な感じです。

推奨度

★★★★★

大見出し

哲学の始原へ ハルモニアへ 存在の思考へ 四大と原子論 知者と愛知者 イデアと世界 自然のロゴス 生と死の技法 古代の懐疑論

一者の思考へ 神という真理 一、善、永遠 神性への道程 哲学と神学と 神の絶対性へ

 

2006/07/01

『ギュスターヴ・モロー 絵の具で描かれたデカダン文学』 著:鹿島茂

2001 六曜社 118P

19世紀の大画家といってまず挙げたい一人が、モロー。

特に、後の幻想美術、超現実に繋がっていくという点でも、彼自らが言ったとおり「橋」であり、

橋に過ぎないなどということは当然ない……、何というか、

ヴィトゲンシュタインが言うところの、のぼり終えた梯が、いつのまにか頭の上に乗っかっているというような、

そんな存在の画家であることが、よくよく分かります。

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★★★★★

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孤高の芸術家 ロマン派からの出発 モロー芸術の確立 世紀末文芸への衝撃 モローの女性観 モローを継ぐものたち

 

2006/07/01

『異説・近代藝術論』 著:サルヴァドール・ダリ 訳:瀧口修造

1958 紀伊國屋書店 133P

文章も超現実主義的というか、ダリ節、ポストモダンのあのワカラン文章は、ダリから来ているのか、

と思ってしまうほど。

そしてめっちゃくちゃ毒舌です。

引用するのが一番分かりやすいでしょう。

「裏返しにされた、つまり崇高なものに憧れるニーチェ主義者のように、われわれは肉眼をもって、「自然から」、

かの反プロトン的天使の破裂するのを観ることができるであろうし、その破裂の神々しさに、

われわれはついに夜鶯のような実体の分裂した染色体のあいだにこの画家の手を突っ込んで、

痛々しい血脹れのした指で、わが青春以来の憧憬の的であった不連続性の宝庫に手をふれることができるであろう」

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★★★★

最終更新:2007年08月27日 21:55