日常編16


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[09/04/02書き込み]

[四月一日夜]

俺「ただいま」
幼「うわっ、お前傘持って行かなかったの!?」
俺「うん」
幼「風呂入れ」
俺「一人で?」
幼「私はご飯作らなきゃ」
俺「そっか」

 ◇

お風呂を見ると、冷えた体には少し熱そうだ。またぬるいって文句言われるかな……と思いつつ、水を足しながらゆっくり湯船に浸かる。
今日はとても疲れた。雨の中濡れて帰りながら、くじけそうだった。
明日も仕事かと思うと憂鬱で、滅多に泣かない俺もさすがに泣いてしまいそうだった。
実際、幼なじみに泣きついて頭をなでてもらおうと思っていたのだ。でも、今日もお風呂は温かかった。お風呂を上がればご飯も出来ているし、寝る時も幼なじみといっしょだ。
幼なじみを不安にさせないよう、やれるところまでは一人でやってみよう。それでもダメだった時だけ、泣きつこう。

 ◇

しばらくすると、幼なじみが顔を出した。

幼「お風呂ぬるくない?」
俺「平気だよ」
幼「なんかハンターハンター再開だってよ」
俺「えっ、早っ!
  あ、でもそういえばそろそろか」
幼「二十週連続だって」
俺「ええー!?
  ちょっと俺の携帯取ってくれ」
幼「どこにある?」
俺「トロのぬいぐるみの中」
幼「トロ?」
俺「あー、猫だ猫。ファスナー付いてるから」
幼「はい」
俺「ありがと」

いつから再開なのだろうか。実に楽しみである。
俺はルンルン気分で携帯をいじり始めた。

 ◇

完全にやられた。なぜエイプリルフールの嘘だと気づかなかったのだろうか。
なにしろタイミングが絶妙だった。もう再開してもおかしくない頃だ。実に効果的な嘘をつきやがった。
お風呂から上がると、幼なじみは笑いをこらえていた。

俺「……騙したな」
幼「ふふふ、バーカ」
俺「みおなんて嫌いだ」
幼「あっそー。ご飯いらないのね?」
俺「食べます!」
幼「嫌いなんでしょ?」
俺「好き」
幼「仕方ない、食べさせてやるかっ」
俺「姫様、ありがとうごぜえますだ」
幼「いちいち小芝居入れるな」

 ◇

幼「もうすぐ1時だよ」
俺「今日は良いや……」
幼「代わりに買ってきてあげようか。チャンピオンだっけ?」
俺「夜だし止めとけ。お前一人じゃ心配になる」
幼「もう寝るの?」
俺「うん、ごめん。眠い」
幼「疲れた?」
俺「体がほてって寝られないなら俺に構わずオナニーしても良いぞ」
幼「するかアホ」
俺「昨日立ち読みしなくて良かったよ。ありがと」
幼「大丈夫?」
俺「うん……あ、明日飲み会だって。だからご飯とか良いから」
幼「危なっ、忘れてたろ」
俺「うん。今度からそういうのすぐメールするよ、忘れそうだ。
  ……飲み会嫌だなあ、食べられる物あまりないし」
幼「枝豆食べとけ」
俺「ハッピーターンとかないかな」
幼「んなもんあるか!」
俺「俺、居酒屋なんて行ったことないからこわいなあ。
  本当は今日だったんだけど、食事の準備がしてあるからって言い訳して明日にしてもらったんだよ」
幼「お前の前の仕事のとこと大して変わらないと思うよ」
俺「そっか」
幼「……」
俺「今日は全然構ってあげられなくてごめんね」
幼「ううん」
俺「おやすみ」
幼「おやすみ」

 ◇

♪ちゃーらーらーらーらったったーん

[翌朝]

俺「……」
幼「おはよう」
俺「はよ……」
幼「疲れ取れない?」
俺「うん……」
幼「無理しないでね」
俺「ダメだ」
幼「ん?」
俺「そういうのはダメなんだ。優しくして頑張る奴なら、大学も行かない就職活動もしないなんてことにならない。
  もしお前に『どうしても辛いならやめても良い』と言われたら、きっと俺は『どうしても』じゃなくてもやめたくなる」
幼「でも、お金はちゃんと他で稼いでたんだから……」
俺「いや、正直それは俺も思ったよ。今だって思ってる。仕事したらむしろ収入減るわけだし、金だけで考えると疲れるだけ損だ。バカらしいかもしれないよな。
  でも例えばさ……来月、お前が妊娠したとする。それでもしも。もしも産みたいって言われた時、今の俺じゃ頷けないんだ。自信がないし、子供を育てるって義務を全う出来る気がしない。
  自分が子供なのに、とても子供なんて育てられそうにないってのがまずあるんだよ。そりゃあ、人付き合いは苦手でも子供だけは別かも知れないけど。
  まあお前は、『もし妊娠したって全然産みたくないから別に良いけど』とか言うかもしれないけど、いざ妊娠したら心境が変化する人もいるしな。
  ようするに、あれだ……『努力は買ってでもしろ』ってやつだな。あえて苦難に立ち向かうわけだ!
  ふはは、カッケーだろ!?」
幼「変なポーズは良いから」

 ◇

俺「それに、お前はそういうの嫌いだろ?」
幼「どういうのよ」
俺「バイトしながら俳優を目指せって父親に言われたのに、二日で止めちゃう人とかは嫌いだろ?」
幼「でもあれは……お前とはちょっと違うじゃん。
  あの人は別に、知らない人が苦手なわけでもないわけだし」
俺「金持ちの息子がやらされるんだから相当苦痛だと思うよ?
  金なんて余ってるのにやらされてるんだし」
幼「でもお前の方がよっぽど辛かったって絶対。あれだけ頑張れたお前がやめたいって言う時はもう限界なんだと思うもん」
俺「それはお前が俺のこと詳しいからさ。あの人も実は必死でやって、それでも二日で限界だったのかもしれないし。まだ本当は頑張れたのかどうかは本人にしか分からないだろ?
  客商売が合ってなかっただけで普通のサラリーマンなら俺より何倍もこなせるかもしれない」
幼「うーん……でもさすがにお前より客商売が合ってなかったってのは薄いべ」
俺「はは、まあたしかにそうかもな。じゃあ、仕事やめたら嫌われるかもしれないからって点は問題なしか。
  えーっと……それでも結局最初の方の理由で、俺はお前のために仕事をしてるわけだ。前の仕事を始めたのと同じ理由だな。
  認めてほしい、見てほしい、愛してほしい。だから頑張る。
  逆に、お前が『仕事なんてしなくて良いから二人の時間がもっと欲しい』って言えばやめちゃうし。
  ただ、頑張らなくても良いと分かったら頑張れないのはダメ人間の特徴だからさ。あんまり心配しないでくれたまえ」
幼「うん、分かった。でも、苦しかったら言ってよ?」
俺「ああ、もちろん」
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